第6話 涙はきっとお酒のせい

あれから、まっとうな人間になろうと1人で飲みに行くことをやめた。

家で缶ビールを飲むことはあっても1本だけ。

そしてノンアルビールに変えた。


彼と彼の奥さんのSNSも検索しないように頑張った。


しかし2020年に43歳になったばかりの私は、2021年早々からビールを昼間から飲み明かしている。


理由?

従兄弟が結婚したからだ。

私は歳の近い従兄弟が多い。

結婚した従兄弟は最後の砦だった。女っ気のない素朴な10歳以上年下の従兄弟だった。

彼が結婚した。式は挙げない。

こうして、従兄弟7人中、結婚していないのは私だけとなったのである。


母親は既に10年前に他界している。

父親には結婚するつもりはないと予め謝ってある。

5歳上の姉が実家の近くに住んでいるし、孫も一姫二太郎を生んでくれたので父親は孫には恵まれている。

姉がいなかったら、結婚しろとうるさかっただろうが、最早父は私の結婚を諦めている。

そういう訳で、毎年夏と冬に集まる親戚の会が憂鬱で仕方なかったのである。

親戚も私に対して結婚の話はしない。それもそれで気を遣われているようで居心地が悪いのだ。


恋愛もしない。結婚もしない。と決心したはずの私なのに、その最後の砦の従兄弟が結婚したことを父から電話で報告を受けて、何故か涙が止まらなかった。


そしてやけ酒という訳である。


自分でもよく分からない。何故こんなに泣いているのだろう。涙が溢れてくるのだろう。


そして酔った勢いだろうか、何年かぶりに彼の奥さんのSNSを発見してしまった。

最悪だった。

私がこの世で一番嫌いなタイプの女だった。


彼との子供は2人産んでいた。それは以前調べて分かっていた。

妊娠中は膨れたお腹に彼がアート作品を描き、それをその女はSNSで披露していた。

うん、確実に嫌いなタイプだ。


そして何よりも、パーソナルカラー診断アナリストととして経済的にも自立していた。実はその資格にはかなり興味があり、自分もその道を考えていたこともあるだけに一層憎かった。

全てを手に入れている女。

大人しそうな顔をして、私がメッセージで10年前に「もう辛いからやめてください」って言っても、この女はのうのうとお花畑投稿をしている。


見なきゃよかった。

分かっていたはずなのに、、、。

もしかしたら離婚しているかもって期待している自分がいたのだ。


よく分からない感情が溢れ出し、大泣きしながら私は今、ビール8本目を手にしたのだった。

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