第1334話 〈エデン〉VS〈エデン〉第一試合――開始!





「時は来た。練習ギルドバトルの開催だーーーー!!」


「ゼフィルス君テンション高~!」


「む、むちゃくちゃ気合いが入っています!?」


「いえ、あれは気合いというよりもただテンションが限界を突破しただけよ」


 おっといけない!

 あまりにテンションが上がりすぎてシャウトしてしまった!

 ノエルがわーっと一緒に盛り上がり、ラクリッテが目をパチパチさせる。

 そこへシエラがやって来てなぜか溜め息を吐いていた。


「楽しみなんだねゼフィルス君、私たちも楽しみだよ!」


「今日は張り切っちゃうよー! 負けないんだからね!」


「向こうも手強いだろうけど、こっちにはゼフィルス君がいるからね」


 サチ、エミ、ユウカもテンションを上げてギルドバトルを待ち臨んでいるな。

 そう、ここはゼフィルスチーム。


 白チームのメンバーはこちら。

 ゼフィルス、シエラ、シェリア、ルル、セレスタン、レグラム、サチ、エミ、ユウカ、ノエル、ラクリッテ、オリヒメ、エリサ、フィナ、ルキア、アリス、キキョウ、ヴァン、ナキキ、シュミネ、ミジュ、トモヨの計22名だ。


 一応毎試合メンバーはチェンジするつもりだが、第一試合はこうして時間を掛けられる関係上、とても気合いが入る。

 メンバー選びもとても白熱したものとなったよ。


 ポジションが被るメンバー、例えば俺とリーナは別々のチームになることが決定されているが、あまり別々にしてしまうと戦法が成り立たない組み合わせもあるためある程度大目に見ている部分もある。本拠地の防衛鉄板構成(リーナ、ラナ、シャロン、カタリナ)とかな。


 あと〈イブキ〉や〈ブオール〉なんかの戦車系も全部リーナチームへ行ったりしている。

「へ? 〈エデン〉の最強ギルドバトル戦法持ちがみんな向こうのチームじゃん! それ勝てるの!?」と思うかもしれないが、いけるいける。

 これくらいの戦力差で負けるほど〈ダン活〉プレイヤーはヤワではないのだ。


 むしろ新たな戦法のお披露目の機会とも言える。

 やっぱりデカい戦法は目立つからな。防衛戦法に戦車戦法は〈エデン〉の十八番おはこだが、それしかないと思われても困る。あと「こんなの勝てっこないよ!?」と思われてもとても困る。


 思ったんだが、やっぱり〈エデン〉がギルドバトルを挑まれないのって勝てないと思われているからだと思うんだよ。ちゃんと勝つ方法はあるんだって見せなければならない。ついでに〈エデン〉メンバーにも経験させよう。

〈ダン活〉にはもっともっといろんな面白い戦法があったんだ。今回は是非それを披露したい。そしてあわよくば〈エデン〉に挑むギルドが出てきてほしいな~。


 すでに白チーム全員には作戦を通達済みだ。

 この〈双三つ又〉フィールドはなかなかに難易度が高いフィールドで、お互い全ての巨城が相手に取られる危険にさらされている。

 一見して取られそうにない本拠地近くの巨城でさえ取られる可能性を秘めているのだ。


 そして問題は本拠地の位置だ。

 お互い東西の端の方に分かれているため距離はある。しかし微妙に南北ズレており、白本拠地はやや北側、赤本拠地はやや南側に位置している。これが自陣の行動範囲、つまりは縄張り意識を狂わせるのだ。


 いったいどこまでが安全圏なのか、どこからが敵がいる要注意エリアなのか、その判断が非常に難しいのだ。

 巨城が8城なのに、お互いの本拠地からほぼ同じ距離にあって取り合う巨城がここには無いのもそれに拍車を掛ける。


 ぱっと見、〈北東巨城〉と〈南西巨城〉がお互いの本拠地から同じくらいの距離にあり、取り合う巨城に見えるだろう。

 だが、それはまったく違う。

 観客席があるせいで回り込む必要があり、白チームなら〈南西巨城〉が、赤チームなら〈北東巨城〉が圧倒的に取りやすくなっているからだ。

 いつもの感覚で先取を狙って大量投入しようものなら手痛いしっぺ返しを食らうだろう。


 ということで、今回白チームは〈北東巨城〉を狙わない。

 白チームが初動で狙うのは〈中央西巨城〉〈南西巨城〉〈南巨城〉〈北巨城〉だな。狙えれば〈中央東巨城〉も行きたいところ。相手の出方次第ではそれ以上も狙う予定。


 ポイントとなるのが〈中央東巨城〉。

 赤本拠地からたったの7マスで隣接が取れてしまう、むちゃくちゃ近い位置にある巨城だが、近いが故にここは救済巨城だと誤認し、後回しにしてしまうことがよくあるのだ。

 基本的に〈城取り〉では救済巨城という、自陣本拠地から近く、非常に取りやすい巨城というのが存在する。だからこそ「救済巨城は最後に取るもの」という誤認が発生しやすい。


 白本拠地から〈中央東巨城〉までは24マス。

 まあ普通では取れないと思う、思ってしまうのだ。そうして誤認してしまえば最後、その隙を突かれてしまうだろう。

 この中央にある巨城群は、絶対に最初に取らなくてはいけない巨城なのだ。

 自陣に近いから自分たちのものとは限らない。

 あ、と思った時には遅かった。そんなことはいくらでも起こりうる。


 さて、ここまで言えばお分かりになった人も多いだろう。

 ここは相手と巨城を取り合うフィールドではない。

 自陣にある巨城をまず確実に自分の物にする。それが問われるフィールドなんだ。

 いつもの感覚でいれば、あっという間に食われてしまうぜ?


 故に、今回リーナにはノーヒント。

 その代わりに〈イブキ〉や〈ブオール〉持ち4人や鉄板の防衛メンバーを全部向こうに渡したんだ。

 リーナが〈竜の箱庭〉でリアルタイムで指示を出すことでどう戦況が変化していくのか、とても楽しみである。ふははははは!


 おっとそろそろ試合開始の時間だ。


「今回リーナの指示は無い。故に臨機応変さが求められる。だが俺が前もって渡しておいた作戦、そのマニュアルに沿って動ければ問題はないだろう! みんな、気合いを入れろーー! 行くぞ!!」


「「「「「おおー!」」」」」


 最後に鼓舞して全員の気を引き締めると、ブザーが鳴り響いて試合開始。

 観客席はだいぶ埋まってらっしゃる。今回はかなり大きなフィールドのはずなのに一面人ばっかりだ! もしかしたら満席かもしれない。みんな、しっかり見てくれよな!


 まずは二手ふたて、〈北巨城〉と〈中央西巨城〉方向へと分かれる。

〈北巨城〉側へは6人。

 残り16人は全員〈中央西巨城〉だ。俺はもちろん〈中央西巨城〉組。


 最初に隣接に着いたのは、俺とミジュ。

 実はこの白チームの中で最もAGIが高いのは、ミジュなんだ。

 LV5なのに! ちなみに次点で俺である。

 まあ、カルアとかパメラとか向こうのチームにしちゃったからなぁ。


「隣接したら速攻!」


「おけ」


「続けー! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」


「『強者の跋扈』! 『ベアストリーム・ストロング』!」


 俺のユニークスキルがズバンとぶった斬り、ミジュは短期間だけとんでもなく攻撃力を強化する『強者の跋扈』を使用後、単発ではあるが高威力で爆発的な衝撃を叩き付けるストレートを叩き込む。


 それを皮切りにして後ろからやって来たメンバーも次々攻撃。

 試合開始僅か1分半で最初の巨城が陥落した。




 ――――――――――――

 後書き!


 ゼフィルスがまず最初に狙ったのは――〈中央西巨城〉!



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