第1439話 〈亀ダン〉の謎。亀さんあなたはどこへ向かう
〈亀ダン〉は通常モンスターが一定数撃破されると、エリアボスが登場する。
エリアボスには階層ボスか希少ボスがいるが、どちらが出るかはランダムだ。
そこら辺は他のダンジョンと変わらない。
ただ、中級上位ダンジョンランク10の〈
通常モンスターと一緒に巨大なエリアボスが襲ってくるのだ。かなり壮観な絵面になる。
「『エリアボス探知』! やっぱり、あれはエリアボスだよ! ――ゼフィルス君、エリアボス出現!」
カイリからエリアボスが出現の報告を聞き、俺はすぐさま指示を出す。
「了解! エリアボスは2班――いややっぱり7班が担当してもらいたい! リーナ、大丈夫か?」
「はい! 問題ありませんわ!」
「ということで、ニーコ頼んだ!」
「ちょちょちょ、こっちはリーナ君の領分でしょ!? 勇者君
「領地は変更だ!」
「そんなご無体な!?」
「まあまあニーコちゃん元気出して! 戻ってきた私の新しい力、みんなに見せてあげるよ! 『天空飛翔』! 『破滅の予告』!」
「ああトモヨ君、ボスを引きつけちゃダメだーーー!?」
おっと7班所属のトモヨ、気合い十分で目立ちまくる! 空を飛び〈五ツリ〉の大挑発スキルで滅びを予告してボスを引きつけると、ニーコの悲鳴もセットでついてきた。
そこに同じく7班のセレスタンとラウという、拳メンバーが来ちゃって!?
「では一番手はいただきましょう――『波動
「他のモンスターはみんなに任せる! ゆくぞ――『エンペラーバスター』!」
なんとボスの側面にダブルパンチ! ボスが揺れる揺れる。いやぁセレスタンとラウのダブルパンチって絵になるわ~。同じく7班のアイシャがキャーキャー言ってるよ。
「ようし、私はボスの動きを封じるね! 『シャットアウトプリズン』!」
「ほら、ニーコも出遅れないよう頑張れ! ほらアイシャなんか影でボスの動きを止めてるぞ! チャンスチャンス!」
「こんのーニッコニッコにしてやんよー! 『
ニーコの二丁拳銃が火を噴いた! ほらニーコもかっこいいじゃん!
「他の班は周囲のモンスターが7班に近づかないようにしてくれ! 〈モンスターケムリン〉は視界が悪くなるだけだから使うなよ! 掃討で頼む!」
エリアボスをセレスタンたちが抑えている間に普通のモンスターも掃討する。
複数のパーティで挑むことが推奨されている理由がここにある。
エリアボスが登場したとき、まだザコモンスターが結構な数残っていることが多いのだ。
そっちを処理する係とエリアボスを担当する係に分かれてやるのがベストであり、セオリー。他のダンジョンならエリアボス戦の間、モンスター避けアイテム〈モンスターケムリン〉を焚いておけば問題無いが、ここは狭すぎてザコモンスターが離れていかないのだ。
故に複数のパーティで挑むのが望ましい感じ。
無事アメフラシかな? という軟体系エリアボスを撃破し、ザコモンスターも全て片付くと、ここで1
「止まったの?」
「ですわね。ようやく打ち止めみたいですわ」
「これが1ウェーブというわけね。時間にして約1時間くらいかしら?」
ラナ、リーナ、シエラがようやく終わったことを実感して打ち合わせを行なう。
さすがに50人規模で参加となると出てくるモンスターも多く、1ウェーブをクリアするのに1時間も掛かってしまった。
まあ、今回は連携を訓練したかったので時間を掛けてやったからな。
一応最速で攻略したければ10人から15人規模の2、3パーティで挑むとモンスターも少なくて良い感じ。さらにエリサの〈良い夢ごちそう様〉も使えばそれほど時間は掛からないぞ。
俺はみんなにドロップ回収を頼む。もちろん俺も参加するぞ。
「宝箱の回収だけは忘れてはいけないぞー! あとモンスターの素材も全部回収するんだ! そしてフィールドにいくつか設置してある〈
「いつの間にかダンジョンに〈
「凄く便利だけど、何これ非常識!」
ふっふっふ、サーシャとカグヤのツッコミが心地良い。
1層のモンスターがバトルフィールドに出てきている中、俺はこっそりバトルフィールドの端に
みんな拾った素材は最寄りの〈
本来なら採集とは違い、モンスタードロップというのは数を回収することが難しい。何しろ、モンスターを倒さないといけないからだ。1体倒して1個ドロップ。
それが大量に必要とか結構キツい。
しかし、ここなら参加人数が多ければ多いほどモンスタードロップも山のように出る。
モンスターも山のように出るけど……。わざわざ走ってエンカウントしに行くまでもなくどんどん襲いかかってくるので、俺たちは千切って投げるだけの簡単なお仕事です。(簡単ではありません)
つまりは、稼ぎ時。
大量のモンスター素材に俺はとても気分が良くなった。
1つも諦めることなんてできないね。全部回収するぞ!
そう思った瞬間、またズシーンと衝撃と音と揺れが俺たちを襲う。
1時間経って救済アイテムの効果が切れ、亀さんが動き出したのだ。
「ゼフィルス!」
「おう、まっかせろ!」
俺は素早く〈鎮静の秘薬〉を適当に前へぶん投げる。
こんな雑な方法で効くのだからこの亀さんは面白い。というか必ず亀さんの口の前に飛んでいく瓶が不思議!
そして目の前に落ちて来たアイテムを小瓶ごとバクンと食べてしまうのだ。
おかげで再び〈亀さん〉が大人しくなった。
「! 第二波、来ますわ!」
「インターバルは3分ってところね」
良いタイミングで第二波襲来。
ドロップはすでに回収済みだ。ニーコのおかげでドロップした〈金箱〉2個の中身は後で見せてもらうとして、まずはザコ敵を屠ることに集中する。
後はこれの繰り返しだ。
俺も厳しい時は遊撃で補助するが、基本的には指揮に徹し、連携力を高めてもらった。
「カルア、ミュー、2人だけで突出するな。サーシャとカグヤが全く追いつけてないぞ!」
「ん。速かった」
「カルア、カムバック」
あっちは4班だな。リカが中心となってメンバーを纏めている。
何しろ超速のカルアにハンターのミュー、そして侍のリカが本気を出して暴れると、後輩のサーシャとカグヤが全く追いつけないのだ。
特にカルアとミューは久しぶりのパーティ。さらにはリカも一緒なものだから、かなりテンションが上がっている模様。
そりゃ初見の1年生はなかなか追いつけないって。
「か、完全に私たちの行動が追いついてませんですの……」
「カンザシもモミジも追いつけないってカルア先輩どうなってるの~」
サーシャの氷は威力は高いが、直接攻撃しようとするとどうしても初動が遅い。
超速のカルアがぶった切ったり、ハンターのミューがターンと撃ち抜いたり、リカがズバンと神速の斬撃で切り捨てたりして、サーシャの攻撃が当たる頃にはなんか狙ってたモンスターが倒されている、ということが何度もあったのだ。
カグヤはヒーラーだが、召喚獣で援護もできる。しかし、最前線に突っ込んで避けタンクしながら切り結ぶカルアに全く追いつけていなかった。
――――ここは俺の出番だ。
「アドバイスを送ろう」
「ひゃ!? ゼフィルスさんが来たですの!」
「私たちのことを見てたの!? いつから!?」
「さあ、いつだろうなぁ」
なんちゃって。
このままだと切っ掛けを掴めそうになかったのでサーシャたちにアドバイスを送る。
今回の集団戦は新メンバーとレギュラーメンバーの初の合同攻略でもあるんだ、しっかり教えて、導いて、そして上級生との連携力も深めてもらいたい!
「サーシャはもっとアシストに力を注いでみな」
「アシスト……。つまりサポートですの?」
「そうだ。新メンバーだけの時は強力なアタッカーだったかもしれないが、2年生に自分よりも攻撃に優れる人がいたらそっちの人をメインにして、自分はサブアタッカー、もしくはサポートに回る。そんな風に役割を変えていくことも連携には重要だ」
サーシャは新メンバーの中ではアリスと並ぶ強力な魔法アタッカー。やはりダメージディーラーという自覚が強い模様だ。
クラリスが自在剣に移行して以降、カルアのようなスピードタイプはあまりおらず、ミジュとも組むことは少なかったサーシャにとって、超速の相手に合わせるということはあまり経験が無いことだったようだ。もちろんカグヤもだ。
だからまずは慣れからスタート。
「カルアの動きをよく見ろ。もちろんミューの動きもだ。どんな動きで敵を蹴散らして行くのか、それを見て勉強し、予測できればサーシャたちはもっと連携力が上がるだろう」
「確かに、ゼフィルスさんのおっしゃる通りですの」
「なるほど~。確かにヒーラーは相手に合わせることが重要だもんね。モンスターだけじゃなくて味方もよく見る。分かったよ!」
「それといつも使っている魔法だけじゃなく、なぜ他の魔法が
「! 最強育成論ですの!」
「確かに、特定の魔法しか使わなかったり、ワンパターンになってたかも!」
気が付いてくれたか。
そう。俺はちゃんと使える魔法しか
どういう理由で
そう説いてみたら、思いのほか早く成果が出始めることになる。
サーシャとカグヤはそれからもカルア、ミューの動きを観察し、何度かその動きの速さや、ミューの
いやぁ、吸収の早い子っていいねぇ。
今、後輩と一緒に連携を深めているって気がするよ俺!
俺も成長を実感してるぜ!
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