第1352話 レグラム&オリヒメVSラナ宝剣&リーナの砲撃





 最初のラナの攻撃は『大聖光の十宝剣』から始まった。


「ここは任せるがいい! オリヒメ、行ってくる」


「レグラム様、お気を付けて」


「『天歩』!」


 馬から飛び立つようにして空を駆けるレグラム。

 空中移動スキル『天歩』で迫り来る宝剣に肉薄する。


 ゼフィルスチームには先頭を走るレグラムたちが居る。

〈からくり馬車〉に騎乗する7人はもちろんスキルを使えないが、レグラムだけは別だった。

 ゼフィルスを本拠地へ送る露払い。それこそがレグラムの役目。


「『轟光閃破』!」


 レグラムの〈五ツリ〉、大技発動。

 ゴウッと轟く光の一閃。それが先頭の宝剣に命中すると、ぶった斬られて消えてしまう。そのまま追加で3本の宝剣を斬ったところでスキルの発動が止まってしまう。


「くっ、4本しか相殺出来ないとはなんという威力! ならば――『決壊天空・幻想斬り』!」


 続いて発動するのはブレイク系〈四ツリ〉スキル。

 本来であれば〈五ツリ〉を相手にしても相殺が狙える優秀なスキルのはずだが、これも3本の宝剣を巻き込んで消滅させたところで効果が切れてしまう。残りは3本。

 しかし、その3本はレグラムを素通りし、そのまま馬車へと飛んでいった。

 だが、レグラムはもっと速い。


「行かせん!! 『天動天空・瞬脚しゅんきゃく』!」


 瞬動系スキルですぐに宝剣を追い抜かし馬車の前へと駆けると。そこで〈四ツリ〉の大技を発動。


「『轟天・雷神』!」


 ズザーーーーンと凄まじい天からの雷が3本の宝剣に直撃し、そしてついに全ての宝剣を破壊される。

 馬に再び騎乗すると馬車の先頭を走る。


「レグラム様、大丈夫でしたか?」


「問題は無い。しかし、まさかあれだけしなければ完全に相殺できないとは思わなかった。ラナ殿下の宝剣は思っていた以上に威力がある」


「もう、気をつけてくださいまし」


 ラナをこれでもかと評価するレグラムにオリヒメが少し膨れる。だがさすがにラナやリーナの遠距離攻撃を相手にするには無理をせざるを得ないと思うレグラムだった。


 ◇


 一方赤本拠地ではリーナが悩ましい声を上げていた。


「防がれましたわ。先頭を走るのはダンディ君に騎乗したレグラムさんとオリヒメさん。おそらく馬車の護衛ですわ!」


「なによレグラム、やるじゃないの! 私の『十宝剣』を単独で破壊するなんて! リーナ、次はいつ撃つのかしら!」


「もう少々お待ちください。アレを防がれるとなれば無駄に撃っては馬車には届きません。もう少し引きつけて私の砲撃と同時に撃ちましょう」


「分かったわ!」


「『光の柱』などの弱い攻撃、エリア魔法を使ってみてください。攪乱しますわ。ポイントはここ、タイミングは……今!」


「『光の柱』!」


「! 避けられましたわね。『直感』スキルと見ましたわ!」


「何今の動き!? 意味分かんない挙動だったわよ!?」


「運転しているのはセレスタンさんですから。それよりもこのままではすぐに本拠地から6マスの射程圏内に入ります! ラナ殿下あわせてくださいまし。『全軍一斉攻撃ですわ』!」


「わかったわ、いつでもいいわよ!」


「3、2、1―――今ですわ! 『超長距離兵砲・グングニル』!」


「『大聖光の四宝剣』!」


「これはどう受けきりますか、レグラムさん」


 ◇


「レグラム! リーナの射程圏内に入るぞ!」


「任せるが、いい!!」


 ゼフィルスチーム、赤本拠地まで残り6マス。

 続いて放たれたのはリーナの超長距離砲とラナの『四宝剣』だった。

 同時攻撃。

 リーナの『超長距離兵砲・グングニル』は5マスまで届く遠距離攻撃。ここに『プラスレンジLV1』が加わり、射程は6マスになっていた


 それに対し、レグラムはオリヒメとのコンボスキルで対応する。


「オリヒメ、いくぞ! 『天海の雷鳴剣』!」


「はい! ――『天海の雷鳴声らいめいせい』!」


 ズドドドドンと剛雷が鳴り響く。

 コンボスキルによる強力な攻撃がラナとリーナの攻撃を打ち砕かんとするが、リーナのユニークスキルによって強化された2つの攻撃は、そのコンボ攻撃を打ち砕き、空中にいるレグラムに直撃した。


「なに! ぐあっ!!」


「きゃああレグラム様!?」


「ヒヒーン!?」


「大丈夫、だ!」


 これはレグラム狙いの攻撃だった。

 コンボ攻撃によりほとんど相殺に近かったため命中したレグラムも半分近くHPを残している。しかし。


 さらに攻撃は続く。


「レグラム! 下だ!」


「!」


 気が付けば、地面が光り始めていた。それはラナの『四宝剣』が直撃した光ではないと直感的に察するが、しかしレグラムたちはこれを回避出来ない。範囲が広すぎる。

 ゼフィルスのおかげでなんとかその光に気が付いたレグラムは、オリヒメと阿吽の呼吸でコンボスキルを発動する。


「オリヒメ! 『天海の雷神』!」


「はい! 『天海の津波』!」


 回復は後回し。

 まずは下の攻撃の対処を優先。相殺しなくては間違いなく戦闘不能になるという判断だった。


 地面にはこれが有効。雷を帯びた津波が一瞬で広がり地面から今まさに攻撃しようとしていた光を飲み込んで相殺してしまう。


「レグラム! それは『聖光の宝樹』、〈三ツリ〉だ! 次は本命が来る! 回避!」


「なに!?」


 ここでレグラムたちは攻撃を食らったばかりで判断を誤った。今2人が全力の〈五ツリ〉を発動して葬った魔法はただの〈三ツリ〉『聖光の宝樹』だったのだから。

 ここまでリーナの想定通りのシナリオ。

 ゼフィルスたちがスキルを使えないのでレグラムたちを先に仕留めようとシフトした結果だった。


 保護期間バリアで防がれることもないのだから先程よりも格段にやりやすかった。

 残り4マス。リーナの他の兵砲の射程に入った瞬間、大技が来る。


「『祈望きぼう天柱てんちゅう』!」


「『決戦兵砲・ノヴァブレイカー』!」


 またも同時攻撃。

 セレスタンはこれに対し、すぐに回避運動を取るが、強力なコンボスキルを発動したばかりのレグラムとオリヒメは攻撃範囲から逃れられなかった。

 オリヒメが即でダンディ君から飛び降りて魔法を使う。


「レグラム様はやらせません! 『オーバーメロディアブソーバー』!」


「オリヒメ、何を!?」


 それは単体付与バリア。攻撃ダメージを一定量吸収して回復する。タンクに掛けるとやられづらくなる強力なバリア魔法だ。これをオリヒメはレグラムに付与した。


「レグラム様は生きてください。まだやることがおありでしょ?」


 もちろんこれは単体魔法なのでオリヒメは付与されていない。ヒーラーのオリヒメがこれの直撃を受ければどうなるかは明らかだった。


「オリヒメ! くっ『天剣』!」


 レグラムは諦めない。強力な〈五ツリ〉を使用し、リーナの『決戦兵砲・ノヴァブレイカー』だけでも打ち破る。

 瞬間ラナの『祈望きぼう天柱てんちゅう』が発動した。


『聖魔の大加護』や『全軍一斉攻撃ですわ』でバフの入った特大の威力がレグラムとオリヒメを襲ったのだった。


 光が消えていく。

 レグラムはオリヒメの『オーバーメロディアブソーバー』により回復とダメージを繰り返し、バリアで耐えきった。


 そして直撃したオリヒメは――普通にレジストステータスで耐えきっていた。


「オリヒメ?」


「てへっ。回復しますね『癒しの継続メロディ』!」


「…………」


 オリヒメのRESは約1400。ラナの約2倍だ。

 いくらヒーラーはHPが低いとはいえラナもリーナも魔法攻撃が主体。

 耐えきることは普通に出来たらしい。レグラムは悲しげに後ろを振り向けば、舌を出したお茶目なオリヒメがいたのだった。

 レグラムがなんと返せばいいのか分からない複雑な表情をしていると、後ろから肩にポンと手を置かれる。


「よくやってくれたレグラム」


「ゼフィルス」


 気が付けば、ゼフィルスたちは赤本拠地から3マスの地点に保護期間バリアを張っていた。これで攻撃はもう来ない。


「無事赤本拠地の亜隣接2マス隣まで接近することに成功したんだ。後は俺たちに任せとけ!」


 ここで馬車を降りるのはゼフィルスたち。

 赤本拠地まで残り2マス。


「フ、後は頼んだ」


「任せろ」


 パチンと手を叩いてバトンタッチ。

 レグラムたちの仕事は無事終了。ゼフィルスたちを万全の状態で送り出すことに成功したのだ。

 ゼフィルスやシエラも全てのクールタイムが明けており、文字通り全力が出せる状態。


 あとはゼフィルスたちの仕事だと。大技がほぼクールタイムに入って使えなくなっているレグラムたちを保護期間バリアに残し、ゼフィルスたち7人が陣形を作って侵攻する。


 隣接1マス隣に待ち構えているのはシャロンの城壁とカタリナの結界。

 そして張り巡らされる罠の数々と、待ち構える2つの影。


「アレがハンナの作ったゴーレム。それとセルマさんが作ったホムンクルスか!」


 クイナダが受け取っていたハンナのゴーレムと、ついに完成した完全体ホムンクルスがそこに待ち受けていたのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る