第1393話 これがかき氷の魔力! スイカ割り上級だ!




「きゃーきゃー!」


「波に砂が持っていかれるー!」


「足の裏が擽ったいのです!」


「おーいみんなバーベキューの準備ができたぞー!!」


 とても良きな黄色い悲鳴が聞こえる波打ち際。

 ルルたちロリーズがキャッキャ言いながらはしゃいでいるのが大変良き。

 波打ち際に立つとなんで足の下の砂が持っていかれるんだろうね。不思議!

 今すぐ俺も混ざりたいくらいだ。 思わずスクショをパシャパシャ。


「ゼフィルス様」


「おう。分かってるから座れよシェリア」


 しかし、海に入ったら休憩も大事。

 お昼ご飯の時間だぜ!


「みんなが〈食ダン〉で集めた食材、それをふんだんに利用して作った料理の数々を用意したぜ!」


「用意したのはミーア先輩だけどね」


「忙しい時期に大量に作ってもらったからな。悲鳴を上げながらも俺たちのために真心を込めて作ってくれたんだ、絶対に美味しいぞ!」


「悲鳴を上げてたのは採ってきた食材の量が多かったからですわ」


「みんな、味わってくれよな!!」


「い、いただきましゅ!」


〈生徒会〉メンバーのハンナ、アルストリアさん、シレイアさんが補足してくれた通り、これは〈生徒会〉生産副隊長のミリアス先輩作だ!

 バーベキューの下ごしらえから、料理まで大量に作ってくれた。

 すでに出来上がっているため即で美味しい料理が食べられて最高!

 だが、雰囲気も大事。BBQも楽しもう!


「うう~ん美味しい~~!!」


「お肉が弾けて口の中いっぱいに広がるよ~!」


「鳥、豚、牛、どれも格別ですの!」


「自分たちで採ってきた食材だというのがより一層美味しさを醸し出しているかのようであります!」


 アルテが本当に美味しそうに食べて手を頬に当てながらとろけると、カグヤが追随し、サーシャとヴァンがその自分たちで採ってきた食材に感嘆としてた。


「食べ終わったらデザートもあるぞー!」


「なにこれ! 見て見てキキョウ、おっきなカバさんの口から氷が出てるよー!」


「わ、これってもしかしてかき氷ですか!?」


「これ、この前ドロップした〈氷上のナダレ〉とかいう氷を吐き出すアイテムだよね!」


「こんなにシャリシャリの氷も吐き出せるんですね」


 俺の言葉に集まるロリーズ。もといアリス、キキョウ、エリサ、フィナ。

 エリサの言うとおり、これは〈守氷ダン〉でドロップした氷を吐き出すアイテム〈氷上のナダレ〉だ。

 ちなみにあの最奥レアボスの〈ナダレ〉とはなんの関係も無い。実はあのローブの中はカバなんじゃないか説があったが、真相は闇の中なのだ。


 上級中位ダンジョンのドロップというのは伊達ではなく、持ち運び機能もさることながら、様々な姿形の氷を吐き出すことが可能だ。当然、かき氷に使われるシャリシャリな氷を出すことも朝飯前である。


「その通り! ミリアス先輩が作ってくれたシロップを掛ければ、一瞬でかき氷が完成だ! 欲しい人は挙手!」


「「「「「はい(なのです)!」」」」」


「はふん」


「あ! シェリアちゃんがまた倒れた!?」


 元気良く手を上げる可愛いロリーズの光景に後ろでやられた人が出たらしいがそれはともかくだ。

 いつの間にかルルが先頭にいたのでシロップを選ばせてかき氷屋さんのマネごとを始める。


「ルルはイチゴがよろしいのです!」


「はいはいイチゴね~」


「ストローでベリーグッドなイチゴシロップをたっぷり所望するのです!」


「ほいほい。じゃあルルはサービスだ! 上に生クリームと本物のイチゴも載せてあげよう! パフェ風かき氷だ!」


「わーい!」


 もちろんルルにだけサービスでは終わらず、全員にサービスしたのは言うまでもない。

 これ絶対美味しいやつだからな!

 問題は、欲しがるメンバーがロリーズに収まらず女子全員になったことだろう。


「ゼフィルスさん、私たちも手伝います」


「ゼフィルスくんは氷の方をお願いね。シロップなどのトッピングと受付は私たちで担当しますよ」


「マリア、メリーナ先輩! サンキュー、助かるぜ!」


 ということで急遽商業課メンバーが応援に駆けつけてくれた。おかげでなんとか全員分を――。


「ゼフィルスお兄様、おかわりはありますか?」


「もちろんあるぞ!」


 しかしかき氷屋さんはしばらく終わらなさそうな雰囲気。

 ならば、このまま食後のイベントに移るとしよう!


 去年もやったが、食後と言えば、デザートと腹ごなしも兼ねて――スイカ割りだ!


「メルト、スイカ割りの準備だ!」


「よし、任せろ」


 おっと、メルトの目が鈍く光ってる。

 去年のスイカ割りを思い出してしまったのかもしれない。


「スイカ割り? ハンナちゃんスイカ割りって?」


「クイナダさんは知りませんか? 棒を持って目隠しして、砂浜に置いてあるスイカを割るゲームですよ。あ、スキルは使っちゃダメです」


「へ~、本校にはそんなゲームがあるんだね」


「まずは私がやろう」


「リカ、スキルは使っちゃダメだぞ」


「無論だ。去年とは違うということを見せよう」


 おっとトップバッターにリカが名乗りを上げる!

 去年はなんかスキル発動して見事な四等分にしていたが、スキルが封じられたその実力は如何に!

 カルアがリカの目を布で塞ぎ、クルクル回転させる。すると。


「はっ!!」


「斬ったーーーー!?」


「それ木刀だよ!?」


 リカは木刀でスキルも使わずにスイカを両断していた。

 パカッと真っ二つになったスイカが輝いてる!


「ハ、ハンナちゃん、あれって本当にゲーム? 私あんなのできる気がしないよ!?」


「あ、安心してくださいクイナダさん。あれは多分例外です」


 もちろんハンナの言うとおりだ。

 リカ、本気出しすぎだ! というかリカの本気がヤバすぎる!


「やっぱSTR育ててるメンバーは後回しだ! まずはスイカ割り初心者のためにハンナが手本を見せてやってくれ」


「え? 私!?」


 ということでハンナがスイカ割りに挑戦! 新しいスイカを置いてレッツチャレンジです。


「ハンナちゃんガンバれー」


「足下に気をつけてねー」


 おうおう、ハンナは大人気だ!

 目隠ししてクルクル回らされたハンナがふらふら歩く。


「ハンナちゃん、もっと右、右だよー!」


「もうちょっとだよー! あと三歩!」


「そこそこ! そこで振りかぶって!」


 気が付けばみんなかき氷を片手に夢中になってたよ。

 かき氷から気を逸らせたので俺も観戦に参戦。パシャパシャ。


「ここだよね? えーい!」


 そこで振りかぶるハンナ。みんなの期待のおかげか、見事にスイカの中心に木刀を叩き込む! しかし。スイカは傷が付いただけで健在だった。


「「「「おお~!!」」」」


 でも盛り上がる不思議。


「という感じで、1人叩けるのは1回まで、スイカを何度も叩いて、みんなの力で割っていくルールだ」


「面白そうっす!」


「うん。ちょっとやってみたい、かも」


「良いですね。ですがナキキとミジュはSTRが育ってるから出来ないんじゃないですか?」


「「ガーン(っす)!?」」


「はっはっは、スイカはたっくさん持って来たぞ。最初はみんなが楽しめるようSTR未育成メンバーを中心にやってもらうが、それが終わったら徐々にSTRの高いメンバーにもしてもらって、希望者全員参加できる形にしてるから安心してくれ」


「わーいっす!」


「安心」


 ということでやってもらう。

 まずはアリスとキキョウ、それとカグヤにサーシャもいってみてもらう!


「硬さがカニさんみたい~」


「は、外してしまいました!?」


「ここだー! ってあれ!? 何にもないよ!?」


「私はこれでも伯爵の娘ですの。これくらい、わけないですの! とう! って固い!?」


 アリスのカニさん並の硬度は笑った。

 キキョウとカグヤはハズレで、サーシャはしっかり中心を叩いていたがヒビが入っただけで残念ながら割れず。

 だけど伯爵の家ってどんなところなのかちょっと気になった。


 シュミネはナキキたちに促されて参加したが、この方、中々の方向感覚の持ち主でスイカとは反対方向に行き始めたので大変だった。場外で失格だな。


「さーて1年生もやったし、次は去年不参加組だな!」


「ということは俺だな!」


 おっとここで名乗りを上げたのは――サトルだ。

 うむ、去年とある悲しい都合で一緒に海行けなかったからな。やる気がすごいぞ! ここで良いところを見せようという魂胆なのか。


「はーっはっはっは! 俺に任せろよ! 俺スイカ割りとかちょー得意だから!」


 ほう? なるほど。得意なのか。


「ゼフィルスよ、サトルに恨みは無いが、去年のあれ、俺にやらせてくれないか?」


「おいおいメルト、そりゃないぜ? やるなら2人でやろう」


 俺とメルトは仲良くスコップを取り出した。経験者にはスイカ割りの上級をプレゼントだ。多分、今の俺たちは悪い顔をしているだろう。

 それを見たミサトがニヤニヤ笑う。

 サトルを目隠ししてクルクル回し始めた。


 ―――よし、今だ!


 俺とメルトは仲良くサトルの進路上の砂を掘った。


「のわ!? な、なんだ!? 穴かこれ!? え、山もある!? 目隠しってこんな難易度高いの!?」


「ぷくく、去年のメルト様と同じこと言ってるー」


「おいミサト、俺はここまで動揺してなかったぞ」


「なんかすぐ近くから話し声が聞こえるんだが!?」


「気のせいさ!」


「ゼフィルスさんの声までする!?」


 ザックザック!


「ほら、なんかザックザック穴を掘る音がするって!! 絶対気のせいじゃないだろ!?」


「「「「あははははは!」」」」


 結局サトルはスイカを外してしまった。

 即で目隠しを採ったサトルが振り返る。そこにはスコップを持った俺とメルトが!


「やっぱスコップ持ってんじゃん!? ゼフィルスさん!? メルトさん!? やりましたね!?」


「あははははは!」


「はっはっは! 俺も去年やられたんだ」


「ってメルトさんもかよ!?」


 よーし、ここからはスイカ割り上級も解禁だ!

 こうしてスイカ割りは今年も大いに盛り上がったのだった。




 ―――――――――――

 後書き!


 ただいま!

 作者、海から帰ってまいりました!

 たっぷりと取材してきましたので、これからも海回バリバリ書いていきますよ!


 また、再びとなりますが。(お知らせ)

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