第1363話 ゼフィルスクルクル禁止?新メンバーと上級へ




 意識を取り戻した俺は、即で正座させられていた。


「ゼフィルスはクルクル禁止。いいわね?」


「だけどシエラ!」


「だけどもなにもないわ。わ、私とラナ殿下をまとめてだなんて……ゼフィルスは少し反省しなさい!」


「はい……」


 あまりのシエラの剣幕に俺は「はい」しか言えない。

 シエラの顔は、熟れた林檎のように真っ赤だった。こんなに顔を赤くしたシエラは見たことがない。

 俺が気を飛ばしているうちに何があったんだろうか。怖くてとても聞けそうになかった。


「ラナ様、お気を確かに!」


「うみゅ……」


「ラナ様ー!」


 向こうでは同じく真っ赤な顔をしたラナがエステルとシズに介抱されていた。気を失っているらしい。

 いったい何が!? こちらは振り向くこともできない。後でシズに狙われないかとても心配だ。


「も、もう、ゼフィルスさんは大胆ですわね。今度は1人1人、順番にお願いしますわ」


「はい。やはり2人同時というのはちょっと」


 リーナとアイギスはなぜかリピーター志望だ。本当に俺は何をしたんだろう?

 機会があればやり直したい!


「もうご主人様ったらそんなに踊りたいなら私でよければいくらでも踊るわ!」


「教官。リーナさんたちの言うとおり、今度は姉さまをはぶいて2人だけで踊りたいです」


「今フィナちゃん私をはぶくって言った!?」


「はい。言いました」


「認めたよフィナちゃん!? そこは気のせいですって言うところなんだよ!?」


 そしてエリサとフィナは、こちらもリピーター志望? でもいつもと同じ光景な気がする。


「…………こほん。2人同時はいけないわゼフィルス。それを、しっかりと覚えておいて頂戴」


 あれ? これって遠回しに次は1人の時にクルクル誘えと言われている?

 いや、シエラに限ってそんなことはないだろう。気のせい、だよな?


 俺は深く頷くと、ようやく正座から解放された。


「ええっと、こほん! 多少ハプニングもあったり無かったりしたようだが、これからみんなには攻略者の証集めをしてもらいたいと思う! ボス周回を始めるぞ!! 今回のボスが属性と魔法無効化をしてくるボスだから、相性的に厳しいメンバーはタイミングを計りながら少しでもダメージを与えられるよう頑張ってほしい!」


「ハプニング……」


「主にゼフィルスがしているんだけど?」


 仕切り直して救済場所セーフティエリアでメンバーに宣言!

 つまりはボス周回の開催を宣言した。

 エステルの呟きとシエラの言葉は咳払いで振り払う!


「ごほんごほん! まずは俺が随時やり方を教えていくから一緒に潜るぞ。まずは――」


 こうして全員にボスを経験させていった。

 勝てるように多数の属性を持つメンバーとエリサが必須なためそれ以外はシャッフルが可能だ。

 毎回2人から3人くらいをシャッフルしながら全員にボスを体験してもらう。

 そしてそのまま周回に突入。

 じゃんじゃん上級中位ジョーチュー産の宝を産出してもらうのだ!


 安定して最奥ボスが狩れ始めたら、ほぼ固定メンバーになるはずなので、残りのメンバーはエリアボス狩り担当。

 すると、たったの数日でみんなLV40に至ることになるだろう。


 また、全員にボス周回を伝授し終わったところでここの周回はシエラに任せ、俺を入れて何名かは新メンバーの応援に向かった。


「よく集まってくれたみんな!」


「当然ですわ! ついに私たちも上級ダンジョンに潜れるのですもの! もうワクワクしかございませんわ! おーっほっほっほ!」


「はーっはっはっは!」


「……息ぴったりです。シエラ様、なぜいないのですか……」


 笑いが止まらん。

 ノーアがお嬢様特有(?)の笑い方をするものだから俺までつられてしまったぜ。

 なぜかクラリスがじーっと俺を見つめてきているが、それはいつものことだな!


「今回のメンバーは新メンバー組13人に加え、カタリナ、フラーミナ、ロゼッタに来てもらった!」


「みなさん、よろしくお願いいたしますわ」


「「「「よろしくお願いいたします!」」」」


 紹介するとカタリナがまず前に出て挨拶してくれて、新メンバー組も挨拶を交わす。


 このメンバーは特に深い意味はない。手が空いている〈乗り物〉使いを募集したのだが、エステルはラナの介抱(?)があるからと残り、アイギスもなぜか今はやめておくと言われて、ロゼッタが参加してくれることになったのだ。そこにカタリナとフラーミナがロゼッタの付き添いと言って付いてきてくれた。


 ラナの介抱……俺の記憶によれば、いつも以上に元気なラナが元気に宝剣をぶっ放してエリアボスを滅ぼしていた気がしたが、きっと介抱が必要なのだろう。


 ちなみに〈乗り物〉持ちを連れてきてしまったことについては、まあ問題は無い。〈謎ダン〉は狭いフィールドなため〈乗り物〉が無くても行き来は楽だろうからな。


「さて、今日は嵐ダンに潜ってみようか。みんなLVはちゃんと15まで上げて来たよな?」


「「「はい!」」」


 うむうむ。みんな優等生である。

 俺たちが上級中位ダンジョンを調査と攻略している間に、しっかり中級上位ダンジョンでLVカンストである上級職LV15まで上げてきていた。

 そう指示しておいたのは俺だけどな! なんとか〈ダンジョンショップ〉が普及する前に中級ダンジョンを抜けられたぜ。急いでもらった甲斐はあった!

 というわけで、早速ランク1、〈嵐ダン〉へ入ダンする。


「わー、ここが上級ダンジョン、ですの!?」


「完全に森じゃん! 木がでっか! しかもなぎ倒されてる!?」


「ここが、上級ダンジョン! ゴクリ。私はとうとう上級ダンジョンに足を踏み入れてしまったのね」


 まず感想を叫んだのは〈エデン〉新メンバーのツッコミ担当、サーシャとカグヤ、そして〈エデン〉の良心であるクイナダだ。

 ちなみにツッコミ担当と良心であるかどうかは今俺が決めた。

 大丈夫、口に出さなければセーフなのだ。


「まあ、最初の10層まではマジで弱いから、新しい環境にだけ注意しておけば大丈夫だ。あ、来たぞ」


「あ、アレが噂の嵐でありますか!」


「うわはぁ!? すっごい風ですね!? あ、木がなぎ倒されたです!? あんなふっとい木が!?」


 俺が指を差すと、一気に嵐が吹き荒れ、周囲の木々やらモンスターやら人やらが飛ばされていった。って人飛んでいるけど大丈夫? あ、〈転移水晶〉使った。セーフ。

 ヴァンが目を剥いて驚き、アルテが無意識に騎獣であるヒナに抱きついていた。


 あ、向こうでは「コケー!?」と叫びながら〈ファイターコケッコー〉が宙を舞っている姿も見える。


「クラリス! 鳥さんがあの嵐の中、空を飛んでいますわ! 逞しいですわね!」


「あのニワトリは自分から飛んでいるのか、それとも飛ばされていったのか分かりにくいですね」


「いえいえいえ!? ニワトリは飛べないですの!?」


 ノーアとクラリスが絶妙なボケをカマしてくるのにサーシャがツッコんでいた。

 もしかして1年生ってこんなセリフが日常で飛び交っているのか? ちょっと長居したくなった。


「これ、大丈夫なんだよねゼフィルス?」


「なーに安心してほしいクイナダ。 嵐は階層門近くの救済場所セーフティエリアまで来ないからな。ここにいれば安心だ」


「トモヨ先輩は落ち着いてますね」


「まあね。私は攻略したことあるしね」


「木が飛ばされる、私も飛ばされる……?」


「大丈夫っすミジュ! 風が吹いたら私に掴まるっすよ!」


「うん。シュミネに掴まる」


「あれ!?」


「ナキキも来なさい」


「お母さーんっす!」


「誰がお母さんですか!」


 さすが、トモヨはこの中でも攻略したことがあるのでビビることはない。

 シュミネはナキキとミジュを抱き寄せていた。さすがはお母さん。

 ミジュもナキキよりもシュミネに抱きついておられる。ナキキも頼りにしてあげて?


 さて、この辺りで発表だ。


「そしてこれがこの〈嵐ダン〉でのみ使える嵐無効化アイテム――〈風除けの指輪〉だ」


「あ、それ知ってるよ~」


「最近凄く価値が高騰しているっていう救済アイテムですね」


 アリスとキキョウの言うとおり。

 実はこの〈風除けの指輪〉なのだが。いつの間にか〈金箱〉から産出されるようになっていた。

 ゲーム〈ダン活〉では隠し扉に隠されているため宝箱からはドロップしない仕様だったのだが、俺たちが最奥ボスを倒してからは低確率ながらもドロップするようになったというのだから驚きだ。


 ゲームの時は使用するのがプレイヤーのみだったから1個だけだったが、リアルだと多くの人が使うからなのだろう。特に1層から10層のエリアボスの〈金箱〉から出やすいという情報を得ている。


 まあ、俺たちにはもうあるので関係無いけどな。


 今日からこれを使いながら〈乗り物〉に乗ってガンガン進んでいこうと思う。

 目標は攻略者の証集め、そして、レベル上げ、ついでに〈イブキ〉の素材である〈クジャ〉の周回ができたらしたいところである!




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