第1433話 特大夏祭り花火大会!一緒に見るのは誰になる?




 現在19時前、あと30分ほどで花火大会が開催される。

 もうほとんど日は沈み、やぐらと祭の明るさが学園を照らしていた。


 練習場付近は人がどんどん増え、大混雑になりつつあった。

〈秩序風紀委員会〉の腕章を着けた人たちが通路を整備し、屋台などを一時的に片して空間を確保している。〈ダン活〉だから出来ることだな。パナイぜ。


 おかげで少しずつ移動ができるようになり、俺とタバサ先生は無事花火大会に行くメンバーと合流出来た。


「あー! ゼフィルスがタバサ先生と手を繋いで、いえタバサ先生が抱きついてるわ!」


「…………タバサ先生、時間は終わりよ」


「え~。まだ少しだけ時間が残ってるはずよ?」


「も、もう19時! もう19時になりましたわ! これ以上くっつくのであれば協定に抵触しますわ!」


「あら? もうそんな時間なの? ……ごめんなさいねゼフィルスさん、もう離れないといけないみたいなの。とても残念だわ」


「とても残念です」


「ゼフィルス?」


「ゲフンゲフン! タバサ先生、今日は楽しかったです!」


「あら、タバサって呼び捨てで呼んでくれないの?」


「あれはお祭り限定ということでどうか1つ」


『直感』さんの警報がすんごい鳴ってる! おかしい、夏なのにブリザードのような寒気がするのは気のせいか? 俺のHPバリアが守ってくれない件!

 ラナとシエラとリーナ、それにアイギスとハンナまですっごい見てる!

 あとギルドメンバーもすっごい見ています。

 俺は冷や汗がバレないよう表情をキリッと引き締めた。


「いい? ここからは団体行動よ。ここから少し移動した先でセレスタンが場所を取っているわ。移動しましょう」


「お、おう!」


 シエラの言葉におとなしく付いていく。

 そう、花火大会は――ギルド〈エデン〉のみんなと見ることになっていた。

 女子の話し合いという名のブリーフィングで色々と何かがあったらしいが、結局話し合いでは誰か1人に決まんなかったんだって。

 それで最終的にギルドのみんなで行こうということで落ち着いたらしい。


 とはいえ、全員参加ではなくここに居るのは女子だけでも20人強。男子の姿は見当たらない。これ、俺参加していいの?

 ラナやシエラからメッセージにて「ゼフィルスは絶対参加よ。いいわね?」と再三にわたって言われているので参加します!

 女子の浴衣が25人! これに参加しないと言う男子は居ない。俺以外に男子の姿が見えないけどさ!


「えへへ~、ゼフィルス君、私たちの浴衣はどうかな~」


「ノエルもラクリッテも凄く可愛いな!」


「あ、ありがとうございます!」


「本当は明日見せるつもりだったけど~」


「こういう雰囲気でお披露目っていうのもいいよね~」


「ということでどうでしょう。私たちは?」


「サチもエミもユウカも凄く似合っている。可愛いぞ!」


「「「きゃー!」」」


 そして始まる浴衣の見せっこ!

 俺も素直な感想を告げていった。

 これ、水着の時と同じパターン!? 今回は俺が用意したわけじゃないのにいったいなぜ?

 ……細かいことはいいか! みんな凄く可愛い! パシャパシャ!


「ゼフィルス様、この聖戦のためスクショをお借りいたします」


「へ?」


 すると、一瞬で何者かの気配がやってきた瞬間、俺のスクショが奪われてしまう。

 んな! いったいなにが!? 『直感』さんが無反応だったんだけど!?

 だが、俺の疑問はすぐに氷解することになる。


「とう! ゼフィルスお兄様! ルルの浴衣はどうなのです?」


「ご主人様! 率直な褒め言葉を期待しているわ!」


「姉さま、それじゃあ褒め言葉が確定していますよ。もっとこう、ありのままの事実を答えてくださいとかにしておきましょう」


「それ褒め言葉を期待するなってことかなフィナちゃん!?」


「3人とも、とても凜々しいです!」パシャパシャ。


 ふう。ロリーズの浴衣はベリーでグッド。

 赤、紫、白が素晴らしい。


「ああ。もちろん3人とも可愛いさ!」


 俺は3人を褒め尽くした。まずはこちらが最優先。


「ゼフィルス殿、お借りしていたスクショ、お返しします」


「いや、借りてたというか今さっき勝手に持っていった気がするけどなシェリア」


 何気ない顔、否、とてもツヤツヤしたやり遂げた顔で俺にスクショを返してくるシェリア。

 ついさっき聖戦がどうとか言って俺が許可する前に持っていった犯人だ。

 とても充実した顔してやがるぜ。呼び方が殿に戻ってるし。

 データは残っているのでこれは後で見せてもらうとしよう。チェックだチェック!


 ちなみにアリスとキキョウはゼルレカと花火を見るらしくここには不参加だそうだ。む、無念。

 まあいい。それは明日のお楽しみだな!


「こんばんはゼフィルスさん」


「今年は私たちも一緒させてもらうよー」


「私たちの浴衣も見て行ってください」


 カタリナ、フラーミナ、ロゼッタも花火大会に参加のようだ。

 去年はリーナと回っていたが、途中でさよならしたんだったな。

 おかげであまりその格好の記憶が無かったが、今回は3人ともばっちし綺麗で可愛い浴衣を着ていた。カタリナは綺麗というか、大和撫子! さすがは【深窓の令嬢】だっただけあって浴衣がすごく似合う。

 フラーミナは可愛い系で、ロゼッタは凜々しい感じだ。


「じゃじゃーん、私たちの浴衣はどうでしょう~」


「ちょっと、ドキドキしますね」


「ごくり。……トモヨもマリアも良い浴衣だな。派手じゃないのに、風流を感じる。2人ともとても似合ってるぞ」


「やたー!」


「……なんだか今トモヨちゃんのところで言葉に詰まっていませんでしたか?」


「気のせいだ!」


 いや、ちょっと気を取られそうになったがなんとか気を逸らしたのでセーフなはず!

 トモヨは帯の位置がパネェんだよ。あまり見ないようにしなければ。


「ん?」


「お、カルアも浴衣にしたのか。おお! リカもいいじゃないか! というかすごく着こなしてるな!?」


「そ、そうか? なんだか照れるな」


 目を逸らした先にはカルアとリカがいた。

 カルア、動きにくいから浴衣はノーサンキューとか言ってたくせに、おそらくリカ辺りに着せられたのだろう。

 リカはさすがは侍少女。普段から和服装備なためか、とんでもなく着こなしていた。これもまた大迫力。


 もちろんみんな褒めまくったよ。そこに従者組のエステル、シズ、パメラを合わせてで女子は25人である。


 結構な数だ。

 なお、1年生組は他に用事があるということで別の場所で花火を見るとのことである。


「ここかしら?」


「お待ちしておりました」


「セレスタン、ご苦労様」


「いえ、これも僕が好きでやっていることですから」


 セレスタンが確保した場所というのは有料席だった。

 いったいいつの間に? そしてちゃんと27席確保してあった。

 女子25席と俺とセレスタンの分か。

 さ、さすがはセレスタンなんだぜ。


 丸テーブルに4つから5つの椅子が並べてあり、それが6箇所確保してある。

 こういう場所もあるんだな。そんなのんきなことを考えていたときだった。


「ゼフィルスはどこに座るのよ?」


 ラナのそんな一言でピリッと空気に静電気でも起きたような予感!

 え、なぜみんな俺に集中しているのかな?

 どこでもいいと思うんだよ。うん。


「じゃあ、ここに座ろう」


 俺は一番近くの椅子に座った。ここに座るしか無かった!


「私はここね」


「むむむ、外れてしまいました」


「わ、ゼフィルス君の隣だ!」


「ゼフィルス君が遠いよ~」


 すると女子も席に着き始める。

 あらかじめ、決まっていたのか?

 いったい俺の知らないところで何が!


 ちなみに俺の隣はハンナとシエラだった。

 その隣にはラナとリーナが座っている。


 タバサ先生とアイギスは一緒の席で、楽しそうにおしゃべりを開始していた。

 こっちの席でもおしゃべりが開始される。


「ねぇゼフィルス、今日は楽しかったかしら?」


「も、もちろんだ。どの時間もとても楽しかったな~」


 ラナに聞かれて俺は頷く。楽しかったことは間違いない。ちょっと疲れたけどな。

 ようやく一息吐けるぜ。そんなことを思っていたらラナがとんでもない爆弾を落っことす。


「誰との時間が一番楽しかったかしら?」


 瞬間、このテーブルのメンバーが一斉に俺に集中したのがわかったよ。

 お隣の席のタバサ先生とアイギスがなんか黙っちゃったもん。絶対聞かれてるって! 俺は気付かないフリをして極めて冷静に答えた。


「あ、ああ。みんな楽しかったなぁ。誰か1人というか、みんなそれぞれがそれぞれ楽しくて、気が付けばあっという間に時間が過ぎてしまったんだ」


「……そうなの」


 そう答えるとラナが照れていた。いやラナだけじゃ無くハンナやリーナも。

 シエラは一見クールに見えるが、あれは表に出てないだけだな。少し顔が赤くなっている気がするし。


 な、なんとか乗り切ったようだ。

 そう思っているとそこに救世主現る。もちろん執事姿のセレスタンだ。


「ジュースをお持ちいたしました」


「ありがとうセレスタン!」


 配膳! それは〈芳醇な100%リンゴジュース〉!

 セレスタンはよく分かっている! こういう時はこれを飲まないとな!

 おかげで空気がリセットされた予感!

 この隙に俺はお隣のハンナに振る。


「そ、そういえばハンナはあの後〈生徒会〉の仕事とか大丈夫だったか?」


「うん! 色んな人が手伝ってくれたし、思っていたよりも楽に終わったよ~。今年は〈エリクシール〉1万本作っちゃった~」


 なかなかハードに飛ばしてくるハンナ。

 去年は確か〈ハイポーション〉1万本の展示をしていたらしいので、グレードアップだな。

 さすがはハンナ、話題に衝撃インパクトを与えてくれる!

 空気が変わった予感がしたのでこのまま主導権を握る!


 俺が主導権を持っていれば問題は無い、このまま花火大会が始まるまで話題に花を咲かせるのだ!

 そうしてラナ、シエラ、リーナ、ハンナに順番に話題を提供していると、それは来た。

 ――校内放送。学園長の声が学園中に流れたのだ。


『これより花火大会が開催されるわい。みな、楽しんで――――』


「「「「おおおおおおーーーーーー!!」」」」


 おっとまたもや学園長が話している途中で盛り上がる広場。

 最初から人が多いので放送全く聞こえなーい!


 そして一通り盛り上がった後、ついにそれは始まった。


「あ!」


 パーンと一発目が夜空に花開く。

 その瞬間、騒がしかった広場が一瞬で静まりかえった。


 そのままドドドン、バンバン、ドバーンと打ち上がっては夜空を照らしていく光の花。

 最初から飛ばしていくぜと言わんばかりに次々打ち上がっては夜空が綺麗に色づいていく。

 その光景は、学生たちを圧倒させるには十分なもんだった。


「綺麗ね……」


「ああ」


 シエラを見れば、花火に照らされた横顔が! 花火を見ながらおだやかに微笑むシエラが凄く良い!

 これは正直花火よりも目が引かれます!

 いかんいかん。あまり見つめるのはよろしくない。


「わ! わ! 凄いよゼフィルス君、こんなの初めて見たよー!」


「ああ」


 俺は反対を向くとそこにはパァッと花が開くような笑顔で夜空を見つめるハンナが目に入った。ハンナはこれほどの規模の花火を見るのは初めてらしいな。大興奮の様子だ。

 うん。可愛い。これもいつまでも見ていられそうだ。


「こんな美しい花火を恋人と手を繋いで見たら最高よね~」


 おっと恋愛小説好きのラナがうっとりしながらボソッと呟いてた。

 残念ながら俺ではラナに手が届きそうにない。ちょっとテーブルが大きいのだ。


「目が離せないとはこのことですわね。綺麗ですわ~」


 リーナも花火を気に入ったらしく満足そうに見つめていた。

 夏祭り、初日最後の花火大会。

 キラキラ輝いては消える夜空の大輪。


 それを見ていると、隣から手を掴まれる感触がした。

 両方から。


 あれ? シエラ? ハンナ?


 チラッと横目で見ればシエラは少し顔を赤くしながら、何事も無かったように俺の手を握ってるし、ハンナの方を見ればこっちに振り向いて「えへへ」とはにかんだ。

 おっふ。2人とも可愛い。

 だが、なんとなくおしゃべりは厳禁な雰囲気。


 結局シエラとハンナに握られた手は、花火が終わるまでそのままだった。




 ―――――――――――――

 後書き!


 花火大会の参加者。

 ゼフィルス、ハンナ、シエラ、ラナ、エステル、カルア、リカ、シェリア、ルル、シズ、パメラ、リーナ、タバサ、アイギス、ノエル、ラクリッテ、サチ、エミ、ユウカ、カタリナ、フラーミナ、ロゼッタ、フィナ、エリサ、トモヨ、マリア。

 +セレスタンの27人。


 話し合いでは決まらなかったよ。



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