第2話 元彼に思いを馳せて

つい先日43歳になった私は本気で人を愛したことはある。10年愛だった。23歳で4歳年下の彼と出会い、すぐに恋に落ち、順風満帆で、倦怠期すらもない驚くほどの最高の相手だった。私にとっても彼が初めての人で、彼にとっても私が初めての彼女であり、初めての肉体関係を持った相手だった。

同棲もしていたし、彼の親とも旅行したり、彼の実家に泊まったり、彼も私の実家に泊まったり、私の友人たちと会ったり、公認の仲だった。


彼は驚くほど純粋で、付き合って2週間で「結婚しよう」と指輪をプレゼントされた。私も彼といつかは結婚するだろうと考えていたが、流石にまだ23歳だった私には19歳の彼はまだまだ未来ある人であり、結婚は考えられなかった。

しかし何だかんだと10年も続いた。


彼は美術的センスを活かし、起業した。勿論起業したばかりで経済的にはまだまだ不安だった。私も正社員という道には沿えず、派遣社員をしていたのでカツカツの生活だった。それでも彼といれば幸せだった。はずだった、、、。


私はブスでもなければ美人でもない。いわゆる普通の顔面偏差値ってやつだ。でも地元にいた頃は微妙にモテたりもした。田舎あるあるかもしれない。美人過ぎるとモテず、そこそこの顔がモテるってやつだ。


その可笑しなプライドが残っていたのだろう。身の程知らずもいいとこだ。女子高に進学し、女子短大という道を歩んだが故に男性遍歴が全くなかった。


なのでこんなに完璧過ぎる彼を物足りないと感じてしまったのだ。「もっといい人がいるのでは?」という探求心がくすぶり始めた。彼は父親が浮気をして離婚したという経験から「女性を泣かせてはいけない。生涯でたった一人の女性しか愛さない」と泣いている母親をこっそり見て、父親を反面教師にしていた。本当に純粋な人だった。AVさえも見たことがない、否見たくないと思う人だった。


それなのに私は彼の私に対する愛情が揺るぎないものであることを知りつつ、他の男性に興味を持ち始めたのだった。

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