第1325話 夏休みブリーフィング。今年は花火大会がある
「あとは、やっぱり1年生みんなの上級ダンジョン入ダンから攻略までやりたいな」
「あなたはまた……1年生のこの時期に上級ダンジョン、しかも攻略なんて」
「できるだろ?」
「できるけど……」
俺が振るとシエラが普通に認めた。ちょっとジト目のサービス付きだ!
ふっふっふ。1年生たちはすでにほとんどのメンバーが上級職に至っている。
まだなのはシュミネ、ナキキ、ミジュだけだ。それも、もうLV73らしいので秒読みの段階!
〈エデン〉のメンバーが全員上級職になる日は近い。明日かもしれない。
となれば、ようやく俺たち上級生メンバーに追いつける、ということでもある。
そうすれば……ゆ、夢が広がりまくる!
「私たちが、上級ダンジョン攻略ですか!?」
「素晴らしいですわね! クラリス、遅れずに付いてくるのですよ!」
「お嬢様は先に行きすぎてはダメですからね」
「キキョウ、楽しみだね?」
「私はアリスがそんなところに行くなんて恐怖ばっかりです!」
アルテがまず信じられないと言わんばかりの声を上げると、両手を合わせたノーアが可憐な笑顔を見せた。すぐ側のクラリスの頬に汗が伝っている気がするのは、多分気のせいだろう。
アリスは純粋に楽しみなようだ。遠足にでもいくような気分なのかもしれない。
反対にしっかり者のキキョウはオロオロと心配そうだ。
「はぁ、上級ダンジョンかぁ。これでやっとみんなに追いつけるよ」
「強くなって帰ってきたトモヨちゃん、早く見てみたいなぁ」
この中で唯一のやり直し中であるトモヨも強くなってレギュラーに帰ってくる。何しろ上級職の天使だ。俺も楽しみだが、仲の良いマリアはもっと楽しみの様子だな。
「もうちょっと練習しておくでありますか」
「だね~。というか私、〈四ツリ〉の回復魔法全然使ったことないもん! やっぱりヴァンにある程度被弾してもらうしか……」
「上級ダンジョンに入るどころか攻略することにここに居る方々がなんの疑問も抱いていませんですの! 普通はできるのかと疑いを持つところですの!」
「そ、それねサーシャちゃん! なんで本校ってこんな偉業を出来る前提でのほほんと進めようとしているのかな!? 分校ではそれこそ上級ダンジョンに挑む人すら居なかったのに!?」
ヴァンはいつも通り真面目に地力を上げる様子だ。まだ〈
あとカグヤ、そんなに慌てなくても使う場面はきっと来るさ。だからヴァンには優しくしてあげて?
サーシャはいつも通りのツッコミ。それにクイナダはむちゃくちゃ食いついて首をコクコク頷きまくってる。
「私たちも早く続かなくてはなりませんね。少々遅れ気味です」
「頑張るっす。でももう今日か明日にでもカンストまで行きそうっすけどね」
「なら、明日はゼフィ先輩に転職させてもらう」
シュミネとナキキ、ミジュはまだ下級職。
しかし上級職はすぐそこだ。何しろ〈上級転職チケット〉はまだまだ余っている。
俺は3人に手を振った。振り返してくれたよ。
「そうなると、上級の装備がいるわね! 〈金箱〉の!」
「「「「「〈金箱〉の上級装備!!」」」」」
おっとここでラナの発言に1年生たちが食いついた。目を輝かせる子が多数!
今まで彼ら彼女らが使っていたものは、一応上級装備ではあったが、〈木箱〉産だった。
それがなんと一足飛びで〈金箱〉産である。
目を輝かせるのも分かるというものだろう。
「もちろんそれも抜かりはない! すでにアルルやマリー先輩に頼んで作製段階に入っているぞ!」
「いつの間に……」
「1年生たちが加入した時からちょくちょくな!」
「ほぼ最初からじゃないの」
うむ。最初から1年生たちがどんな上級職になるか見えていたからな!
そりゃあちょくちょく動けるってものさ!
あ、シエラがジト目だ! ふっふっふ、きっと俺の
1年生たちが新しい装備に思いを馳せてうっとりしている間にも夏休みの企画会議は進む。
そしてここからは、重要な議題だ。
「それと、1年生たちが無事全員上級職となり、それなりに上級生に追いついた暁には、ギルド内練習ギルドバトルを開催したいと思う!!」
「「「「ギルド内練習ギルドバトル!?」」」」
つまり、ギルドメンバーでチーム分けしてギルドバトルをしてみようぜ、ということだ!
俺の提案に主に上級生メンバーがびっくりしている。
「ゼフィルス、まさか、マジか?」
「大マジだぜメルト! ギルドメンバーもだいぶ増えてきた。しかし、こう人数がいるとなかなかギルドバトルに出場出来ないメンバーもいるだろう。1年生なんてまだギルドバトルの経験すらないぞ。これはいけない。また、夏休み明けにはクラス対抗戦ギルドバトルも控えている。新メンバーもギルドバトルに慣らしておくべきだ!」
「確かに、新メンバーはまだ1度もギルドバトルを経験してはいないが……」
ざわざわ、ざわざわ。
これにはギルドメンバーもみんなざわざわする。
「ええ!? 上級生の方々を相手にギルドバトルをしてもいいんですの!?」
「良い経験になりますわね! 是非やってみたいですわ!」
「ギルドバトルはしてみたかったですね。それも本校生最強の方々とです、きっと多くのことが学び取れるでしょう。とても楽しみです」
ノーアやクラリスのような前向きの1年生もいれば。
「上級生のみんなに混じって上級生とギルドバトルするって? 無理無理」
「と、とんでもないことになりましたの!」
カグヤやサーシャのように戦慄する1年生もいる。そして。
「ルルお姉ちゃん、アリスとチームを組んでほしいな」
「アリス共々、よろしくお願いします」
「もちろん構わないのです! アリスもキキョウもルルが守ってあげるのです! ルルはお姉ちゃんなのです!」
アリスやキキョウのようにすでに特定の上級生とチームを組もうとする1年生まで現れる。
うむうむ。みんなやる気で大変結構! でもアリスとキキョウよ、なぜ俺ではなくルルを? ルルがとっても胸を張ってるよ! 後輩に頼られてとても羨ましい!
あと何やらシエラとリーナがこっそり会話して俺の方をちらちら見ていたが、最終的にリーナが立ち上がって俺の横に並んでいた。
つまりはOKということだ。ふはははは!
よし、良い雰囲気のうちに纏めよう!
「じゃあ、あらかた出揃ったので、今年〈エデン〉の夏休みではこれを行なうことに決定する! 異議のある者はいないか? 大丈夫か?」
ホワイトボードに〈夏休みの企画〉の一覧を書き連ねたもの見せながら、メンバーに同意を求めた。
〈夏休みの企画〉
・〈海ダン〉へ行こう!
・〈食ダン〉へ行こう!
・〈鉱ダン〉へ行こう!(仮)
・1年生を連れて上級ダンジョンを攻略しよう!
・上級中位ダンジョンを攻略しよう!
・〈エデン〉内で練習ギルドバトルをしよう!
シンプルに書き連ねると、この6つになった。詳細はこれから詰める予定だ。
〈鉱ダン〉に(仮)と書いてあるのは要相談の意味。時間が余ったら行く感じだ。
本当は俺がもう少し、去年シエラに却下された企画も持って来ていたのだが、シエラから「それは去年却下したでしょ?」と言われてボツになっている。
まあ仕方ない。今ですら少し時間が足りなそうな予感がしているしな。
とりあえずこれで決まりそうだ。
他にアイディアが無ければ詳細を詰める話に移るんだぜ!
「はい!」
そう思っていたところ、1つの手が挙がる。それはハンナからだった。
「お、ハンナどうしたんだ? あ、もちろん練習ギルドバトルはハンナも参加していいぞ?」
「違うよ!? なんで私が普通に参加する感じになってるのかな!? そっちじゃ無くて、学園イベントの方! 夏祭りのこととか、まだ話し合ってないでしょ?」
「あ、それがあったわね」
おっとうっかり、シエラも今気が付いたみたいで手をポンと合わせていた。
珍しい光景。
ちなみに学園イベントとは夏休み最終日の2、3日前に行なわれる夏祭りなどのことだ。
去年はハンナも出店に参加してたっけ。ちなみに参加は任意である。
今年は8月の31日が日曜日なので、夏休みは8月いっぱいまで。
ということで夏祭りは29日と30日だ。
学園のイベントは他にも毎年恒例の魔石集め、夏になると大量発生する
「それで、夏祭りがどうしたんだ? あ、今年もハンナが主催の露店をやる感じか?」
「ううん。それも考えたんだけど、私は生産隊長になったから見回りの方がメインかな。それよりもね、今年は去年と違うイベントがあるんだよ」
「ほほう?」
違うイベント? どんなイベントだろう。俺、気になります。
「実はね、夏祭り最終日の夜に打ち上げ花火が上がることになったの」
「ほう!」
打ち上げ花火! 夏祭りの定番だな! そういえば去年は無かったんだったな。
ゲームでも打ち上がっていた記憶はない。つまり、これはリアルオリジナル要素ということだ。素晴らしいな!
そう考えたところで、背中がゾクリときた。
あ、あれ? なぜだろう、俺の周りだけ一気に空気が重くなった気がするよ?
なんか他の多くのメンバーがワイワイ言いながら誰と行くかで盛り上がる中、俺の、特に両サイドのシエラとリーナからの圧が上がった気がする。気のせい、かな?
「ハンナの言いたいことは分かったわ。時間は限られているもの。誰と回るか、決めておかないといけないわね」
「ええ。ここはスケジュールを練るための会議ですわ。夏祭りではギルド全体なんて大人数で動くことはできませんもの。少人数で回る必要がありますわ。順番は大事ですわね」
う、うむ。そうだな。リーナの言うとおり。順番は大事だ。
……ん? 花火大会での順番ってこと?(混乱)
「では、夏祭りの行動スケジュールを練りましょうか」
「ゼフィルスさんは人気者ですものね。みんな回りたいでしょうが、時間はきっちりしなくてはなりませんわよ?」
「ただ今回も時間は2日間と限られているわ。タイトなスケジュールになるのを覚悟すること。では、ゼフィルスと回りたいメンバーは挙手を」
「「「「「はい!」」」」」
シエラとリーナの言葉に挙がる多くの手。
あれ? 俺の意見は?
まあ良いけどな! 去年も確かこんな感じだったし。
こうして最後の最後で、夏祭りに俺と回りたいメンバーのスケジュールを組むという、よく分からないことに一番時間が掛かったのだった。
まあ、みんなそれほど楽しみだってことだな。
花火大会かぁ。俺も楽しみだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます