第1350話 赤ピンチ?なんかゼフィルスが企んでいるよ?





【嫉妬】の『装備枠封印』はアクセの装備枠すら封印してしまう【大罪】スキル。

 すると装備は外れたことになりその装備スキルはもちろん、装備を利用していた職業ジョブのスキルまで使用不可にしてしまうとんでもなく罪深いスキルだ。


 例えば体①の装備枠を封印してしまえば、その体①に付いていた耐性まで一緒に封印してしまえるため、状態異常に無防備になってしまう。

 さらにアクセ枠を1つ封印してしまうと、アクセ枠を2つ利用していた装備の類い、〈乗り物〉系装備や果ては〈白の玉座〉まで一時的に使用不可にしてしまうことができるのだ。マジとんでもないぜ。


 条件として、キキョウが直接見る必要があるのと、右手と左手は封印不可などの制限もあるが、強いものは強い。


 これによりエステルは〈イグニッションローラー〉を動かせなくなってしまい、バック走行していたこともあってバランスを崩しスリップダウンしてしまう。


 もちろんそれを見逃すゼフィルスたちではなく。


「今だ! 『フルライトニング・スプライト』! 『サンダーボルト』!」


「いくよー『雷雷ライライサンダー』! 『グローリアス・エレクトリー』!」


「……悪いわねエステル――『攻陣形こうじんけい四聖盾しせいたて』! 『インパクトバッシュ』!」


「きゃ!」


 チュドドドドーン。

 ゼフィルス、アリス、シエラがすぐに総攻撃。

 その凄まじい攻撃にはさすがのエステルも耐えきれず、退場してしまうのだった。


「……やり過ぎちゃったかしら」


 思わず呟いてしまうシエラ。

 手加減抜きの練習試合とはいえ、先程までほとんど互角に渡り合っていた相手が呆気なく退場させられた光景を目にして、シエラは少し申し訳なくなってしまう。

 ただゼフィルスが相手だと大抵こうなるので、気にしない方が身のため心のためである。


 ゼフィルスはそのままシエラに駆け寄ると指示を出す。


「シエラ、これから俺たちは赤本拠地へ行くぞ!」


「わかったわ。ん? 赤本拠地? 白じゃなくて?」


「おう! 少数精鋭を連れて赤本拠地に攻めに行こうぜ!」


「…………」


 一瞬聞き間違えかしらとゼフィルスに聞き返したシエラだったが、どうやら聞き間違えじゃ無かった模様だ。

 それを聞いたシエラは先程のエステルを思い出し、なんとも言えない顔になった。きっとシャロンが造って、カタリナが補強して、リーナが見張っていて、ラナ殿下が遠距離攻撃を放ってくる本拠地も、落城してしまうのだろう。そんなことが頭を過ぎったシエラ。


「何しろエステルにアイギス、メルトまで退場させたからな! 本拠地を落とす戦力は残ってないだろう。これは練習ギルドバトル、なら次は――赤本拠地攻略だろ?」


「……そうね、これは練習ギルドバトルだったわね」


 ゼフィルスの言葉にシエラはこれが本当のガチギルドバトルではなく、ただの練習なのだと思い出す。

 おかしい、今までで一番手強い試合に思えるのに練習という不思議。シエラの感覚が狂いそうだった。


 本来ならこの状況、もう白は勝ったも同然。あとはみんなで白本拠地の防衛をしながら巨城を気にしていれば間違いなく勝てる。

 赤本拠地をわざわざ攻めに行く必要は無い。

 しかしこれは練習だ。なら、いろんな経験をしておくべきだろうというのがゼフィルスの主張だった。


 そこにレグラムとオリヒメが帰還する。


「ゼフィルス、退場の中にシズ殿とカイリ殿も加えてもらおう」


「お、レグラム! そっちも倒したのか!」


「ああ。ゼフィルスの言ったとおり、シズ殿とカイリ殿は厄介だったが、オリヒメのおかげでなんとか倒すことができた」


「もう、レグラム様ったら謙虚なんですから。――ゼフィルスさん、レグラム様はほとんど一方的に倒されていましたよ。余裕です」


「それはなによりだ!」


 レグラムにシズを倒してもらえるよう頼んだのはゼフィルスだった。

 シズはあの通り無茶苦茶強い。特にスナイパーって倒しにくいのが普通だ。

 他の誰であってもシズを仕留めるには苦労しただろう。返り討ちに遭う方が多いかもしれない。人数差があっても、例えば仲良し3人娘を放っても下手をすれば敗北する。

 そこで相性の良いレグラムとオリヒメに頼んだのだが、見事に打ち倒したのだった。


 さすがはレグラムにオリヒメのコンビである。


「お兄ちゃん、あとねあとね、アリスたちクイナダお姉ちゃん倒したんだよー」


「え、マジで!」


「はい。それとラウ先輩も倒しました」


「本拠地を落とすための大事なダメージディーラーが続々退場!? 素晴らしいな!」


 アリスとキキョウの報告にも驚愕するゼフィルス。

 第二拠点の援軍にルル、フィナ、エリサを送ったのだが、第二拠点が消えてしまったところからそう上手くはいかなかったのかと思っていたら、クイナダとラウを討ち取っていた。ゼフィルスが素晴らしいと褒めまくる。


 これで赤チームは相当な戦力ダウンに陥った。

 特にギルドバトルでは厄介であるエステルとアイギスを退場させられたのは大きい。そこにカイリにシズ、メルト、クイナダ、ラウも退場となれば、やはり白本拠地の攻略はかなり厳しいだろう。戦力が足りない。

 改めて白本拠地は落ちないと確信したゼフィルスは、今こそ赤本拠地に攻め込む大チャンスだと行動する!


「ゼフィルス、次は?」


「レグラムとオリヒメさんは俺と一緒に赤本拠地の攻撃隊に入ってくれ」


「ふ、任せるがいい」


「レグラム様が行くところであれば、どこまでも」


「あとセレスタンたちを迎えに行く、一度本拠地に戻るぞ」


「分かったわ」


 ということで方針決定。

 一度全員で白本拠地へと戻る。再編成を整えたあと、出撃だ。


 ◇


 白本拠地周りはいろんなところが戦場と化していた。


 白チームのメンバーはセレスタン、ルル、ノエル、ラクリッテ、サチ、エミ、ユウカ、トモヨ、エリサ、フィナ、ルキア、ナキキ、シェリア、ミジュの14名。


 赤チームのメンバーはカルア、リカ、パメラ、ミサト、フラーミナ、ロゼッタ、ノーア、クラリス、アルテ、サーシャ、カグヤの11名。


 圧倒的ではないにしろ白優勢。

 赤チームは1年生が5人、強力な使い手であるノーアはルルが、クラリスはフィナが相手をしていた。エリサは隙あらば〈睡眠〉で一網打尽を計画していたが、それは赤チームも大きく警戒していたところ。故にエリサはむちゃくちゃ狙われていた。そして、その時は来たる。


「とう!」


「『ユニットスイッチ』!」


「にゅ! 消えたのです!」


 ノーアがルルの前から突如消えた。否、攫われたのだ。

 もちろん攫ったのはアルテ。ノーアをヒナに乗せて次の戦場へと向かう。


「助かりましたわアルテさん」


「ノーアさん、回復しますから後はお願いしますよ」


「いえ、回復は結構ですわ。このまま最後の一撃を放ちます!」


「! わかりました! 私がエリサ先輩の下に届けます!」


 ゼフィルスは各メンバーに誰々を相手にするようにと、相性の良い職業ジョブと戦うよう指示を出していた。

 それをアルテがユニット移動で引っかき回す。


 ルルの2回攻撃によりカウンター使いのノーアはかなり苦戦していた。

 あともう少しで退場するかもというところで助けられ、アルテが向かったのはもちろんエリサのところ。


「行かせないよー! 『時奪取』!」


「まだまだー! 『ブラストドライブ』!」


 ルキアが行かせないとばかりに移動速度をがっつり奪うスキルを使うが、奪われたアルテはドライブ系で補填。さらに。


「お嬢様の行く手は遮らせません! ――『千剣突撃』!」


「げ! 『タイムリープ』!」


「逃がしません!」


「私が居ることを忘れないでください――『大天使バッシュ』!」


「うっ!」


 クールタイムが明けたクラリスがフォローに千剣の剣山を放つが、ルキアはそれを見て防御も回避も不可能と判断してほとんど瞬間移動のごとき超ダッシュスキル、『タイムリープ』で離脱。

 さらに追おうとしたクラリスはフィナの攻撃の直撃を受けることになった。

 しかし、クラリスのフォローは成果を上げ、ノーアは見事エリサの目の前に飛び込むことに成功する。


「お覚悟ですわ!」


「やば!?」


「エリサさんはやらせはしません! イグニス様! 『イグニス・バースト』!」


「『モンスターカバー』!」


「!」


 そこへエリサの護衛もしていたシェリアがイグニスによる強力な炎のバースト系を放った。

 しかし、ノーアへは届かない。アルテが攻撃に飛び込んだからだ。これはモンスターの高い瞬発力で攻撃に割り込むカバー系防御スキル『モンスターカバー』。

 アルテが装備する新装備〈アダマンの小盾〉でしっかりガードし、ノーアに攻撃を届かせない。


「『ダークバインド』!」


 それを見てエリサは、相手を影の手で〈拘束〉する『ダークバインド』を発動する。しかし――。


「『逆境』! そして『逆襲』ですわ!」


 ノーアはその攻撃・・に対してカウンタースキルを発動。HPが少なければ少ないほど次の攻撃の威力が増す『逆境』を使い、パワーアップしたスキルがエリサを襲った。


「あ、もっとやばっ!? うひゃみゃぁぁぁぁぁ!?」


 エリサの『ダークバインド』は粉砕され、そのままぶった切られて、一撃でエリサのHPがゼロになる。


「あ、姉さまがやられてしまいました!」


 そこにクラリスを倒したフィナが駆けつけた時にはすでに遅し。

 エリサは退場してしまったのだった。


「エ、エリサさーーーーーーん!!!?」


 そして妹のフィナより、なぜかシェリアの声がフィールドに響き渡った。



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