第1342話 騎士姉妹の華麗な救出劇と第二拠点へ戦車襲撃
「クワー!」
「わ、ゼニちゃんが現れたっす!」
「はわわ!?」
「『ドラゴンブレス』!」
「ナキキちゃん! ポン! 『フリーミラージュ』!」
まさに危機一髪。
〈ブオール〉に乗っている限りスキルは使用できない。しかしアイテムはまた別だ。
アイギスはナキキが〈ブオール〉を横転させる直前、〈ファーム〉からテイムモンスターを呼び寄せる〈モンスターカモン〉を発動しゼニスを召喚していたのである。
そして〈ブオール〉を飛び降りたアイギスは強力な『ドラゴンブレス』を発動、狙いはナキキだったが、タンクがそう簡単に攻撃を許すはずもなく、ラクリッテの〈四ツリ〉『フリーミラージュ』で幻影を作ってそっちに攻撃させてナキキを回収する。
「助かったっす! ありがとうっすラクリッテ先輩!」
「でも、これは囮でした!」
「え?」
そう、実はゼニスは囮。というより意識を逸らすための一手だったのだ。
横転した〈ブオール〉から勢いよく飛び出してきたのは――ヒナに乗ったアルテ。
「アルテっす!?」
「通らせていただきますね!」
「セレスタンさん! 抜かれてそっちへ行きました!」
「〈気絶〉したカルア先輩、回収させてもらいますよ――『ブラストドライブ』!」
それはヒーラー【聖乗の姫騎士】の真骨頂。
倒れた味方を回収するユニット移動が得意なアルテの突撃だった。
〈四ツリ〉の『ブラストドライブ』は相手を轢き倒しながらも進む強烈な突進スキル。これでラクリッテたちの意識がそれた瞬間を抜き、一気にカルアたちの回収に向かう。
「させませんよ」
「抜いてさしあげます! ヒナ、行きますよ!」
「グァ!!」
「形勢逆転デース!」
立ちはだかるはセレスタン。
パメラとアルテの能力と速度からカルアを〈敗者のお部屋〉に送ることは間に合わないと悟ったセレスタンは、ならばアルテも仕留めようと立ちはだかったのだ。
「『忍法・影分身雷竜落とし』デース!」
「『波動
「『ゴーストドライブ』!」
そして一瞬の交差。
パメラの分身体による雷落とし、残り2体になってしまったパメラによる強力な閃光と剛雷の攻撃だ。
セレスタンがしたのは〈五ツリ〉の『波動
相手の意識の隙間に入り込んで爆発する拳を叩き込む強力なスキル。
これによりパメラの攻撃をすり抜けるようにしてアルテに接近する。
そしてアルテが使ったのは〈四ツリ〉スキル、相手の攻撃をすり抜けるように回避して突っ切る『ゴーストドライブ』だった。
「む!」
アルテが一瞬ゴーストのように朧気になってセレスタンの拳を躱しきる。そして。
「今――『ユニットスイッチ』! カルアさん、回収成功です!」
「す、すごいデスアルテ!」
気が付けばヒナがカルアを背中に乗せていた。
これぞユニット移動スキル、効果範囲内の味方を回収して騎乗させる『ユニットスイッチ』だ。
これにより、カルアを回収したアルテが横転した〈ブオール〉の方向へと向かわんとする。
「行かせませんよ」
そこを追いかけるセレスタン。セレスタンのAGIは600弱。
方向転換するアルテの前に回り込むのは造作もないことだった。
だが、それでも手遅れだった。
「『
騎乗中の味方限定だが、HPを大回復し、状態異常も回復させるアルテの〈四ツリ〉魔法によって、カルアの状態異常が解除されてしまったからである。
アルテに回収された時点ですでに手遅れなのだ。
「『
「カルア応戦デース! 『くノ一流・
「ん! 復活、今度はやられない――『クロスソニック』!」
そして一瞬で接近してきたセレスタンに向けて、パメラとカルアが斬りかかる。
結果、相殺。
お互い距離を取って睨み合う結果となった。
「これは、参りましたね。さすがはアルテ様。後回しにせずしっかりカルア様を敗者のお部屋にお送りするべきでした」
孤立して状態異常にしたあの状態のカルアのまさかの復活劇に、セレスタンは賞賛を送った。
白本拠地から東に2マスの地点、セレスタン1人VSカルア、パメラ、アルテ3人の戦いが勃発する。
◇
所変わって第二拠点。
ここでは派手な戦いが勃発していた。
「ひ、ひえ~~。こんな、こんな集中砲火受けきれませんよ~」
「キキョウ、元気だして? シエラお姉ちゃんが、守ってくれるよ?」
「大丈夫よ1年生たち。私が全部防いでいるでしょ? シュミネは回復を頂戴」
「は、はい! 『ネイチャーハイヒール』!」
「そこよ――『ディバインシールド』!」
「「きゃー!」」
そこにドガーンと衝撃。
シエラが張った4つの小盾の合体防御スキルにエステルの強力な『スラストゲイルサイクロン』がぶち当たったのだ。
直後に悲鳴が鳴り響く。
そう、現在第二拠点を守るシエラVSエステルの砲撃が展開中だった。
ガンガン砲撃を放ってくるエステルにシエラが『
シエラがどれだけ完璧に防ぎきっているか分かるだろう。
とはいえ、シエラも小盾で防ぐと多少フィードバックを受けるため、シュミネに回復してもらいながら防衛中だ。
シエラも五段階目ツリー、
しかし、それもここまでだ。
エステルの攻撃のクールタイムを把握しているシエラはそろそろ別の攻撃をしかけてくると予想していた。
「そろそろエステルの弾が全てクールタイムに突入するわね」
「や、やっと終わりでしょうか?」
「いいえ、まだよキキョウ。むしろここからが本番、エステルにはクールタイムを全部リセットするユニークスキルがあるの」
「ふえ?」
「そして、さらなる集中砲火が始まるわね」
「ええええええ!? 今のこれよりもですか!?」
シエラが言っているスキルこそ【姫騎士】系全ての職業が持っているとんでもユニークスキル、『姫騎士覚醒』だ。
これはクールタイムを8分の1にするため、すぐに上級スキルも発動可能になってしまい連射が尽きないとんでもないユニークスキルである。
そしてこれを発動する前提で動く場合、まずは大体のスキルをクールタイムに突入させるほど撃ちまくるのがエステルの攻撃スタイルなのだ。
それを聞いてキキョウが震える。
この子は結構怖がりなのだ。アリスが慰めるためによしよし撫でる。
実はアリスの方が物怖じしなかったりする。
「元気出してキキョウ」
「アリス、アリスは私が、私が守らないと!」
「大丈夫よ。例えエステルが本気で来ても、防ぎきってみせるわ――来たわね」
「ひゃ!?」
エステル号が赤いユニークスキルのエフェクトに包まれる。『姫騎士覚醒』に間違いない。
これにより16秒間、MP消費が4分の1になりクールタイムが8分の1になる。
つまり、槍砲撃ち放題だ。
だが、ここに居るのは〈エデン〉タンク最強のシエラ。
いくら〈エデン〉最高峰のアタッカーであるエステルと言えどシエラを抜くことは非常に難しい。
「これを待っていたわ。エステルのユニークスキルを使わせたからにはこちらも反撃に出るわよ」
「え!? 反撃!?」
「見ていなさいキキョウ、タンクはこうやって防ぐの。狙うは2発目よ。シュミネ、結界を切って」
「え? は、はい!」
そうシエラが言った瞬間ズドンと衝撃。シエラの小盾が吹き飛ばされたのだ。
しかも、もうエステル号は第二射目を発射していた。それは『インパルススラストキャノン』。シエラの盾を吹き飛ばし、結界を破壊し、本命の攻撃でズドンとダメージを入れる心算。しかし、そうは問屋が卸さない。シエラは結界を自ら解除して盾を構える。そして――。
「これを、返す! 『カウンターノヴァ』!」
瞬間、シエラの盾が光って攻撃を跳ね返す。
命中するはずだった『インパルススラストキャノン』は消滅し、シエラの『カウンターノヴァ』がエステル号にぶっ放されたのだ。
エステル号は攻撃を中止してすぐさま旋回、しかし回避は間に合わずズドンと大きなダメージを受けて地面を横滑りするように落下してしまう。
「え? え? なにこれ、すっごい……」
「これで『姫騎士覚醒』はほとんど使わないままクールタイムに突入するはずよ。アリス、追撃」
「うん! 『
エステル号は見事にひっくり返ってダウンした。
そこへアリスが追撃の〈四ツリ〉魔法をお見舞いする。
『
【雷神姫】に就いたアリスは〈雷属性〉特化型魔法使い。
非常に強力な雷魔法をぶっ放して攻撃する。
アリスから放たれた3つの雷が途中でネジ巻くように合わさり、回転を伴う非常に強力な攻撃となってエステル号へ向かう。
しかし、それはズザンという音と共に真っ二つに割られ、まるでエステル号を避けるかのように散ってしまったのだった。
「ふえ?」
アリスの口から可愛い声が出た。
エステル号から飛び出してそれを為した者が地面に着地する。
その正体は、もちろんラウである。攻撃を割るのはお手の物。
続いてノーア、クラリス、リカ、クイナダが飛び出し、第二拠点へ向かって駆ける。
〈エデン〉でも前衛に特化したメンバーたちが仕掛けてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます