第1441話 最奥ボスはカメ怪獣!?初見のボスを撃破せよ




〈亀ダン〉のボスの名は〈大地亀驚甲グランドタートルボックス・ダダルブレガン〉、通称〈ダダル〉だ。


 異名の通り、カメ型のボスモンスターである。さすがは〈亀ダン〉。

 ただし、このカメは二足歩行だ。

 ここまで連れてきてくれた亀さんとは違うモンスターである。


「……超大きいですのーー!!」


「こんなの今から倒すのーー!?」


「たった5人でこれに勝てるの!?」


 俺たちが乗ってきたリクガメからすれば米粒かもしれないが、全長は15メートルを軽く超え、さらに二足歩行で立っているものだから威圧感が半端ない。

 頭は丸くツヤツヤなのがトレードマークのカメにあるまじき凶悪さで牙を剥き、まるで獣のようにフサフサだった。

 腕には15メートルを超える極太の槍を持ち、さらに10メートル級の盾まで持って俺たちを見下ろしている。


 いや、カメが盾なんか使うなし! というかその盾、カメの甲羅こうらじゃん! 色々ツッコミどころが満載な見た目なんだぜ。

〈ダダル〉は見た目通り防御力が高く、というか攻撃力も高い。あと口からはドラゴンと見間違うブレスまで吐く。準竜種と言っても過言じゃ無さそうな性能を持っている。


「ガメ!」


 そして「ガメ」と鳴く。


「こいつ、ガメって鳴いたですの!?」


「そのまんまじゃん!」


「カメってガメって鳴くものだったっけ!?」


 サーシャ、カグヤ、クイナダが相変わらずのツッコミ力で嬉しいこの頃。

 思わず口が緩んでしまいそうだ。


「ゼフィルス、笑ってないでやるわよ」


「おうさシエラ! ヘイトは任せたぜ!」


「ゼフィルスは新メンバー組を頼むわね。はしゃいでるわ」


「おう! 指示は任せとけ!」


「行ってくるわ――『挑発』! 『オーラポイント』! 『シールドフォース』! 『四聖操盾しせいそうじゅん』!」


「ガメー!」


 シエラが前へ出ながらヘイトを稼げば、〈ダダル〉はそれに反応して槍を持ち上げた。

 昔エステルが使っていたような両方の穂先に刃のある槍だ。

 それを上から、まるでマッシュポテトでも作るかのように何度も突き刺してきたのである。


「『鉄壁』!」


 あまりの体格差による一方的な攻撃、しかし『鉄壁』を使ったシエラは崩せない。


「ガメー!」


「さー新メンバー組、出番だぞ」


「うひゃあですの!?」


「ゼフィルス先輩、いつの間に後ろに!?」


「いや、普通に歩いてだが?」


「あのボスを相手に余裕過ぎじゃないかな!?」


 相変わらずサーシャとカグヤの反応は良いし、クイナダのリアクションも最高。

 だがボス戦はもう始まっているので楽しみは後にとっておき、集中してもらうとする。


「あいつは〈大地亀驚甲グランドタートルボックス・ダダルブレガン〉、〈ダダル〉と呼称する」


「え? どうやって調べましたの?」


「……そりゃアイテムを使ってちょろっとな」


 そういえば〈幼若竜〉を持ってくるのを忘れた気がする。まあ使ったということにしておいた。

 使ったのはゲームのころだけど、問題はない。


「あいつは見ての通り、ボディは盾に守られ、背中は甲羅に守られていて攻撃がなかなか通らなさそうだ。サーシャはむき出しの頭を、クイナダは足を頼む」


「承知しましたですの!」


「ま、任せて」


「サーシャの魔法で足を凍らせてくれ、できればひっくり返そうかと考えているから、その時はタイミングを見て合図を出す。クイナダは合図があったら下がってくれ」


「「はい!」」


 ボスを見ながら指示を出す。


「み、見たことも聞いたこともないボスを相手にするときは、こんな風に作戦会議するんだ……」


 タンクだけに戦況を任せて俺たちはどう攻め込むかを指示していると、カグヤがボソッと呟いていた。

 今まで新メンバー組は上級のボスが相手でも、その情報はレギュラー組からもたらされていた。

 しかし、今回はそのレギュラー組すら初見。

 こんなボス戦は初めてだと、かなり衝撃を受けている様子だ。是非学んでいってほしい。


「カグヤ、シエラに大回復の儀式」


「は、はい! 『狐の大回復儀式』!」


「ありがとね。む、『カバーシールド』!」


「ひゃ!?」


 ガキンッという衝撃音がカグヤの前から突如響いた。

 見れば〈ダダル〉が槍でカグヤを刺そうとしていたのだ。

 それをシエラが『カバーシールド』を使って小盾を割り込ませ、防いでいた。


 今のは回復反射攻撃という嫌らしい攻撃パターンだ。

 回復系を発動したキャラが攻撃範囲内にいるとき、タゲが向いていないはずなのにたまに反撃攻撃するというパターンだな。狙われたというよりも反射的行動による反撃に近い。証拠に、すでに攻撃の対象がシエラに戻っていた。


 さすがはシエラだ。この回復反射攻撃は初見のはずだが、しっかり対処してきた。

 一応俺がカグヤの近くに備えていたけど、必要なかったな。


「び、びっくりした」


 突然の攻撃に反応出来なかったのはカグヤの方だ。 

 悪いな、カグヤに回復を使わせるとこうなることは分かっていたんだが、一度経験しないとこういうのは身につかないと思い指示を出したんだ。

 安全対策はバッチリだったので安堵してほしいと心の中で告げておく。


「大丈夫よカグヤ、私が守るわ」


「は、はい!」


「シエラ先輩、かっこいいですの!」


 シエラの株が上昇中だ。うむ、シエラがかっこいい。見とれそう。

 だが、見とれている場合ではない。次々に指示を出していく。


「カグヤ、カンザシとモミジを出して自分を守れ。どうやら、回復を使うとヒーラーが反撃を食らう可能性がある。バリアで防ぐんだ」


「は、はい! 『お稲荷召喚・カンザシとモミジ』!」


「サーシャは合図を待ちながら槍を持つ方の側面に回り込んで頭を狙え」


「はいですの! 『氷降らし』! 『クリスタルハードスコール』! 『極寒照射光線ごっかんしょうしゃこうせん』ですの!」」


「クイナダ、ヒットアンドアウェイを心がけろ! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」


「はい! はぁぁ――『一武百鬼峰閃いちぶひゃっきほうせん』! 『瞬退相払しゅんたいそうばらい』! 『大閃刹那だいせんせつな落とし』!」


 俺の指示にサーシャは氷の雨を降らす、それはやがてスコールとなって上空から〈ダダル〉の顔面にダメージを与えまくった。『クリスタルハードスコール』は新技〈五ツリ〉の魔法だな。


 クイナダも〈五ツリ〉を連打。

 乱舞系『一武百鬼峰閃いちぶひゃっきほうせん』で足を切りまくっていたが、続いて引きながらバックステップして斬る『瞬退相払しゅんたいそうばらい』で距離を取り、その場から飛ぶ鳥をも落とす巨大な大閃『大閃刹那だいせんせつな落とし』でぶった切る。


 だが、最後の『大閃刹那だいせんせつな落とし』はあまりダメージが無かったな。甲羅の盾に阻まれてた。相手のボスもかなりやる。


「クイナダ、『大閃刹那だいせんせつな落とし』は範囲が大きすぎる、もっと足のみに攻撃を集中させるんだ!」


「はい!」


 ちなみに俺はと言えば、クイナダとは反対の足を斬りまくり、時には魔法をぶっ放しながら指示を出していた。

 おっとカグヤがビビってる予感。カグヤの下に一旦帰還する。


「カグヤ、ビビらなくて良い。自信を持ってヒーラーとして回復を使え、大丈夫だ。モミジがちゃんと守ってくれるさ」


「コン!」


「は、はい。モミジちゃん、行くよ! 私を守ってね――『セット・シールダー・プロミス・モミジ』!」


「コン!」


 カグヤが〈五ツリ〉を唱えるとモミジがパワーアップし、子狐形態から親狐のような姿に変化してパワーアップする。

 これは個別契約。今までカンザシとモミジ、2体で行動し結界と攻撃を繰り出していたが、今度からは別行動をしてモミジだけでも結界を張ることができるようになった。もちろん姿が変わっただけではなく、使用する結界の防御力も〈五ツリ〉並みに跳ね上がっている。


 モミジに防御を任せ、カグヤは意を決して回復を使った。


「『神使の継快儀式』!」


「ガメー!」


 HPを少量回復させ、全体継続回復を付与する〈五ツリ〉の強力な魔法を使うと、案の定〈ダダル〉が槍をカグヤに放ってきた。しかし。


「コン!」


 それはカグヤの前に張られた結界の前に弾かれることになる。


「ガメェ!」


「あなたの相手は私よ――『グロリアススマイト』!」


「ガアアアメエエエ!」


 モミジはしっかりとカグヤを守ったのだ。

『セット・シールダー・プロミス・モミジ』はモミジを立派な【シールダー】にしてしまう魔法。かなり硬いぜ。


〈ダダル〉も次にはシエラへタゲを移していたし、これでカグヤも安定して回復を使うことができるだろう。


 そうこうしているうちに割とダメージが溜まっていたようで、〈ダダル〉のHPバーの1段目がゼロになり、〈ダダル〉は第二形態へ移る。


 第二形態は胸の位置にドデカい水晶体が現れ、ブレスを吐くようになる。




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