第10話 早く来い来い、写真集

1週間がこんなに長く感じるとは。

城君の写真集をネット注文して1週間。半年前に出版されたと言うのに、この深夜ドラマの異例の大ヒットで重版して予約待ちだったのだ。

2日くらいで手元に届くものだと思っていた私が甘かった。


半ば引きこもり無職の43歳独身女は世間の動きに、特に芸能界の動きにやや疎くなりつつあったのだ。


城君主演のコメディドラマは平日深夜枠では異例の大ヒットを飛ばし、視聴者満足度・録画率共にネット投票1位を獲得していたのだった。


城君は最早、誰この人?ではなく、人気の若手俳優へとのし上がっていく途中になっていたのだった。元々好きだった助演の360℃イケメンのT君はもっと手の届かない存在になってしまっていた。いまやSNSのフォロワー数も軽く100万人を超えていた。


これは、、、、。なんか凄いことになっている。

SNSで城君とT君のアカウントを探し、すかさずフォローした。勿論コメントやイイね!すら押せない。私のSNSは見る専門なので誰にも教えていないアカウントであり、フォロワーも誰もいない。別にコメントしても何ら問題ない。しかし、しかしだ。

出来ない、、。そんな勇気は私にはない。

どうせコメントなんて読むわけないし。5千件以上あるコメントだよ?見る訳ない。

万が一目に留まって、私のアカウントを覗いたところでフォロワーゼロだよ。

アイコンは適当にアパートの近くにいた野良猫を写したものだし。

全く記憶に残らないアカウントだ。

だったら元からコメントなんてしない方がマシだ。

コメント出来る人たちが羨ましくもあり、尊敬の念すら持っていた。


「ピンポーン」

写真集の時間指定配達時間帯だ。

こんなにワクワクしているのは何年ぶりだろうか。

「はーい」

少し甲高い声を出して、私は狭いアパートの玄関に急ぎ足で、頭ボサボサで相変わらずシャワーも浴びていない、そして適当なスエットを着て扉を開けたのである。

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