第1382話 レアイベント報酬は発現条件と〈金箱〉2つ!?
〈グランキ〉が消滅した後、巨大扉を通れるようになった。
ということで突入だー!
「『ゼフィルスさん、そこはわたくしたちでは探知圏外のようですわ。十分注意してくださいまし!』」
「了解。とはいえボスも倒したし、この先は行き止まりだろう。危険は無いはずだ」
リーナから通信が入ったので安心してくれと言っておく。
〈竜の箱庭〉には、この大扉と中は投影されないんだ。
まあ隠し部屋みたいなものだからな。隠し扉と隠し部屋がなぜ〈隠し〉と付いているのか、それは地図に映らないからなんだよ。
まあ、映ったら隠しではなくなってしまうからな。発見し放題になってしまう。
というわけでこの中に入ると俺たちの反応も地図から消えるので、リーナたちにも共有しておく。
通信が終了し、大扉の方に振り向く。
「さーて――ってすでにみんな入り始めてる!?」
「ゼフィルスー、早く来ないと置いてっちゃうわよー」
「わはははは!」
見れば俺の班だけではなく全員が扉に続々と入っているところだった。
すでに危険を確認し終わったのか、ラナがこっちに手を振っている。奥からはニーコの高笑いが聞こえるかのようだ。
くっ、俺が出遅れただと!?
「ちょちょ、ギルマスの俺を差し置いて先に入るとはなにごとだー! 俺も行く!」
「みんな扉に入ったところで待っているから慌てなくても大丈夫よ」
ダッシュで駆け寄ると、同じく扉のすぐ側にいたシエラに落ち着けと言われたのでクールダウン。
ふう、さすがに俺を置いて部屋の中を丸裸にはしなかったか。
「わははははは!」
「……なぁシエラ。ニーコの高笑いが部屋の奥から聞こえるんだが?」
「……さっき〈金箱〉を開け損ねていたからね」
くっ、ニーコが〈金箱〉の魔力に攫われてしまった!
これが〈ダン活〉じゃなければ、囚われのニーコになってR15になっているところだぞ! 〈ダン活〉は年齢制限Bなのでセーフ。まあ冗談だ。
「中は、ここも氷の部屋なのね。いえ、洞窟かしら?」
「調べましたが。敵や罠はありませんでした」
シエラが言うとおり、扉の中は細長い洞窟だった。
慣れた様子で戻ってきたシズが俺たちに報告してくるのに頷く。
「ニーコは奥だな? この辺は何も無さそうだ、奥に行くぞ!」
「「「おおー」」」
そう言って少し奥へと進むと、まさに隠し部屋、と言わんばかりのドーム状の部屋が奥にあった。
「ここは……!」
中に入るとまず驚いた声を出したのはシエラだった。
そこにはなんと、〈金箱〉が2つ。とそこに飛びついているニーコ。
しかし、シエラたちが見ていたのはその奥や横に描かれた壁画の方だ。
正面奥の壁画には【雪氷園の姫君】と【氷帝姫】の就き方のヒントとなるものが画かれている。他にも側面には【永久凍土の氷城主】や【
それを見て一瞬静かだったシエラたちが徐々にざわめいていく。
「これは、大発見じゃないかしら?」
その言葉に頷き、ラナがはしゃいでシズが冷静に解析する。
「凄いわね!! これは〈夜ダン〉と同じく
「この情報を持ち帰れば、確実に大きな騒ぎになりますね……」
パシャパシャ。
「ちょ、ゼフィルスさん何撮っているデース!?」
「え? 情報を持って帰るんだろ? 俺とスクショに任せろよ!」
俺とスクショさんが手を組めば不可能なんて無い。
「これは、また学園長に報告しなければなりませんね。偲ばれます」
セレスタンがなにか呟やいていた気がしたが、俺には聞こえなかったんだ。
「みんなそんなことより宝箱だよ! 〈金箱〉が2つなんだ! さぁ開けようじゃないか! もちろん片方はぼくが開けるよ!」
おっと先程から〈金箱〉の前に陣取ったニーコが満面の笑みだ。
俺も是非そっちに参加したい!
「こんなところにある宝箱、ね。いったい何が入っているのかしら」
横目で俺を見るシエラの眼差しにゾクゾク来そうだ。
ここに画かれている大部分は「伯爵」カテゴリーの発現条件。
何しろここは〈守氷ダン〉。守りで氷のダンジョンである。
守りの伯爵とも言われた「伯爵」カテゴリーの上級高位職のヒントが数多く隠されている場所でもあるんだ! 要は「伯爵」関連イベントダンジョン!
そんな場所に置かれた2つの宝箱。
シエラはとても気になるようです。
「シエラ、ならシエラが開けてみるか?」
「……そうね。今回は開けさせてもらってもいいかしら?」
「どうぞどうぞ!」
ということで、開けるのはシエラとニーコに決まった。
無論ここは隠し部屋なので固定宝箱だ。中に入っているものは知っているので譲るのに問題はない。
ラナとカルアはさっき開けたので自重した様子だ。
おお~。シエラが宝箱を開けるなんて久しぶりに見た気がするぜ!
最近は大人数での攻略も増えて、宝箱は開けたい人のローテーションにしていたからな。
それでも自分の番がくるのは遠い。
「では祈ろうじゃないかシエラ君」
「ええ」
隠し部屋の宝箱には〈幸猫様〉のお力は及ばないが、祈るのは良いことだ。
俺も祈っておこう。
「では、ぼくから開けるよ! じゃーん!」
じゃーん言いながら開けるニーコ。
中に入っていたのはまたもレシピ。
「レシピばっかりね!?」
「上級中位ダンジョンからはレシピが増える傾向にあるようだな」
ラナが目を丸くしながらツッコむのに頷き、それとなーく上級中位ダンジョンからはレシピが増えることを教える。
シエラがピクリと動いて視線を感じたが、振り向いても良いのだろうか?
きっとジト目だ。
振り向くと、案の定シエラがジト目で俺を見ていた。やったぜ!
「ではニーコさん、こっちにレシピを向けてください。『解読』!」
「ありがとうエステル君。ふおおおお! 読める、読めるぞ! これは、素晴らしい〈栄光宮守の盾レシピ〉と書いてあるね。盾のレシピだよ!」
その言葉に俺の方を向いていたシエラの興味が移ってしまう。くっ、残念!
まあ知っていたけど。
ニーコの言うとおり。1つに入っていたのは盾系の装備レシピだ。
それも小盾、大盾、両手盾全てを兼ね備え、まさにタンクのためにあるという超強力な盾だ。
ここは〈守衛の氷宮ダンジョン〉。伯爵のためのダンジョン。
伯爵系の装備が埋まっている、とても素晴らしいダンジョンなんだ。
その実力はとんでもなくて、シエラが装備している〈ドラゴンカイト〉を超え、
一番強い盾を作るにはレアボスかレアイベントのボスの素材がいるので、採りにいかないとな!
「次は私が開けるわ」
ジッと盾のレシピを見ていたシエラが唐突に自分の担当する〈金箱〉を掴む。
無表情を装っているが、それなりに長い付き合いになりつつある俺には分かる。
あれは楽しみにしている顔だ!
そしてシエラは〈金箱〉を開ける。
「レシピよ」
そして案の定、レシピだった。
すぐにエステルが『解読』する。すると――。
「これは、〈栄光宮守のアクセレシピ〉と書かれてあるわ」
それはアクセサリー系のレシピだった。
先程のレアイベントボスからは〈氷生頑守シリーズの全集レシピ〉や〈氷守軽装シリーズの全集レシピ〉などの全身防具。奥の部屋からは盾とアクセのレシピが回収できる。それがここのレアイベントの報酬だ。
本来は壁画のヒントの方が本命なんだが、もう知っている俺からすればこっちの方が重要。
アクセサリーの性能も凄くて、防御スキルの
これは文字通り、防御スキルを発動したとき、フィードバックのダメージを抑え、防御スキルが少し突破されづらくなるというとんでも効果である。相手の攻撃が温ければ相殺出来たり、防御勝ちできたりも楽になる。素晴らしい。
これはLV10にしてタンク全員に配りたいところ。
タンクはパーティの要だ。
俺が是非ここに来たかった理由が分かるだろう。
シエラは『防御スキル全昇』なんて初耳なのでピンと来ていない様子だったが、なに、すぐに分かるさ。
〈守氷ダン〉を攻略したらすぐに作製に取りかかろう。
よーし、このまま最奥ボスまで突っ走るぞー!
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