第1396話 夜の肝試し――〈ゴーストシップ島〉現る!




「今年もやって来たぜ――〈夜のモンスターハント〉の時間だーー!」


「…………ねぇゼフィルス。ここって去年のところと違わないかしら?」


 シエラの言うとおり、俺たちの目の前には去年の〈幽霊船ゴーストシップ〉が、否、もっと巨大なむしろ一種の島レベルの物体が存在していた。


「もちろんだシエラ! 今年はボリュームアップ! ここは去年〈幽霊船長〉を撃破したときのドロップ品〈航海日誌〉を加工して作った〈幽霊船長の隠し財宝の地図〉、通称〈幽霊海図ゴーストマップ〉に描かれていた、お宝満載の特別な船、その名も〈幽霊船ゴーストシップ島〉だ!」


 俺はそう言って財宝の地図をペラリと見せる。シエラがとってもジト目だ!


 シエラからの許可という黄金の切符を手にした俺は無敵だ。

 1年間シエラにバレないよう隠してた地図すらオープンにしてしまうレベルでテンション上がりまくっている!

 そう、ここが本日最後のイベント会場だ。


「ふへ~。ゼフィルス君、ここ去年よりもすっごく大きいね~」


「これは、一種の島じゃないか? 海を漂う島、か?」


「メルトご明察。こいつはな、この地図が無いと発見できない移動する島みたいなものなんだ。というかこの地図を持ってるとなぜか寄ってくるというのが正解だな。これを出現させるにはこの地図を入手して夜の〈海ダン〉に一定時間留まることが条件となる」


「そんな話聞いたことないぞ?」


 ふっふっふ。知らないのも無理はない。

 だってこの〈航海日誌〉を加工するには上級生産職、【マスター・アイテム】の力が必要だからな。ソフィ先輩、ありがとうございます!


 俺たちの前に現れたのは移動する島船、とでも形容すればいいか。

 普通船は楕円のような形をしているが、これは完全に円盤だ。

 俯瞰して見ると丸である。

 故に船というより島みたいに見える。まあ〈幽霊船ゴーストシップ〉の一種なんだけどな。木製だし。あとボロボロだ。


 初めて見たメンバーたちがざわざわしている。


「〈夜のモンスターハント〉って、なぜわざわざ夜行くのかと思いましたが、やっぱりこれ肝試しですよね!?」


「さ、さすがはゼフィルス先輩だよ!」


「な、なんか聞き捨てならないような言葉が聞こえた気がしますの! ここ、もしかしなくても未発見のフィールドじゃないですの!?」


 アルテが声を上げてカグヤに抱きつくと、カグヤは楽しそうにそれに頷き、サーシャはなぜか戦慄していた。そんな変なところじゃないよ?

 上級の生産職で加工しなくちゃ見つからない船なのに、ここは中級中位チュウチュウ級のダンジョンなので、難易度もダンジョン中級中位に合わせているのだ。

 だからこそ水着でも攻略ができる。


「こ、この格好で攻略はちょっと恥ずかしいですね」


「アイギスさん、そんなこと言ってる暇はありませんよ」


「そうだよアイギス姉さま。ここぞという場所だよ? ここでやらないでいつやるの!」


「そうよ! 肝試し、どさくさに紛れて水着でご主人様に抱きつけば、もうイチコロに違いないわ!」


「吊り橋効果も期待できますね」


 アイギス、リーナ、アルテ、エリサ、フィナが集まって何やら相談しているな。相談内容は聞こえないのに『直感』さんが反応しているせいでちょっと気になる。何を話しているのかね?


「ねえゼフィルス。本当に水着で戦うの?」


「もちろんだ! そのために水着もボス素材で作ってある優れものだからな!」


「無駄に優秀な装備ですね」


 シエラとシズは水着に武器という出で立ち。グッド! 抜群にグッド!

 俺はこれが見たかった! いや、まだこれを言うのは早い。水着の戦闘シーンを見るのはこれからだ!


「水着で戦闘するなんてなんだか新鮮ね! 私は構わないわ。でもゼフィルス、一緒に行ってもいいかしら?」


 おっとここでラナのお誘い! ラナは水着肝試しに抵抗は無いようだが、去年の優勝者である俺を加えて今年こそ1位を狙う気だな?

 だが、残念ながら俺は今回運営に回る予定なのだ。ということで待ってもらうよう説得し、まずはルール説明に入る。


「ではこれより肝試し――じゃなかった。〈夜のモンスターハント〉を始めるぞー! ルールを説明するー!」


「「「「わー!」」」」


「ああ、やっぱり今年もやるんだね」


「ニコちゃんファイト!」


「もう肝試しって隠す気ないわね?」


 俺の宣言で歓声が生まれる。一部ニーコやシエラの声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。


「まずは5人パーティを組んでもらう! 集まらなければ組み合わせはこっちで決めるぞ。あと今回は戦闘職以外のメンバーは見学も可とする! ちょっと戦闘できないメンバーも多いからな」


「! ではぼくも――」


「ニーコは戦闘職だから参加決定だ!」


「ぼくは支援職なんだが!?」


 ニーコの職業ジョブは【トレジャーハンター】。ここで参加しないでどうする! ということで戦闘職としておこう。うむ。


「これで戦闘メンバーが44人。カイリとハンナはどうする?」


「もちろん行くよ!」


「私も参加したいなぁ」


「もちろんオーケーだ!」


「生産職のハンナさんが自然に参加していますわ!?」


「淀みの無い参加だったです!? あとなぜかゼフィルスさんが名指しで聞いてます!?」


 ハンナの参加を聞いてアルストリアさんとシレイアさんがびっくりしていた。

 うむ。ハンナは戦闘職じゃないはずなんだが、ハンナは戦闘職なんだ。(矛盾むじゅん


 結局参加者は46人。

〈アークアルカディア〉のメンバーは1人も手を上げなかったな。みんなお留守番よろしくな!

 なお、約1名ニーコは強制参加だ。


「ルールは簡単、この〈幽霊船島〉を探索し、立ちはだかるモンスターを蹴散らし、宝箱の中身を取ってくること! 地図には財宝とあるからな、たくさんの宝箱があることが予想されるぞ。ということで、今回は1個まで制限ではなく、無制限。そして去年と同じくモンスターの撃破数も競うから素材もちゃんと拾ってきてくれよ! 最終的にゲットしてきた財宝と素材をポイントで評価し、合計点を競う方式だ! 出発も同時。ちなみに俺は運営側に回ってみんなを見守る予定だ!」


「な、あのゼフィルスがこんな面白そうなゲームに参加しないというの!?」


 おいラナ? 俺が運営側に回ると言った衝撃があまりにも強かったのか言葉使いが微妙に乱れているぞ?


「人数が人数だしな。それに、フィールドも結構大きい。運営側の設置が必要だろう?」


「なぬ!? ならばぼくも運営側に!」


「ニーコ。ここはたくさんの財宝が隠されているそうよ。それを誰よりも先に見つけたくはない?」


「そ、それを言われると厳しい! ぼくはチームの方に参加するよ!」


「シ、シエラ? あなたまさか」


「ごめんなさいねラナ殿下。私は運営側に回ることにしたの」


「そ、そんなのダメよ! シエラは私たちと班を組みなさい!」


「わー、シエラさんとラナ殿下の戦い勃発だー。――それでゼフィルス君? 運営側に回るって、何するの?」


「良い質問だなミサト。実はこの財宝の地図には味方の位置情報なども自動で明記されるんだ。それを使う」


「うわ、何これ、すっごい便利だね!」


「〈幽霊船島〉の中だけしか使えないけどな」


 シエラがラナの説得に行ってしまったのでミサトの質問に答えていると、そこへ2人のメンバーがやってくる。


「ならば、わたくしの出番ですわね」


「私も立候補するよー。地図の読み方には慣れが必要だからね」


 リーナとカイリだ。

 とてもありがたい。運営に2人が加わった。


「あれ、シエラ。ラナは?」


「ラナ殿下はエステルたちを説得して運営側に回るつもりみたい。ニーコが凄い顔で見ていたわ」


「たはは~。う~んこのままだと際限なく増えそうだし、人数制限を設けた方が良いかもね」


「だな。えっと5人パーティを8つと考えると、運営は6人か?」


「ならあと2人ね」


 ということで、あと2人を募集。

 なんか挙手する人がすんごい出たのでクジ引きにすることにした。


 結果。


「やったよー! ゼフィルス君と肝試しだー!」


「俺もハンナと一緒で嬉しいぞ!」


 1人はハンナ。そしてもう1人は。

 

「では姉さま、あとをよろしくお願いしますね」


「ぐぬぬー! まさかフィナちゃんだけだなんてー!」


 なんとフィナである。エリサがハンカチでも噛みそうな勢いで悔しがっているけど、クジは時の運なのだ。


「私が、当たりを、引けないだなんて」


「ラナ様しっかり」


 うむ。ラナはなぜかお宝直感力はやべぇのにクジ引き運は低いんだ。

 ドンマイである。


 そして残り8チームの組み合わせも終わり、俺たちは〈幽霊船島〉へ向かって進み出したのだった。

 海に浮いていたけど、桟橋はあったので楽々上陸。

 すると甲板にいたのは、カットラスを持ったスケルトンのぐんだった。

 一斉に振り返る大量のスケルトンから注目を浴びる俺たち。

 ちょ、一斉に振り返るなし。


 瞬間悲鳴が木霊した。




 ―――――――――――

 後書き失礼いたします!


 昨日からコミカライズ13話が公開中です!

 是非TOブックス、コロナEX〈ダン活〉で検索しググってみてください!


 13話はミストン所長登場から始まり、初のシエラたちの戦闘シーンが見られます! シエラのタンクが見てみたい方、要チェックです!

 シエラのセリフ「クマなの? アリクイなの?」も出るよ!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る