第1361話 〈マジスロ〉戦再び。敵に〈アール〉もいる!
シエラから聞かされた衝撃的な6つ目の公式ギルドの誕生話。
これだけなら問題無い、問題なのは――このままだと〈公式裏技戦術ボス周回〉が使えなくなることだ!
「全員集合!」
「? どうしたのよゼフィルス」
俺の声に54層のエリアボスを無事はっ倒して全員が集結する。
そこで俺はシエラから聞いた話をみんなにも伝えた。
「〈ダンジョンショップ〉!?」
「各ダンジョンの最奥に配置されるのですか。それはいいですね」
「新しいお店ができるのはちょっと楽しみ~」
「ついに店がダンジョンの中に進出か。学園の動きも、なかなか早かったな、しかし……」
ラナが驚きの声を上げ、エステルとミサトが肯定的に捉え、メルトが顎に手を当てる素振りで何かを考える。そして俺を見つめるメルトの瞳から、メルトはすでに察しているとわかった。
俺はメルトの方に向けて頷く。
「そしてこの〈ダンジョンショップ〉がオープンするにあたって少し困ったことが出てきた」
「困ったことですか?」
「ああ。〈ダンジョンショップ〉を開くのはダンジョンの最奥だ。つまり、このままだと俺たちが最奥でいつもやっているボス周回が見られてしまうんだ!」
「「「「!!」」」」
「大変なのです! ん? ……大変、なのです?」
ルルの勢いが失速! しっかり説明しなくては。
「ああ、大変なんだよルル。ボス周回が見られた日にはみんなボス周回をやり始めるだろう。そうなれば最奥はいつも満員。俺たちも満足に最奥ボス周回が出来なくなってしまうんだ」
「大変なのです!」
うむ。大変だ。
「どうするのゼフィルス?」
ラナの言葉に俺は安心してくれと手でジェスチャーしてから答えた。
「幸いにもつい先日、新メンバー組が全員上級ダンジョンへの挑戦権を獲得した。〈ダンジョンショップ〉がまずオープンするのは初級や中級のダンジョンだろう。上級ダンジョンではまだ行なわれないはずだ」
そう、ギリギリではあるが、俺たちは〈ダンジョンショップ〉の影響外に出ることが出来ているのである。
上級であればまだまだボス周回が使える。
俺の言葉に「あ、な~んだ」という雰囲気が流れる。
「だが、中級のダンジョンなどではボス周回はまずできないと考えてくれ。レベル的には関係はないが、ドロップ素材が欲しい場合もあるだろう。そういうときは購入になるな。今後は最奥ボス素材の流通量も全体的に増加するはずだ」
「なるほどな。〈ダンジョンショップ〉は未だボスが攻略できず燻っている学生を救済するのにとても有効だと聞く。だが、いずれは上級ダンジョンにも来るだろう」
「その時は、もっとレベルを上げて前線を突っ走るだけさ。上級中位ダンジョンに潜れるギルドはまだまだ一握り。そこまで追いついた〈ダンジョンショップ〉のオープンはいつになるやらって感じだしな」
「なるほど、最前線を突き進むわけだ」
「それに、上級ならすでに公開してあるエリアボス周回が使える。とりあえず当面影響はないだろう」
俺の言葉に納得がいったという顔をしたメルトが腕を組む。
「なんかゼフィルス君がさらっと言ってるよ」
「うん。いつものことだね」
「リーダーという感じでかっこいい……」
するとなぜか仲良し3人娘を中心とした一部メンバーがきゃぴきゃぴしていた。
俺はいつもの3割増しにキリッとした顔で通達する。
「みんな、聞いていた通りだ! 今後中級ダンジョンでボス周回はできない。そこで中級に戻れなくなった新メンバーのレベルをガンガン上げて早めに上級ダンジョンに馴染ませる必要が出てきた! そのためにレギュラーメンバーの何名かで補助へ向かいたい! これから〈
確かナキキやミジュなど、新メンバーの数人は中級上位ダンジョンで上げられる限界値LV15に届いていないはずだ。レギュラーメンバーがフォローせねばなるまい。
シエラは夏休みの終わりに発足と言っていたが、それは公式ギルドが稼働するだけで〈ダンジョンショップ〉自体は夏休みから試運転をするだろう。
急ぐ必要は無いが、ゆっくりもしていられない。早めに新メンバーを上級ダンジョンでもやっていけるようにレベルを上げなくては。
そのためには、さっさとここを攻略してしまわなくてはならない!(※上級中位ダンジョンはそう簡単に攻略できないところです)
「攻略したらメンバーの内何人かついてきてもらって新メンバーを上級攻略させ、できれば俺たちのLVに追いつくまで鍛える! 他のメンバーはここの最奥やエリアボスを周回して
「教官がまためちゃくちゃ言っていますね」
「くぅ~、これだから痺れるし憧れるのよ! 道中の敵は私に任せなさい!」
「頼もしいなエリサ!」
「む、もちろん私も協力しますよ教官」
「フィナも心強いぞ!」
「そうね、新メンバーのところもいいけど、私はここの最奥ボスを周回したいわ!」
「ラナ様が残られるのでしたらもちろん私たちも残ります」
「オーケー、ラナやシズは最奥ボス攻略のコツをみんなに教えてあげてほしい」
うむ、新メンバーたちはまだまだ中級から上級に進出しようという段階。
急ぎ〈ダンジョンショップ〉のエリアから
とはいえレギュラーメンバーも疎かにはしないぞ。
そう告げると新メンバー組のところに行きたいというメンバーと、〈
まったく反論などが無い所が頼もしい!
そうと決まれば後は早かった。
〈謎ダン〉は正解のルートさえ熟知しておけばフィールド自体は小さいので階層更新にそれほど時間は掛からない。
54層から70層まで僅か1日も掛からず走破した俺たちは、まずはお手本と称して俺、シエラ、リカ、パメラ、エリサのメンバーで最奥ボスへと挑戦した。
手早く行こう!
するとそこに登場したのは〈
そして、それに加わるようにしてディーラーのような服を着た筋肉もりもりの白髪ダンディ、〈壁抜け徘徊伯爵・ヴァンパイアアール〉まで登場してしまったのだ。
徘徊型とは今日は遭遇しなかったからな。絶対にここに居ると思ったぜ。
今回のメンバーでは刀使いのリカとパメラをメンバーに入れている。
刀系は属性攻撃に通じていて多様な属性物理攻撃を放つことが可能だ。
属性と魔法を無効化してくる〈マジスロ〉には非常に有効だな。
吸血鬼の〈アール伯爵〉はディーラーの服を着ている通り、スロットとのコンボを色々とやらかしてくる。〈マジスロ〉が吐き出す眷属のコインを指揮して操ったり、〈マジスロ〉の出目が不正に左右されないか監督したりするのだ。要はスロット回転中の〈マジスロ〉への攻撃を防いできたりして〈
「ギギギギギ――スロット開始」
「ゆっくデース! 『氷結斬躯』デース! ――お?」
「シャアアアアアアア!」
「ふ、庇うならば、範囲攻撃を叩き込めばいいだけだ――『二刀斬・
「シャ――」
「今日のスロットは――氷」
まあ、たとえ筋肉を盛り上げてボディガードしてきても、リカがやったように〈マジスロ〉を巻き込む範囲攻撃を叩き込むと普通に〈マジスロ〉が反応しちゃうんだけどな。
「ギギギギ! 大当たり。氷の眷属大当たり」
「シャアアアアア!!」
おっとコインがジャラジャラ出たかと思ったら〈アール伯爵〉が指揮し出した。コインが横一列に横向きに整列していく。
これは、ロードローラーだ!
だが、グンナイ!
「はいはい眠っちゃいなさい! ――『ナイトメア・大睡吸』! 『睡魔の砂時計』!」
残念ながら〈アール伯爵〉は状態異常を防ぐバフなどを眷属に掛けることはできない。
眠ってしまったことでドミノ倒しのように横倒れになるコインたち。
「シャアアアアアア!!」
しかし〈アール伯爵〉はめげない。
おのれの筋肉を盛り上げると、眠ったコインたちを持ち上げて――ぶん投げてきた。
ディーラーがコイン投げちゃダメー!
「ちょ!?」
「『カバーシールド』!」
「シエラさん!」
「エリサ、今のうちに!」
「ええ! 旅立ちなさい――『夢楽園』!
「シャ?」
「隙だらけだぜ〈アール伯爵〉ーー! 『聖剣』!」
コインが全滅して狼狽える〈アール伯爵〉。
ふっコインが無ければ〈アール伯爵〉なぞ恐れるに足りない!
聖属性でぶった切った。効果は抜群だ!
〈マジスロ〉はシエラに任せておき、まだ第一形態のうちにお供の〈アール伯爵〉から排除するのがセオリー。
〈アール伯爵〉は眷属コインが倒されると、眷属を倒した者へのヘイトが大きく上昇するやべぇボスだ。
タンクがせっかく稼いだヘイトを軽く上回ってくるので、タンクよりもガンガンアタッカーに攻撃を仕掛けてくるとんでもボスである。
そのためヒーラーのエリサを襲ってこようとするが、もちろん俺とリカ、パメラがそうはさせないと立ちはだかる。
そしてまずは〈アール伯爵〉を撃破。10分も掛からなかったぜ。やっぱリカのカウンターが強いんよ。
この〈アール伯爵〉は単純な物理攻撃特化型ボスなので、奇襲さえされなければ、後はコインを倒した者へ大きくヘイトを向け、タンクを無視する性質さえ注意しておけばなんとかなるボスだ。
要は間にリカが割り込んでカウンターでズドン。これを繰り返すだけでなんか勝てるというわけだな。もちろん簡単ではないので俺もパメラも本気で速攻を仕掛けたさ。こっちにヘイトが向きにくいので全力を出せるのが良き。狙われてたエリサはドギマギしてたけどな。しっかり守り切ったぜ。
〈アール伯爵〉さえ倒せば再び〈マジスロ〉対〈エデン〉になって、後は前回と同じように叩けば倒せる。今回
そこら辺はギャンブルだ。
そうしていつもよりも長く、30分近い戦闘に勝利しドロップしたのは、なんと〈マジスロ〉から〈金箱〉1つ、〈アール伯爵〉から〈金箱〉2つの大当たりだった。
くぅっ、惜しいな! もう少しでパーフェクトビューティフォー現象になったものを!
まあ良い。まずは徘徊型ドロップ――
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