第1343話 強襲する少数精鋭。チーム初の退場者現る!
シエラの『カウンターノヴァ』が炸裂して〈
「びっくりしましたわ」
「お怪我はありませんかお嬢様?」
「もうクラリスったら、覚職してから怪我なんてありはしませんわ。それよりものんびりしている時間はないですわよ。出ますわ!」
「そうですね。では脱出しま――いえ、お待ちください。アリスさんの追撃が来ます! お嬢様は伏せて!」
「ここは俺に任せてもらおうか」
「!」
シエラのカウンターに加えさらなる『雷雷サンダー』の追撃がエステル号を襲おうとするその瞬間、甲板から飛び出したのはラウだった。
「我が『獣王に引き裂けぬ物は無し』!」
瞬間ズザンという音と共に雷が真っ二つになった。
「ほわぁぁぁ!! 見ましたか? 見ましたかクラリス、雷が真っ二つに引き裂かれましたわ!」
「ですからお嬢様は伏せていてくださいとあれほど!?」
「凄まじいな。これがかの【獣王】か」
そこへラウの後方に着地する者がいた。ラウが飛び出さなければ今の雷を防いでいたであろう、その正体はリカだ。後ろにクイナダもいて、それを見たノーアたちも「私たちも続きますわよクラリス!」と言って甲板から飛び降りて合流した。
もちろんクラリスも「お待ちくださいお嬢様!」と付いてきた。
「みんな無事のようでなによりだ」
「無論だ。私が先陣を切ってエステルたちの復帰まで時間を稼ぐ!」
「私も続きますわ!」
「お嬢様が行くならば私も援護させていただきます!」
「わ、私も行くよ!」
ラウ、リカ、ノーア、クラリス、クイナダがこうして集結。
短い言葉だけを交わして白の第二拠点へと走り出したのだった。
エステル号にはまだエステル、シズ、カイリが乗っていたが、後方支援メンバーなため後回し。まずはシエラたちのいる第二拠点を破壊するのがリカたちの役割だった。
「相手はあのシエラだ。だが、接近戦ならこちらに分がある。ゼフィルスたちが合流する前になんとしてもヴァンだけは倒す。それで第二拠点も消えるはずだ」
「承知ですわリカさん!」
「このメンバーならば誰かしらシエラさんの盾を抜ける可能性は高い」
ラウの言うとおり、このメンバーは全員が接近戦特化の無双系、【武将】や【王】のような凄まじい名がついた
エステルによってシエラの防御スキルを使わせクールタイムに突入させたら元々5人で飛び込む予定だった。
目的は第二拠点、ヴァンの撃破。
そのためには〈エデン〉最強のタンク、シエラを抑えることが不可欠で、その可能性があるのが少数精鋭での接近戦だった。
「雷の攻撃が増してきました!」
「足場を雷状態にしてきたか。〈雷ダン〉を思い出すな」
「ここは任せてもらおう――『
「わ! 雷一掃だー!」
「さすがは上級生の皆様ですわ!」
アリスが雷撃による遠距離攻撃、また地面を雷状態にしてスリップダメージと麻痺を誘発する『
「私はここから援護いたします――『千聖操剣』!」
クラリスの【
クラリスだけが足を止め、千剣で援護に回る。
空中に千の剣が解き放たれ、四方八方から拠点のHPを削るだろう。
いくらシエラと言えど、これを全て防ぎきりながら他の4人の相手なんてできない。――そう思っていたが、シエラに気を取られすぎた。ここには他にもタンクが居る。
「キキョウ、今よ」
「はい――『羨望の取消』!」
「な、これは!?」
それは【嫉妬】のみ使用可能。直前に使った相手のスキルを
これにより、直前に使った『千聖操剣』スキルが
「私はそれをよく知っているわ。そしてそれを使えないと多くのスキルも使用できなくなることも。もっと慎重に使わないとダメじゃないのクラリス」
それはシエラのとても実感のこもった言葉。
シエラの【
この
だからそれを操るための『千聖操剣』を潰されてしまうと【
そしてキキョウの所持する【大罪】職の1つ【嫉妬】は、相手の〈スキル〉・〈魔法〉を封印、
警戒すべきはシエラだけではない。1年生だって〈エデン〉のメンバーなのだ。
「ナイスよキキョウ。その調子」
「はい!」
「アリスも負けないよー! 迎撃迎撃ー! 『エレクトリック・ビーム』!」
「さすがはシエラだ。こっちのことをよく分かっている――『制空権・乱れ椿』!」
「みな、不用意にスキルを使わないように! 囮になるスキルも混ぜてフェイントを入れろ! 『獣速牙浪』!」
「『カバーシールド』!」
激突。
アリスの攻撃をリカが払って防御。
ラウは一気にブリッツ系の『獣速牙浪』で前へ出るが、これはシエラのカバーシールドによって小盾で防がれる。
「結界を張り直します! ――『森の大結界』!」
「結界を破壊しますわ! ――『閃光の一撃』!」
「了解です! 『
ラウの後を追うようにノーアが両手の大剣と大槍を合わせて光の剣にすると、特大の一撃を放つ『閃光の一撃』を使い、クイナダは〈四ツリ〉のバフで攻撃力を高めてから〈三ツリ〉の振り下ろしの強力な一撃、『
「くっ! さすがはノーアさんとクイナダさん、『森の大結界』がこうも容易く破壊されるなんて」
「たたみ掛けるぞ! 『獣王
「切り裂く! 『二刀斬・陽光
「クラリスも続きなさい! 『トルネードレボリューション』!」
「はい! 操千は使えなくなっても、まだ二本の剣があります! 『スターセイバー』
「合わせるよー! 『ブレイドバーン』!」
5人の前衛の一斉攻撃。
さすがのシエラの『カバーシールド』でも防ぎ切れずダメージを受けるかに思えたが、〈エデン〉最強タンクの名は伊達ではない。
「私がやるわ。『
そして現れたのは4つの巨大盾。それが第二拠点を守るように四方に張られたのだ。そこに強力な攻撃が叩き込まれると、4つの巨盾のうち2つが破壊されるも見事に耐えきったのだった。
「ふえ!?」
「防いじゃった!?」
アリスとキキョウもまさかの光景にびっくり仰天の声を上げる。
もちろんそこで止まるシエラではない。
「アリスは追撃! 今よ!」
「う、うん! ――『感電ホネホネパラライズ』!」
アリスはアタッカーだ、しかし同時に強力な〈麻痺〉使いでもある。
アリスはなんと『状態異常耐性貫通LV5』と『麻痺付着率上昇LV10』を所持し、例え相手がタンクで『麻痺耐性』持ちでも貫通させて〈麻痺〉させてしまうとんでも幼女なのだ。
狙いはノーア。連続攻撃をした直後のスキル硬直を狙う。
「! お嬢様!」
「させん! 『二刀払い』! くっ」
「リカさん!?」
しかしここでリカがノーアをかばった。
リカはタンクなだけあって『拘束麻痺耐性LV8』と『状態異常耐性LV5』を持っている。状態異常攻撃はむしろ受けても平気な可能性の方が高かったが、防御スキルを貫通しリカは〈麻痺〉状態になってしまう。
「や、やった!?」
キキョウが歓呼の声を上げる。
だが、ここでやられてしまうほどリカは甘くない。
「『明鏡止水』! 心配ご無用だ!」
「え、えええ!? 〈麻痺〉状態なのにスキル使いました!?」
一瞬で〈麻痺〉状態が解除されたリカが再び刀を構えた。
その正体はリカのスキル〈五ツリ〉の『明鏡止水』。
効果はどんな状態でも自分の状態異常を回復するというシンプルにして単純なもの。これがなぜ〈五ツリ〉に分類されているのか頭を捻るところだが、その真骨頂は「どんな状態でも」というところにある。つまり〈麻痺〉だろうが〈睡眠〉だろうが〈石化〉だろうが、本来ならスキル使用不可の状態でも発動できるスキルなのだ。
これによって、普通はスキルが封じられるはずの〈麻痺〉状態でも自己回復ができてしまうのである。リカがノーアを庇ったのは、自分ならどうとでもできるという自信からだったのだ。
「さすがにリカとラウを相手にすると手強いわね」
「シエラ、これならどうだ!」
「もうスキルがだいぶ使えなくなっているはずだ!」
リカとラウの言うとおり、さすがのシエラもエステルとの砲撃戦からの連戦で強力なスキルがほぼクールタイム状態になっていた。最初から赤チームはこれが狙い。シエラが強すぎて抜けないので、ならば攻城戦らしく飢えを待つ作戦だった。
エステル、ラウ、リカ、ノーア、クラリス、クイナダというメンバーに攻撃され続けたシエラは、ついにクールタイムで大技を使えなくなった。
4つの自在盾だけでは、さすがに5人の猛攻を防げなくなり、アリスやキキョウにかく乱してもらうも捌ききれず、ついにその時はくる。
「ここ!」
「くっ!」
飛び出したのはクイナダだった。防御の隙を突かれリカやラウ、ノーアなどの目立つ存在によって絶妙に隠されたクイナダがついにシエラを抜き拠点の内部に侵入する。
「――『番人の重結界』!」
そこに立ち塞がったのはシュミネだった。
この先にはヴァンがいる。
狙われることはわかりきっているため、初めから人目に付かないよう内部で隠れながら第二拠点を強化回復していたのだ。
シュミネは結界使い。少しでも時間稼ぎができればアリスかキキョウが応援に来る。もしくはシエラがクールタイムから解放される。
時間を稼ぐだけなのだから自分にもできるとクイナダの前に二重の結界を張って侵攻を防がんとした。
しかし、シュミネの本職はヒーラーだ。
アタッカーと対抗するのは、難しかった。
「押し通らせてもらうよ――『ブレイクパリィ』!」
「な!」
クイナダがまず発動したのはブレイク系の『ブレイクパリィ』。つまり相手のスキルを相殺するスキルだ。これがあるから防御スキルは出すタイミングが難しい。
シュミネはヒーラーなので、前もって結界を張るタイプ。それに合わせクイナダが結界を相殺したのだ。
しかし、そこに飛び込んで来るシエラの小盾。
シエラのスキル『カバーシールド』がシュミネの前に立ちはだかり、追撃を防がんとしたのだ。だが。
「ここで抜くよ! 『必殺・
クイナダが発動したのは必殺技。
カバー系やドロー系をすり抜け、相手に特大の一撃を与えるという、とんでもないスキルである。これによりタンクの庇護は無意味となり、クイナダは低姿勢から盾を抜くようにして突撃、そして金色に光る青竜刀で一閃。
「きゃ――」
必殺技はまさに必殺の威力。
ズドンという衝撃と共にシュミネのHPは一撃でゼロになり、〈敗者のお部屋〉へと跳ばされてしまうのだった。
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