第1328話 上級職ランクアップ! ミジュ編!




「さて、最後はミジュだ!」


「よろしくゼフィ先輩。強くして」


「任せろ!」


 シュミネ、ナキキが終わってミジュの番。

 おお、なんかいつもよりキリッとしているミジュがいる!

 珍しい表情だな? スクショに撮ってもいいだろうか?

 冗談だ。


 しかし、普段めんどそうな雰囲気を出しているミジュがやる気なのは珍しい。

 さすがは〈上級転職ランクアップ〉! 〈上級転職ランクアップ〉さすが!

 ミジュもこの時ばかりはやる気を出さざるを得ない様子。


「ふんす」


 ふんすとか言ってる!

 やる気が現れまくってるぜ。


「では、提案するぜミジュ。俺がオススメするのは上級職、高の上、【森界しんかい熊掌者ゆうしょうしゃ】だ!」


「深海?」


「森に世界の界で森界しんかいだ。つまりは森の優勝者トップだな」


「強そう」


「実際強いぞ。何しろ上級職、高の上だ。……実は他にも上級職、高の中に【世界ワールドチャンピオン】という職業ジョブもある」


「……ん? 世界のトップが中で、森のトップが上?」


「【世界ワールドチャンピオン】は対人特化でな。【森界しんかい熊掌者ゆうしょうしゃ】はダンジョンも含む、魔物にも強いし対人でも強い職業ジョブだ」


「なるほど。でも名前が難儀」


「だな~。よく言われてたわ。【世界ワールド】の方が強そうだって」


 なぜか森の方が上に数えられている不思議。

 まあ【世界ワールドチャンピオン】は完全に試合から来ている言葉だから。自然界を合わせたらそりゃ森の方が驚異だろうて。


 でも最初はこれよくこんがらがって、【世界】の方に〈上級転職ランクアップ〉させちゃう人が結構居たのだ。

 みんなそろって「「「「なんじゃこりゃぁぁぁぁっ!!」」」」と叫んでいた時代が懐かしい。

 まあ特化型だから強いことは強いんだけどな。リカみたいにタンク打ち破って懐に入ってくるし。『人物キャラキラー』とかいう、人間や獣人なんかに攻撃するとき威力が上がるパッシブスキルの『キラー』系を覚えるもんだからやばかった。


 だが、俺がオススメするのなら断然【森界しんかい熊掌者ゆうしょうしゃ】だな。強いぞぉ。理不尽なくらいに。


〈乗り物〉騎乗系が乗れてパワーアップするのはもちろん。

 索敵、避けタンク、アタッカー、自己バフなどに適性があって大きく活躍する。

 ダンジョンでモンスターを相手に単身、パワーだけで吹き飛ばして勝ちながら進む様はマジ森の優勝者。


 ユニークスキル『森界に君臨くんりんせし王者の跋扈ばっこ』なんかもうとんでもなくって、効果はいわゆるオールキラー。

 全モンスター、人間を相手に、最大でダメージが1.5倍になるという意味分かんない効果を持つ。パッシブ系なので、全アクティブスキルにキラー系効果が乗るのだからもうとんでもない。あまりの強さにプレイヤーからは「きっとクマだからだ!」「開発陣め、クマだからって本気を出しやがったな!」と影で言われていたほどだ。


 さらに避けタンクもできるのに『熊王の衣』というパッシブスキルで常に被ダメージをカットするもんだから避けきれなくても問題なくて、むしろデカい攻撃にパンチで打ち破って突き進むというロマン戦法が使えてヤバかった。

【獣王】の『獣王に引き裂けぬ物は無し』とはまた別のロマンがあったんだよ。

 あと、パンチ系スキルの充実度がヤバい。〈六ツリ〉スキルになると少年漫画なみの派手さとかっこよさと破壊力を持ったパンチを出し始める。オススメだ。


 それをできる限りミジュに説明する。


「ヤバそう」


「いや、「そう」じゃない。マジヤバいんだよあれ。絶対森でトップになるのにいらないだろうって必殺技もじゃんじゃん覚えるから」


 マジ謎スキルだし。いや、楽しかったけどさ。


 そんな説明をするとミジュは熟考、することもなく頷いた。


「うん。ゼフィ先輩の言うことに間違いなんてない。私、【森界しんかい熊掌者ゆうしょうしゃ】に就く!」


「よく言ってくれた!」


 最近俺の言うことに間違いはない、みたいな言葉をよく聞きます、いったい誰が触れ回っているのか気になるところ!

 まあ、こういう場面で間違いなんてしないけどな!


「じゃあ早速〈宝玉〉を使ってもらおう。ミジュにはこれだ〈天杯てんはいの宝玉〉だ」


「ありがと。使う」


 相変わらず端的で早い。

 俺が取り出したのは主に獣人系の〈上級転職ランクアップ〉でよく使う〈宝玉〉、〈天杯てんはいの宝玉〉だ。

 それをミジュが触ったところで使用する。あの、俺の手に乗ったまま使わないでくれるかな? ちゃんと受け取って? まあ、もう粒子に溶けてしまったけど。


「こほん、それで次の条件だが、これが難しいようなそうじゃないような。『必殺』と名の付いた武器スキルが付与された武器を装備することだ」


「必殺の武器スキル?」


「もう用意してあるぞ。これがミジュの新しい上級武器〈ブラストナックルスペシャル〉だ」


「! 新しい上級武器! 名前はなんかアレだけど、見た目すごくかっこいい」


「それは完全に同意する」


 俺がミジュに手渡したのは指抜き手袋に手甲が着けられ、さらに何やら筒のようなものが4箇所に取り付けられている、拳系武器。

 この筒、なんとジェットである。ここからなんか青白い光を出して加速して拳を打ち出す武器スキル『必殺・ジェットブラストインパクト』が強力で、実にロマンに溢れ使う人が多かった。

 実は〈ダン活〉は後半になると拳系武器はこういうロマンが割とくっついてくる。


 名前は、まあうん、あまり気にしないでほしいが見た目のゴツさ、かっこよさならなかなかのものだ。ミジュは素早くこっちに換装した。


「どう?」


「かっこいいぜミジュ!」


「はい。とても決まっていますよミジュ」


「めっちゃ強そうっす!」


「……むふー」


 おっとミジュ、〈ブラストナックルスペシャル〉を大変気に入ったようだ。

 むふーとか言ってる! 俺は素早くスクショで写真に収めた。

 ふぅ、レア画像ゲット。さっきナキキの時に取り出していたのが功を奏したぜ。

 

「む、そのデータは消してほしい」


「シュミネはどう思う?」


「消さなくてよろしいかと。あとで私にも見せてください」


「というわけだミジュ」


「ぐむぅ」


「それより、これで条件は整ったはずだ。〈上級転職チケット〉を渡そう。これを持って〈竜の像〉に触れてくれ。そうすれば【森界しんかい熊掌者ゆうしょうしゃ】が現れているはずだ」


「……うん」


 若干スクショを恨めしげに見たミジュだったが、切り替えて〈上級転職チケット〉を受け取り、そのまま〈竜の像〉へと向かっていった。


「ミジュ、慌てないように、落ち着くのですよ」


「分かったお母さん」


「誰がお母さんですか」


 シュミネが注意を促していた。本人は否定しているが、言っていることがまんまお母さんなんだよなぁ。


「あ、あった」


 ミジュが〈竜の像〉に触れると、ジョブ一覧が現れ、その一番下には無事【森界しんかい熊掌者ゆうしょうしゃ】の文字があった。


 ミジュはシュミネに言われたとおりそれを焦らずタップする。


「お、おお? おおおおお??」


「来たな! 覚醒の光だ!」


 瞬間、足下から現れた黄緑色の光によってミジュは包まれた。

 覚醒の光だ! 激写ー!! パシャパシャ。


「ナキキ行きますよ。私たちも一緒に記念撮影です」


「さっき撮ったのにっすか!?」


「あれはナキキの覚醒です。今回はミジュの覚醒ですよ? しっかり思い出に残さないと」


「やっぱりシュミネは言ってることお母さんっす!」


 一通りミジュを激写すると、そこにシュミネとナキキがやって来て覚醒の光の前に並んで記念撮影。パシャパシャ。


「ふお、ふおお、ふおおおおおお!!」


「おおっとミジュのテンションが振り切れたか? 今のうちにもっとスクショを撮らなければ!」


 両手を挙げたミジュがテンション高めに吠えた。来たな。

 ミジュは見た目通り子どもっぽいところがある。

 普段大人しい反動か、テンションが上がるとこうしてシャウトするときがあるのだ。

 また、ここで子どもっぽいと言うと襲われるので注意。


 俺は叫ぶミジュもたっぷりと激写したのだった。


 そして覚醒の光が終わる。


「ふぅふぅ、柄にもなくはしゃいでしまった」


「いいはしゃぎっぷりだったぞミジュ」


 また反動でテンションダウンしていたので俺は親指を上げて励ました。


「ミジュ、〈上級転職ランクアップ〉、おめでとう」


「おめでとうございますミジュ」


「ミジュおめでとうっす! これで3人とも上級職っす!」


「うん。ありがと」


 思えばあっという間だったな。

 これで3人の、いや、新メンバー全員が上級職へ〈上級転職ランクアップ〉したのだった。


 よし、まずはがっつりとレベル上げだ!



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