第1385話 第2形態からはツインズボス!リカ本領発揮!
第一形態は魔導師のみだったが、第二形態からは召喚獣の前衛が加わり〈ツインズ〉化するのが〈守氷ダン〉のレアボスだ。
第一形態とか、前衛無しの後衛のみとかそりゃ楽だわ状態だったが、前衛が登場したことで難易度が格段にアップする。ここからが本番だな。
「『
「ゼフィルス!?」
まずは近づいて一撃。凄まじい衝撃のユニークスキルがズドンとオーガの足に決まる。
すると、なぜか〈ナダレ〉のHPバーが削れ、防御力デバフアイコンが付いた。
それを確認して俺はすぐに指示を出す。
「予想通りこいつは〈ツインズ〉系だ! 2体で1体のボスだと思え!」
「! 承知した!」
それだけで俺の言いたいことは伝わっただろうリカが刀を構える。
〈ナダレ〉と
「ブオオオオオオオ!」
召喚獣の拳による物理攻撃。
15メートルからなる巨体の拳はリカの身長よりも大きい。しかしスキルエフェクトは無かった。つまりは単純な通常攻撃。
「『切り払い』!」
そんな中途半端な攻撃がリカに通用するはずも無く、一瞬で切られて払われていた。リカの真横を通過する巨大な腕にリカが切り返す。
「『ツバメ返し』!」
ズバババンと一瞬で三撃を叩き込む。
本来なら防御スキルで弾きノックバックしたところに追撃を入れるコンボだが、これほどの巨大な相手ではそれもまったく意味を成していない。ちょっと腕が弾かれた程度だ。
「ブオオオオオオオ!」
「ボオオオオオオオ!」
ほんの少しのダメージを受けて腕を戻す召喚獣が、今度は両の拳を使って攻撃する。連打だ。しかし、リカに対してはまだ甘い。
「スキルも使われていない拳なぞ――『制空権・刀滅』!」
「メルト、セレスタン、側面に回り込んで攻撃開始だ!」
召喚獣の攻撃は高威力ではあるがスキルは宿っていない。
防御スキルを使っているリカが防御勝ちするのは道理だ。
その間にアタッカーが攻撃を開始する。
魔導師〈ナダレ〉は肩の上に乗っていて届かないため、レアイベントボスの〈グランキ〉と同じように足を狙う。
セレスタンと俺で斬り込んだ。
しかし、デバフアイコンが付いているのにそのダメージはあまりよくない。
その正体は召喚獣の防御力が非常に高いからだ。デバフを付けないとまともなダメージにもならない。
それを見たメルトが動く。
「ならば、俺は〈ナダレ〉を狙ってみる――『フレアバースト』!」
「ボオオオオオオ!」
「! 防御しただと!?」
メルトは遠距離攻撃で召喚主である〈ナダレ〉を狙うが、動けるのは召喚獣だけでは無い。〈ナダレ〉も動くことが可能だ。
メルトの『フレアバースト』は〈ナダレ〉の氷の壁に防がれてしまう。
「〈ナダレ〉への攻撃は通じないということか」
「でも今の所、魔法攻撃にも属性攻撃にも物理攻撃にも耐性は無い感じだよ!」
「私も! 物理に切り替わったことでさっきよりも戦いやすくなった!」
「〈謎ダン〉の最奥ボスより戦いやすいですね。いえ、ですがこれは?」
メルト、ミサト、リカ、セレスタンが攻撃しながらも特性を探っていく。
〈謎ダン〉の〈マジスロ〉は多くの攻撃を無効化するとんでもないボスだった。
それと比べると、こちらはレアボスなのに比較的マシに見える。
先程まで魔法主体の〈ナダレ〉によってやりづらそうにしていたリカも、召喚獣が物理攻撃なのでずいぶんやりやすそうだ。
本当なら魔法攻撃から物理攻撃に切り替えられたら多少はやりづらくなるはずだが、リカにとっては逆に幸運だな。
だが、それも〈ナダレ〉が動き出したことにより一変する。
「! 気をつけろ! 〈ナダレ〉が動くぞ!」
「なに!?」
「ブオオオオオオオ!」
「ボオオオオオオオ!」
俺が警告を発した次の瞬間には、召喚獣の右腕と氷の飛礫がリカに迫っていた。
2体からの同時攻撃だ。
「『制空権・乱れ椿』!」
それをリカは制空権のスキルで片っ端から斬り落としていく。
続いて巨大氷落とし。左右からは召喚獣の拳が迫る。
〈ナダレ〉と召喚獣が連携を組んできたのだ。
「『
それをリカがすり抜けて一太刀の反撃を叩き込む。
だがそこへ召喚獣の蹴りが炸裂し、リカは防御スキルの発動が間に合わず吹き飛ばされてしまう。
そこへ氷の飛礫が迫った。
「ミサト、援護を!」
「うん! 『ミラークロスバリア』!」
氷の飛礫が鏡の結界により反射され、リカは空中で体勢を立て直して着地する。
「すまない、助かった」
「リカ」
「ああ。ゼフィルスの言わんとしていることは分かっている。これは、思ったよりも強敵だったやもしれぬな」
リカの頬に一筋の汗が流れる。
相手の攻撃に対してリカは反撃スキルを使った。しかしそれに対して相手の切り返しが早く、リカの次のスキルの発動が間に合わなかったのだ。
そう、相手の攻撃が予想以上に早いのだ。2体同時攻撃だから手数も多い。
これは、相手が
さすがツインズ系ボスである。
〈ナダレ〉も加わると、リカの防御が間に合わないほどの手数になる。
ノックバックさせて時間を稼ごうにも、相手が巨体すぎてノックバックしない。
ツインズ系ボスなので2体を分けることもできない。
こうなると盾を持たないリカはいつものように地に足着けての防御斬りが難しくなる。足を使い、攻撃を避けながら防御スキルも使って反撃することが求められるのだ。
かなりのハードモードである。
だが、リカは少し忘れているな。
「私に任せてよ!」
「ミサト?」
「あの〈ナダレ〉の遠距離攻撃は私が防ぐ。だからリカちゃんはあの鬼の攻撃だけ捌いて!」
「……! そうか、承知した!」
「いっくよー! 『プロテクバリア』! 『色欲の鏡』! 『攻撃力ドレイン』! 『防御力ドレイン』! 『魔法力ドレイン』! 『魔防力ドレイン』! 『素早さドレイン』!」
ツインズを1人で相手にしようとするのは難しい。ならこちらも複数で守れば良いのである。
タンクを支えるのがヒーラーの役目だ。そう言わんばかりにミサトはリカのフォローを買って出た。頼もしい。ドレインしまくり敵をどんどん弱体化させこちらをパワーアップさせた。
リカも後ろには守るべき仲間と同時に頼れる仲間が居ることを思いだしたのだろう。リカはミサトに礼を言い、再び視線が召喚獣へと固定される。
「俺もフォローに回る。来るぞ『三十六・
冷凍極太ビームのようなものが〈ナダレ〉から照射されるが、メルトが展開する36の小さなブラックホールに歪まされ、吸い込まれて消えていく。
「お返しだ――『集束・グラビティレーザー』!」
〈ナダレ〉の攻撃を吸い込んだレーザーがズドーンと召喚獣に直撃。なかなかのダメージが出て僅かにノックバックした。今だ。
「リカ、そのまま奴らの足下へ潜り込め! 足の下が一番攻撃が来にくいと見た!」
「感謝する! 反撃だ――『制空権・
「私も援護するからね。『ハイヒール』!」
後ろは大丈夫だと分からせ、リカに指示を出すと、リカは相手の攻撃を受け流しながら足下、召喚獣の足の間へと入り込む。
あそこがかなりの安全圏だ。何しろ召喚獣の肩に乗った〈ナダレ〉からはリカは死角になっているから、攻撃が来る心配すらほとんど無い。
後は召喚獣の攻撃に気をつけておけばリカがそう簡単にやられることはないだろう。
〈ナダレ〉はターゲットが狙えないため、タゲを次にヘイトの高い俺に変えて攻撃してきた。
しかし、ミサトやメルトの防御もあり、俺とセレスタンはほとんど反撃を気にせず攻撃に集中することができた。
先程からセレスタンと足を攻撃しまくっていた影響で、ついに膝を突かせるに成功する。ダウンだ!
「召喚獣ダウン! 今だ!」
「ボオオオオオオオオ!」
召喚獣がダウンしたが〈ナダレ〉は健在だ。
ここぞとばかりに攻撃を加えても5割くらいはナダレによって防がれてしまう。
とはいえ、狙いは別だ。召喚獣が屈んだことで登りやすくなった背を駆け上がり、〈ナダレ〉本体にアタックを仕掛けるのが狙い。
「ふ、ようやく拳が届きますね――『紅蓮爆練拳』!」
「ボオオ!?」
〈ナダレ〉の体にセレスタンの拳が抉り込むと、HPが面白いように減った。
やっぱり魔導師には接近戦が一番だ。
俺もセレスタンに一拍遅れて『
「ここです――『必殺抜き手』!」
ズドンとセレスタン必殺の抜き手が〈ナダレ〉を襲う。
これには〈ナダレ〉もビクンビクン体を震わせ、そのまま召喚獣の肩の上で器用にダウンした。
ここで、総攻撃。
召喚獣の方は物理にはデバフがないと攻撃がまともなダメージにならないくらい固いが、魔法はそこそこ効く。
メルトがここぞとばかりにユニークスキル『アポカリプス』や『ドラゴン・ロア』をぶっ放していた。ミサトも追撃に加わり、リカも遅れて〈ナダレ〉のところに合流。全員で総攻撃をかました。
「ブオオオオオオオオ!」
「ボオオオオオオオオ!」
ダウン復活。
俺、リカ、セレスタンを肩からふるい落とそうとしてくる。だが。
「二つ目のHPバーももう無くなるぞ! 『ライトニングバニッシュ』だ!」
「これでトドメです――『バトラー・オブ・フィスト』!」
「ボオオオオオオオ!」
その寸前で俺とセレスタンの攻撃により二つ目のHPバーが消える。
続いて第三形態。
〈ナダレ〉が最後に強化魔法を使う。
「ブオオオオオオオ!」
「ボオオオオオオオ!」
すると召喚獣の体が筋肉もりもりに変化。
ドクンドクン脈打つ血管が浮き出て、明らかにパワーアップしてそうな見た目に変化する。さらに立派な角があった頭には首を覆うヘルムに似た装備、腕には
なお、〈ナダレ〉に変化無し。
「って召喚獣の形態が変わるのかよ!?」「〈ナダレ〉第一形態とまったく変わってねー」と何度もツッコミをもらった第三形態だ。
しかし、これだけでは終わらなかった。
「ガアアアアア!」
「ボオオオオ!?」
召喚獣がひょいっと召喚主である〈ナダレ〉を摘まみ上げると、そのままパクッと食べてしまったのである。
「あ」
上半身を食べられ、足をばたつかせる〈ナダレ〉。
召喚獣はそのまま上を向くと、そのままちゅるちゅると飲み込んでいって――――ゴックン。
〈ナダレ〉は、食べられてしまった。
――――――――――――
後書き!
久しぶりのレアボスは明日でラスト!
ちょっと書く手が止まらず2話で終われなかった。
お楽しみに!
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