第1349話 続々退場するメンバー。乗り物対策―その2!




 トモヨとアイギスが戦っている頃。


 ゼフィルスとミジュの登場でメルトを速攻で退場に追い込むと、続いて追うように仲良し3人娘であるサチ、エミ、ユウカが到着する。


「サチさん、エミさん、ユウカさんが来ます!」


 それに最初に気が付いたのはロゼッタだった。『ヘブンズナイツカッション』で警戒していたためにゼフィルスとミジュの転移攻撃に気を取られすぎることなく気が付くことが出来た。


 サチ、エミ、ユウカが横転した〈ブオール〉の向こうから、飛び出してきたのである。

 これにはメルトを助けにフォローしようとしていたメンバーも動揺する。

 さらに。


「大技いくよー!」


「いつでもいいよー!」


「2人に合わせる」


「「「せーの! 『神気開砲撃』!」」」


 初っぱなからドデカいコンボ攻撃をぶっ放してきたからさあ大変だ。

 しかし、ここに居るメンバーはみな〈エデン〉の精鋭。すぐに切り替える。


「――『グロリアスシールド』!」


「ちょ、んもう! 『フローズンギガントウォール』ですの!」


「やばっ!? カンザシとモミジ、こっちに結界張って!」


〈ブオール〉側にいたロゼッタ、サーシャ、カグヤがすぐに対応。

 巨大シールドに巨大な氷の壁、さらにカグヤが召喚したカンザシモミジがゼフィルスの方へ向かおうとした体をUターンさせて結界を張る。

 しかし、それでも『神気開砲撃』は止まらず、壁や結界を打ち破ってロゼッタたちを吹き飛ばした。


「「「きゃあああああ!?」」」


「ウーちゃん、ルーちゃん、フーちゃん、召喚! 『最後の力を振り絞れ』!」


「「「ウォーン!!」」」


「あっ! それはちょっとヤバいかも!」


 ロゼッタたちを吹き飛ばしたはいいが大技を放って『神装』状態が解け無防備な3人のところへフラーミナがウールーフートリオを即召喚して送った。しかも30秒間怒り状態にして攻撃力や防御力をむちゃくちゃ上昇させる『最後の力を振り絞れ』も使用済み。

 これにはサチも「あっ!」っとなる。


「詰めが甘いですよ。『大海の荒れ・エレメントアクワ』!」


「「「ウォン!?」」」


 そこへやってきたのはちょっと不機嫌そうなシェリアだ。

 闇の大精霊テネブレアを召喚しており、闇が津波のように襲ってウー、ルー、フーを止めたのである。

 シェリアは3人娘の護衛。

 本当はルルたちにとても、とっっっっっても付いて行きたかったシェリアだが、ゼフィルスの指示で泣く泣くこっち側に来ていた。


「シェリア!?」


「フラーミナさん、すみませんがここで倒させていただきます!」


「それは困るよ!? みんな、戻ってきて! 脱出!」


「「「ウォン!」」」


「逃がしません!」


 形勢不利とみるやフラーミナはすぐに撤退を決める。もちろんこれはリーナによる指示だ。

 ゼフィルスたちの奇襲作戦は見事に突き刺さったのだ。

 本当ならここでアイギスが空から奇襲する算段だったのに、それもトモヨに潰されてしまってはどうしようもない。


 奇襲は奇襲に弱い。アイギスによりゼフィルスたちの奇襲を逆に迎撃するはずだったが、さらなる奇襲でアイギスが封じられ、他のメンバーもゼフィルスの行動に気を取られた隙を突かれた。

 これをリーナ無しで行なっているのだから白チームは半端ない。


「「「『神装武装』!」」」


 もちろんタダで逃がす3人娘ではない。シェリアも同じくだ。

 だが、突破することに関してはフラーミナは彼女たちの上を行く。


「『我の歩みを邪魔するな』!」


「な!」


 それは強行突破スキル。防御スキルでなければ無理矢理に相手を跳ね飛ばして包囲網ですら強行突破してしまう強力な【大罪】スキルである。要は〈エデン〉がいつもモンスター相手に〈馬車〉でやっているあれである。

 これにより、ウーちゃんに跨がったフラーミナはロゼッタ、ミサトを回収して脱出、そのまま白本拠地の方へと向かってしまったのである。


 ちなみにサーシャとカグヤの方はアルテがやって来て回収していた。

 これもリーナの指示である。


「悪いですねミジュ! では、さらばです!」


「むー待てー!」


 メルトを倒して次はサーシャとカグヤの番、というところでアルテに回収されてしまいミジュが追いかけて白本拠地へ向かっていった。

 そこへサチたちの所へゼフィルスが合流する。


「サチたちも追いかけてくれ。白本拠地を任せる」


「ゼフィルス君は?」


「俺はトモヨと一緒にアイギスを倒すぜ」


「アイギスちゃんを!?」


 そしてサチたちもフラーミナを追いかけていき、ここにはゼフィルスだけが残ったわけである。


 ◇


 ゼフィルスは宣言通りトモヨと共にアイギスを倒し終わると、そのままトモヨを本拠地の防衛に送って1人とある場所に向かった。


「ルルー!」


「あ、ゼフィルスお兄様なのです!」


「教官、ご無事ですか?」


「あれ、1人なの? これって私とパートナーを組む流れ――グブファ!?」


「姉さま、静かに」


 そこは絶賛ノーアたちを追いかけ中のルル、フィナ、エリサたちのところだった。

 後方からアリス、キキョウが追いかけてきていたが、2人はまだまだAGIが低いので少し後方にいる。


 ゼフィルスは3人に追いつくと、走りながら手早く指示を出した。


「今白本拠地が狙われている。すぐに向かって対処してきてくれ」


「了解なのです!」


「任せてください」


「アイサー!」


「任せたぞ!」


 ルルたちはすぐにゼフィルスの指示に従って本拠地へ。

 ゼフィルスはそのままアリスとキキョウの下へ向かう。


「お兄ちゃん!」


「ゼフィルス先輩!」


「2人ともこれからちょっと大物と対峙しにいくぞ」


「「ふぇ?」」


「ちょっと失礼するな」


 そしてゼフィルスは2人の膝の裏に手を入れてひょいっと抱き上げた。

 そのままダッシュ。

 ゼフィルスが持ち上げた方が速いのだ。


「わわー速いー」


「え? あれ? いつの間に抱えて!? ゼフィルス先輩、どちらへ!?」


「シエラの所だ。シエラはエステルを押さえてる。キキョウの出番だぜ! 作戦を伝える」


 そのまま向かうのはシエラのところ、シエラは絶賛エステルと戦闘中で、シズとカイリはレグラムとオリヒメが相手をして引き離しているところだった。


 ◇


 ノックバックに強い耐性を持ち、オリヒメによってバフと回復がてんこ盛りにされた馬に乗ったレグラムは、とんでもなく強かった。そしてかっこいい。

 遠距離系のシズとカイリは頑張って距離を取りながら攻撃を行なっているが、レグラムの方が数段速い。さらに。


「いくぞ――『疾風迅雷』!」


「やば!?」


 移動速度を特大上昇させるスキル『疾風迅雷』をレグラムが使うと、あっという間にカイリたちに追いついてしまう。カイリの『危険感知』が警報を鳴らすが時すでに遅し。


「『天剣』!」


「きゃあーーー!?」


 レグラムのSTRは1100を超える。さらにオリヒメのバフ付き。

 一方VITが250の非戦闘職に近いカイリは、オリヒメにデバフをもらっていたこともあり、五段階目ツリー『天剣』にて〈敗者のお部屋〉へ送られてしまったのだった。


「カイリさん! くっ――『フェニックスショット』!」


 すぐにシズが反撃の〈五ツリ〉を使う。銃弾が火の鳥となってレグラムを襲うが。


「火属性なんて効きませんわよ――『ダイヤモンドダストエリア』!」


 それに即で対処したのはオリヒメ。火属性と氷属性ならば威力を特大ダウンさせてしまう『ダイヤモンドダストエリア』で周囲にキラキラしたものが舞うと、『フェニックスショット』はどんどん小さくなって命中した時にはヒヨコサイズになってしまっていた。ダメージなんてほんの僅かである。


「反撃です。『パーフェクトクリスタル』!」


「行くぞダンディ!」


「ヒヒーン!」


 馬のダンディ君に騎乗するレグラム。

 オリヒメは魔法を使うために少し前から下馬していた。

 ヒーラーだが攻撃スキルが無いこともなく、唯一〈五ツリ〉の攻撃魔法、氷の大結晶をぶっ放す『パーフェクトクリスタル』でシズに反撃し、レグラムも剣を構えてダンディ君に指示、そのままシズへと向かっていく。


「『フラッシュ・バン』!」


 シズも回避と同時に『閃光弾』の上位ツリーで迎撃。相手を〈盲目〉状態にして反撃の切っ掛けを作らんとするが、レグラムを守っているのは、オリヒメだ。

 状態異常など効きはしない。


「『癒しと浄化のメロディ』!」


 同時にレグラムのHPを回復させるメロディを奏でる。


「『冥王の威光』! ―――くっダメですか!」


 シズは直接的な攻撃力も非常に高いが、なにより妨害系に長けている。

『冥王の威光』は回復妨害スキル。下手なヒーラーが相手ならば、回復を失敗ファンブルさせてしまう強力なスキルだが、オリヒメには『回復妨害完全耐性』があった。よってレグラムは回復。


 さらにシズの『マルチトラップ』や『ミラージュトラップ』による物理的に動きを止めようとするワイヤーネットトラップも、レグラムの対妨害スキル『清廉潔白』によって粉砕され、とうとう接近を許してしまう。


「覚悟!」


「――ラナ様、申し訳ありません。ここまでのようです」


「『天海の雷鳴剣』!」「『天海の雷鳴声らいめいせい』!」


 そして最後は2人のコンボ攻撃により、ついにシズも退場してしまう。


 ◇


 こちらシエラVSエステルのところにはゼフィルス到着。


「シエラ、助けに来たぜ!」


「遅いわよゼフィルス。……何を抱えてるのかしら?」


 シエラは「遅いわよ」と口では言いつつ笑顔でゼフィルスの方に振り向き、そして瞬間ジト目にチェンジした。

 何しろゼフィルスがアリスとキキョウを抱えていたからね。仕方ないね。


「隙ありです」


「あ!」


 ゼフィルスの行動に動揺を誘われたシエラの隙を突き、エステルは盾の包囲網からの脱出に成功する。

〈イグニッションローラー〉をバック回転させ離脱を図らんとする。

 しかし、勇者ゼフィルスからは逃げられない。


「キキョウ、装備封印、アクセ①」


「はい! 『装備枠封印』アクセワン!」


「え? わ、きゃあ!」


 それは【嫉妬】の【大罪】スキル、『装備枠封印』。

 これは文字通り、相手の武器以外の装備を1つだけ、一定時間封印して使用不可にしてしまう罪深いスキル。

 そしてその対象は、エステルの〈アクセ①〉。

 これによって〈イグニッションローラー〉は使用不可。急停止してしまいエステルは後ろにひっくり返ってダウンしてしまったのだった。


 これぞ〈乗り物〉対策――その2。

〈イブキ〉や〈ブオール〉だって、キキョウがいれば怖くない。

 これが、ゼフィルスがエステルの所へ向かう際にキキョウを連れてきた理由だった。


 もちろんそのダウンを見逃すゼフィルスたちではない。

 アリスの〈超杖ちょーつえー〉が光った。


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