第1386話 5メートル級〈ナダレ〉丸呑み事件発生!?




「食べちゃった!? ボス食べちゃった!?」


「あんな巨大なボスを、丸呑みだと!?」


「よく飲み込めたな!?」


 ―――『身長5メートル級〈ナダレ〉、まさかの丸呑み事件発生!?』。

 そんなテロップが流れそうな光景に思わずミサトとメルトが叫ぶ。

 ナイスなツッコミだ! 思わず俺もツッコんだ。

 さらに、第三形態の変化はまだ終わらない。

〈ナダレ〉を飲み込んだボスが、〈ナダレ〉の力を得たぞとばかりにゴオオオオオとさらにパワーアップし始めたのだ。融合強化ってやつだ。


「氷の鎧を、纏った?」


「さっきの〈ナダレ〉の置き土産であるバフも掛かっている状態だな」


 これが真の第三形態。

〈ナダレ〉の力を吸収した召喚獣がここの真のレアボスである。


 その名も――〈新団長・ナダレグランキ〉。


「新団長!?」「団長の座乗っ取られてる!」「展開レアすぎるだろ!?」と何度もツッコミをもらったやべぇボスだ。


「ブオオオオオオオ!」


「! ミサト、結界!」


「『ミラークロスバリア』!」


 第三形態になった直後。

 いきなり氷魔法のビームを口から放ってくる召喚獣ナダレグランキ

 即座にミサトが〈四ツリ〉のクロスした鏡のバリアを張って防御するが、しかし。

 ビームは、このバリアを割ってきた。


「きゃあ!」


 結果、ほぼ相殺だったが防御負け。

 ミサトが大きくダメージを負った。


「ミサト! 『三十六・重穴じゅうけつ展開』!」


「もう一発来るぞ!」


「次は、負けない! 『リフレクション・ヘル』!」


 連続ビーム。

 今回はメルトも防御スキルを展開。

 36の重力のボールに吸収されるも、あまりの威力にそれでも止められない。

 しかし、ミサトが新たに反射する防御魔法を展開し、ビームを受け止め、今度は反射することに成功する。


「強い! 『集束・グラビティレーザー』!」


 メルトも反撃し、なんとか相手の攻撃を止めることに成功。今のうちに対処だ。


「『オーバーヒール』!」


「あ、ありがとねゼフィルス君」


「ナイスだミサト。俺たちは行く、ミサトはもう一回ドレインを頼んだ! デバフが解除されてる! 魔法も物理も両方を吸収しろ!」


「うん! 『色欲の鏡』! 『攻撃力ドレイン』! 『防御力ドレイン』! 『魔法力ドレイン』! 『魔防力ドレイン』! 『素早さドレイン』!」


 第三形態になった影響でデバフが解除されていた。それどころかバフが乗ってやがる。

 さっきの〈ナダレ〉の置き土産だ。

 これはデバフを与え直さないと厳しい。ここでドレインによりデバフを与えることに成功する。しかし。


くぞ! ――ぬ!?」


「リカ、下がれ!」


「『受け払い』! くっ足が!?」


 ミサトの『色欲の鏡』によって相手からドレインされたステータスが俺たちに還元される。リカがそれを得て挑もうとした瞬間、強烈な吹雪と同時に巨大鉤爪が迫って居た。リカは咄嗟に展開の早い防御スキルで受けたが、受けきれない。

 さらにもう片方の鉤爪がリカに迫る。吹雪によってリカが思うように動けない。

 魔法と物理の両刀攻撃。それは先程のツインズを思わせ、パワーアップしていると思い知らされる。


 しかし、そこに1人の影が横から飛び出てきてリカを庇い。鉤爪を吹き飛ばす。


「それはいけません――『波動剛歩爆ごうふばく』!」


 ズドンという爆発音と共にセレスタンの拳は打ち込まれ、鉤爪の軌道が逸れた。


「セレスタンナイス! 『フルライトニング・スプライト』!」


「すまない!」


「いえ、吹雪にお気をつけを。相手は氷の鎧だけでは無く、吹雪の壁まで身に纏っております。そして速い」


 セレスタンの言うとおり、魔法の力を得た召喚獣は、物理と魔法、両方の特性を兼ね備えている。


「リカ! カウンターを合わせられるか!?」


「やってみる! ここだ――『抜刀術・貫嵐かんらん』!」


 それはカウンター。

 そこへ勢いよく振り抜かれる両の鉤爪だが、リカのカウンターがここで決まる。片方がガキンと弾かれ驚愕に叫ぶ召喚獣ナダレグランキ


「ブオオオ!?」


「良いですね。僕もさせていただきましょうか――『カウンタースマッシュ』!」


「ブオオオオオオ!!??」


 さらにセレスタンの微笑みが強まり、もう片方の鉤爪に割り込んでカウンターの拳を叩き込む。すると、体格差は歴然なのに、思いっきり召喚獣が弾かれたのだ。


「ナイスリカ、セレスタン! ここだぁ! 『フィニッシュ・セイバー』!」


「追撃だ! 『一刀斬・対壊たいかい』! 『抜刀術・閃光』!」


「『急所はそこです』! 『瞬拳しゅんけん』!」


「援護するよ! 『サンクチュアリ』!」


 ズドドドドドン!

 その隙を逃さず俺、リカ、セレスタンの追撃。腕で防御するがそんなものは吹き飛ばして攻撃が見事に決まる。

 吹雪にさらされていようが、こっちにはミサトが継続回復をしてくれている。

 後は飛ばされないよう気合いを入れて踏み込めばいいのだ。


 結果、大きくノックバックした召喚獣がズドンとダウンした。


「大成功! 総攻撃だ!」


「叩き込む! 『グラビティ・ロア』! 『グラビティ・ボール・エクス』!」


 総攻撃で一気にダメージを稼いだ。

 ダウンすれば吹雪も収まるのでいつも通り打ち込める。


「こいつの対処方法は、カウンタースキルか!」


 リカ、ご名答。

 メルトの強力な魔法でもノックバックしない厄介なボスではあるが、その弱点はカウンターだ。


 カウンターを食らうと弾かれ、ノックバックに近い現象が起こる、セレスタンと合わせて2回も叩き付けられるとカウンターダメージが蓄積し、ほとんどノックバック状態だ。

 そこへ俺とリカ、セレスタンが叩き付けたことでノックバックダウンを奪ったのである。


 攻略法の発見だ。カウンターが攻略法とか難易度高ぇ。

 さすがは上級中位ジョーチューのレアボス。

 大ダメージを受けて召喚獣がダウンから復帰する。

 しかし、ここからは好きにはさせないぜ?


「メルト、動きを遅くしてくれ! 重力十倍だ!」


「任せておけ! 『十倍キログラビティ』!」


 ミサトに素早さを奪われてなお速い召喚獣だったが、メルトが相手に〈束縛〉を強制付与する重力を発動。『無効化』系を持っていなければ必ずノロノロ状態だ。

 そして体外状態異常である〈束縛〉に耐性を持っていないボスは割と多い。

 纏っていた吹雪すら地面に叩き付けられ、鎧の一部が消え去ったな。今だ!


「遅くなったな! 吹雪の壁も消えた! 今だ、ガンガン攻撃を叩き込め! 反撃が来たらカウンターで吹き飛ばしてやれ! 『サンダーボルト』!」


「ふっ! 承知した!」


「ブオオオオオ!」


「遅い! 見える、見えるぞ。食らうがいい――『双・燕桜』!」


「ブオオ!?」


 ユニークスキル『双・燕桜』直撃!

 良いダメージが入ると硬直状態になった。

 そこからの流れがこっちに来る。


 この召喚獣は非常に強い。

〈氷属性〉に無効化はついているものの、他には付いておらず〈マジスロ〉よりも戦いやすい。

 ただステータスが異常に高く、単純に強いのだ。そこに最初はバフが掛かっているものだからかなりの難易度。

 マジ、リカとセレスタンを連れてきていて良かったよ。デバフ系が使えるミサトに状態異常を与えられるメルトが居たのもラッキーだった。


 いきなりのレアボス戦だが、動きを押さえたうえでカウンターを決める戦法を確立してからはかなり楽になり、攻撃のダメージが大きいけどミサトがしっかり回復してくれるため、召喚獣のHPバーを危険域レッドゲージまで削ることに成功する。


 そこでとうとう警戒していたことが起こる。

 召喚獣のからだから発せられたのは、ユニークスキルのエフェクトだ。


「! ユニークスキル来るぞ! ミサト! メルト!」


「うん! 『桃色サンクチュアリ』! 『アブソープション』! 『リフレクション・ヘル』!」


「させるか! 『十倍キログラビティ』! 『三十六・重穴じゅうけつ展開』!」


 ミサトにはHPとMPドレインを展開しながら魔法の反射結界を展開してもらう。

 メルトは相手の動きを抑制しつつ、防御魔法で何が来ても防ぐ狙いだった。


 リカとセレスタンも何が来ても良いように構える。

 俺はリカの側で何があっても対処できるよう備えた。


「ゴオオオオ!」


 ユニークスキルが発動する。その名も『宮廷魔導師団長流・召喚獣大暴走ナダレグランキだいぼうそう』。

 もう完全に名前の通りです。ありがとうございます!


 召喚獣大暴走で暴れまくり、そこら中に鉤爪でひっかきながら我を失ったかのように召喚獣ナダレグランキが突っ込んで来た。タゲも役に立たず、あちこち切り裂きビームを吐きながら大暴れ。

 こんな室内であの巨体で暴れ回るものだから安全圏が存在しないんだよ。

 あ、こっち来やがった。


「ゴオオオオオ!」


 まず暴走召喚獣が攻撃を加えたのは、ミサトの『リフレクション・ヘル』だ。

 反射結界。そこにスキルエフェクトの光る鉤爪でパンチを叩き込むと、ガシャーンという音と共に粉砕した。


「うっそー、またぁ!?」


 1日に何度も結界をぶっ壊されてミサトもびっくりだ。デバフを与えたことでようやく壊されなくなっていたはずなのに。

 これがユニークスキルの力。ユニークスキルだけは上級上位ジョウジョウに完全に足を踏み入れている強力な攻撃。〈四ツリ〉の防御魔法でも生半可なものでは突破されてしまう。


「正面からは無理ですね。では、側面を――『波動剛歩爆ごうふばく』!」


 そこへセレスタンが足の横部分に拳を叩き込む!

 むっちゃぐらっと揺れてんじゃん! というか、あの大暴れの中なに涼しい顔で突っ込んでんだセレスタン! 俺もやる!


「俺もいくぜ! 『完全勇者アブソリュートブレイバー』!」


「ゼフィルス!?」


 リカの声を置いてきぼりにし、こっちに来ようとしていた召喚獣の前にダッシュして、足に一閃。


「『勇気ブレイブハート』! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」


「ゴオオオオ!?」


「『紅蓮爆練拳』!」


 セレスタンが攻撃したのと同じ足に攻撃を叩き込むと、召喚獣がぶれるぶれる。

 あれ? これ行けるんじゃね?


「メルト!」


「まかせろ! 『集束・グラビティレーザー』!」


 声を張るとすぐにメルトから強力な36のレーザーが放たれる。それも足に直撃し、召喚獣は完全につんのめった。

 だが、ダウンすることなく、鉤爪で俺を襲う。かなりの執念だった。


「ゴオオオオ――オオ?」


「だが、効かない!」


 しかし、今無敵中。俺への攻撃は効かないぜ!

 そして、締めるのはリカだった。


「この足を刈れば良いのだな?」


「いったれリカ!」


「シッ――『二刀斬・雷鳴麒麟らいめいきりん』!」


 ゴシャアアンという雷が落っこちたような音と共にリカの攻撃が足に叩き込まれると、ズルっと足が浮き上がり、そのまま召喚獣が前のめりにずっ転けた。


「ゴオオオオ!?」


「おっしゃダウンだ! 総攻撃!」


 ちょうど俺も無敵が切れてスキルが使えるようになった。

 ここで総攻撃を食らわせると、ようやく召喚獣ナダレグランキのHPがゼロになる。


「ブオガ……ガガ……」


 そして暴走召喚獣は大きなエフェクトを発生させて沈んで消えていったのだった。


 そしてその後には〈ナダレ〉が―――おらず、〈金箱〉が4つ現れていた。

 パ、パパパパパ、〈パーフェクトビューティフォー現象〉だーーーー!!




 ――――――――――――

 後書き!


〈パーフェクトビューティフォー〉は明日よ!

 ビンタは明日に取っておいてください!

(フライングはノーカウントなのでよろしくです!)



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