第1387話 〈パーフェクトビューティフォー現象〉キター




〈金箱〉が4つ。

 それはレアボスと〈幸猫様〉の恩恵。


「〈パーフェクトビューティフォー現象〉だーーーー!!」


 俺は思わずシャウトした!


「ゼフィルスー! 〈パーフェクトビューティフォー現象〉ですってーー!!」


「ん。直感に反応!」


「ってラナ、カルア!?」


 早っ!?


 倒したばかりなのにもう部屋に入ってきたのか!

 これは部屋の前で待機していたからに違いない。まさか〈パーフェクトビューティフォー現象〉を感じ取ったからじゃないよね?


「きゃああ! 〈金箱〉が4つよ!」


「ん。久しぶりに見た」


「攻略者の私たちより盛り上がってるし!」


「〈守氷ダン〉が攻略されたことよりも、やはり〈金箱〉なのか?」


 ラナとカルアが〈金箱〉4つに目を輝かせると、ミサトがツッコミ、メルトが目を丸くしていた。

 攻略者の証が右手に出現していたが、そんなことより〈金箱〉の方が大事なのはお約束。


「ゼ、ゼフィルス。なぜそなたたちは攻略者の証よりも〈金箱〉を欲するのだ?」


「そんなの簡単なことだリカ! 攻略者の証はな、確実に手に入るものなんだ。ランダムポップの〈金箱〉とは価値が違う!!」


「ゼフィルスの中では攻略者の証は確実に手に入ることになっているのか……」


 おっとリカが真理に気付いて遠い目になってしまったな。

 そう、攻略者の証は確定ドロップ! つまり隠し部屋なんかにある宝箱と同じだ。ボスを倒せば確実に手に入るのだからはしゃがなくてもいい。(←ゼフィルスの考えです)


 対して〈金箱〉は確定ではなーい! さらに中に何が入っているのかもわからなーい!! これははしゃぐしかない!(←ゼフィルス済み重症者の考えかも)


「普通ならば攻略できたという証は何事にも代えられない名誉なのだがな」


 リカがポツリと呟いた声は、はしゃいで〈金箱〉に向かう俺には聞こえなかった。

 俺がラナとカルアを両手を広げてとおせんぼうしていると、続々とメンバーがボス部屋に入ってくる。


「ラナ様、先に行ってはいけません!」


「あ、〈金箱〉が4つなのです! ルル、見つけちゃったのです!」


「〈金箱〉が4つ!? これは特等席で観戦するしかないわ! 行くわよルルちゃん、フィナちゃん!」


「私は教官のところにいきますので、姉さまはご自由に」


「ちょ、フィナちゃんそれズルい!?」


 エステルたちにルル、エリサ、フィナと出てきてそれから全員が部屋の中に入ってくる。


「なあゼフィルス、なぜみんな攻略したことよりも宝箱の話題ばかりなのだろうな。俺たちはレアボスを倒したはずなんだが」


「そんなの決まってる! 宝箱が大事だからだ!」


「ゼフィルスに聞いても無駄よメルト、今のゼフィルスは〈金箱〉が4つも出て、周りが見えないほどはしゃいでいるわ」


「……そのようだ」


 何やらやって来たシエラが変なことをメルトにさとしていた気がするが、これも気のせいだろう。


「誰が開けるの! もうみんな揃ったわよ!」


「もちろん最初に開けるのは俺だ!」


「次は私!?」


「ん」


「こらそこ、挙手しない! ラナたちは次な!」


「僕は記録係をやりましょう。ゼフィルス様、リカ様、メルト様、ミサト様で開けるのがよろしいかと」


「セレスタンもたまには開ければいいのに」


「執事ですから」


 返しがよく分からなかったが細かいことは〈金箱〉の前では塵芥ちりあくただ。

 早く開けよう! 俺は待ちきれずに〈金箱〉の前へしゃがみ込む。

 両手をパチンと合わせて祈る!


「〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈パーフェクトビューティフォー現象〉ありがとうございます! とっても嬉しいです! 中身もどうか良いものにしてください!」


 俺が開ける雰囲気を出すとみんなが集まってくる。

 注目されている中、俺はそんなこと意に介さずに〈金箱〉の1つを開けるのだった。果たして中にあったものは――!


「召喚盤だ!」


「また出ちゃった!?」


 俺が高らかに挙げる召喚盤にミサトが盛大にツッコんだ。


「ミサトさん、〈幼若竜〉を貸してください――これは〈魔食らい鬼の召喚盤〉と出ました。〈魔食らい鬼〉とは?」


「おっとそういえば言ってなかったな。実は俺たちが倒したのは、レアボスだったんだ!」


「「「「「レアボス!?」」」」」


「やっぱりこっちの情報の方が宝箱よりもよっぽど重要だったんじゃないか?」


 メルトがポツリと呟いた声はざわめきに包まれて聞こえない。

 ちなみに〈魔食らい鬼〉とは〈ナダレ〉、ではなく〈ナダレ〉が召喚していたあの凶暴な召喚獣の方だ。〈新団長・ナダレグランキ〉形態になる前の第二形態のやつな。第三形態の力は無いはずなんだが、【傲慢】が真の力を解放すると第三形態になってユニークスキルも使えるようになるぞ。


「やっぱりね! おかしいと思ったんだよ。ぼくの力を持ってしても宝箱4つは不可能だ。可能にするにはレアボスを撃破するしかない」


「ゼフィルス君たち、レアボス倒しちゃったの!?」


「おうよ!」


 ニーコの解析にカイリがびっくり仰天とでも言うような表情で聞いてきたのに頷くと、さらなるざわめきに包まれた。

 なお、ニーコの力をもってしても宝箱3つまでが限界な気がするのは言わないでおこう。


「最奥ボスだけでも本来は1発突破は厳しいのに、相変わらずゼフィルスさんたちはぶっ飛んでるよねラウ君」


「今では俺たちもその仲間入りだがな」


 ルキアとラウがしみじみと何かを語っていた。

 最奥ボスだろうがレアボスだろうが、ちゃんと倒せるようになっているんだ。なんの不思議もないさ! ちょっと最初は相性が悪かったがその程度である。

 最後は攻略法を発見するとカチリと嵌まって、被害も無く倒しきれたぜ。


「それで、その召喚盤は?」


「もちろんレアボスの召喚盤だぜ」


「……それをどこで使うつもりなのでしょうか」


 エステルの問いは「すでに答えを知っている、でも聞いておかなくちゃ」みたいな問いだった。

 そんなのもちろん決まっている。


「クラス対抗戦がもうすぐだからな! きっとみんな驚くぞ~」


「驚くレベルじゃすまないと思うわ」


 去年も同じようなことがあった。あの時は中級上位ダンジョンのランク8、その10層の守護型ボスだった〈ジェネラルブルオーク〉の召喚盤が出て学生が宙を舞ったんだ。今年は上級中位ジョーチュー級のレアボス召喚盤である。

 ……楽しみだ!


「あれが守りに立つのか」


「拠点より大きいんじゃないかな?」


「挑むものが皆無になりそうなんだが?」


「まあまあそれは今後のお楽しみとして、まずは〈金箱〉を開けようぜ!」


 リカとミサトとメルトが何やら想像を膨らませていたが、楽しみは本番に任せておこう! まずは〈金箱〉だよ!


「ふっ、ならば、次は私が開けよう」


「あ、リカちゃんが吹っ切れた」


 2番目はリカだった。

 ミサトに見送られながら〈金箱〉に向かってお祈りし、スムーズに開ける。

 あ、リカ、もうちょっともったいぶらないと勿体ないぞ(?)!


「む、これは腕輪か?」


 リカが開けた宝箱に入っていたのは腕輪だった。

 腕輪であればアクセ系か腕装備が一般的。


「リカ殿、こちらに――『解析』! これは〈竜の腕輪〉?」


「〈竜〉の名の装備だと!?」


 ここで久しぶりに〈竜〉の名の装備がドロップ!

 俺は凄まじく食いついた。


「は、はい。スキルは『ドラゴンユニソウル』。どうやら継続効果のあるユニークスキル限定ですが、その継続効果を多少延長させることができるようです。あと単発効果のユニークスキル限定でその威力を上昇させる効果もあるようですね」


「超強いじゃないか!」


 つまりは俺の『勇者の剣ブレイブスラッシュ』なら威力上昇し、『勇気ブレイブハート』や『完全勇者アブソリュートブレイバー』なら効果の継続時間を延長させるというものだ。

 もちろん俺は知っていたが、これもみんなに周知させる目的で声を張る。


 これ、超強いんだよ。なにしろレシピが存在しないレベルのぶっ壊れ装備である。さすがは〈竜〉の名が付く装備品。

 これがレシピで存在していたら〈ダン活〉がこの装備一色に染まるとも言われていたほどだ。


「この装備については一旦預からせてもらう! 後日誰に装備するか決めよう!」


「うむ。承知した。私は今のユニークスキルに満足しているからな。否は無い」


 そう言って俺に腕輪を預けてくれるリカに感謝。

 いや、これマジで最強クラスの装備効果なんです。

 ふう、やっべぇ。2つ目のドロップがこれとか超やべぇよ!

 これは3つ目と4つ目に期待が高まる!


「ほー? じゃあ私も開けるよ!」 


「俺の方も開けよう」


 それを見てミサトとメルトがお祈りを開始。

 まさか、2つ一緒に開けるなんていう贅沢をする気ではあるまいな!?


 そのまさかだった。


「じゃあメルト様、せーので開けるよー」


「…………」


「せーの」


 ミサトの言葉に無言のメルトだったが、なんだかんだミサトのタイミングで一緒に開けるツンデレ。

 やっぱり一緒に開けるのか! そういえば2つを同時に開けるのは初の試みだ。

〈幸猫様〉と〈仔猫様〉のお力は届くのか!?


「私のところは――剣だよ!」


「俺のところは――小盾だな」


「「「「おおー!」」」」


「装備か!」


 ミサトが取り出したのは透き通る様な青く美しい両刃の片手剣。

 メルトが取り出したのは輝く様な青を基調とした中心に二対の翼が描かれた盾。


「ミサトさんとメルト殿が当てた装備を鑑定します――『解析』!」


 エステルが鑑定する。

 俺は、もちろんこれを知っている。


「出ました〈極光剣・レーラ〉と〈極光盾・ジャナフ〉ですね」


「〈極光〉シリーズの片手剣と小盾か!」


「おそらく。魔法力もかなりの数値ですから、魔法剣士にぴったりの武器のようです」


 ―――〈極光剣・レーラ〉と〈極光盾・ジャナフ〉。

〈極光装備シリーズ〉の剣と盾だ。

 両方とも上級上位ジョウジョウ級。

 武器は〈氷属性〉と〈光属性〉と〈闇属性〉を内包し、もし相手がどれかの属性を無効化できたとしても、全てを無効化できていないと100%のダメージが叩き込まれるスキル『極光剣』を持っている。


 これがかなり強力なスキルで、例えば氷と光の2属性を持つ剣があるとする、うち1つの氷属性が無効化されればダメージも半分になるところ、『極光剣』なら100%のダメージが出せるのである。元々3属性を持っているので、3属性全て無効を持っているモンスターじゃないとダメージが入るのだ、パナイ。さすがは上級上位ジョウジョウ級の武器!


 しかも、これは【勇者】のスキル『属性剣』や『雷属聖剣化』も乗る。

『属性剣』ならさらに〈火属性〉〈雷属性〉が、『雷属聖剣化』なら〈雷属性〉と〈聖属性〉が加わるので、実質全属性がカバー可能というとんでもなさだ。

 6属性全てを無効化していないとダメージが入るのである。普通に無理だ。

 まさに【救世ノ勇者】のために作られたような装備。


 盾の方も翼が描かれているとおり、空中に浮かせて操れる自在盾の性能を持っている。しかも少しの間なら乗ることも可能だ。すぐにジャンプしないと墜落するので注意。二段ジャンプ用だな。

 さらに回避系のスキルもあるので、ある程度回避行動も可能だ。


 素晴らしい。これはまた素晴らしいパーフェクトだ!


「これは、俺が使ってもいいか?」


 気が付けば俺はそうみんなに聞いていた。


「良いと思うよ!」


「俺も、異論はない。むしろ最初からゼフィルスに勧めようかと思っていたところだ」


 即答してくれたのはミサトとメルトだ。そのまま俺の所に剣と盾を持ってくる。

 見渡せば異論がありそうなメンバーは1人もいなかった。


「私も、ゼフィルスの〈ガラティン〉ももう長いものね。〈ヘカトンケイル〉の時には使っていたから、もう8ヶ月以上使っているわよ」


「え? そんなにか?」


 俺の片手剣〈ガラティン〉は上級ダンジョンに挑む前から使っていた。

 ここは上級中位ダンジョン、そろそろ換装が必要だとは考えていたところだ。

 しかし、それでもランク7以上じゃないと換装する気にならなかったので今までこれで来ていたのだが、上級上位ジョウジョウ級武器、しかも俺にぴったりな装備がドロップしたのならもう換装するしかないよな!


「みんなありがとな!」


 俺はそう言って今まで使っていた〈ガラティン〉と〈勇銀の盾〉を外して仕舞う、今までありがとうなと心を籠めて。


 そしてメルトとミサトから〈極光剣・レーラ〉と〈極光盾・ジャナフ〉を受け取り装備した。


 これが俺の新しい装備だ!


「「「「おお~」」」」


「ゼフィルス、かっこいいじゃない!」


「ええ、よく似合っていると思うわ」


「はい。防具の色とも相性がよく、すごく映えていますわ」


「かっこいいですゼフィルスさん」


 ラナ、シエラ、リーナ、アイギスを始め、みんなから感想をもらう。

 ちょっとこの装備、早く使ってみたいぜ。


 全ての宝箱を開けた俺たちはそのまま帰還――するわけもなく。


「それじゃあ、周回の時間だな!」


「「「「「おおー!」」」」」


 そのままボス周回に移行したのだった!



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