第1359話 唐突にパンダとロリレンジャー撮影会始まる!
ケンタロウに見せられたのは、パンダ柄の〈クマライダー・バワー〉だった。
ご丁寧にデフォルメ化して目がクリッと大きくて可愛い仕上がり。
まさかの柄だった。
「うーむ。ずいぶんと可愛くなっちまってこりゃ。まさか〈エデン〉の〈クマライダー・バワー〉がこうなるとは……」
「こんのヘボマスター!」
「ぐへっ!? タ、タネテちゃん!?」
俺が唖然とそれを見上げていると、今まで大人しかったタネテちゃんが動いた!
ギルドマスターケンタロウを一瞬で転がしたのである。
「なんてもんを作ってんです!? こんなもんを天下の〈エデン〉に使わせるつもりです!? さっきまで白一色だったクマはどこいっちまったです!」
「ひえ!? でもシロクマだと被っちゃうし、ここはやっぱりオリジナル要素を出そうと思ったんすよー」
「オリジナルの方向間違えてやがるんですよ!」
おお! タネテちゃんよく言った!
さっきまで落ち着いた口調だったのにどんどん毒舌になっていくな。
これでこそタネテちゃんという感じがする!
そういえば〈ガンゴレ〉の時もケンタロウは
どうやらケンタロウにオリジナリティの才能はないようだった。いやあるのか?
よく分からなくなってきたぜ。
「今すぐ直しやがれです!」
「え? でもせっかく作ったっすし――あ、ごめ、タネテちゃんごめんなさいっす!?」
ケンタロウはおしおきされてしまった。
ここは見ない方が優しさか。
ケンタロウ、ギルドマスターのはずなのに。強く生きてほしい。
俺はそちらを気にせず改めて〈クマライダー・バワー〉を見る。
パンダだ。
あの園児が乗るワンコインで動くような、あんな感じのパンダ。こっちの方が5倍くらいデカいし、雷出しながら進むけどな。ちなみにメロディは鳴らない。
雷を使うパンダか。マジどうしよう。見た目は可愛いので〈エデン〉の女子に需要がありそうなのが困るところだ。
「〈エデン〉がパンダの〈乗り物〉に乗ってるよー?」「しっ見ないであげなさい」とか言われたら急所に刺さりそうな予感。
やっぱりやめておこうか。
「ケンタロウ」
「ゼ、ゼフィルスさん!」
「悪いが柄は変更で」
「そ、そんなっす!? でもこれ、ミジュちゃんにとてもよく似合うと思うっすよ!」
「なに?」
チェンジを言い渡したところで急停止。
「ケンタロウ、なぜうちのミジュを知っている?」
「〈エデン〉メンバーはみな有名人しかいないっすよ! それにこの前のギルドバトルではゼフィルスさんとツーマンセルを組んでいたあの子は誰だって、話題をよんでいたっす!」
「マジか」
まさかミジュがそんなことになっていたとは。
初耳だぞ?
「それで、熊人のあの子が操る〈クマライダー・バワー〉なら、きっとこういうのが似合うと思って作ったんっすよー!」
「ふむ。タネテちゃん。一旦おしおきは待ってくれ」
「はーい」
「え? 今の素直で優しそうな声色の返事は誰っすか?」
「何か言ったです?」
「……な、なんでもないっす」
タネテちゃんに一旦おしおきを中止してもらい、改めてパンダを見る。
俺はこれを、未だ〈乗り物〉を持っていないミジュに渡そうと考えていた。
どうやらケンタロウは〈世界の熊〉や〈救護委員会〉などを見て俺が誰にこれを渡すか見抜いていた模様。なかなかやるな。
ミジュは小柄な1年生。これに乗せるのは、正直ありだ。
絶対可愛くなる。〈エデン〉でも人気が出そうな予感。
大人数乗せるときは他の誰かの〈乗り物〉に乗せてもらい、基本ミジュ専用機にするのであれば、まあこの柄でも問題無いかなと考え直す。
いやでもミジュが気に入るとも限らないか。やっぱり一度本人に見せないとどうしようもないな。
「なるほど」
「ど、どうっすか?」
「わかった。じゃあ一旦持ち帰ろう。でもダメだったら柄チェンジで」
「! ありがとうっすゼフィルスさん! ほらタネテちゃん、ゼフィルスさんは分かってくれたっすよ」
「タロウ先輩はもっとゼフィルス先輩の優しさに感謝するです! いつもそんな優しいお客さんばかりじゃねぇんですよ! 〈エデン〉は大お得意様であり〈上級転職チケット〉をくださる大事なスポンサー様だということを、タロウ先輩はもっと自覚するです!」
おお、タネテちゃんの言葉が凄く響いた。さすがはタネテちゃんだ良いことを言うなぁ。あと呼び方がタロウ先輩に戻ってる。
「それにさっきも言ったが、まだチェンジの可能性もあるからな」
「うちのヘボマスターがすみませんでしたゼフィルス先輩。その時はしっかり対応させてもらうです」
丁寧にお辞儀するタネテちゃん。
苦労しているなタネテちゃん。頑張ってほしい。
そんなわけで、一旦俺はこの〈パンダ〉を持ち帰ることにした。
え? 名前は〈クマライダー・バワー〉だって? もう〈パンダ〉で良いと思うんだ。
ギルドに到着すると〈
するとそこへ、悲鳴が轟いた。
「きゃー! 何これ!?」
「シロクロのクマ、ですか?」
そこに居たのは悪魔のエリサと天使のフィナだ。
ちなみにエリサの悲鳴は黄色だった。
「悲鳴を聞きつけヒーロー参上なのです! とう!」
「悪い子には~おしおき、だよ!」
「いったいどうしたんですか?」
そこへルル、アリス、キキョウのロリ3人も来て――ロリレンジャーが揃っちゃった!
3人の視線がパンダに向けられる。そして――。
「愛!」
「大きなぬいぐるみさん?」
「可愛いです!」
すぐに籠絡された。最初に悲鳴を上げていたエリサも感激した、みたいな顔をしてる。
フィナもすまし顔だが視線はパンダに固定だ。
こうなれば俺がすることは決まっている。
「みんな、このパンダの前に集まってくれ! スクショを撮るぞ!」
「いいわね!」
「ありです」
「スクショ撮るのです!」
「わーい!」
「あ、みんな待ってください!」
ロリレンジャーを集めて撮るしかない!!
パンダの側面に5人を横一列にしてスクショを撮る。パシャパシャ。
「続いて――フォーメーションだ!」
「「「「「おおー!」」」」」
俺の掛け声でルルを先頭に両斜め後ろにアリスとキキョウ、その斜め後ろにフィナとエリサが並ぶV字隊列を組んだ。
これはギルドバトルの時に教えていたフォーメーションだ。
なお、かっこよさと可愛いを優先して実用性を
パシャパシャ!
俺は思いっきりスクショを撮りまくった。
よし、今度はパンダの正面から撮ってみよう!
「ゼフィルス様」
「うひょわい!? シェ、シェリアいつの間に!?」
「後でくださいね」
「お、おう。分かってるさ」
気が付けば後ろにシェリアが居た。しかも様呼びだ!
いったいいつの間に!?
まさか俺の『直感』さんを潜り抜けてきたというのか!?
冗談だ、攻撃されるならともかく、近づかれたくらいで『直感』は発動しないよ。しないよねシェリア?
でもシェリアが欲しがっているものは分かるので後で渡しておくことにしよう。
「あ、みんな! ゼフィルス君がまた何かやらかしてるよ! きてきて~」
「お、大きなぬいぐるみですね!?」
続いてやってきたのはノエルとラクリッテだ。
ノエルの声になんだなんだと女子たちが庭を見てくる。
どうやら先程の夏祭りのスケジュールは無事に話し合いが済んだらしく、女子の集団が集まって来ていた。
え? 女子全員集合?
「ゼフィルス、これどうしたの?」
どうやらみなさんこれが〈上級乗り物〉、〈クマライダー・バワー〉だと気付かない様子。なので、俺は教えてあげるしかない。
「ふっふっふ。ラナ、よくぞ聞いてくれた。みんなも聞いてくれ! こいつは今学園を賑わせている〈上級乗り物〉。その名も――〈クマライダー・バワー〉だ!」
「「「こんなに可愛いのに!?」」」
サチ、エミ、ユウカの仲良し3人娘からのツッコミが心地よい!
本物の〈クマライダー・バワー〉はもっと勇ましいというか、かっこいいからな。
なんでこんなに可愛くなってしまったのか、その経緯とミジュに持たせる予定というのをギルドメンバーに告げる。
「私の、〈乗り物〉?」
「そうだぞ。一度乗ってみるかミジュ」
「うん」
そう言ってくれたので、ミジュを〈クマライダー・バワー〉の首のところに跨がせた。すると。
「「「「かわいいー(です)!」」」」
〈エデン〉のギルドハウスが揺れたんじゃないかという感激のコメントが辺りを飲み込んだ。可愛いの衝撃が強い!?
なんの! 俺は負けじとスクショを取り出すとミジュの勇姿を撮りまくったのだった。
続いて女子全員によるパンダ撮影会が始まる!
外側だけじゃなく、ちゃんと室内でも撮影会したよ。確認は大事。
俺は夢中で撮りまくったよ。そしてどうやら、みんな気に入ったらしい。
ミジュも多くは語らなかったが、気に入ってくれたみたいだ。
だってなんか「むふー」ってなってたし。
というわけで、パンダ号が採用となるのに時間は掛からなかったのだった。
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