al fine

§1 始まり

0-1 零れ落ちる星屑の涙の下で

 無限に広がる果ての無い暗闇。その中に、ただひとり。

 乾いた砂の中に身を埋めながら、ワタシは気が遠くなるほどの年月を孤独の中で見送った。

 何も見えない。何も聞こえない。己以外に何も無い。


 無――そう呼ぶにふさわしい、静寂に満ちた空っぽの空間。


 その中に光の存在を認識したのは、気まぐれに瞳を開いた時だった。

 空を埋め尽くす黒い海の中、満天に輝くそれらはとても目映い。

 今まで暗闇を生み出していたのは自身の瞼だったのだとその時初めて知った。


 ――あなたは、だれ?


 問いかけながら、夢中になって天を仰いだ。

 高鳴る鼓動。身体の芯がじわりと疼く。

 じっと身を潜めているのがもどかしくなるような、むず痒い感覚に襲われた。

 全身を蝕む未知の体感は、恐ろしくも、狂おしいほどに心地良い。

 恍惚の波に思考を奪われたまま延々と頭上に浮かぶ光の粒子を見上げ続けた。


 ――なんて、綺麗なのだろう。


 愛おしい、という感情を知る。


 ぼやけていた自身という輪郭が鮮明に色付く。この時、初めてワタシはワタシという存在を自覚した。


 この綺麗な景色をもっと、もっと、ずっと見ていたいと思うようになった。


 この光たちと、もっと近い存在になりたいと願った。


 ――この気持ちを、伝えたい。


 唇から漏れる吐息が音を紡いだ。






「ワタシは、セカイ。どうぞよろしくね」

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