第三十二章 2年生&留学生・クラス対抗戦編!
第1446話 クラス対抗戦前日。今日はハンナとお出かけ!?
「ゼフィルス君~朝だよ~」
「むにゃ。んあ、ハンナ?」
「おはよう? まだ眠い? もうちょっと寝る?」
日曜日の朝。
今日もハンナの目覚めのボイスで覚醒する。
夏休みの間、毎朝俺を起こしに部屋へ来てくれていたハンナ。
ハンナにはいつでも入って来て良いよと言って合鍵を渡してあった。
まあ、大体俺も前もって目が覚めていることも多かったんだが、何度かはハンナによって素敵な目覚めを体験したんだ。
そしてそれが習慣化し、夏休みが明けてもこうしてハンナの目覚めのボイスで覚醒することが、たまにあるようになった。
幸せなのは秘密。
日曜日である今日もハンナは来てくれて、合鍵を使って部屋に上がって朝食の準備をしてくれていた。
とっても頭が下がる思いだ。
「いや、もちろん起きるぞ! ハンナの朝食を逃すなんて勿体なすぎて今日1日どころか一生後悔する!」
「も、もうゼフィルス君ったら、大げさなんだから~」
ハンナがいると、いつもよりもシャキッと目覚められるから不思議だぜ。
夏休みなんて、本当に一度も寝坊もせずに夏祭りや合宿の時以外は本当に毎朝来てくれたもんな。ハンナが凄い。
俺だってたまに寝過ごすこともあったのに。
以前、ハンナは寝過ごすことは無いのかと興味を抱いて聞いてみたんだ。
するとな「ゼフィルス君が待ってるって思うと不思議と目が覚めるんだよ~」なんて可愛いことを言っていたんだ。
確かに俺は寝ながらでもハンナの全てを待ち受けている。なるほど~と思ったね。
顔を洗っていつもの席に座れば、ハンナのご飯がすでに用意してあるんだ。
おお! 今日のメニューは野菜とキノコたっぷりのパングラタン。
千切った食パンにたっぷりのチーズを掛けて香ばしく焼いており、香りがもうたまらない。
朝からグラタンは重いイメージがあるが、パングラタンはあっさりと軽くてヘルシーに食べられる。これがまた美味いのだ。
俺が気に入ったと知ったハンナが夏休み中よく作ってくれたのだが、学園があるときはゆっくり食べている暇は無いのでこの3週間は食べられていなくて、ちょっと夏休みが恋しくなっていたこの頃。
ハンナは、そんな俺の心を見透かしてまた作ってきてくれたのかもしれない!
感動で前が見えないよ!
「いただきます!」
「ふふ。どうぞ召し上がれ」
ハンナがそんな俺を嬉しそうに笑いながら見ている。
確か美味しそうに食べる俺の姿が好きだって前に聞いた気がするな。
まずは一口目をパクリ。
「んん!!」
眠気なんて吹っ飛びそうな美味さだ。
口に入れた瞬間、鼻にダイレクトに来る香ばしいチーズと食パンの香り、そして噛めば噛むほどチーズのうま味が来て、ブロッコリーなどは解れて口の中に消えていく。
熱々だが、涼しくしている部屋にはちょうど良く、とても素晴らしい塩梅だ。
これだよ、たった3週間食べなかっただけで、なんだか凄く久しく感じた。
「う、美味い!!」
「ふふ、よかった」
感動しつつも感想を言えば。ハンナは本当に嬉しそうにそう言った。
ふう。食事も終えて、ようやくハンナとハンナの朝食以外に頭が回り始める。
え? それまでハンナ以外の事は考えられないのかって? うむ。最近朝はハンナの美味しい朝ご飯とハンナのこと以外考えられなくなってきている気がするんだ。
そして、それでいい気もしている。
そんなことを考えていると、向かいに座って一緒にお茶休憩しているハンナからこんなことを聞かれた。
「ゼフィルス君、そういえば臨時教員のお仕事どうするの?」
「あ、それは受けることにした。なんだかこのままずっと受け続けそうな予感だ」
なぜか入学以降、ずっと続けている臨時教員のお仕事の話だ。
1学期も終わり、2学期がスタートして早3週間。
先週はダンジョン週間で本格的な選択授業はクラス対抗戦のあとからスタートする。
だが、2週間掛けて体験期間を設けたことによりほぼ学生のエントリーは済み、俺はようやく臨時教員から解放されて、さあ今度は学生として未知の授業を学ぼうじゃないか! というところで学園長から何度目か分からない依頼があったのだ。
曰く上級ダンジョンなど、最新のダンジョンの情報の解説を行なってほしいと。
現在上級ダンジョン講座は〈攻略先生委員会〉の仕事なのだが、先生方もお忙しく、上級下位ダンジョンですらも全てを網羅していないというのが現状だ。
そこに現れたのが、上級下位ダンジョンを全攻略している唯一の先生、つまりは俺。
いや攻略が完了したのは昨日だけどね。
実は打診があったのはもうちょっとだけ前。
どうせこのペースなら攻略もしてしまうだろうと思われたのか、ダンジョン週間に入る数日前から教鞭を執ってほしいと言われたのだ。
またかよ! しかし、悪くはない。
今回の対象となる人たちがとても特殊で、Cランクギルド以上のギルドマスター、もしくはサブマスターのみ受ける権利がある。みたいな触れ込みだったのだ。
Cランクギルドは全部で250ギルド。戦闘ギルドは200ギルドくらいなので、そこにB、A、Sを加えて、最高でも250人弱ってところ。そこに学園公式ギルドのメンバーも参加するとのことで約300人らしい。もしそれで席が少し余れば優秀なDランクも少し入れるかもとも言われたな。
要は学生全体の質を上げたいという触れ込み。
俺の目的とも合致するので上級ダンジョンの攻略方法の教鞭を執るのもやぶさかではない。
しかしいきなりのことだったため、まずは1回、ダンジョン週間の前日に教鞭を振るってきた。
結果はかなり大きな反響があったようで、メッセージを確認したら続けてほしいという大量の要望が来ていたよ。
俺の教えを受けたいという人が多くてとても嬉しくなったものだ。
「これで2学期の金曜日も、晴れて教師役だ」
「やっぱりね。ゼフィルス君、面倒見がいいもんね」
「そう言うハンナは? 確かハンナに憧れた1年生が多いんだろ? 今年の〈錬金術課1年生〉は例年類を見ない人数らしいじゃんか。ハンナにも1年生たちの教鞭を執ってほしいって依頼があったって聞いたぞ」
「どこで聞いたの!?」
「学園長から直接な」
「んもう。学園長とそんな友人みたいに頻繁に会っている学生なんてゼフィルス君だけだよ?」
友人かぁ。なぜか学園長が震えている光景を幻視した気がしたが、きっと気のせいだろう。
「それに私は断っちゃったよ。教師とか自信無いもん。〈生徒会〉だって忙しいし」
「そうなのか、それはちょっともったいないな~」
スラリポから始まり、ゲームではシステム的にできなかった規模の大量生産方法を自力で編み出して、今では高品質を大量に生み出しまくっているハンナ。
さらに錬金系の腕前は学園一で、教員すらも今のハンナには教えるどころか、むしろ教えを請うレベルだ。
なのに本人の自信はあまり高くない。
ハンナが「教えるよ~」なんて言った日には大量の生徒がフィッシュするだろうに。
まあ、ハンナも忙しい身だ。教員の仕事もするなんて言えば明らかなオーバーワークだろう。なにしろ、生産隊長様だ。
「朝食が作りに来れなくなっちゃった」とか言われたら絶望ものなので俺は「うむ」と頷き流すのだった。
「ゼフィルス君、今日はどうするの?」
「そうだな~。クラス対抗戦の最終調整も終わってるしな」
昨日のダンジョン攻略でクラス対抗戦の準備は終了。
クラス対抗戦の前日である今日は1日休みとしていた。
新メンバーのみんなやカルアたちは、自分たちのクラスの方に顔を出したいとのことだったので今日はそっちに出るらしいが。
次に会うのはアリーナだろう。
おかげで今日はなんの予定も無い。
「ぶらぶら回ろうかな」
「1人で?」
「ハンナも行くか?」
「え? いいの?」
「おう。目的は相談して決める感じで」
「わ、わぁ! やった! うん、うん! もちろんいいよゼフィルス君! 一緒にお出かけしよう!」
ということで今日の予定(?)は決まった。
ハンナと2人でお出かけである。
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