第1381話 〈金箱〉回!悪い流れはラナが全部ぶった切る




「倒したー!! そんで宝箱だーーーー!」


「ふおおおおおお!? 〈金箱〉が3箱もあるじゃないかーーー!!」


 俺とニーコのはしゃいだ声が大きな広場に響き渡る。

 レアイベントボス現る。でも撃破。

 攻撃力がとんでもなく高かったレアイベントボスも、このメンバーなら容易く封殺! ランク後半と違って、ランク2のレアイベントはまだやりやすいとはいえ、難なく撃破出来たのはすごくいい。

 今なら〈火口ダン〉のレアイベントボス5体も正攻法で倒せるのでは無かろうか?


 ふっふっふ、ちょっと試してみたい気持ちが高まる。

 まあ今はそれは置いておき、目の前に集中しよう!


 レアイベントボス、その後に残っているのは――〈金箱〉確定!!

 しかもこれは、〈幸猫様〉 とニーコの『レアドロップコレクション』が重なったようで3箱もあった。素晴らしい!


 どっちに感謝のお祈りをすればいいか迷うところだな!

 両方に祈っておくか!?


 テンションの赴くままに身を任せようとしていると、部屋に変化が起こってリカたちが呟く。


「む、周りに散らばっていた氷も全て消えていくのだな」


「だが、消えるのはどうやらボスから生み出されていたものだけのようだな。証拠に、ダンジョンオブジェクトの壁や天井は変わりない」


「はい。レグラム様の言うとおり、ここに来たときのままですね。ただ、先程と変わった所が1つ。扉の奥に入ることができるようになっていますよ」


 オリヒメさんの言葉に多くのメンバーが開け放たれた巨大な縦の扉を見る。

 そこにあったあふれ出るほどあった氷は全て消え、扉の中に入れるようになっていたのだ。

 レアイベントを起こしておいて、ボスをスルーして中に入ることはできない、というギミックだな。しかし、ボスを倒せば氷は消え、中には入れるようになる。


 単純なギミックだが、レアイベントとしてふさわしい。普通のボスには無い特性だ。


 みんな中の様子が気になるようだ。

 しかし、それはまだ後回し。何しろ、ここに〈金箱〉があるのだから。


「この〈金箱〉は私が開けるわ!」


「ラナがすでに1つ確保してる!?」


 負けられない戦いが勃発か!? 気が付いたらラナがいた。さっきまでおとなしかったのに!?

 すぐに俺とニーコも〈金箱〉確保に走る。

 そして俺は無事1つを確保した。横目ではニーコがカルアに〈金箱〉を取られて愕然としている様子が見えた気がしたが、気のせいじゃ無かったみたいだ。ドンマイだ。


「2人とも、まだ開けるなよ。……ニーコ、落ち込んでいるところ悪いが『レシピドロップ率アップLV10』と『装備全集ドロップ率アップLV10』を頼む」


「うおぉぉ、勇者君は鬼畜だぁ。落ち込んでいるぼくに働けと言うのかい?」


「おう! 頼むぜ」


「勇者君は鬼だよ。まあスイッチ入れるだけだからいいけどさ」


 ニーコの能力は宝箱の中身にも影響を及ぼす。

 パッシブスキル『レシピドロップ率アップLV10』と『装備全集ドロップ率アップLV10』は両方を使うことで、なんと装備全集のレシピをドロップできる確率が大きく高まるのだ!


 基本的に最近のニーコにはこれをオンにしてもらい、その他の宝箱の中身に影響を与えるパッシブスキルはオフにしてもらっている。

 今一番欲しいのは装備全集のレシピなんだよ。


 そしてここの〈グランキ〉が落とす全9種類のドロップのうち、2種類が装備全集のレシピなのだ。そして2種類は装備ドロップ。俺はレシピの方が欲しいため、ニーコに念を押していた。

〈金箱〉しかドロップしないレアイベントボスはそのドロップする種類も少ない。

 そこにニーコの能力が加われば、確率的に引けるはずだ。こいこい!


「準備オーケーだよ」


「よし、2人とも、かかれー!! ――〈幸猫様〉〈仔猫様〉! いつも〈金箱〉ありがとうございます! どうか中身も良いのをお願いいたします!」


 ニーコの言葉にしっかりとお祈りを済ませ、ガッと〈金箱〉の縁を掴まえて開く。

 そしてその中には――〈極寒零度・クリスタルブレードレシピ〉なる、武器・・のレシピが入っていたのだった。


「レシピだ!」


「では『解読』です!」


「――なん、だと?」


 エステルに〈幼若竜〉を使ってもらい、発覚。

 持ち上げてから落とされた感覚。

 これ装備全集じゃなーい!


「ありゃりゃりゃ。まあ、ドンマイだよ勇者君。こういうこともあるさ」


「ニーコがなんかすごい慰めてくるんだが!?」


 俺の腕をポンポンしながらとても優しい目をしたニーコが慰めてくれた。

 でもその瞳に〈仲間〉と書かれているのを俺は見逃さない。

〈金箱〉を確保出来なかったニーコが、あまりにも澄んだ瞳をしているんだが!?

 俺、ニーコの仲間に加えられている!?


 この流れでラナがいくー。


「次は私の番ね! 〈幸猫様〉〈仔猫様〉よろしくお願いよ」


 この流れは危険だ。ニーコと俺の仲間意識が引力となってラナの幸運を吸い取ろうとしている! ここで開けると高確率でいらないものを掴まされるぞ!?

 ――しかし。


「ゼフィルスの流れなんてぶった切ってやるわ!」


 そう言ってラナが宝箱を開けた。

 そこに入っていたのはレシピだ。

 無論エステルが〈幼若竜〉で『解読』する。


 するとレシピには――〈氷生頑守シリーズの全集・・レシピ〉と書いてあった。


「全集装備レシピ来たーーーー!?!?」


「ふふふふん! どうゼフィルス! これが王女の力よ!」


「くぅ! さすがはラナだ! あの流れで目的の大当たりを引き当てるだと!?」


「勇者君、眩しいよ! ぼくは眩しくてラナ殿下のご尊顔が見えないよ!?」


 どうやらニーコは目をやられたらしい。

 レシピを掲げて俺たちに見せてくるドヤ顔のラナに、俺とニーコの弱勢力はすでに解散の危機だ。いつでも解散しようじゃないか。


 ―――〈氷生頑守シリーズの全集レシピ〉。

 この〈守氷ダン〉レアイベントでのみ手に入れることができる〈金箱〉産装備で、〈鎧〉系に分類され、その防御力は上級上位ダンジョンのランク10クラスまで使用可能だ。

 もちろん優秀な【鍛治師】が作製した時、という注釈は付くが、うちにはアルルがいる。帰ったら早速作ってもらおうじゃないか!


「ん。次開けるね」


 続いてはカルアの番。

 ニーコの隙を見事に突いて〈金箱〉を確保し、開ける権利を勝ち取ったカルア。

 目が復活したニーコが半目でジーッと見つめていた。


 カルアもお祈りを済ませて最後の1箱をオープンする。中から出てきたのは、もちろんレシピだ。問題はここからだな。

 頼むぞ。当たらなかったら明日も狩りに来てやるからな! まあ、当たってもしばらくは狩りに来るかもしれないけど。

 そう俺が心の中で唱えると、〈グランキ〉がその巨体を揺らしながら目を泳がせていた姿を幻視した。まあ気のせいだろう。


 そして〈幼若竜〉で解読して出てきたのは――〈氷守軽装シリーズの全集レシピ〉だった。


「キターーー! 来たぞ来たぞ! 軽装レシピもキターーーー!」


「ぐあっ! ぼくがあの時もう少し速く走れていれば」


 喜びの俺と対照的にニーコが苦しんでた。ニーコはもう少し体力を付けよう。

 どこかで鍛えた方が良いかな?


 ―――〈氷守軽装シリーズの全集レシピ〉。

 これはもう1つの全集レシピ、軽装版だ。

〈鎧〉の方と同じく、上級上位ダンジョンのランク10クラスまで使えるぞ!


 これは帰ったら早速アルルとマリー先輩に頼もう。

 誰に着せようかなぁ。

 そんなことを思いながら、俺たちはレシピを回収する。


 ……俺が当てた〈極寒零度・クリスタルブレードレシピ〉の方はどうしようか。

 これもちゃんとアルルが作れば上級上位ジョウジョウランク10まで使える〈氷属性〉の大剣だ。しかし大剣を使うのはノーアだけだ。俺はいらない。

 作製して学園長にでも渡そうかな? オークションで目玉が欲しいって言ってたし、これなら申し分もあるまい。

 学園長喜んでくれるかな~。


 続いて巨大な開かれし扉へと向きなおった。

 レアイベントの本番。上級ダンジョンのレアイベントボスは例外なくお宝か、それに連なるものを守っている。

 

 つまり、中にあるのはお宝だ!!

 第二のお宝探索が今始まる!




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