第1360話 再び〈謎ダン〉へ。新たな公式ギルド発足話!?




 結局、パンダ号は〈エデン〉に受け入れられてしまった。

 まあ、ミジュ本人が気に入ったのならば俺から言うことは何もない。

 後でタネテちゃんにOKだったこととお礼のメッセージを送るとしよう。


 あの後、なぜかアトラクションの一部として庭に置かれるようになったパンダ号には、多くの女子が乗り、その様子をスクショで激写しまくった。

 みんな女子高生くらいの歳なのにパンダ号に乗ってしまって、これは大いにありだと思ったよ。みんなノリ良いね。


 一応、柄を変えることも可能だとみんなにも教えたのだが。


「これを元に戻すなんてとんでもないのです!」


「このままでいい」


 というルルやミジュを始めとした大多数の意見を尊重し、パンダ号は〈エデン〉の仲間になったのだった。


 タネテちゃんにそのことを伝えると、とても微妙な無言のメッセージが返ってきた。

 なんとなくお気持ちは察するぜ。とりあえず、ケンタロウを労うそうだ。

 ケンタロウは今新たな作業に取りかかっているという。どうやらさらに催促が来て急ピッチで〈マッシュルーム・キャラバンⅡ改〉を作製中なんだとか。

 頑張ってほしい!




 それから数日が経った。

 ミジュにパンダ号を授けてからというもの、新メンバー組の攻略速度が増し、ついに全員が上級ダンジョンに入る条件である〈中級上位ダンジョン5箇所の攻略〉を成し遂げた。


 俺たちレギュラー組も〈守氷ダン〉の45層に到着し、順調に攻略中だ。

 え、攻略しちゃってもいいの? と思うだろ?

 それがな……まだダメって言われたんだ。無念。

 まあ最初から45層までって言われていたんだけどな。45層までなら調査と言うことでOKが出たかたち。


 まだこの辺は前人未踏。調査する必要がある。

 しかし〈救護委員会〉や〈攻略先生委員会〉は他の上級中位ダンジョンの調査で手一杯らしくなかなか階層更新が進まない。


 ということで、ならば〈エデン〉がその調査を請け負いましょうと45層までの攻略データを学園長に届けてあげたんだ。

 その時の学園長は、なぜかどこを見ているのか分からない遠い目をしていたような気がする。仕事の疲れかな? なんか忙しそうだったよ。(←原因)


 それはともかく、これで〈守氷ダン〉の調査は一旦打ち止め。現在続きを攻略していいかなと交渉中だ。なかなか頷かない学園長だが、近いうちに首を縦に振らせてやるぜ。

 しかしちょっと時間が掛かりそうだったので、〈エデン〉レギュラー組はこの際に〈謎ダン〉調査団に参加していなかった面々を連れ、〈謎ダン〉をまた1層からやり直してみることにした。


「今更思うけれど、よくこんなところを攻略したわよね」


「どうしたんだシエラ?」


「別に……。ただ、ふと思うことがあるのよ。ここって上級中位ダンジョンなのよね」


「何を言ってるんだシエラ。当たり前じゃないか!」


「そうよね……」


 現在54層でエリアボスを相手にレベリングしている最中だ。ここまで掛かった日数はたったの2日だ。比較的小さいダンジョンだしな。問題に正解すればすぐ次の階層にいけるので早い早い。


 周囲の雑魚モンスターを近づけさせない班とボスを叩く班に分かれての分担作業。

 54層ともなればそのボスLVは非常に高く、このランク1のLV上限である上級職LV40まで育成が可能となる。

 そしてレアボスと戦えればLV41まで狙えるぞ。


 特に調査団に同行していなかったメンバーはまだレベルが低いのでLV40までは上げたいところ。


 俺とシエラは見学で、そんな様子を見ながら物思いにふけるシエラに声を掛けたところだった。


「そういえば聞いたかしらゼフィルス、学園がまた新たな公式ギルドを作る動きを見せているらしいわ」


「……世間話かと思ったらド凄い話だった!? え? 何その話? 説明プリーズ!」


「やっぱり知らなかったのね」


 ちょっと待って。

 軽く話そうとしたらとんでも情報が出てきたよ!?

 へ? ついこの間〈攻略先生委員会〉を立ち上げたばかりの学園が、さらに新たな公式ギルドを作るだって!?

 公式ギルドのオンパレードじゃないか!?


「6つ目の公式ギルド!? いったいどんなギルドなんだ!? まさか俺の関わらないところでそんな動きがあったなんて」


「……とても関わっているわよ?」


「んあ?」


「今考えられているのはね、〈ダンジョンショップ〉を運営する公式ギルドなのよ。覚えがないかしら?」


「…………」


〈ダンジョンショップ〉?

 とても覚えがあります!


「マジ? 〈ダンジョンショップ〉の公式ギルドが出来ちゃうの!?」


「セラミロさんによると、出来ちゃうらしいわ」


「まさかのセラミロさん情報だった!? おかしい、ギルドマスターの俺には声を掛けられてないぞ!?」


「…………」


 セラミロさんとは学園から派遣されている〈エデン店〉の店長代理のメイドさん。

 店長代理なのかメイドなのかどっちなのと言われれば両方と言わざるを得ない素敵な人だ。

 もの凄く仕事が出来る方で、俺への報連相ほうれんそうも徹底してあって不備の見当たらない完璧メイドさん。のはずなのに、これはいったいどういうことだ!?


 あとシエラがジト目で俺を見つめている!? なんだか知らないがやったぜ!


「マリアが最近学園の仕事で忙しそうにしているでしょ? かなり頼りにされていて、どうやら公式ギルドと〈エデン〉を掛け持ちして、初代隊長になってほしいともお願いされているらしいわ」


「初耳すぎる!?」


 それすんげぇ大事な話じゃないか!?

 なぜ今!?


「私も聞いたのは今朝なのだけどね」


「今朝かよ! なるほど」


 謎は全て解けた。俺はセラミロさんに報告されなかったわけではなくて後で話すつもりだったに違いない。

 なぜかそのタイミングでエリアボスマラソンをしていたノエルが「大不正解!」と声を上げていたが、俺のことではない。


「でもこれで学園の最奥などに〈ダンジョンショップ〉がオープンすることになるわね。目玉商品は、やっぱり1戦装備レンタルや、その場で食べる料理アイテムなどらしいわ」


「それは、すごいことになるな! 前の〈臨時出張店〉の時も多くの学生がその武器などのおかげでダンジョンを攻略できたが、それが学園公式ギルドとして動き出し、ほぼ全ての場所で開けば、学生たちの攻略階層更新がガンガン進むぞ!」


「ええ。最奥ボスがどうしても倒せなくて燻っていた学生も、これで先へ進めるわ。もしくは良い装備が出るまで何度もボスを倒すこともできるのではないかしら?」


「素晴らしい! 学生たちがどんどんダンジョンを攻略出来るようになれば、学園全体の底上げになるぞ! 強い学生がいっぱい増えていくー!」


「やっぱりあなたは、これで喜ぶのね」


「おうよ。たとえ〈エデン〉に関係しないとしても、学生にはたくさん育ってもらいたいからな!」


「そうね。これで現状質が下がったと言われたBランクギルドなどの質も回復する見込みらしいわ」


「なるほどな~」


 少し前、ギルドの数が増えた。

 しかし、おかげでまだそのランクとしてふさわしくない強さのギルドが台頭してくるようになってしまっていた。

 この〈ダンジョンショップ〉政策(?)は新たな人材を発掘し、原石を宝石へと加工してギルドの質を回復させてくれるだろうと期待されているわけだ。


「いいこと尽くめだな!」


「でもね、そう良いことばかりじゃないわ」


「お?」


 おや? デメリットもあると?

 学園全体の質の向上。これはとても良いことだ。

 強い人が増えればそれだけギルドバトルだって楽しめるし……ふはは!

 おっと違う違う、シエラの言う、良いことばかりじゃないとはどういう意味だろう?


 マリアが引き抜かれそうになっていることか?

 いや、掛け持ちがありならばハンナたちと同じだ。俺はマリアの意思を尊重したい。

 問題とは言いがたいな。


 はて? 思い浮かばない。俺は答えはなーに? という気持ちでシエラを見つめた。


「こ、こほん。そんな子どもっぽい顔しなくても教えるわよ」


 それを見て、なぜか頬を赤く染めて咳払いするシエラ。

 教えてくれるってさ、やったぜ!


「さっきも言ったとおり、〈ダンジョンショップ〉は最奥に出店することが多くなるらしいわ」


「おう」


 そうじゃないと1戦レンタルの意味がない。

 限りなくコストを下げて装備を提供出来なければ、その内みんなが使わなくなるだろう。

 みんなお得感にどんどん手を出してほしいのだ。

 こりゃ最奥のボス部屋には長蛇の列ができるかもしれないな!


「ん? 待てよ、長蛇の列? 最奥に在駐?」


「……気が付いたみたいね」


「……おいおいシエラ、まさか俺たちのデメリットっていうのは、まさか」


「ええ。常に最奥に人がいることになるわね。現状〈エデン〉の最重要機密にして〈エデン〉の強さの要。ボス周回が使えなくなるのよ。それも、夏休み明けには中級以下のダンジョン全てが対象になるらしいわ」



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