第1389話 いざ行こう、〈海ダン〉のプライベートビーチ




 さあさあやって来ました! 第2回、〈エデン〉の夏休み、海回の始まりだー!


 総勢約60人という超が付くほどの大人数でエクストラダンジョンの1つ、〈海ダン〉を目指す。


 相変わらず凄い人数なんだぜ。

 ここまで増えるとあと数人増えてもいいんじゃね? と思えてくるから凄まじい。


 ということで、実は今日はサプライズゲストがいたりする。


 俺たちがエクストラダンジョンのあるダンジョン門、〈エクダン〉に入ると、その人物はいた。


「マリー先輩! メイリー先輩!」


「え、マリー先輩がいます!?」


「おはようさんみなはん。今日からよろしゅうな~」


「よろしく~」


 そう、ギルド〈ワッペンシールステッカー〉所属のギルドマスター、マリー先輩! そしてその補佐をしている(?)眠たげな先輩ことメイリー先輩だ!

 マリー先輩は相変わらずな快活な笑顔で、メイリー先輩は少し半目だが楽しそうに手をふりふりしていた。


「なんでマリー先輩たちが居るのゼフィルス君!?」


「ふっふっふ、実はマリー先輩は――サプライズゲストなんだー!」


「ええー!?」


 隣のハンナがびっくりという様子で聞いてきたので、決めてやった。

 ハンナが凄く驚いて――じゃなくて、喜んでいたよ!


「私は知っていたけどね。マリー先輩にはいつもお世話になっているし。水着の購入の時にそういう話になってね」


「俺はもちろん許可を出したというわけさ!」


 マリー先輩とシエラは意外によく話す関係だ。マリー先輩のお母さんがシエラの実家の御用商人だからな。とはいえ子ども同士は学園に来てから仲良くなったという話だが。


「うちらも学生時代に1度くらい海に行きたくてなぁ。でも一緒に行く相手がおらんし、ちょっとな」


「そこに私が誘って、渡りに船という感じで決まったのよ。サプライズはゼフィルスの案だけど」


「そ、そうだったんだ!」


 ふふふん! 俺は鼻高々にちょっとドヤった。

 まあ、このサプライズを知っていた人物もそれなりにいるんだけど。

 準備とかも必要だったし。

 でもマリー先輩たちならもう大歓迎だ。ちなみにメイリー先輩はマリー先輩が引っ張ってきた。こう見えて、かなり泳ぎが得意らしい。


「海なら任せて」


「ほほう? メイリー先輩とはなかなか話が合いそうじゃないか」


 どうやらメイリー先輩は海が得意らしい。泳ぎが得意ではなく、海が得意なのだ。

 ふっふっふ。これは楽しい海回になりそうだぜ。


「ね、ねえシエラ。あそこ、ちょっと雰囲気が怪しいわよ。いいの?」


「……ピンク色じゃないなら、構わないわ」


 そんな俺たちを見てラナとシエラがこそこそ話していたが、俺たちには気にならなかった。

 そこへセレスタンが受付の完了を知らせてくれる。


「ゼフィルス様、〈海ダン〉入ダンの受付が完了しました」


「ご苦労セレスタン! ――これで一緒に行くメンバーは今度こそ全員だ! では、これより〈海ダン〉に入ダンする。行くぞーー!」


「「「「「おおー!!」」」」」


 総勢59人、男子10人、女子49人で〈海ダン〉に突入です。




 ふはははは! 戻ってきたぜ〈海ダン〉!

 これで4度目、女子は2度目になる〈海ダン〉である!

 もちろんうっかり3度目の時に攻略してしまったという話は秘密だ。

 ちゃんと攻略者の証も外してあるぞ。


「私ここのボス、やってみたいのよね~」


 そんなラナの呟き。なぜか攻略がバレている不思議!

 うん、装備を作った時点でバレていた模様だ。あれ、ボス素材使ってるから。

 でも、残念だけど攻略はしないよ?


「今回は遊びがメインだからまた今度な」


「仕方ないわね。それで、遊びに行くのは去年と同じところ?」


「おう。この前確認に行ったらまだ発見されて無かったみたいだからな。ちょうど良い入り江だし、今回もそこで遊ぶ予定だ」


「すっごく楽しみね!」


「だな!」


 さすがのラナも遊び優先の様子でそこまでボスにこだわりはないようだ。

 良かった良かった。

 今回はカイリに『パーティインビジブル』を使ってもらい、プライベートビーチを目指す。


「ほほう、ここに兄さんたちの隠しビーチがあんねんな」


「使う時は他の学生にバレないようにな。あと」


「大丈夫や、うちは口の固い商人やで? 顧客の情報をばらすなんて信用を落とすマネするわけないわ。な、メイリー」


「でも使うのは構わない?」


「それくらいならいいぞ。というよりダンジョンを使っちゃダメなんて言えないしな!」


「え? メイリーここ通うんか!?」


「機会があれば」


 おっと思ったよりもメイリー先輩は海大好きだった模様だ。心なしか瞼がいつもより開いている気がする!

 到着したのは2層の隠し部屋。

 部屋と言うよりエリアだなと思いつつ、去年と同じように〈万能鍵〉で隠し扉を解錠して中に入る。もちろん隠し扉は閉めておいた。

 リーナやカイリの索敵には引っかからなかったので追跡されているということもないだろう。


「わぁ~なっつかしー!」


「海だー浜辺だー!」


「私たちは帰ってきたー!」


 早速サチ、エミ、ユウカが海に向かってシャウトした。

 洞窟の先には360度断崖絶壁に囲まれた入り江があった。

 ここも前と何1つ変わっていない。海は透き通るエメラルドグリーンで海底がよく見える。もう速攻で入りたくなる海だ!


 おや? ニーコが速攻で3人娘に捕まった。


「ま、待ちたまえ。ぼくもちゃんと着替えよう。だからその手を離そうじゃないか」


「そんなこと言って、去年はなまけんぼうだったじゃない」


「ニコちゃん一緒に泳ごうねー」


「今のままじゃいつまでもその格好のままな気がするからね。私たちが手伝ってあげる」


 そのままニーコは「あ~れ~」という言葉を残して、連れて行かれてしまった。


「ゼフィルス様、指示を」


「おっとそうだった。みんなー向こうにちょっとした部屋があるからそこで着替えてきてくれ。男子はここでテントを張って着替えるぞー! そして着替えた人から海に入って良し! だが、体はほぐせよー! では、解散!」


「「「「きゃー!」」」」


 セレスタンに促されて、このプライベートビーチに初めて来た子たちを促す。

 サチたちが向かったのは宝箱があった場所だな。あそこは洞窟型の部屋になっていて、ここからだと死角になっているので着替えには良い場所なんだ。


 女子を見送り、俺たちも準備する。


「よし、俺たちも着替えて休める空間の設営をするぞ!」


 気合いを入れ、テントを張って中で着替えを済ませると、去年の反省から超巨大タープを取り出して浜辺に建設する。

 入り江は風もあまり吹かないので吹き飛ばされることもないだろう。

 一応ハンナの〈アイスクリスタルゴーレム〉の〈アイクリ〉も召喚しておいた。

 万が一にも超巨大タープが飛ばされたりしないよう掴んでいてもらう。あとこのゴーレム、触るとひんやりするんだよ。意外に夏に活躍するボディなんだぜ。


 パラソルも出してビーチチェアも大量に出して休める空間を確保。

 景観を損なわない感じで色々設置していると、ついつい熱中してしまい、気が付けば休憩所の他にも遊び場の設営などが終わっていた。

 浜辺に張られたビーチバレー用のネットが良い感じ。

 まさに夏の浜辺という雰囲気だった。


「ゼフィルス、去年は断念したんじゃなかったか?」


「ふっふっふ。安心しろメルト、今年は秘策がある」


 去年はエステルのSTRに負けて吹っ飛んだビーチバレーボールだったが、失敗をそのままにしておく俺ではない。

 今年は絶対これで遊んでやる!


 さらに去年大好評だったスイカも大量に持ってきてある。

 それを見たメルトが何か言いたげだった。

 とそこでセレスタンがやってくる。


「ゼフィルス様、来られました」


「! 全員海に注目! これは訓練ではない!」


 この日のために訓練してきた(?)指示を繰り出し、男子全員に海を眺めさせる。

 ちらっと横目で見れば、サトルは直立不動でいつも以上にキリッとした表情だ。

 ヴァンは、目を瞑ってやがる。大丈夫か?

 ラウやレグラム、メルトは自然体だな。


 モナは、あれ? なんでモナは上まで水着を着てるんだ? それにそれって女子用のトランクスタイプの水着じゃねぇか?

 見ろ、ソドガガとタイチがなんか居心地悪そうだぞ? モナは「トランクスなんだから男物の水着でしょ」と言わんばかりに気付いていないっぽくてニコニコしてるけど。トランクスにしては丈が短いショートパンツっぽい仕様だ。上はシャツっぽいやつ。完全に女子水着である。

 どうしよう、それは女子の水着だって教えてあげた方がいいのか?


 そこへ快活な声が届く。


「おんまたせー!」


「もうこっち見ても良いよー」


「これ全部男子で設営してくれたのか? 少し待たせ過ぎちゃったかな」


 この活発で元気100%な声は聞き間違えようもない。

 サチとエミとユウカだ。なぜかニーコの声が聞こえないのが気になる。

 耳を澄ませば複数の足音。女子が集まってきてくれた様子だ。

 そこで満を持して俺たち男子が振り返る。


「「「おおー!」」」


 思わず俺とサトルとモナから声が出た。


「どうかなゼフィルス君?」


「今回は私たちが1番乗りだよー」


「去年より、少し趣向を凝らしてみた」


「すっごくいい!」


 サチは真っ赤なビキニタイプ。去年と似たような感じだが、今年の方が色が濃い感じ? あとボリュームが増えている気がする!

 エミは黄色のタンキニだ。サチの横に立つ厳しさを去年痛感したのかおしゃれ系で攻めてきたな!

 ユウカは青のビキニにパレオを巻いているタイプ。スラッとした体型を活かしたお姉さん的な雰囲気だ!


「サチは鮮やかで抜群に似合っているし、エミはおしゃれな感じがすっごく良いぞ。ユウカは清楚なお姉さんっていう感じになってこれも似合ってる」


「「「ありがとうゼフィルス君!」」」


 俺は自然な感じで3人を褒める。サチもエミもユウカもそれを聞いてキャーと海の方へ走っていったよ。それを見たサトルが愕然とした表情でメルトに振る。


「え、メルトさん、これって」


「ああ。いつものゼフィルスへのお披露目回だ」


「マジっすか!? すっごく自然な流れだったんだけど!?」


「こ、これはなんでありますか!? 女子の列が出来ているであります!?」


「ああ、今年入ったメンバーは知らないのか。あまり気にするな。水着を用意してくれたゼフィルスへの礼、という名の水着お披露目回だ。邪魔をすると命に関わる可能性があるからオススメしない」


「え? え? どういうこと!?」


 ヴァンやモナ、ソドガガやタイチは〈秘境ダン〉の時も居なかったし、水着お披露目回を見るのはこれが初めてか。

 そう、〈エデン〉では恒例として、水着の素材を男子が用意すると、女子が水着を見せに来てくれるのだ!

 なんて素晴らしいギルドなんだ。ここは俺が作った!

 



 ―――――――――――――

 後書き失礼いたします!


 ついに海回開始!

 是非楽しんでいってください!


 また、昨日はニシキギ・カエデのネクスト作品、〈プレモン〉へたくさんの方が来てくださりとっても嬉しかったです!

 あんなにPVとフォロワーさんと作者の大好きなお様が増えたのは、投稿開始以来初でした! すごい。


 カクヨムネクスト作品〈プレモン〉は、8月4日まで無料話増量中です!

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