第1329話 緊急非常事態!アリーナ予約が全部埋まる!?




「来た! キタキタキタキターーー! 夏休みだーーー!!」


「お、おーいえーゼフィルス君!」


 とうとう夏休み到来。

 終業後のギルドハウスで俺があまりのテンションにシャウトすると、近くにいたハンナが乗ってきてくれた。ハンナ大好き!


「いえーい! 今年は帰省しなくていいわ! 自由にダンジョンに行けるわー!」


「はい。ユーリ様には感謝しなくてはいけませんね」


「ラナ様は去年とんでも30日連続パーティー、もとい公務をこなしたのですから今年はご褒美があって良いと思います」


「去年の王宮には〈幸猫様〉もいなかったデス。大変だったデスよ」


 おっとラナのテンションが高い。それに比べ従者組がしみじみ頷いている。

 去年は大変だったらしいからな!

 しかし今年は帰省者ゼロ。つまりは遊び放題ダンジョンし放題だ!

 夏休み最高!


「いいか! 夏休み、それは自由だ! そして自由とは、遊ぶことだ!!」


「ゼフィルス君、去年もそれ言ってたよね」


「相変わらずテンション高いわね」


「ゼフィルスさんらしいですわね」


 今日はついに終業式、無事テストの返却も終わり赤点者、補習者もゼロ。

 1年生の方もなかなかに高得点を叩き出している。ちなみに順位はこちら。


 戦闘課1年生の部――学年順位表。

 第1位・ヴィレルノーア 点数897点

 第3位・サーシャ 点数889点

 第4位・ハイシュミネ 点数888点

 第7位・キキョウ 点数879点 

 第10位・クラリス 点数875点

 第32位・ヴァン 点数855点

 第110位・アリス 点数832点

 第285位・カグヤ 点数793点

 第341位・アルテ 点数780点

 第817位・ミジュ 点数727点 

 第1000位・ナキキ 点数712点


 みんな十分点数はいいんだが、1年生自体が多いからだろう。その順位はなかなか厳しめだった。

 というかノーア1位とかさすがだな! さすがは公爵の姫。

 続くサーシャ、シュミネ、キキョウ、クラリスがトップ10に入ってる。素晴らしい!


 ヴァンとアリスはなかなかの順位。このままなら来年の1組も狙えるだろう。

 カグヤ、アルテ、ミジュ、ナキキだって良い点数なのに、順位がヤベぇ。

 だが赤点の心配は無さそうで安心だ!


 2年生にも当然赤点者は無し。

 カルアは、平均点超えをなんとかキープ。それ以外はなんの心配もない。


 俺の方は以前学園長に依頼されていた臨時講師の授業も満了。

 なんか最後は貴人の少なくない学生たちからキラキラした尊敬の視線で見送られたり、あるいは「ゼフィルス先生の授業、もっと聞きたいです!」なんて嬉しい言葉までもらったよ。

 どうやらスラリポマラソンはいろんな領地で行なわれ始め、すでにいくつかの成果を上げているのだとか。感謝してくる子も多かった。1学期臨時講師、やり遂げたぜ。


 ということで心置きなく夏休みを謳歌できる!

 そう思っていたのだが、ここでとんでもない話が飛び込んで来た。


「ゼフィルス様、至急お耳に入れたいことが」


「ん? どうしたんだセレスタン、珍しく慌てて」


 セレスタンが早歩きを超える歩きでやってきたのだ。は、速ぇ。

 いったいなにがあったんだ? もうマリー先輩たちに依頼していた装備が完成したのだろうか?


 そう思って聞くと、セレスタンの話は予想を遥かに超えるものだった。


「実はギルドバトルの会場、アリーナなのですが。今年は学生が多く、また留学生が第一アリーナなどを体験してみたいということで予約が殺到し、8月の予約がいっぱいになってしまいました」


「な、なんだと!?」


 とんでもない報告だ。緊急事態じゃないか!!


 ほんの少し前に夏休み中に何をやりたいか会議を行なった。

 そこで企画、『〈エデン〉内で練習ギルドバトル開催しよう』と発表した。

 ただ、全員が〈上級転職ランクアップ〉し十分にレベルを上げてからにしようということで8月後半を予定していたのだが。


「つまり〈エデン〉の予約は!?」


「全アリーナで抽選券をもらいましたが、漏れました」


「バカな……!」


 なんということだ!

 セレスタンの話によれば、今年は夏休みでもランク戦が可能ということもあり、あまりにも予約が殺到しすぎたため8月のアリーナ予約は抽選となったらしい。そして〈エデン〉は見事に漏れたとのことだ。

 学園は平等だ。ってそうじゃない!


「え、つまり夏休み中にギルドバトルはできないと?」


「それですが、8月は無理でしたが、7月でしたら確保が間に合いました」


「おお! さすがはセレスタンだ!」


 あぶねぇ! なんだ、そういうことなら早く言ってくれ。

 思わず脚が震えたじゃないか。


 セレスタンの話では、どうやら抽選に漏れたギルドを優先的に7月予約が取れるよう取り計らってくれていたようだ。

 そしてセレスタンももちろんそれに応募。


「結果、第三アリーナの予約を3時間取ることができました」


「よくやってくれたセレスタン! 全然大丈夫だ!」


 さすがはセレスタン。ダメでしたでは終わらない男。

 しっかりアリーナの予約も押さえてくれていたようだ。


 会場も問題ない、何しろ〈エデン〉のメンバーを半々に割ってギルドバトルするのだ。

〈エデン〉のメンバーは今45人。ハンナを抜いたとして〈22人戦〉が可能だ。

 第三アリーナは基本Bランク戦で使われるアリーナで、Bランク戦では〈20人戦〉が採用されている。

 十分な広さでギルドバトルが楽しめるだろう。


「おっとそうだ。セレスタン、予約の日時はいつだ?」


「それが」


 重要なことを聞き忘れていたと思い出しセレスタンに聞く。

 ちゃんと合わせてみんなで予定空けないといけないため予約の日時は重要だ。

 しかし、聞かれたセレスタンはなんとも歯切れの悪そうに言った。


「明後日の午前9時となっています」


「……明後日?」


「はい。明後日です」


「2日後じゃん!」


 マジ、なんてこった。

 夏休みでギルドバトルの予約が取れるのが2日後だけ?

 つまり2日後を逃せば夏休み中はギルドバトル自体ができないということに!


 絶対に参加しなければならない。


「全員集合! 緊急だ! 緊急スケジュール会議を開催する! 連絡が届かなかったなんてことがあってはならない!」


「ゼフィルス君、今日はみんないるよ? 終業式のあと打ち上げやるから集まろうって言ったのゼフィルス君だったもん」


「俺ナイス!」


 マジ俺ナイス! 44人の予定を合わせる、しかも明後日。

 この人数だ。連絡が届かなかったなんてことだってありうる。しかしどうやら、それは回避出来たようだ。


 集まってもらった大ホールのステージ(?)の上に立ち、俺は今セレスタンから聞いた話をみんなに通達する。


「ということで急遽練習ギルドバトルの開催が2日後に決定した! みんなの予定を詰めたい!」


「「「おお~」」」


 そう宣言すると、いろんな「おお~」が混じって声が返ってきた。

 びっくり仰天だったり、歓声だったり、やる気だったりだ。


「それはまた急だね」


「アリーナが埋まるなんてことあるんだぁ」


「私たちなら空いているよ」


 まず最初に答えてくれたのはサチ、エミ、ユウカだった。


「助かる。予約が取れたのは午前9時から正午までだ。この時間不都合だという人はどれくらい居る? 予定変えられない用事がある人は挙手を!」


 ――しーん。

 おや? 張り切ってみんなのスケジュールを聞いてみたら、なんだか明るい雰囲気。


「夏休み中は帰省が予定の大半を占めるもの。それがないのなら、あまり動かせない予定というのはないのではないかしら?」


「私たちはまだ学生ですしね」


「ラダベナ先生もおっしゃっていましたわ。学園に残り自分を磨く者ほど成長すると。〈エデン〉のみなさんの予定は大半が自分磨きですわ」


「なるほど!」


 シエラ、シェリア、リーナの言葉に感銘を受ける思いだ。

 そういえば学生だったな俺たち。

 学生時代、どうしてもずらせない用事というのは、そういえばあまり多くなかった。


 どうやらみんな、多少は用事があっても動かせる範囲だったみたいだ。


「じゃあ全員参加できる、ということでいいか?」


「大丈夫だよ~」


「は、はい! 予定空けておきます!」


「2日後ですか、思ったよりも早かったですね。腕が鳴ります」


 ノエル、ラクリッテ、アイギスが気軽な返答だ。

 他のメンバーたちも思ったよりも好印象な雰囲気。

 どうやらギルドバトルが目前になってやる気を漲らせている感じだ。

 おお、これが、学生のフットワーク! 頼もしすぎる!


 1年生たちはちょっと驚いているみたいだが。まあ、急いで〈五ツリ〉を開放してもどっちみち使いこなせなかったかもしれないからな。

 急ではあるが、これも経験ということで頑張ってもらいたい。


「それじゃ、決まりだな。2日後、〈エデン〉第一回練習ギルドバトルを開催する!」


「「「「おおー!」」」」


「これよりチームを決めるぞ! あと作戦会議! そして打ち上げだー!」


「「「「おおー!」」」」



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