第1406話 雲海へ突入! そこにはレアイベント部屋が!
「〈クマエンジェル〉のドロップは――〈金箱〉!」
「ん、〈金箱〉、バンザイ!」
「たはは~初ボスの〈金箱〉率高!」
「俺たちにはラナ殿下が付いているからな」
「だが、いきなり上級中位ダンジョンで〈金箱〉がドロップする感覚は未だにちょっとびっくりする」
「それは……分かる」
俺とカルアとミサトが〈金箱〉を囲って盛り上がっていると、メルトとリカが何やら苦笑していた。すぐに満面の笑みにしてあげよう。
「では、お祈りを開始する!」
「ラジャ」
「カルアは〈金箱〉の前に座らなくてよろしい!」
ダンジョン最初の〈金箱〉を開けるのはギルドマスターと決まってる!
なのに普通にお祈りするカルアよ。リカ、カルアの回収をよろしく!
「では――〈幸猫様〉〈仔猫様〉! いつも〈金箱〉ありがとうございます! 良いものお願いします!」
お祈りが終わったところでみんなが集まって来たので――いざ、オープン!
「なになに?」
ラナを始めみんなが顔を覗かせて中身を確認する。
出てきたのは――神々しく光る、何かの枝だった。
「何これ?」
「枝、ですわね。木の実が付いていますわ」
「精霊樹関係でしょうか? シェリアはわかりますか?」
「いえ、聖なるものというのは感じますが。〈精霊樹〉では無いようです」
「では鑑定してみますね――『解析』!」
それはリーナが言ったように枝。それも梅くらいの大きさの光る実がいくつかくっついていた。
エステルの言葉にシェリアが見てみるが、どうやら精霊を見ることができるシェリアでも分からない模様。
まあそれもそのはずだ。
「出ました。……これは!」
「何エステル! これってどんな効果なの!?」
解析結果に目を見開くエステルにラナが急かすと、エステルがこほんと言って少し冷静になり、説明してくれる。
「これは、テイム用アイテムのようです。名称は〈ゴートの実〉。このダンジョンの聖獣が大好きな木の実を付けており、これを与えるほどテイム成功率が上がるとのことです。ちなみに消耗品で6回まで使えるようですね」
「へ? 〈金箱〉なのに、消費アイテムなの!?」
エステルの報告にざわめく。
そう、これはテイム成功率を高めるアイテムだ。
以前〈匠の猫じゃらし〉でネコモンスターのテイム成功率を上げたことがあったが、まさにあれの聖獣版だ。
これは聖獣をテイムしてくれと言っているに違いない!
回数は6回まで。なお、回数回復は可能なので永続的に使えるぞ!
しかし名前のセンスが相変わらずだ。
ゴートとはヤギ。ヤギは悪魔の意味を持つ。
聖域の侵入者である俺たちは悪魔の様だ。いいだろう。
みんなの視線は自然とフラーミナの方へ注がれる。
「これはフラーミナが持っていてくれ」
「へ、私!?」
「今テイムできるのがフラーミナしかいないからな」
「はい。私は竜専門ですし」
「アルテの分もテイムしてあげたら、喜ぶかもしれないなぁ」
「喜ぶかもって、後輩になんてものをプレゼントしようとしているのかなゼフィルス君!?」
え? 聖獣だけど?
まずアイギスは竜以外は補正が働かないのでフラーミナ一択。
他にテイムできると言えばアルテだ。実はアルテには将来的に聖獣を与えたかった。ならお持ち帰りして譲渡してもなんの問題もないな!
「というかここって聖獣が出るの?」
「さっきのボスが聖獣、ということでしょうか?」
「いえ、あれは種族が天使となっていました。いました……ごめんなさい、ちょっと自信が無くなってきました」
「だ、大丈夫だエステル。あれは天使族だ。天使の翼が生えていたからな!」
みんなの勘違いが始まる前に正しておかなければ。
あれはエンジェル。クマの見た目の天使。いいね? オーケー。
「聖獣か~。でもちょっと欲しいかも……」
「おう。フラーミナが欲しそうな個体がいたらそれでテイムしような」
「うん! 楽しみだよ!」
最終的にフラーミナは〈ゴートの実〉を受け取っていたよ。
聖獣が出てくるのは後半、31層から。
できれば、奥地に住む強力なモンスターをゲットしたいところだな!
さてショートカット転移陣を登録したら出発だ。
また声を小さくしないとな。
6層では初のエリアボスに遭遇した。
その名は〈聖域自生・パックンバックン〉。
ハエトリソウのような大量の口を持つ、〈マンイーター〉系列のモンスターだ。
おい、聖域にこんなの居て良いの!?
むしろ聖域だからオーケーです。
人は入っちゃいけない場所ってことなんだね。自衛システムかな?
これはラナたちのパーティがぶっ飛ばしてた。
さっきのボス戦からうずうずしてたのでやらせたら、楽勝だったよ。さすがだ。
問題は、エリアボス戦は守護型ボス戦とは違い、通常モンスターが普通入って来れない守護フィールドではなく、普通の場所で戦うことになるということだ。
つまり音で他のモンスターを呼び寄せてしまう。わらわら来たよ。
モンスター避けアイテムである〈モンスターケムリン〉も使ってみたのだが、一定の効果はあるものの、完全に防げるというものではなく、結構な数のモンスターが襲ってきた。これは目視ではなく音で寄ってきているからだろう。
もちろん全部撃退したけどな。周りの敵は全て俺たちに任せておけ!
「よし、ドロップの回収が終わったら〈イブキ〉に乗り込め! 巻くぞ!」
「うん!」
慌ただしく離脱。
襲い来る天使たちの包囲を突き破ってやったぜ!
なおカイリの『ミュート』は使わない。なんかこっちの方が楽しいから。
包囲を脱出ってなんかこういうの、スカッとして良い感じだ! 気持ちいい!
やっぱ〈イブキ〉は反則的強さなんだぜ。
そんなことを思いながら翌日、15層まで進むと俺は過敏に反応して見せた。
「みんな、なんかすげぇ『直感』にビンビン来るところがあるんだ! 行ってみようぜ!」
「え? なになに! なにがあるの!?」
「それを行って確かめるんだよ!」
「またゼフィルスのいつものあれね」
「何かとんでもないものがあったりするんですよね」
俺のいつもの戦法、〈『直感』さんが訴えてくるんだ作戦〉でみんなを誘導。
食いつきの良いラナとは違い、若干シエラがまるで俺を疑っているかのようなジト目を見せてきたが、これは気のせいに違いない。エステルも苦笑しつつも俺に聞く。
「ゼフィルス殿、それはどこでしょう?」
「あっちの方角だ! 距離は結構離れている」
「承知しました。では行ってみましょう」
「頼む」
エステルの運転で目的地へ向かうことに成功する。
このフィールドは広大で静か。
しかし、橋の上か島の頂点にしか進入はできないので、実はさほど大きくはない。
リーナたちが〈竜の箱庭〉で確認すると、階層門のありそうな箇所が大体分かる。階層門は島にしかないからな。
それを外れ、島の無い道しかない場所へ向かい進む。すると、それは見えてきた。
「? あれって雲海?」
「ちょっと待って。この道、雲海に突っ込んでるんだけど!」
「あれはトンネルでしょうか? 〈竜の箱庭〉では分かりませんでしたわ」
「あそこだ」
そう、そこは摩訶不思議。
道が下り坂となっていて下へ、つまり雲海へ向かっているルートがあったのだ。
そして雲海が波打つ時にちらちらとトンネルのような建造物の姿が見えた。
あれが隠し部屋へ通じる隠し
1度確認のために斥候系メンバーズが〈イブキ〉を降りて調査する。
「本当にただのトンネルのようですわ。危険はありませんわね。モンスターの反応もありませんわ」
「ん。全部確認した」
「では、みなさん、御掴まりください。行ってみます」
危険はないと知ったら即突入。
雲海の中にあるトンネルは一本道。そしてその先には、巨大な白亜の石の扉が待ち構えていた。
実はここ、レアイベントの場所なんだよ。
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