第1331話 時は来た、新メンバーの装備お披露目回だー!




 今日は珍しく、マリー先輩が〈エデン〉のギルドハウスを訪ねてきていた。

 その理由が。


「兄さん、待たせたなぁ。新メンバー分の装備、ようやっと完成したでぇ!」


「時間掛かったが、その分ええ感じの出来映えや!」


「待ちわびたぜマリー先輩、アルル!」


 さすがはマリー先輩とアルル、しっかりギルドバトル前に新メンバーの装備を仕上げてきてくれた。 


 新メンバーも全員上級職となり、中級上位ダンジョンの攻略者の証もほとんど集め終わって上級ダンジョンへ行く準備が整いつつある。そんな中、急遽決まったギルドバトル。日数が全然無いと思いきや、そこは優秀な生産職たち、しっかり間に合わせてくれたよ!


「装備はトモヨはんを除いた12名分やね」


「わ、私もいいの!?」


「もちろんだクイナダ! しっかりこっちで上級の装備シリーズ全集で揃えたからな! もちろんクイナダだけじゃない。全員分だ!」


「期待しててええで!」


「12名分の上級装備シリーズ全集を集めたってこと!? ほ、本校って本当にどうなってるの!?」


 俺とマリー先輩がキメ顔とドヤ顔を決めるとクイナダが思わず叫んだ。良いリアクションじゃないか!


「うんうん。やっぱ後輩はええもんやわぁ。うちの役割も無事こなしてもろうて助かるで」


「マリー先輩の役割が最近少なくなって、俺は寂しいです」


「だまらっしゃい!」


 少し前まで度肝を抜かれまくっていたマリー先輩だが、最近はこっち抜く側だ。

 Aランクギルドの長として、度肝を抜かれるマネはしたくない、ということなのだろう多分。でも俺は少し寂しいです。そう言ったらマリー先輩から怒られた。

 いったいなぜ!?


「ゼフィルス君~みんな集まったよ~」


「よーしそれじゃあ、試着会、開始しますか!」


 以前レギュラーメンバーたちも通った道だ。ステージでお披露目!

 試着会である!


「ふ、もちろん抜かりはないで。試着会場の準備もバッチリや!」


「さすがはマリー先輩だ!」


「試着に、会場がいるの!? さ、さすが上級の装備」


 クイナダがまだまだ驚いている。ほんと、ずっとそのままでいてほしい。


「はいはーい、みんなついてきてや! あ、男子は向こうな」


「了解であります」


「ヴァンは俺に付いてこい。装備はおそらく男子更衣室にあるだろう」


「メルトさん助かるであります!」


「ほ、本当に上級装備を着て、ここでお披露目するの? 本当ハンナちゃん?」


「うん!」


 マジだぞクイナダ。新装備が完成すればお披露目。これ〈エデン〉では常識。

 さ、ハンナはクイナダを連れていってあげなさい。そっちは男子禁制なのだ。


 その間に俺たちは打ち上げの準備を整える。

 とはいえ、ここではすでにセレスタンたちが準備をほぼ終えていた。


「ゼフィルス様はこちらへ。特等席をご用意しました」


 セレスタンに案内され、なぜか最前列へと座らされる。確かに特等席!


「ゼフィルスの隣は私が座るわね」


「わたくしも、お隣失礼いたしますわ」


「おお!? 全然失礼じゃないぞ!」


「んな!? ちょっとみんなの様子を見に行っている間に、出遅れたわ!」


「ラナ様、こちらの席に座ってください」


 俺の隣はシエラとリーナだ。とても幸せです。

 愕然とするラナをエステルが引っ張って俺たちの後ろに座らせていたのはさすがだ。でも王女が特等席に座らなくていいのだろうかと思ったのはそっと心の中に秘めておいた。言ったら大変なことになると『直感』さんが教えてくれたのだ。


 しばらく経って準備が出来たのか、マリー先輩がマイクを片手にやってくる。


「お待たせしたなぁ! これより、うちらの力作、〈エデン〉新メンバーの新装備のお披露目をしたいと思うで!」


「「「「わー」」」」


 マリー先輩のセリフに拍手喝采!

 みんな、新装備の完成を待ちわびていたのだ!


「では登場してもらおうか! まずはこの方……正直世の中不公平の塊や! こんな大きさ反則級も反則やで! うちも長いこと服飾の生産してきたが、こんな、こんな!」


「おーいマリー先輩! しっかり! 頑張れ!」


 なんか初っぱなからマリー先輩が闇落ちしかけたので頑張れと声を張る。

 マリー先輩の身にいったいなにが!?

 それは次の瞬間に氷解する。


「おーっほっほっほ! まずは私から行きますわ!」


「「「「おおー!」」」」


 まず出てきたのは、ノーアだった。

 胸を反らし、高らかに笑い声を上げてステージに現れる。


 まあ、ノーアだからね。マリー先輩が闇落ちしかけても仕方ない。


 ノーアの装備は前と同じく青系を基調とした貴族騎士の正装もかくやという煌びやかさを兼ね備えた、豪華な装備だった。前の〈逆転姫装備シリーズ〉に近い見た目だが、全体的に装飾が増えてパワーアップしている!

 クルッと半回転すれば、後ろはドレス風。腰から伸びたドレススカートが後ろ面だけを覆っていて、前は少しヒラヒラの多いキュロット系だった。


 か、かっこいい! ノーアかっこいいぞ!

 高身長のノーアにばっちりと決まっている気品のある装備だった。

 これはレグラムが装備している〈貴人剣帝シリーズ〉の女性版だ。

 腰のポーチ型〈空間収納鞄アイテムバッグ〉から大剣と大槍を抜いて構えれば、また「「「「おおー!」」」」と歓声が上がる。

 おっとスクショを撮らなければ! パシャパシャ!


 それに満足したようにノーアが下がると、続いて現れたのは、クラリスだ。

 まだマリー先輩が「どうぞ」と言っていないがいいのだろうか?


「よろしくお願いします。どうでしょうか?」


「「「「おおー!?」」」」


 出てきたクラリスに、今度は少しどよめいた声が広がる。

 クラリスが着ていたのは〈麗貴閃凜れいきせんりんシリーズ〉。

 白と薄い青を基調としてスカートを靡かせる、なんとドレス系装備である。

 と言っても動きやすさを重視したような長袖の煌びやかな服に長ズボンを着ており、ドレススカートは前が大きく開いているタイプだった。

 動きやすそうではあるが、男装っぽかった前の装備からいきなりのドレス系装備となってみんなびっくりしていたよ。


「似合ってるぞー」


「かっこかわいいよー!」


 口々にそんな言葉の雨あられが飛び、クラリスはいつもの無表情に朱が差し込んでいた。あとなぜか俺をじーっと見つめるクラリス。視線いいね、パシャパシャ。


「あーこほん、大変失礼したわ~! ここからはうちが司会を務めるで! 次は〈エデン〉の妖精枠? むしろ幼精!? アリスの登場やで~!」


 ここでマリー先輩復活。どうやって復活したのかは、定かでは無い。


「みんな見て見て~新しい装備だよ! アリス、お姫様みたい~!」


「はふん」


「あ! シェリアちゃんが倒れた!」


「し、しっかりシェリアちゃん、傷は皆無かいむだよ!?」


 後ろで一部何かトラブルがあった様子だが、お披露目は続く。

 シェリアのためにもたくさんスクショに納めておくからな! パシャシャシャシャシャ!


 アリスの装備は魔法使いのような黄色のドレスだった。頭には黄色の帽子が乗っていて、全体的薄着だ。背中には小さく蝶の羽根をモチーフにした妖精の翅が着いていて、下半身はノーアと同じくキュロットに後ろだけマントのようなスカートだ。

 足にはオーバーニーハイソックスを履いている。

 杖の先に本が装着されたような両手杖を後ろ手に持ってニコニコ笑っていた。

 これは〈雷黄らいおう精姫せいひめシリーズ〉だ。


 前の装備ではワンピース系だったが、パワーアップしてる! 可愛い。凄く可愛い! シェリアがぶっ倒れたのも分かる可愛い装備だった。


「続いては~アリスにも劣らない可愛さを演出する妖精の1人、キキョウちゃんや~」


「な、なんですかその表現! ま、まあアリスと同じというのは嬉しいですが。その、どうでしょうか?」


「ブラボー!」


「おおっと兄さんが一瞬で食いついたー!」


 拍手だ! 俺はキキョウに拍手を贈った!

 キキョウの装備は前よりも色の濃い紫と白を基調とした一見ワンピースにも見える装備、〈妖紫陽花あやかしあじさいシリーズ〉。

 袖の紫のひらひらがなかなかに魅惑を放っていて妖しい雰囲気を醸し出しているかのようだ。スカートも広く、白と濃い紫のコントラストが妖しくて良い感じ。

 各所に金属のアーマーを着けているところがこの装備が鎧なのだと主張していた。


 妖しい、でも可愛い。狐人のキキョウがこれを着ていると危うくやられてしまいそうだよ。パシャシャシャシャシャ!


「えー、兄さんが手遅れなので次行ってみましょか~。次はこの中で唯一の妹属性? 姉にも負けない騎獣を乗りこなすナイト――アルテや!」


「も、もー、マリー先輩そんなに持ち上げないでくださいよ~。まあ事実ですけど」


「ほう。最後のはちょっと余計ですよアルテ」


「そ、そんなことよりどうこの装備! すごくないですか!? すごいよね!?」


「おお~アルテはかっこいい系だな!」


 アイギスに笑顔を向けられたアルテが慌てたように装備を主張してきたのでこれも褒める。

 アルテの装備は、まさに騎士! と言わん装備だった。

 これは〈静稟せいりん騎士シリーズ〉。

 ドレスアーマーではなく、騎士スーツにスカート、と形容すればいいだろうか。

 体のラインが分かるほど体のサイズに合わせて作られたぴったりフィットの鎧装備。アイギスと同じく、赤と白系を基調としており、体は白、スカートや肩は赤だ。


 騎乗しても大丈夫(?)なように短いミニスカートが採用されている。

 完全にかっこいい系で攻めてきているな! パシャパシャ!


「さーて、もう6人目かいな! 続いては氷の姫君、サーシャ姫の出番だよ~」


「も、もう私の番ですの? というよりこの装備でお披露目は少し恥ずかしいですの……」


「「「「おお~」」」」


 サーシャの照れ顔だ! 照れ顔グッド。

 サーシャの装備はオリヒメさんと同じく〈氷姫貴装シリーズ〉だ。しかし、もちろんオリヒメさんの装備とは見た目を結構変えて改造してある。

 いや、改造してあるのはどっちかって言うとオリヒメさんの方だけどな。

 あっちは妙な色気があるのに対し、こちらは煌びやかで氷特有のキラキラした半透明の色合いを見事に再現している氷魔法使いの服装、いや正装? という感じだ。


 氷使いなのにノースリーブドレスである。寒くないのかと少し思うが、今は夏だからな。何も問題無かった。

 可愛いというよりも美しいという感じの装備である。でもサーシャがロリなのでやっぱり可愛い。パシャパシャ。


 これで半分が終わったな。



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