第三十一章 夏祭りと新メンバー合流合同攻略編!

第1401話 夏休みも後半に突入!どこ攻略しよっかな~!




 夏休みも後半に突入した。


〈食ダン〉に〈海ダン〉合宿とはしゃぎ遊びまくり、慰安と英気を養って絶好調の〈エデン〉は、続いてもうちょっとランクの高い上級中位ジョーチューの攻略を目指すことに決めた。


「ねぇねぇゼフィルス君、次はどこに行くの?」


「そこが問題だなぁ。〈守氷ダン〉を攻略したし、夏休みの残り時間を考えると1つか、頑張れば2つくらい攻略出来そうなんだが、選定が問題だな」


「2つも攻略する気なんだ……。あ、これコーヒーね」


「サンキューハンナ!」


 現在、朝の俺の寮部屋。

 夏休みでもいつもどおり、ハンナから美味しい朝ご飯をいただき、その後でまったりしているところだ。

 ハンナはいつも俺に癒やしをくれる。


 昨日〈海ダン〉から帰ったばかりだが、昨日は「遊び倒したなー」と思ったのに今日もダンジョンに行きたくなる不思議。きっと身体が回復したからだろう。

 すぐにでもダンジョンに遊びに行きたくなってしまうんだよ。でも、そんな欲求がハンナに溶かされていくのを感じる。


「はぁ、美味い。ハンナって突然コーヒー入れ始めたよな」


 そう言って俺が見るのはハンナが持って来たコーヒーメーカーだ。

 正直、買ってきたものよりもだいぶ美味しくなってる。


「うん! 〈食ダン〉で美味しい高級豆がたくさん手に入ったんだもん。色々やってみたいしね」


 ハンナが俺の部屋にコーヒーメーカーを持って来たのは今言ったとおり、〈食ダン〉で珈琲豆を大量ゲットしたからだ。

 去年はほとんど肉が目当てで最奥まで直行したが、今年は観光と色んな食材探しの旅で階層を回ったからな。その時高級な珈琲豆も手に入れていたのだが、せっかくだから使おうよと言ってハンナがコーヒーメーカーを持って来たのだ。


 ちなみに珈琲豆をってくれたのはハンナと同じ〈生徒会〉に所属する生産副隊長、上級職【マスターシェフ】に就く、ミリアス先輩らしい。

 さすがはハンナ生産隊長、部下に自分たちが飲む珈琲を豆を煎るところから作らせるとは、やるようになったなハンナ!


 冗談だ。ちゃんとハンナが依頼して作ってもらったので依頼料も払ってるよ。安心してほしい。


 しかし、そうまでして珈琲にチャレンジとは、ハンナには頭が下がる思いだ。

 いつの間にか俺の好みの砂糖の割合まで知られてしまっている。

 作る時に「加糖かとうにする?」とか聞かれて頷くと、俺の好みバッチリの甘さの珈琲が出てくるようになったんだ。マジみんながハンナを様付けで呼ぶのが分かる。俺もちょっとハンナ様って言いたくなったもん。


 今度また何かお礼を考えよう。


「それでゼフィルス君。次のダンジョンはどこ行くの?」


「おっとそうだった。ハンナの珈琲があまりに美味くて意識を持っていかれてしまった」


「も、もうゼフィルス君ったら、嬉しいこと言っちゃって。おかわりいる?」


「是非!」


 こうして意識が持っていかれるわけだ。

 ヤバい。ダンジョンより珈琲を優先している自分がいてとてもヤバい。

 これがハンナ様の力だ。


「こほん。えっと上級中位ジョーチューの話だったな。今考えているのは、ランク4だ。だが、ランク7以上も捨てがたいと思ってる」


「あれ? ランク3は?」


「あそこは、できれば今は行きたくないな~。もっとレベルを上げて、余裕が出たら脇目も振らずに真っ直ぐ攻略だけして即終わらせたい」


「ゼ、ゼフィルス君がそんなこと言うなんて珍しいね。どんなダンジョンなの?」


「ああ。上級中位ジョーチューランク3は毒沼と墓地がそこら中に蔓延り、アンデッド系モンスターが主に徘徊する、その名も〈毒沼の墓場ダンジョン〉だ」


「うわ。シエラさんが嫌がりそう」


「そうなんだよ」


 何しろ〈守氷ダン〉を攻略している際、お隣のダンジョンの表札ひょうさつを見たシエラが無言で顔を青くしてたからな。無表情ポーカーフェイスで他のメンバーの目を誤魔化そうとしていたが、普通に誤魔化せていなかったよ。

 この前の〈夜のモンスターハント〉でもすごく口数が少なかったんだもん。


 名を体で表すが如く、文字通り幽霊やスケルトンが大量に出てくるダンジョンだ。あとポイズン地帯なので余計におどろおどろしい雰囲気のあるダンジョンである。

 シエラだけじゃなく、女子には不人気間違いなしのダンジョンだな。

 とはいえ、上級上位ダンジョンへ上がるために無理に攻略する必要は無い。


 上級上位ダンジョンの解放条件は上級中位ダンジョンの時と変わらず、〈上級中位ダンジョンのランク1~ランク3のうち2つ攻略、ランク4~ランク6のうち2つ攻略、ランク7以上のうち1つ攻略〉だからだ。

 すでにランク1〈謎ダン〉と、ランク2〈守氷ダン〉を攻略しているため、〈毒沼ダン〉は無理して攻略しなくても問題無い。〈六ツリ〉開放して余裕が出来てから来てもいいしな。


「えっと、それじゃあランク7以上に行きたいのはどうしてなの?」


「良い質問だ。まず装備を更新したい。全員分のな」


「この前新メンバー組の装備を一新したばかりなのに!?」


「おうよ。今度はレギュラー組の装備を一新したい。上級上位ダンジョンを攻略するには、やはり上級上位ダンジョンに近いレベルの防具がいる!」


「や、やっぱり上級上位ダンジョンも攻略しちゃう気なんだねゼフィルス君」


「もちろんだぜ! そのためにシエラやシャロン、メルトの装備なんかはすでに作製依頼済みだ。ハンナも真素材の作製、いつも助かってる!」


「えへへ~」


 シエラたちの装備完成も近いらしい。昨日マリー先輩とアルルに聞いた。


 だが、ぶっちゃけると生産職の〈六ツリ〉の力を使うと、装備ってマジ別ものレベルまで能力値が上がる。さっさと上級上位ダンジョンまで行って〈六ツリ〉を開放できる素材をわんさか持って帰ってきたいところなんだが、このまま上級上位ダンジョンに行っても装備の能力不足で満足に進めないだろう。だから、上級上位ダンジョンに行く前に一度装備を一新したいところなんだよ。


 しかし、上級中位ダンジョンのランク6以下の装備だと、上級上位ダンジョンの〈六ツリ〉レベルで攻略するランク4以上でスペック的にやや厳しくなってしまう。

 まあ、その都度装備を更新させながら進めば良いだけなんだが、それだとリアル的に使用感にムラというか、使い勝手にブレができてあまりよろしくない。

 装備をコロコロ変えると体にしっくりこないんだよ。


 これはマジリアル効果で、俺は1年生の頃割と武器をコロコロ変えながら攻略した時期もあったが、最終的に〈天空の剣〉一択になっちゃってたからな。

 それくらい武器がコロコロ変わるとしっくりこない。

 なのでメンバーの装備の更新も最低限にしておきたい考えだ。


「ちなみに、ランク7以上って何があるの? 勝てるの?」


「今のメンバーの装備ならイケるな。ランク9までだったら多少は苦戦するだろうが、攻略はできるはずだ」


 だからこそ迷っている。

 ただ、ランク7以上に挑むのであれば、それだけで夏休みが終わることを覚悟しなくてはならない。つまり今すぐ行動しなくちゃいけないし、あまり余裕は無い。

 ランク4を攻略するだけなら、まだ夏休みを多少残すこともできるだろう。つまり余裕がある。


「それと、モンスターをテイムするのにも非常に魅力的な場所だ。まずランク7だが、これは今までもあった、ウルフ系が多く跋扈し、ウルフの連携力と数で挑戦者を苦しめる。その名は――〈大狼おおおおかみ深森ふかもりダンジョン〉」


 初級中位ショッチュー中級中位チュウチュウで登場し、ついに上級中位ジョーチューでも登場するウルフ系専用ダンジョン。中位に分類されるダンジョンの後半で主に登場し、プレイヤーを幾度となく苦しめた。難易度高めなダンジョンだ。


「続いてはランク8。ここがある意味一番恐ろしいダンジョンだ」


 ゴクリ。

 そんな音がハンナから聞こえた気がした。


「その名も――〈禁足の大猫ダンジョン〉。通称〈猫猫ダン〉。間違って足を踏み込めば最後。君は猫まみれになる」


「…………ん?」


 そしてハンナは混乱した。


「えっと? それは恐ろしいの?」


「もちろんだ。あのソロで活動する強力なモンスターである猫が集団で襲ってくるんだぞ!? その強さは計りしれず。何人もの猛者が猫の津波に呑まれては抜け出せなくなったんだ」


「えっと、誰も挑戦してないよね? 学園公式ギルドでもみんな戻ってきてるって聞くよ?」


「……そういえばそうだったな」


 まあ飲み込まれたのは向こうの人だから。

 わざわざ禁足地に飛び込んで猫まみれになって抜け出せなくなる人が多発したんだ。俺も一度試したが、あれは忘れられない。ついもう一度危険をおかしたくなってしまうんだよ。そうやって何度も通う人を抜け出せなくなった人と呼んでいたんだ。


 これは……リアルで食らうとどうなるかわからない。慎重にいかなくては。


「こほん。そして最後のランク9だが、ここは〈亜竜〉が登場するようになる〈爬翔ハショウの火山ダンジョン〉だ。上級下位ジョーカーにも登場した〈火口ダン〉のチェーンダンジョンと言われている」


「あれ? なんかそこが一番凄そうなのに、ゼフィルス君の反応が薄いよ!? 凄そうな情報がさらっと出てたよ!?」


「うむ」


 まあ、〈亜竜〉は強いよほんと。癒やしなんて欠片も無いレベルで凶暴な種類が多いもん。ここも行ってはみたいけど、俺が一番行きたいのは〈猫猫ダン〉だったりする。


「うーん難しい。ランク7以上のダンジョンに行くか、それともランク4のダンジョンを攻略してしまうか」


「ゼフィルス君の中では攻略することはすでに決定なんだね。とりあえず、気をつけてよ?」


「おう。任せとけ!」


 ハンナの心配を受け止め、ちょっと気分が上がった。

 そのまま悩みつつも結局は決められずにハンナとまったりと過ごし、俺たちはギルドハウスへと向かったのだった。


 よし、シエラに相談してみよう!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る