第1354話 最終決戦。本拠地は「城」特効で一瞬で落とす




「ゼフィルスが来たわ!」


「残り1分です! 城へ進入してきたところを狙います! ―――今! 『決戦兵砲・ノヴァブレイカー』!」


「ゼフィルス、おとなしくしてなさーい! 『大聖光の十宝剣』!」


 赤本拠地絶賛大ピンチ!

 残り時間は1分!

 しかし、ゼフィルスたちがとうとう赤本拠地マスへと入って来たのである。

 目の前に現れたゼフィルスたちとラナたちがついに対峙する。


 さすがに相手チームにここまで侵入されたことの無かったリーナとラナの動揺も多少はある。だが、残り1分耐えればいいという希望があった。


 すでにラナの遠距離攻撃で〈中央東巨城〉と〈南東巨城〉は陥落。

 さらにミサトたちの活躍で〈北巨城〉〈中央西巨城〉が陥落し、現在は〈南西巨城〉へ向かっているところ、ギリギリだが、これが成功すれば赤チームは逆転、というところまで来ていた。


 ここで1分耐えれば勝てる――かもしれない。

 この1分間で全力を出し切るつもりでリーナとラナが魔法を乱射しまくり弾幕を張ったのだった。しかし。


「いくぜ――温存していた『完全勇者アブソリュートブレイバー』だ!」


「ちょ!? それは卑怯よゼフィルス!?」


「みんな俺の後ろにいな!」


 ゼフィルスが温存していた無敵モードを発動! 前へ出て、リーナとラナの特大の攻撃を全て受け止めてしまったのである。

 だが、すぐにゼフィルスの無敵モードも終わる。


 ほんの十数秒の時間稼ぎ。これだけで十分だった。


「準備出来たわ!」


「こちらも準備万端です」


「いくっすよー!」


 すでに赤本拠地にタッチできるレベルで接近していたセレスタンとナキキ。

 そして集まったみんなを守るように配置されるシエラの小盾があった。


 シャロンとカタリナも白マスを迂回しなければならないので間に合わない。


「ラナ殿下、アレを止めますわよ!」


「やらせないわー『大聖光の四宝剣』! 『聖光の宝樹』!」


「『殲滅兵砲・エクスプロージョンノヴァ』! 『援護兵砲・タクティカルキャノン』ですわ!」


 ラナとリーナがなんとかそれを止めようと踏ん張る、しかし。


「全部防ぐわよキキョウ――『聖四方盾』!」


「はい! 『吸魔封印盾』!」


 その攻撃はシエラ、キキョウに防がれてしまう。


「吸収された!?」


「ぜ、全然効きませんわ!? 『ハイパーキャノン』ですわ!」


「『エレクトリック・ビーム』!」


「『サンダーボルト』!」


「ちょ! 『慈愛と守護の八障壁』!」


 いくらラナやリーナと言えど、人数が違う。この戦力の前に気が付けばラナは〈五ツリ〉の強力な障壁を張って防戦になっていた。


 こうなると誰もセレスタンとナキキの攻撃を防げない。


「バフするよー! 『ハイテンションエール』!」


 ここでダメ押しのノエルのバフ。ノエルの新しい武器である〈歌姫のハートマイク〉が光り、次の一撃だけ威力が3倍になる『ハイテンションエール』がセレスタンに付与される。


 セレスタンもドリルを構え、ナキキはハンマーを振りかぶった。

 そして強力な一撃を放つ。


「チェックメイトだ。やってしまえセレスタン、ナキキ! これが「城」特効だーー!」


「では行きます。『突貫』です!」


「続くっすよー! 『キャッスルブレイク・クラッシャー』っす!」


「あ、2人ともダメーーー!!」


 セレスタンとナキキによる「城」特効攻撃!

 それが「ズッッッドーーーン!」と赤本拠地に突き刺さる。

 すると、一瞬で赤本拠地のHPがゼロになってしまうのだった。


「きゃあああああ!?」


「うそぉぉぉ!!」


 マスを迂回していて間に合わなかったシャロンとカタリナの悲鳴もプレゼント。

 まさか本拠地がこうもあっさり陥落するとは思っていなかった2人が一瞬で消えてしまった赤本拠地のHPバーを見て悲鳴を上げたのだ。度肝を抜かれたとも言う。


 ゼフィルスからすれば「本拠地攻撃はこうやってやるんだぜ!」という見本を見せた形。

 セレスタンとナキキの城特効、そしてノエルのサポートがあれば、たとえ十全に守りを固めた本拠地も落ちることがある。


 ゼフィルスはこれを見事に示したのだった。


 ◇


 ここは〈南西巨城〉。赤チームの巨城攻撃部隊。

 それに最初に気が付いたのはサーシャだった。


「あれ!? 攻撃が入らなくなったですの!?」


 迫り来る制限時間、最後に大技を使って一気に巨城を削りきる気持ちで放った攻撃が――なぜか1Pも巨城のHPを削れていなかったのである。


「ひえ、サーシャ、上見て上! みんなも! スクリーン!」


「上ですの!?」


 カグヤに促され、サーシャはこんな時にいったいなにが、という心境で上を見て、その上空スクリーンに表示されたものを見て固まった。そして。


「―――赤本拠地が落ちてますのーーーーーー!?!?」


「どうやってあんな城塞落としたのーーーーー!?!?」


 次の瞬間、サーシャとカグヤの驚愕の声が辺りに響いたのだった。


 ◇


 ここは白本拠地付近。

 1度はひっくり返された〈北巨城〉にいる白チームたちもスクリーンを見上げていた。


「ゼフィルスお兄様、やったのです! ルルは信じていたのです!」


「ええ。間に合わなければこの巨城をさらにひっくり返すつもりでしたが、必要なくなったようですね」


「さすがは教官たちです。きっちりと落としてくるとは……。正直あのリーナさんたちのいる城塞を落とすのに空を飛べる私やトモヨさんを登用すると思ったのですが」


「あてが外れちゃったねフィナ先輩」


 ルル、シェリア、フィナ、トモヨが口々言うがみんな笑顔だった。

 万が一、赤本拠地を落とせなかった時の保険に〈北巨城〉を落とすつもりでやって来た面々だったが、攻撃の手を止めてゼフィルスたちを賞賛する。


「でも、勝って良かった~」


「そうだね。あ、転移陣」


 ミジュが言葉少なげに言うと、足下に現れたのは転移陣。

 トモヨの声を最後に、〈北巨城〉にいた5人は全員白本拠地へと送られてしまったのだった。


 どちらかの本拠地が落ちたら仕切り直し。

〈敗者のお部屋〉にいる人員以外、全員それぞれの本拠地に転移して、本拠地が陥落してから2分後に再試合が始まるルールだ。

 しかし、その2分後。すでに残り時間は0秒になっていた。

 数秒後、試合終了のブザーがフィールドに鳴り響く。


 ポイント〈『白28,120P』対『赤13,800P』〉〈ポイント差:14,320P〉。

 〈巨城保有:白8城・赤0城〉

 〈残り時間00分00秒〉〈残り人数:白19人・赤14人〉


 第一試合―――〈白の勝ち〉。




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