第1375話 試合開始でゼフィルスの実況も本気モード!!




 実況席が盛り上がる中、試合は始まった。


 白本拠地が〈ミーティア〉。

 赤本拠地が〈百鬼夜行〉である。


「あ、始まりましたーー! まだ選手の紹介も済んでないのに!?」


「ゼフィルスさん、語りまくっていましたからね」


「大丈夫、ここから巻き返してやるさ! さぁ両者飛び出しました! まずは両者とも〈南巨城〉、そして〈中央巨城〉を目指ーーーす!!」


「それ私のセリフーーー!?」


「今気が付きましたがゼフィルスさんとキャスさんって、ポジションが被ってますよね」


「スティーブン君スティーブン君、フォロープリーズ! このままじゃ私の座が奪われちゃうよ!」


「ふむ。スティーブン&ゼフィルスさんで、ヒットするでしょうか?」


「スティーブン君!? なにを検討しているのさ!? そんなのダメだからね!?」


「こらこらキャスさん、会場を見よ! ギルドバトルは初動が一番大切なんだぜ!」


「このーーー、負けるかーーー! 現在注目は〈南巨城〉かーーー! 先に到達するのは〈百鬼夜行〉ーー! さすがはSランクギルド!」


「〈百鬼夜行〉は獣人が多いギルドですから、足には自信がある様子ですね」


「いや、それよりも〈ミーティア〉が遅いな。魔法使いが多いギルドだから仕方ないが、足の速いメンバーが少なすぎる」


「ゼフィルスさんはギルドバトルで大事なことはなんだと思いますか? ギルドバトル常勝負け無しのゼフィルスさんにお聞きしてみましょう」


「ギルドバトルは初動が大事! そして足が速い者が初動を制す! ギルドのトップランナーは足を止めるな! ガンガンマスを踏んでいけ! 最速の速度でぶっちぎれ!」


「ゼフィルスさんが語ると説得力が違うーーー!! では戦法の方は!? 〈ミーティア〉は〈南巨城〉に10人、〈西巨城〉に5人、〈中央巨城〉に15人を向かわせております!」


「対して〈百鬼夜行〉は〈南巨城〉に10人、〈東巨城〉に10人、〈中央巨城〉に10人というバランスです」


「それはそのギルドの職業ジョブバランスにもよる、両者とも悪くない人数分けだ。優勢は〈百鬼夜行〉だな。何しろ、スピードが違う。それを覆すための〈ミーティア〉の〈中央巨城〉15人配置だ。タッチは遅れてもいいから数で攻めて差し込みを狙う戦法と見た!! 2つのギルドとも自分のできる最適な戦法を取っている!」


「〈百鬼夜行〉優勢と言いつつも〈ミーティア〉もなかなかの攻めだー! そして〈南巨城〉がそろそろ陥落します! 激しい攻撃の撃ち合いだー! 落ちたー!? 果たして〈南巨城〉取得者は、ああーー〈ミーティア〉! 〈南巨城〉を先取したのは〈ミーティア〉だーーーーーー!」


「どっちに転がってもおかしくは無かった! だが、決め手は〈疑似ジャストタイムアタック〉戦法だな! 〈ミーティア〉の得意戦法だ!」


「〈エデン〉が得意としている技ですね。確か、同時着弾攻撃」


「その通りだ! 〈ミーティア〉は魔法使いで構成されたギルド。同じ魔法が使える職業ジョブが揃っている。同じ魔法は速度も同じだ。これを利用し、一斉攻撃が同時着弾攻撃にもなるというとんでもない方法だ。同時着弾攻撃は相手の差し込みを防ぐ非常に優秀な手段であると同時に、自分たちの差し込みにも超有効なんだ! これを差し込まれてはたまらん! 〈南巨城〉は最初から〈ミーティア〉のものになることがほぼ決定していたな!」


「そこまでですか!」


「会場がどよめいているーーー。つまりは〈中央巨城〉も危険だということでーー!? あああっとーーー! こ、これは、〈中央巨城〉に遅れて到着した〈ミーティア〉、しかしゼフィルスさんの言う〈疑似ジャストタイムアタック〉で先取したーー!? 〈ミーティア〉が再び差し込みで取ったーーーー!!」


「〈中央巨城〉も〈ミーティア〉が取りましたか。〈ジャストタイムアタック戦法〉がこれほどのものとは。確かに数の差もありましたが、これはとんでもないですよ。このまま〈南西巨城〉と〈西巨城〉を〈ミーティア〉が取れば――〈4城〉対〈2城〉。〈バベルの塔〉フィールドは全部で9城ですからあと1城取れば〈ミーティア〉は過半数確保となります」


「会場が盛り上がっているよーーーー!」


「当然、ここまではできるだろうと思っていた、しかし〈ミーティア〉はここから続かないと予想するな」


「おおっと!? それはいったいどういうことなの!? 教えてゼフィルスさん!」


「よかろう! 先程も言ったとおり、〈ミーティア〉は足が遅い。つまり、距離が遠ければ遠いほど不利になる。そして本拠地から遠くにある3つの巨城、〈北西巨城〉、〈北巨城〉、〈北東巨城〉は――まず追いつけない。そして、道幅が狭い。これがどういうことかというと――」


「な! これはーーー!」


「〈百鬼夜行〉がフィールド壁と観客席を利用し、北へのマスを全部潰しました!」


「決まったな、見事なとおせんぼうだ! これで〈ミーティア〉は北の3つの巨城は確保出来ない。〈百鬼夜行〉は悠々とゲットして逆転、〈4城〉対〈5城〉になる。これがこのフィールドの特性だ。〈南巨城〉や〈中央巨城〉を捨てても北の3城を優先することで優勢が取れる。このフィールドは足の速いギルドにとても優位なフィールドなんだ!」


「フィールドを選ぶ権利があるのは防衛側! つまり〈バベルの塔〉フィールドを選んだのは〈百鬼夜行〉! 負けていると思われつつ、最初からこれを仕込んでいたということかーー!!」


「さすがはSランクギルド、一筋縄ではいきませんね。勝負は始まる前から決まっていた、ということでしょうか。ゼフィルスさんは〈百鬼夜行〉のこの作戦をどう評価しますか?」


「50点!」


「意外に辛い!?」


「ご、50点は意外でしたね。フィールド選びの段階から初動で絶対に勝つと約束されたようなもの。〈バベルの塔〉を選んだのは大正解だと思いましたが」


「フィールド選びは、良い。オーケー。問題無い。問題なのは初動の動きだ。〈百鬼夜行〉の狙いは最初から〈南東巨城〉、〈東巨城〉、〈北西巨城〉、〈北巨城〉、〈北東巨城〉の5城を絶対に先取すること。これはフィールド選びの時点ですでに確保出来たも同然だ。つまり、〈百鬼夜行〉は最低限しか確保できなかったんだ! Sランクと言うのなら、ここからさらに1城か2城くらいは確保してもらわないといけない!」


「Sランクに厳しい!?」


「つまりはそれだけ〈ミーティア〉が優秀だったというわけですか?」


「それもある。だがこれは〈百鬼夜行〉の作戦が甘いんだ。だから50点。俺たち〈エデン〉が赤チームならまず初動で〈ロードローラー戦法〉を使って〈西巨城〉を狙いつつフィールドを斜めにぶった切ってたな」


「〈ロードローラー戦法〉、それは最近〈世界の熊〉ギルドがやり始めた強力な初動の戦法ですね。数ペアが列を組んでマスを取っていくという」


「その通り。これは相手を南西に閉じ込めるのが狙いだ。これをするのとしないのとでは雲泥の差が出てくる。その証拠に会場の南側を見てくれ」


「〈ミーティア〉が集合している!? こ、これはーーー!?」


「〈百鬼夜行〉の部隊は半分が北の3つの巨城を落としに行っています。残り半数が本拠地の防衛と小城取りに残っていますが、まさかこれは!」


「ああああーーーー! ここで〈ミーティア〉が〈百鬼夜行〉の本拠地へ攻め込んだーーー!!」


「作戦が甘いとこうなる! 北側の3つの巨城は独り占めに容易いが、それをすると本拠地を狙われるんだ! だって相手ミーティアは攻める場所を失うから。さらに〈百鬼夜行〉の本拠地は隙だらけ。これは攻めなければ失礼ってものだな! 逆にわざと攻めさせて奇襲でごっそり相手を削ったり、逆にカウンターで本拠地落とし返しをする戦法も可能だが、それには騎兵のような突破力がいる!」


「ああっとここで北側にいた〈百鬼夜行〉がなにやら巨大な何かを取り出した! あ、あれは、今話題の〈クマライダー・バワー〉だーーーーー! どうやら収納スキルの保持者がいた模様ーーー!」


「おお!? 突破力来ちゃった!? 60点!」


「点数上がった!?」


「ゼフィルスさんの話が現実になりましたね。さすがはSランクギルド」


「2台の〈クマライダー・バワー〉に乗った〈百鬼夜行〉が、〈ミーティア〉の側面に向かって駆け走るーーーー!!」


「まさか、〈百鬼夜行〉は最初からこれを狙っていたのでしょうか!? ゼフィルスさん!?」


「これは面白くなってきた! 〈百鬼夜行〉はここで〈ミーティア〉を叩き一気に勝負を付ける気だぞ! 注目だ!」




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