第1379話 ミミックに天誅を! レアイベントの扉発見!




「〈万能鍵(金)〉出ちゃったーーー!!」


「うわっひょーい! これでぼくたちに開けられない扉は無いよ! 最初から無かった気もするけどさ!」


 びっくり仰天。イエースでニーコとハイタッチ。

 不届きにも〈金箱〉様に擬態していた〈ミミック〉をニーコと成敗したら〈万能鍵(金)〉がドロップした!

 素晴らしい。


〈ミミック〉のドロップは中級以下とは違ってかなりの種類がある。

 何しろ上級ではレアモンスターが1ダンジョンに1種ではなく、ほとんど〈ミミック〉種を採用しているからだ。

 レアモンスターの矜持なのかあまり姿を見せないため、俺たちもこれが……何回目だっけ? 上級下位ジョーカーではあまり見ないからな。まあ上級中位ジョーチューからは宝箱も増えるので、より〈ミミック〉が出やすくなるんだ。


 そんなわけでいつかはドロップするだろうと思っていたのだが、思いのほか早かったな。実はもう何本か欲しいと思っていたところだったんだ。バラバラで行動すると、鍵が足りないという事態が何度かあったからな。


 他のゲームでは万能鍵なんて「だいじなもの」に分類されるものが、〈ダン活〉ではドロップに設定されている。そのためか〈万能鍵(金)〉が無いと割と苦労するので〈ミミック〉からもドロップする仕様となっていた。

 救済だな。

 なお、ダブっても〈ダン活〉にとって鍵は「だいじなもの」ではないので、普通に換金アイテムくらいの値段で売ることが可能だ。どちらにせよ嬉しいドロップだ。


「勇者君! 〈オカリナ〉を吹きたまえ。この辺りにいる全ての不届き者を成敗せねば!」


「その意見には完全に同意しかないが、残念ながら〈オカリナ〉では特定のモンスターは釣れないんだ。〈ミミック〉は擬態しながら待つモンスター。呼んでも現れないんだ!」


「くっ、この世に偽物が蔓延るというのかね!」


 俺とニーコは悔しがる。

 俺だって本当は〈ミミック〉を全て成敗してやりたいさ! そして隠しているお宝は全て俺たちのものだ! はっ! いかんいかん。ちょっと欲望が漏れた。

 ごほん。だが、残念ながらできないものはできないのだ。

 俺とニーコはグッと涙を飲み込んだ。


 そこへモンスターを轢いて一掃してきたエステルが合流する。


「えっと、ラクリッテさん、ゼフィルス殿とニーコさんは何をしてらっしゃるのでしょう?」


「へ!? え、えっと。私に聞かれましてもその……」


「うーん、このパーティはストッパーが不足しているね!」


 なにやらノエルがストッパーなるものを所望していたが、誰のことかな?

 報告はしないように。

 気を取り直していこうか!


 ちなみにもう1つの〈金箱〉はニーコが競り勝って開けてた。

 中身は氷のハンマー〈極寒突貫・グラドォス〉だった。能力はなかなかだが、片手ハンマーなのであまりいらない。学園長行きかな?


 仕舞っちゃおうね。

〈グラドォス〉を回収するとノエルから話題が上がる。


「でも改めて〈金箱〉からしかドロップしないはずのアイテムが〈ミミック〉からドロップするなんて不思議だよね~」


「ああ。それは実は〈ミミック〉本体が〈金箱〉の中に入っているからだ、という説があるな。あの宝箱自体は〈ミミック〉ではなく、本物の〈金箱〉で、中身だけ〈ミミック〉に乗っ取られているという話だぞ」


「あ、なるほど~。そうなんだ!」


「モンスターが宝箱に入り込んでいる、ということですか? でも、あんな小さいモンスターは一度も見かけていませんよ?」


「擬態能力が高いからな。索敵にも引っかからないんだ。まったく困ったやつだよ」


〈ダン活〉の〈ミミック〉はいわゆるヤドカリ型ではないかと言われていた。

 中身が本体で、側は本物の宝箱という説だ。

 宝箱を宿にするとか、まったく許せん。

 見つけ次第、全て成敗してくれる!


 ノエルの疑問に答えるとエステルがキョロキョロと宮殿内部を確認する。

 俺もゲームでは〈ミミック〉の中身だけというのは見たことが無い。だからよほど擬態が上手いのだろう。宝箱状態の〈ミミック〉はマジで索敵に引っかからないからな。


 そんな〈ミミック〉の生態解説(?)話に花を咲かせながらも探索は続く。


 楽しい時間というのはあっという間に過ぎていくもので、気が付けば50層に到達していた。


「みなさん、ここには階層門が3つあるそうですわ。さらに徘徊型なども出てきます。十分に警戒していきますわよ!」


「「「「「おおー!」」」」」


 そんなリーナの言葉に発破を掛けられ、ついに深層の入り口と言われる上級中位ジョーチューの50層に到着していた。

 まあ、50層には徘徊型は出てこないんだけどな。徘徊型が出るのは51層からだ。

 その代わり、ここにはそれよりもとんでもないものが眠っている。


 俺たちの班はいつも通りを装い、軽くリーナを誘導しながら進み、そこに到達した。

〈学生手帳〉でリーナにメッセージを送って『ギルドコネクト』を繋いでもらう。


「『ゼフィルスさん、いかがしましたか?』」


「こちら1班、何やら重厚な扉を発見した」


「『え!? ですがそこにはなんの反応も――ということは?』」


「ああ、これは隠し扉だな。何が隠されているか不明だ。戦力を集めてもらえるか? 『直感』に凄まじい反応がある」


「『! 承知いたしましたわ。少々お待ちくださいまし、近くにシエラさんのパーティとリカさんのパーティが居りますので合流してもらいますわ!』」


「頼む」


 通信が切れる感覚を受けて改めてそれを見上げる。

 そこにあったのは巨大な、巨大すぎる扉だ。

 高さ何十メートルあるんだろう? ここだけ宮殿の天井がやたら高かった。

 まるでボス部屋だな。


 そして、こんな怪しい部屋に怪しい扉があるのに地図上では見つからない。

 周りは全て同じような作りをしているのにここだけ異彩を放っていた。

 もう何かあります! と言っているようなものだぜ!


「いったい何が入っているのかな?」


「この大きさです。小さいもの、ということはまず無いでしょう。新たなボスモンスターなのかもしれません」


「は、はわわ! 私で受け止められるでしょうか!?」


「ねぇ勇者君。ここは誰かに任せて引き返そう、見なかったことにしようじゃないか」


「はっはっは。ニーコは冗談が上手いなぁ」


「いや、これっぽっちも冗談ではないよ?」


 ここにはランク2、〈守氷ダン〉に1箇所しかないとあるものが隠してある。

 今まで隠し扉というのは、実は無かった。

 何しろ、そこら中で鍵を使う扉があったのだ。隠し扉なんてあっても同じ扱いにされてしまうだろう。故にここでは鍵付き部屋はあれど隠し扉なんて無いと思われていた。


 しかし、明らかに隠された扉(特大)を発見!

 ……本当に隠す気があるのかは気にしないようにしよう。


 少しすると、ラナ、シエラ、シズ、パメラ、ルキアの2班と、リカ、カルア、セレスタン、レグラム、オリヒメさんの4班が合流する。

 部屋に入ってきたラナがこの部屋と扉を見上げて感嘆とした声を出す。


「うわ、なにこれ、大きいわねー」


「ようラナ、シエラ、みんなも、よく集まってくれた!」


「お待たせゼフィルス。……また何か見つけたのね?」


 何やら含みを感じさせるシエラ! でもまだジト目ではない。むむ?

 そこへオリヒメさんとレグラムが扉を見上げながらやってくる。


「同じ氷なのにここの扉だけ色が違いますね」


「何かあるのは確実だろう。ゼフィルスはここに何があると予想している?」


「実はこの扉、俺は似たようなものを見たことがあってな。〈夜ダン〉にあった〈ホネデス〉が居た隠し扉に似ているんだ」


「なに?」


 俺の言葉に緊張が走った。


 ――〈ホネデス〉。

 忘れもしない。というか忘れられないボスの代表格。

 キャラを貫通してプレイヤーの腹筋を何度も苦しめた凶悪なボスだ。

 良いドロップしか落とさないためよく狩りの対象に選ばれるものの、戦いをするには毎度覚悟が必要だったんだ。


 そして「悪魔」系の上級職発現条件が分かる部屋の番人をしていた。

 ここは、ちょっと雰囲気が似てる。

 まあ、「天使」イベントはもう少し先なんだが。


「つまりゼフィルスは、ここでレアイベントが発生すると読んでいるのね」


「そういうことだシエラ」


 レアイベント。

 希少ボス以外で、必ず〈金箱〉をドロップするボスが配置され、特定の場所のみで発生する上級のイベントだ。この〈守氷ダン〉ではこの50層でそれが発生するのである。


〈金箱〉しか落とさないボスということで、非常に強力なボスである。

 俺は『即死無効』が付いている〈身代わりのペンダント〉をひょいと取り出した。


「みんな、万が一に備えて『即死無効』を付けておこうか。〈即死〉は怖いからな。〈ホネデス〉なんかヨウカ先生やカノン先生を〈即死〉で倒しちまったんだ。備えておいたほうがいい」


「ふむ。確かに。同じような扉の先にいる者だ。何が起こるか分からないからな」


 俺の言葉にレグラムが同意して装備を交換する。

 いいぞレグラム。ナイスフォローだ。これでみんな疑いもなく装備を交換してくれたな。


「ゼフィルス、3パーティで挑むの?」


「なんだか今回は3パーティで挑んだ方が良い気がするんだ。俺の『直感』がそう言っている気がする!」


「ん。そう?」


 こらカルア、首を傾げるんじゃありません。

 結局3パーティでレアイベントに参加するということでリーナにも連絡を取り、準備完了。


「じゃあ、扉を開けるぞ! 何が起こるか分からないから気をつけろ! むしろ開けた瞬間から何か飛び出してくるかもしれないぞ!」


「……みんな左右に分かれて、タンクを前に出して頂戴」


 俺の警戒する言葉にシエラは的確に対処する。

 シエラの信頼を感じる気がする!


 扉の前で構えていた全員が7人ずつ左右に分かれる。俺はそれを確認してから〈万能鍵〉で扉を開けた。


 その瞬間、扉が急に開き、まるでせき止められていたかのように氷の津波が溢れてきた。



 ――――――――――――――

 後書き、班構成!



1班 ゼフィルス、エステル、ノエル、ラクリッテ、ニーコ

2班 ラナ、シエラ、シズ、パメラ、ルキア

3班 メルト、カタリナ、ロゼッタ、フラーミナ、ラウ

4班 リカ、カルア、セレスタン、レグラム、オリヒメ

5班 ミサト、シャロン、サチ、エミ、ユウカ

6班 ルル、シェリア、アイギス、フィナ、エリサ

指揮&バックアップメンバー、リーナ、カイリ。

以上です。



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