第1424話 〈エデン〉ついに全員五段階目ツリーになる!




 ノーアたちに続き、ついに新メンバー全員がLV30になった。

 五段階目ツリーの開放だ!


「やっと、戻ってきたよ~。なんだか長かったような、あっという間だったような?」


「トモヨ先輩は十分あっという間という言葉に当てはまるですの!」


「私たちも大概だけどね!」


 うむうむ。無事に五段階目ツリー開放までLVが戻ったことを感慨にふけるトモヨと、素晴らしいツッコミを入れるサーシャとカグヤ。


「これが、五段階目ツリー。四段階目ツリーでも十分強かったのに! 私、今本校に染まっちゃってるって感じるよ!」


「なに言ってるんだクイナダ。そんなので本校に染まっただなんて、まだまだ未熟者判定されるぞ」


「ええ……」


 クイナダがなんか本校に染まったとか勘違いしていたので正してあげた。

 クイナダには、いつまでも染まらないでいてほしいんだ。(願望)


「タンクとしての【破壊王】もようやく慣れてきたと思ったら、さらなる試練が訪れた気がするっす!」


「上等。拳で分からせれば良い」


「ミジュ、それを言うなら乗り越えるですよ。分からせてどうするのですか」


 ナキキとミジュも何気にテンションが高い。結構乗ってきているな。

 シュミネは、見た目普通に見える。自制の精神力が強ぇな!

 俺なら間違いなくはっちゃけてるぞ。


「よし、目的のレベル上げはこれにて完了だ! みんなお疲れ様! 後は〈島ダン〉と〈夜ダン〉の最奥ボスを攻略するだけだな!」


「ゼフィルス様がまたなにかさらっと言っていますね」


「今なら最奥のボスにも負ける気がしませんわ!」


「上等です! いつでも行けますゼフィルス先輩!」


 クラリスの視線が突き刺さるがマッサージのようで気持ちいい。きっとサービスだな。

 ノーアとアルテも気合い十分。

 時間的にはそろそろ帰還を検討するころだが、まあいい。

 今のノリで我慢は毒! このまま〈夜ダン〉の最奥ボスまで撃破してしまおう!


「その意気や良し、これから〈夜ダン〉の最奥ボスに行くぞー!」


「「「「おおー!」」」」


 俺たちは五段階目ツリー開放の勢いのまま、〈夜ダン〉の最奥のボス部屋に突入した!


 最奥ボスは永眠に誘う闇夜の幽霊。

 ―――その名は〈リッチデブブ〉。


 のはずが、なんとここで予想外発生。レアボスが登場してしまったのだ。


「あれはなんっすか!?」


「いきなりレアボスですか!?」


〈夜ダン〉のレアボスは闇夜の王――〈キングリッチ〉。


〈ダークリッチ〉よりも進化を重ねた強力なボスだ。

 しかし所詮は後衛、その耐久性などはレアボスの中でもかなり低い方だ。

 だがその代わり、レアボスでは非常に珍しいことに眷属召喚を大量にしてくる。

 眷属のスケルトンや幽霊ゴーストを大量に召喚しけしかけてきながら、自分は『リッチ特性』を使って空中から闇の魔法をふらせまくるという強敵だ。


 まあ、メルトの重力や、フィナの『天落』などで叩き落として総攻撃すれば良いので、対策はいくらでもある。

 

 キキョウを連れてきておいて良かったぜ。

 最初は俺、キキョウ、ナキキ、ミジュ、シュミネのメンバーで挑んでいたため、〈キングリッチ〉は……まあご愁傷様と言うほかない。


「カタカタカタカタカタカ…………カ?」


 カタカタ笑ってたリッチが俺たちを見てなぜか首を傾げていたのが印象的だった。震えているようにも見える。まだ何もしてないよ? ほんとほんと。

〈ダークリッチ〉をまるで追い剥ぎのように身ぐるみ宝箱を剥いだのを覚えているのだろうか? いや、きっと気のせいだろう。

 攻撃開始!


「全て破壊するっすよー! 『幽霊は皆クラッシャー』っす!」


「それハンマーでできる域を超えてる!?」


 それは幽霊特効。幽霊特性があるなら、特効があっても良いじゃない。【破壊王】は幽霊すらも破壊する! 特性を無効にしてさらに特効ダメージを与えるという〈聖属性〉のハンマー系攻撃。

 もちろん幽霊だけでなくアンデッド系全てに有効で、ハンマーを両手で持って回転しながら眷属を蹴散らしているナキキはとてもロマンがあった。


「カタカタカタ!」


「無駄です。『聖域に立つ惑いの双子樹』!」


〈キングリッチ〉が魔法攻撃でナキキを狙うが、そこにシュミネが割り込んだ。

 シュミネの声にズゾーンと立つのは2本の樹木。しかしただの樹木ではない、迷いの森に出現するような惑いの樹木だ。

 その効果は遠距離攻撃を歪ませるという防御の魔法。


 これにより〈キングリッチ〉の攻撃は方向がズレ、ナキキに当たらずに地面に着弾してしまう。魔法使いの天敵とも言っていいスキルだな。まあ、格の高い強力な魔法や範囲攻撃などには対応しきれなかったりするので、六段階目ツリーやユニークスキルで一掃するのが手だが、当然〈キングリッチ〉にはそんな手は無い。

 スケルトンなどの物量で破壊するしかないな。


 だが、そっちに気を取られているうちにキキョウとミジュが動いてる。

 俺は軽い調子で指示を出すのだ。


「お、あれは『リッチ特性』に違いない。キキョウ」


「……え、また『リッチ特性』ですか? 本当にこんなに楽で良いんでしょうか……『羨ましいからそれ禁止』!」


「アア!?」


 うむ。やっぱりぶっ刺さるわ。強いわ【嫉妬】のユニークスキル。

 特に戦法の要になっているスキルや魔法を封じられるとね、もう厳しいんだ。

 キキョウの戸惑い気味の声は分からんでもない。でも良いのだ!


『リッチ特性』が禁止されてしまったことで『浮遊』も封じられてしまった〈キングリッチ〉が情けない声で落下したところには、当然ミジュがいる。


「吹き飛ぶ――『ヴィクトリーバスター』!」


 シンプルに強い『バスター』系の拳。

 クリティカルヒットすれば、相手をぶっ飛ばす効果がある。


「――!」


 ズドンと衝撃。声も出せず一瞬で〈キングリッチ〉が吹っ飛び、なぜか俺の方に来たので俺もぶった斬る。


「『聖剣』!」


「―――――!?」


 ズッバン!! 大ダメージ!!

 いいね! 〈聖属性〉の一撃が決まり、ズドンという衝撃が駆け抜けて、一時停止。そこに『フィニッシュ・セイバー』を叩き込めば、そのままバタリと倒れる〈キングリッチ〉。ダウンだ! しかし容赦はしない。


「総攻撃だーー!」


「「「おおー!」」」


 第一形態、苦もなく終了。

 しかも、それが第二形態、第三形態と続くことになったのだからさあ大変。


 結局、〈ダークリッチ〉戦でメンバー全員がリッチ系を相手に慣れていたこともあり、さほど苦労することはなくレアボス〈キングリッチ〉を倒すことに成功してしまうのだった。


「勢いにのって上級ダンジョンのレアボス撃破!? 私、やっぱり本校にはまだ染まってないかも」


 うむうむ。クイナダはいつまでもそのままでいてくれ。


 宝箱は〈金箱〉2つ! 

 素晴らしい。


 中身はなんと〈笛〉と、〈リッチの書〉という換金アイテムだった。

 レアボスを呼ぶ笛大当たりーー! さっきの〈フルート〉といい、今日は笛系がよく当たるな!


 もう1つは〈リッチの書〉。武器かと思いきや、なんとアイテム。

 お金持ちになる方法が100通りも書かれているとかいう怪しい換金アイテムだった。本には「これで君も今日からリッチの仲間入り」と書かれている。

 怪しい匂いがプンプンだった。それ幽霊の方のリッチじゃないよね?


 でもゲーム〈ダン活〉時代、これは凄まじく高値で売れたのだ。何しろ、レアボス級の換金アイテムだからな。まさに一瞬でリッチ金持ち(物理)になるアイテム。

 でもリアルだと売れる気がしないのはなぜだろう?


「なんですかこの怪しい本は。ゼフィルス先輩、こんなもの読んではいけません。おまわりさんに渡しましょう」


「おまわりさんが呪われそうだからやめておこうか」


 ということでとりあえず持ち帰ることにした。

 これマジでどうしようかね。ニーコのお土産にするか?


 なお、その後も無事1年生たちは全員で最奥を突破し、〈夜ダン〉の攻略者になったのだった。




 翌日は〈島ダン〉。

 56層に出る徘徊型〈音速ロック鳥〉をヴァンの〈五ツリ〉防御スキル『輝け、我が軍防城ぐんぼうじょう』で受け止め、その後は飛べないようにアリスの『ぐるぐるスパーク』や、サーシャの『アイススパイクバインド』で〈拘束〉して撃破するというセオリーで戦ったのだが、今回はうっかり空に逃げられる事態が発生。


 クラリスの『零千』に乗り込んで空中戦という体験までしてしまった。

 楽しかったなぁ。

『零千』は剣の上なので乗っていると継続ダメージを受けるのだが、乗れてしまうのだ。


 魔法使いのアリスとサーシャが頑張り、相手の〈雷耐性〉を極限まで下げる〈五ツリ〉デバフ『あなたはこれからホネになる』と、相手の〈氷耐性〉を極限まで下げる〈五ツリ〉デバフ『あなたは寒さに弱くなる』を使ったのち、ガッツンガッツン雷属性魔法と氷属性魔法で攻撃しまくって、無事撃破したのだった。


 徘徊型を撃破した勢いで最奥ボス〈炎帝鳳凰〉も問題無く撃破して、1年生たちはみな〈島ダン〉の攻略者の証もゲットできたのだった。

 お伽話でしか出てこない〈炎帝鳳凰〉を見た1年生たちは、すでに情報を知っていたからか、リアクションが2年生より薄かった。でもギャップに戸惑う姿が見れたので満足だ。


 そしてそれが終わった時、もう夏休みも終わりに近づいていた。

 夏祭りが始まる。



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