第1324話 第2回、夏休みのスケジュールを組むぞーー!




「キー!」


〈ブレイドラビット〉がカグヤの召喚獣であるカンザシとモミジに斬り込む。

 しかしカンザシが翼を二度羽ばたかせると、正面に半透明の結界が現れ、その攻撃を防いでしまう。


「シー!」「コン!」


 そこへ容赦無く反撃。モミジが鳴くと狐火が燃え上がり発射。結界に阻まれた〈ブレイドラビット〉に直撃して吹き飛ばした。


「キー!?」


「ほう、カンザシ殿とモミジ殿はなかなかハイスペックでありますな!」


「シー!」「コン!」


「ヴァン~さぼるんじゃありませんの!」


「ヴァンも良いところを見せないとタンクの座を奪われてしまうかもね!」


「む! それはいかんでありますな。カンザシ殿、モミジ殿、スイッチであります!」


「シー!」「コン!」


 新しい職業ジョブの練習を始めてしばらく。

 3人もだいぶ新技に慣れてきたようで立ち回りが上手くなってきた。

〈ブレイドラビット〉をお供にする守護型ボス、〈スーパーホーンラビット〉の力強い角の一撃をヴァンがタンクをスイッチして弾く。


「キシャアアアアアア!」


「もう貴様はウサギではないでありますな! 『城鎧防じょうがいぼう』!」


 ヴァンのスキル発動と共に顕現したのは鎧。

 鎧を顕現させて相手の攻撃を防ぐ防御スキルだ。

 それは〈スーパーホーンラビット〉のスーパーな角ですら打ち破れない。


「あとは私に任せるですの!」


「お願いねサーシャ。カンザシとモミジはヴァンがやられた時用に待機しててね~」


「シー!」「コン!」


「ふ、それではお役目は永久に来ないでありますな!」


「カンザシ、モミジ、やっぱ割り込んでもいいよ」


 カグヤの召喚魔法『お稲荷召喚・カンザシとモミジ』で顕現したこの子たちは、魔法名から鳥をカンザシ、狐をモミジと命名されている。

 結界を張って攻撃を防いでくれるため、擬似的なタンクとしても活躍出来るのではないか? と現在進行形で検証中だ。それ、本来ヒーラーを守るんだが……。

 あ、ヴァンの前に割り込んで〈スーパーホーンラビット〉の突撃を防いだ。


 とりあえず、〈角兎の庭園ダンジョン〉の10層ボスにふさわしいスーパーな角兎の突撃は防げることが分かった。


 しかも指示に従って動いてくれるんだからこれ、結界を動かしているようなものだ。さすがは巫女。かなり強力な能力なんだぜ。

 あとカグヤ、ヴァンの活躍の場は奪わないであげて?


「む。負けないであります――『堅力アップ』!」


「『極寒照射光線ごっかんしょうしゃこうせん』ですの!」


「キシャアアアアアア!?」


「あ」


 ヴァンが自己防御力バフを発動して気合いを入れた瞬間、背後から極太の冷凍光線を食らった〈スーパーホーンラビット〉が〈氷結〉状態になって凍ってしまった。

 そしてヴァンもなぜか固まった。


「トドメですのクイナダさん!」


「『将軍魂ジェネラルソウル』! 斬れ―――『狼王剣アルマーレイ・エスパーダ』!」


 そこへクイナダが自己強化からユニークスキルへ繋げて発動する。

 強力なオーラを纏った薙刀の上段斬り、たった一振りの一閃。

 しかしその威力とエフェクト、衝撃は強力の一言。


 ズッッッッッッドンッ!!!!


〈睡眠〉〈氷結〉状態の時、ダメージは2倍になる。

 クイナダ最強威力の一撃により、まだ半分近くもHPが残っていたにもかかわらず〈スーパーホーンラビット〉は一撃で光に還っていったのだった。


 ク、クイナダ超かっけぇ!!


 まずユニークスキルの名前がかっこよすぎるんよ!

 サーシャの『極寒照射光線ごっかんしょうしゃこうせん』もかっけぇし最高だ!

 いやぁ、良いもの見れたわぁ。


「自分の出番が、消える……!」


 若干1名、役に立てなくて戦慄を隠せないタンクがいるが、まあそういうこともあるさ。


「えーっと宝箱は……〈銀箱〉だね」


「なかなかですの。誰がお祈りしますの?」


「それじゃあ私が開けちゃっていいかな?」


「いいよぉ。カグヤさんにお任せするね」


「それじゃ、〈幸猫様〉と〈仔猫様〉。良い物ください」


 和気藹々で宝箱を開けるカグヤ。

 な、なんて華麗でスマートに宝箱を開ける人が決まるんだ!

 俺たちの時は毎回誰が開けるかで色々工夫を凝らしているというのに!

 まったく、みんなもっと後輩を見習うべきだ!(←筆頭)


 ちなみに〈銀箱〉の中身は〈超兎スーパーウサギ装備シリーズ〉の全集レシピ。ウサギなりきりコスチューム装備とも言われていたネタ装備のレシピだった。

 なんで全集当たっちゃうかな~? もっと〈金箱〉的な装備で全集欲しかった。

〈幸猫様〉、これは売れってことなの!? 着ぐるみ系なんだけど!?

 よし、これはマリー先輩に任せよう。


 ということで、ヴァンたちもだいぶ慣れたのでダンジョンから帰還した。



 そして翌日の放課後。


「今日は全員集まれたな? これより、夏休みのスケジュールを決めたいとーーー思う!!」


「「「「わー」」」」


 ギルドハウスの大ホール。

 長机の上座で立ち上がった俺が、今日の会議の議題を発表した。

 そしてパチパチと鳴る拍手。喝采!

 みんなもうすぐ来る夏休みが待ち遠してくてたまらないのだろう。

 気持ちは凄くよくわかる!!


「シエラ、頼む」


「ええ。事前にみんなの夏休みの予定を一覧表にしてあるわ。これがその一覧表ね」


 去年も行なった夏休みの予定調査。

 今年もシエラが動いてくれて、少し早めにみんなのスケジュールを集めてくれたのだ。

 シエラ曰く「今年は去年より倍以上メンバーが多いもの。早めに動かないといけないわ」とのことだ。


 おかげでこの会議を開いたときにはすでにみんなの夏休みの予定を入れた一覧表が完成していたのである。ありがてぇ。

 なお、シエラは予定を聞いただけでそれをでっかい紙に纏めたのはサトルだけどな。ほら、今もホワイトボードにでっかい紙を貼り付けてる。

 それを見て、俺はまず重要なことを語る。


「今年は帰省者が――なんとゼロだ! 素晴らしい! 帰省者ゼロ、素晴らしい! でもみんな大丈夫なのか?」


「大丈夫よ! 後のことは全部お兄様がやってくれるわ!」


「私は、手紙で十分ね」


「ルルは心配だから一度顔を見せてと言われたのです。でもダンジョン行きたいので「また今度ね」って約束したのです!」


「ん。帰ってくるなって言われた」


「せっかく上級中位ダンジョンが解放されたのだ。ここで帰省する者はいないのではないか?」


「たはは~リカちゃんごもっとも! ここで帰るわけにはいかないよねメルト様?」


「ああ。帰省はこの前済ませたからな」


 ラナ、良い笑顔だなぁ。ユーリ先輩、頑張って。

 シエラは、なんだか素っ気ないな!? 家族と何かあったのだろうか?

 ルルの両親、泣いちゃうんじゃないだろうか? 大丈夫?

 カルアは平常運転だな。

 リカ、ミサト、メルトの意見はここに集まった皆の心境を代弁していたのか、多くのメンバーが頷いていた。


 というわけで、今年の夏休みは帰省者ゼロを記録。

 これは大々的にイベントを組まないとな。


「ねぇゼフィルス、今年はどこに行くのよ?」


「私は話に聞いただけですが、昨年の〈エデン〉は〈食ダン〉で3泊4日を過ごし、〈海ダン〉で大いにはしゃぎ、夏祭りをエンジョイしたそうではないですか! 私も同じことを所望しますわ!」


「ちょ、お嬢様、少し落ち着いてください」


「アリス。海で遊んでみたいなぁ」


「ゆ、幽霊は、反対です!」


 ラナの言葉に、新メンバーの方では去年〈エデン〉で行った合宿を所望する声が上がった。


 ノーアめ、夏をエンジョイする気だな! 一緒にエンジョイしよう!

 クラリスは大変そうだ。この夏でたっぷり慰安をプレゼントしよう。

 アリス、海に行きたいって? 俺も行きたいさ! よし、行こう!

 キキョウ、安心してほしい。俺たちがやるのは〈夜のモンスターハント〉だ。肝試しではないから安心してほしい!(2回)


 シエラがキキョウの言葉に深く2回も頷いていたが、見なかったことにしよう!


「ゼフィルス。今何か邪なことを考えなかった?」


「何を言うシエラ。俺は夏休みをどう盛り上げようか考えていたところだぞ!」


 なぜかシエラの目が本気だった。見抜かれている気がするのは、気のせいだと思いたい。

 俺はクールに首を振って真剣でキリッとした表情を作って対応した。

 去年、正直に「肝試しをやろう」と言って却下された日を、俺は忘れてはいない。


「…………」


「こほん! それでは夏休みにやりたいことリストを作るぞ! まず〈海ダン〉合宿! これは確定だ! 夏と言えば海! 海と言えば夏だ! これだけは外せない!」


「ん! バーベキューはありますか!?」


「食べきれない量を用意しようじゃないか!」


「素敵!」


 カルアが思わず敬語になって目を輝かせていたな。

 ハンナもクスクス笑いながら「お弁当も作っていくね」と言ってくれている。

 なんかとてもテンション上がってきたな!


「〈海ダン〉か~。〈秘境ダン〉はどうかな?」


「いや、夏に温泉はキツいぞ。海で日焼けすれば、熱いお湯なんてまともに入れん」


「あれ? ラウ君詳しいこと言うじゃん?」


 ルキアから〈秘境ダン〉も提案されたが、そっちは冬休みに行こうということになった。ラウは何か実感がこもってるな。ひょっとしたら実体験なのかもしれない。


「エクストラダンジョンで合宿、いいね!」


「そうなると、残っているのは〈食ダン〉と〈道場〉。あとは」


「〈こうダン〉ですね。ほら〈鉱石と貴金ダンジョン〉ですよ」


「あそこか~。ちょっと行ってみたいかも」


「ですが日は足りるでしょうか? 上級中位ダンジョンに行きたくて帰省を取りやめた方もいるはずです。エクストラダンジョンとの塩梅が重要ですね」


 ノエルはエクストラダンジョンでの合宿賛成派だな。

 シャロンも賛成のようだ。だが〈道場〉で合宿は本格的すぎるな。見送ろう。

 ラクリッテが言った〈鉱ダン〉は〈エデン〉が唯一入ったことのないエクストラダンジョンだ。確かに、行ってみるのはありかもしれない。

 だがアイギスの言うとおり〈鉱ダン〉に行くとなると上級中位ダンジョンへ潜る時間を削ることも視野に入れなくてはならなくなる。綿密にみんなの希望を集め、スケジュールを組まねばなるまい。


 そんな感じで次々出る意見を纏めあげ、どんどん夏休みの予定を決めていったのだった。




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