第1380話 上級中位ダンジョン最初のレアイベントボス戦
『直感』が警報!!
『超反応』が発動して俺は素早く安全な場所へと移動する。
「これは、氷の
「まるで津波のようだな……!」
何かあってからでは危ないと扉の正面ではなく、左右に分かれていたメンバーたち。おかげで扉の正面で鍵を開けていた俺以外に被害らしいものは無かった。
気が付けば俺はラナやリカたちのいる場所へ避難を終えている。
さすがは『超反応』だ! 俺は信じてたぜ!
まあ、氷の津波に呑み込まれてみんなが「ゼフィルスー」と叫んでいるところに『
ちょっとやってみたかったのは秘密。
「エステル、そっちの被害は!」
「ありません! 全員無事です!」
シエラが氷の津波によって分断された向こう側にいるエステルへ確認を取る。
「初見殺しの罠デースか!」
「っ! 気を抜かないでくださいパメラ。中から何か出てきます!」
開け放たれた縦に細長い扉。
その中からまるで溢れたと言わんばかりの氷はすでに止まっている。
しかし、中から氷をかき分けるような音が聞こえてくるのだ。
そしてそれは扉へと向かってきている。
「出てきたわ!」
「これは、オーガ種ですか!?」
出てきたのは、鬼だった。
青白い肌、服の代わりに身に着けられた氷の鎧。盛り上がる筋肉。
もっさもっさの髭は全て凍っていて
頭に生える2本の角は凍っておらず、しかしそこから次々と氷が発生しては地面に落っこちていた。
「名前、出ました――〈
エステルが素早く〈幼若竜〉を向けて名前を看破していた。
名前の通り、こいつは氷を生み出すオーガ。通称〈グランキ〉。
身長は13メートルという超巨大なオーガで毎秒大量の氷を生み出し続ける、これまでのボスとは違う、一風変わったボスだ。なお、腹筋への直接攻撃はしてこないので安心。
早速行くぜ!
「シズ、『フラッシュ・バン』連射!」
「はい! 『フラッシュ・バン』! 『チェーン』! 『連射』!」
先制攻撃!
俺が剣先を目標に向けつつ指示を出せば、シズはすぐにそれに反応してスキルで撃つ。
ドンと放たれた銃弾は、狙い違わず〈グランキ〉の目の前で閃光を放った。
さらに連射でどんどん眩しい光を味合わせる。
ふっふっふ、ずっと薄暗い扉の中にいたんだ。眩しい光が目に染みるだろう。
こいつはなぜか〈盲目〉と〈暗闇〉になりやすかったんだよなぁ。
「ガアアアアアアア!!」
そして〈グランキ〉のHPバーに〈盲目〉のアイコンがつく、成功!
「攻撃開始だ!」
「『雷速天空・
俺が攻撃開始を宣言するとまず飛び出したのはレグラム。
雷のような早さで一気に顔面の前まで跳ぶとガンガン切り結ぶ。
「ガアアアアア!」
他のみんなも負けてはいない。
というより俺のゴーサインの前にすでにシエラやラクリッテがタンクをするべくヘイトを稼いでいたり、4つの小盾を跳ばしたりして準備を完了させていたりする。
ラナやオリヒメさん、ノエル、ニーコ、ルキアはすでに距離を取っており、みながみな、最適なポジションと役割を果たしていた。
〈エデン〉って最高!
「バフは私に任せてね――『プリンセスアイドルライブ』! 『リズム・メロディ・ハーモニィ』!」
「私は攻撃に専念するわ! オリヒメ、回復は任せたわよ! 『大聖光の十宝剣』!」
「はい。任されましたラナ殿下。『生命のメロディ』! 『オーバーメロディアブソーバー』!」
「ぼくはこっそり撃ちまくっていることにするさ。でも最後だけは任せてくれ『ファーストドロー』!」
ノエルのバフが全体に届き、ラナがなぜかアタッカーにポジションチェンジし、オリヒメさんの継続回復の歌が全体に掛けられる。ニーコはこっそり攻撃するようだ。
〈グランキ〉はまだ〈盲目〉のふらふら状態だが、ダメージを受けてついに手に持った巨大棍棒を振り回し始めながら一歩氷の中から足を踏み出す。
そこを逃さずルキアが動いた。
「おっとふらふらじゃない! ここは良いの決めちゃうよ~『ノットフリーズタイムオーバー』!」
それはノンストップ魔法。動いているモンスターはブレーキを掛けることが出来ず、そのまま過ぎ去ってしまうのだ。
これをされた〈グランキ〉はスーッと氷を滑るかの如く動き出す。止まらない。
身動きを封じ、むちゃくちゃに動いて暴れられなくなってしまった。
「ガアアアアア!?」
「ラクリッテ、デバフ頼む!」
「ポン! 恐怖の半壊弱体化――『ポンコツ』!」
「ガアア!?」
ラクリッテが盾でコッツン。相手にとんでもないデバフがくっついた。
今回は3パーティで挑むのでデバフは必須!
「では、私たちはこの足を薙ぐといたしましょう」
「うむ。やろうか――『二刀斬・
「『波動
そこへ両足へ攻撃する者が2人。リカとセレスタンだ。
リカの力強い雷属性の一撃が入ると同時に、もう片方の足にはセレスタンの爆発する拳が叩き込まれていた。
グラつく〈グランキ〉は軽くノックバックしているらしい。そこへ〈グランキ〉の首の後ろ、延髄の位置に1匹の猫が組み付いた。あれは、カルアだな。
「ここ――『急所一刺し』!」
ぶっすり。
巨大な〈グランキ〉にとってそれは針でチクッと刺されるようなものだろう。
しかし、HPがある限り、短剣だろうがなんだろうがこんな巨大なモンスターですら倒せるのが〈ダン活〉だ! そして、その効果も問題無く浸透する。
急所を刺された〈グランキ〉は〈盲目〉で訳分からん状態のまま、前のめりに倒れ込んだ。ダウンだ!
「ガアアアア!?」
「ナイスカルア! 『
「いきます。『
「今デース! 『忍法・影分身
ここで総攻撃。
ボスに特大のダメージが入ったな。
しかし15人3パーティで戦っているからか、ハンディによりその防御力は高く、さすがにエリアボスや守護型ボスのようには削れなかった。
ダウンが終わり氷をまき散らしながら起き上がる〈グランキ〉。
どうやら〈盲目〉も治っているようだ。
「シズ、ダメ元だが『閃光弾』」
「はい。『閃光弾』!」
もう一度〈盲目〉にできれば良かったんだが、〈二ツリ〉の『閃光弾』では掛かってくれなかった。残念。
「ガアアアアア!」
怒る〈グランキ〉。
すると棍棒を両手で持って振り上げ、ジャンプ。
そのまま地面に振り下ろそうとしてきた。そこには大量の氷がある。
「全体攻撃来るぞ!」
「『インダクション・フォートレスカバー』!」
ズドダァアアアアンと衝撃と氷が爆散して部屋全体に飛び散った。
しかし、飛び散るはずだった氷のほとんどは失速し、方向を変えてとある場所に集中する。
シエラの城のように巨大な大盾に吸い寄せられて弾かれて消えたのだ。
さすがはシエラである。
「ガアアアア!」
それを見て〈グランキ〉は、棍棒による直接攻撃を放つ。もちろんシエラにだ。シエラがしっかりとタゲを取っていた。
攻撃を受け止め、オリヒメさんから援護を受け取って次々防御を決めている。
「ガアアアア!」
〈グランキ〉の攻撃方法はかなり幅が広く、棍棒による叩き付け、振り払いなどの直接攻撃に加え、足でのキック、踏みつけ、素手によるパンチ。
そしてなにより、自分の角から氷の噴射までできるのだ。
これにはシエラも驚いたようだが、でもしっかり盾で止めていたよ。
「うっ。このダメージは、受け続けたら危険ね」
「ダメージが深刻なメンバーは離脱して回復しろ! 相手は2個ハンディを蓄えている。攻撃力もその分上がっているぞ!」
3パーティ参加なため、2個のハンディが乗っていて相手の攻撃力が半端ない。
範囲攻撃に巻き込まれる味方は少なからずいて、そしてそのダメージはかなり高かった。
俺の最強育成論の通り防御もHPも上げていなかったら何人かやられていたメンバーも出ただろう。エステルが運悪くダメージを受けたので下がらせる。
〈グランキ〉はさらに地面に散らばる氷まで使い始めた。
手に持って投げるのはもちろん、棍棒でまるでゴルフのスイングのように打ってくるのだ。
これはかなり初速が早く、避けきれずにダメージを負うものが続出した。
散弾のように打ち出される砕けた氷は、シエラだけではなく近くに居る者までダメージを負ってしまうのだ。
「くっ、氷が、邪魔です!」
「それは完全に同意だな!」
また、時間が経てば経つほど、部屋の氷が増えてくる。
理由は〈グランキ〉が常に氷を生み出し続けているからだ。
しかも氷がグラスに入れるようなサイズから岩サイズのものまで様々なのだ。
おかげで足場が悪くなってきて、特に遠距離系のメンバーは身動きがし辛くなってきていた。さらにはこの氷はいつ敵に利用されて吹き飛んでくるのか分からないのである。壁にも使えない。
とはいえ、障害物を意に介さないメンバーも多い。
「ん。『128スターフィニッシュ』!」
「『ドライブ全開』! 『
「これでどうだ! ――『轟光閃破』!」
「これでどうだデース! 『忍法・影分身雷竜落とし』デース!」
「この氷は全てオブジェクトでは無いと見た。ならば、粉砕すればいい! 『二刀斬・陽光
「まったくリカ様の言うとおりですね――『紅蓮爆練拳』!」
〈エデン〉のメンバーって逞しい人多くない?
カルアは『悪路走破』持ちで氷の上だろうがなんのそのだし、エステルは『悪路突破』を持っているので〈
パメラも『アクロバティック・フットワーク』のおかげで足場が悪くても三次元の軌道で走ってるし、リカとセレスタンはそもそも氷なんかお構いなしで破壊しながら〈グランキ〉を攻撃している。
まあ、そう育てた半分くらいは俺なんだけどな!
すると、〈グランキ〉が体を丸めるモーションに入った。
あ、あれは! 〈即死〉を付与する『地獄の冷凍レーザー』のモーション!
「ガアアアアアアアアアアアア!」
角から放たれた無数のレーザーが無差別に部屋中に放たれたのだ。
「にゃ!?」
「にょわー!?」
運悪くカルアとニーコに直撃! しかし。
「あれ? なんともない?」
「なんだね驚かせてくれて! 見かけ倒しかね!?」
「ガァア?」
いいえ、それは〈身代わりのペンダント〉の『即死無効』が発動しただけだな。
おかげで被害ゼロ!
しかも無効化することを俺は知っていたので、この隙だらけな、というか「あれ、なんで効いてないの?」とばかりに呆ける〈グランキ〉へ強烈な一撃を叩き込んでやる。
「『スターオブソード』!」
「ガァ!?」
これが見事に決まって〈グランキ〉のHPバーがレッドゲージに突入した。
「ガアアアアアアアアアアアア!」
〈グランキ〉がキレた。
「怒りモードだ! ノエル!」
「うん! 『鎮静の一曲・ラブ&ピース』!」
「ガアァァァ…………ァ?」
怒りが強制的に鎮められて「あれ?」ってなる〈グランキ〉。
――よし、今だ。
「『
「ガァ!?」
ズドンと衝撃!
脳天に直撃した勇者の剣によって、呆けていた〈グランキ〉が前のめりになって地面に叩き付けられた。すっごい衝撃! クリティカルダウンだ!
「総攻撃ーー!」
ここからはもう全力攻撃だ!
残りHPの少なかった〈グランキ〉はこの攻撃によってほとんどのHPを吹き飛ばされ、ダウンを復帰したはいいが、そこへニーコの『トレジャーショット』が眉間に打ち込まれてしまう。これがトドメとなってHPがゼロになり、そのまま後ろに倒れるようにして膨大なエフェクトの海を発生させて沈んで消えていったのだった。
あの後にはなんと、〈金箱〉が3箱も残されていた!
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