第1353話 ヘルプニャンが雑魚っぽく雑に斬られたよ!?
「行くぞみんな! 拠点を落とすぞ!」
「「「「おおー!」」」」
保護
俺たちはダッシュで最短距離を突っ走る。
だが、残り1マスのところにそれを遮る者たちがいた。
「なんですかあれ?」
「なんか強そうだよ~」
「片方はハンナの作ったゴーレムだな! 〈守氷ダン〉でドロップした〈アイスクリスタルゴーレムレシピ〉から造り出したゴーレム。その名も――〈レェドゼロ〉だ」
キキョウとアリスが目を見開く。
そこに現れたのは2体のアイテムたちだ。まずは片方の説明。
「え?
「ゼロがふたっつ~?」
「ちょっとかっこいい名前です」
「ゴォォォォォォ!!」
俺がハンナのゴーレムを教えるとナキキがまず反応、アリスも両手指で2つの輪っかを作って、キキョウはなんだか良い反応をしていた。
うん。レェドって0度から来ているからね。つまりはゼロゼロだ。たしかにかっこいい名前かも!
見た目は氷の人型。腕が長く、巨大な盾を1つ装備していてなかなかの威圧感を放っている。巨大ゴーレムが盾を持つだけでも迫力が違う。容易に突破出来ないと思わせてくるのだ。さすがはハンナ作。なかなかの出来栄え。
「もう1体は――セルマさん作のホムンクルス。その名も〈ヘルプニャン完全体〉」
最初は〈セルマ完全体〉なる名称で納品されたらしいが、訳あって変更した。
結局俺、セルマさんと一度も会ってねぇ。
その姿は凄まじいの一言に尽きる。
ホムンクルスは魔力を浴びせて作るとき、その魔力の持ち主の姿になる特性がある。本来ならそれをベースにして加工して色々作っていくわけだ。
故に加工アイテムをあまり持っていないセルマさんが作ると、セルマさんそっくりの見た目になる。
それがなぜかダメで試作品はフルプレートを着させられていた。可哀想なので完全体ではちゃんと顔が分かるようにしてとお願いしておいたのだが、予想の斜め上。
〈ヘルプニャン完全体〉は――この前行った〈角兎の庭園ダンジョン〉でドロップした、〈
つまりはウサギの着ぐるみである。
…………これ着て来ちゃったのか~。見た目は完全にセルマさんが着ぐるみ着ている姿なんだけど。やるなぁ。
計2体のクリエイトモンスターが俺たちを阻んでいた。
ゴーレムとホムンクルスは、1体ずつ出せる。それを見せるために今回赤チームには両方使ってもらっていた。
俺が2つとも
「! また攻撃が来るぞ! シエラ!」
「任せて――『
今度は城壁に設置されたバリスタなどが発射される。これはシャロンの攻撃だ。
しかし、そんなのを許す我がサブマスター様ではないのだ。
すぐにカバー系のスキルを使って防御する。
隣接に侵入したところでナキキに指示。
「ナキキ、バリアを破壊!」
「了解っす! ――『バリアブレイク・クラッシャー』っす!」
まずはカタリナのバリア破壊だ。
これはナキキの結界破壊スキル『バリアブレイク・クラッシャー』でぶっ壊す。
ガッシャーンというガラスが砕けたような音と共にカタリナが張っていた『拠点を守る二重巨大結界』と『拠点を覆う大結界』が破壊される。
いやぁ、【破壊王】いいね。マジいいね。さすがは特効系。
「ゴオオオオオ!」
「ミャアアアアア!」
そこへ〈レェドゼロ〉と〈ヘルプニャン完全体〉が襲い来る。
〈ヘルプニャン完全体〉の鳴き声って「ミャア」なんだ。見た目ウサギなのに!
でもセルマさんが言うと不思議と違和感がない。何故だろう?
「ゴオオオオオ!」
まずは〈レェドゼロ〉の攻撃。
ハンナの自信作、右腕の大きさが7倍に膨らむと、その長い腕をさらに伸ばしてギガントアイスパンチを繰り出して俺たちを一掃せんとする。
あ、攻撃してくるんだ。盾持ってるのに。防御しろよ。
「私だって――『吸物封印盾』!」
そこで盾を出したのはキキョウ。
これは相手のスキル攻撃を吸収。そして吸収したスキルを3分間封印してクールタイムが減らなくさせてしまう防御スキルだ。
ズドンと盾に衝撃。だが、普通フィードバッグで減るはずのHPが、キキョウの場合は回復する! 吸収!
「ここでーー『メタルインパクト・クラッシャー』っすー!」
続いてナキキがユニークスキルを発動する。
両手盾を仕舞い、両手槌1本になって振りかぶると、槌がメタル化。
そのまま懐に潜り込むと、ドカンとどっついた。
ゴーレムは盾で防御するもかなりの衝撃を受けた様子。
「ゴオオオオオ!?」
これは大ノックバック効果のあるユニークスキル。あまりのノックバック効果に盾で受けたのにもかかわらず、10メートル近くもズザザザザザーと地面を擦りながら下がる〈レェドゼロ〉を見ればその凄まじい効果が分かるだろう。強制ノックバック効果のユニークスキルだ。タンクを下げさせてしまう凶悪な効果を持っている。
そこへ迫るのは、セレスタン。
「しばらく寝ていてもらいましょう――『波動
ボカーンと爆発。
見ればセレスタンが微笑みのままゴーレムの足に拳を抉り込ませていた。〈レェドゼロ〉はノックバック中に爆発する拳を叩き込まれ、あえなくダウンしてしまう。
セレスタンがやべぇ。でもゴーレムのHP、まだ8割以上も残ってら。こっちもやべぇ。
「ミャア!」
「させない、わ――『ショックハンマー』!」
そしてセルマさん――じゃなくて〈ヘルプニャン完全体〉は、無謀にもシエラに突撃を仕掛けた。やけにシエラを狙うのはなぜだろう?
ウサギの顔が描かれたポールハンマーを叩き付ける、しかしあえなく盾で受け流されて、
「トドメの『フィニッシュ・セイバー』!」
「ミャアアアアアアアアアアアアアア!?」
一撃で――キル! フィニッシュ!
切り捨て御免、そして突破!
むぅ。さすがにシエラの相手はまだ早かった様子! というか当てる相手を間違えたかも。
次の試合に期待だな。その時は俺が使ってみよう。
「バフ盛るからねー! 『リズム・メロディ・ハーモニィ』! 『リ・エール』!」
ノエルが全員に全ステータスを上昇させるバフを与え、さらに『リ・エール』をとある人物に発動する。
「では、僕の出番ですね」
むき出しになった城壁の前で構えたのは、我らが執事セレスタン。
その右手にはゴツいパイルバンカーのようなドリルが装備されていた。
それは〈城掘突貫ドリル〉。
ギュイィィィンという、なぜか歯がガタガタ言いそうな音を出しながらセレスタンはその螺旋を城壁に叩き込む。
「『突貫』です」
ズドーンと衝撃。
一気に耐久値の半分を削る超威力。
しかも。
「『アンコール』いくよー♪ 『リ・エール』!」
再びノエルが『リ・エール』を『アンコール』する。さらにクールタイムをゼロにする『リ・エール』を再発動。対象は、セレスタンだ。
「『突貫』です!」
ズゴーンと2回目の衝撃。
元々半分もHPを削る『突貫』。それを2発受けた城壁は耐えきれず――否、なんとHPが残った。
「あっぶなー!! 『防壁大回復』の差し込みがもう少し遅れていたら破壊されていたよ!」
「あ、シャロン先輩です!」
そうシャロンがギリギリで城塞HP回復魔法を差し込んでいたのだ。
これにより首の皮1枚繋がったという感じで城塞が生き残る。ほほう、やるなぁ。あのタイミングで差し込むとは。どうやらSランク戦で〈ミーティア〉にやられた経験が生きていた様子だ。
だが、その皮1枚切り離すだけなら、別に特効でなくてもいい。
「全員、城壁に集中攻撃だ!」
「ってまだだった! 『クロスファイア』! 『反撃大砲一斉射』!」
「手数は多いけれど私には効かないわよ『インダクション・フォートレスカバー』!」
「シエラさんが硬すぎるんだけど!?」
「私も援護します! 『お社様降臨』!」
「キキョウちゃんも来ちゃった!?」
ラナとリーナがクールタイムで動けないところ、シャロンの迎撃が光る。かに思われたがシエラが優秀すぎて兵器の数々が全部防がれてしまう。
そこにキキョウも第二のタンク、遠距離攻撃を引きつけるドロー系の社を召喚する『お社様降臨』を発動して味方を守った。
「私をお忘れですわよ」
「カタリナちゃん!」
「城塞はやらせないわ――『
ここでカタリナも登場。
大量のバリアを操り重ね合わせ、即席の壁を作り上げる。しかし。
「『羨望の
「あ!」
『羨望の眼』は防御キャンセルスキル。防御スキル、もしくは防御魔法限定だが、直前に発動したものをキャンセルさせてしまう。『羨望の取消』よりはかなり制限が入っているが、それでも強力なスキルである。
キキョウがそれを使うと、カタリナの大量のバリアたちは
「だらっしゃ――! 『
「『かみなりさま』!」
「ああ!?」
先程から削りまくっていた俺とアリスの攻撃により、ついに城壁が破壊されてしまう。
「行くぞー! シャロンとカタリナは放置だ!」
「な! 行かせないよー『迷宮通路』!」
「分断します! 『交わらない漆黒結界』!」
城壁を破って中へ侵入する俺たちだが、シャロンもカタリナもそう簡単には通らせてはくれない。
シャロンが発動したのは迷宮。本拠地の隣接マスに突如簡易的な迷宮が出現する。
さらにカタリナが発動したのは分断魔法。漆黒のバリアを隔てて迷宮と合わせて俺たちを分断しようという心算だろう。しかし。
「キキョウ、やったれ! シャロンの方だ!」
「はい! 『羨望の取消』!」
キキョウのキャンセルスキルが1つだと思ったら大間違い。
これは武器スキル。先程の『羨望の眼』は防御系をキャンセルさせる限定スキルだったが、これは攻撃だろうが防御だろうが、現在使用中のスキルや魔法の類いをキャンセルさせることができるのだ。
これによりシャロンの『迷宮通路』をキャンセル。
「クールタイム明けたっす! ――『バリアブレイク・クラッシャー』!」
さらにナキキが結界破壊特効で『交わらない漆黒結界』をクラッシュさせてしまう。
ここで俺が小城をタッチ。本拠地の隣接が白マスになったことでカタリナとシャロンは弾かれてマスの外に追い出されてしまう。
「や、やっばー!」
「攻撃が届きません。迂回して追いかけますわよ!」
これでシャロンとカタリナは間に合わない。
【破壊王】が優秀過ぎるぜ。さすがは〈ダン活〉で真っ先に狙われる
さて、これでチェックだ。俺たちは、ついに赤本拠地にたどり着く。
――――〈残り時間:1分12秒〉。
―――――――――――
後書き失礼いたします! お知らせ!
祝! 新刊発売決定!
〈ダン活〉小説10巻の発売日が決まりましたー!
2024年8月20日発売です!
Web版の第9章、夏休み編を収録!
書き下ろしには、本編に書かれなかったラナやシエラの帰省話もあるよ!
また、書籍限定要素もいくつか収録。例えば今回、海回や夏祭りでは、みんながシンボルを着けてない!?
Web版には書かれなかった「なぜ貴族は小物をシンボルとして身に着けているのか」その謎まで収録されています!
詳しくは近況ノートをチェックしてください!↓
https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16818093078968432833
また〈ダン活〉の新グッズ〈アクリルマグネット〉も同日発売です!
よろしくお願いいたします!
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