第1320話 上級職ランクアップ! ヴァン編!




 吉報。

 いつの間にかヴァンたちのLVがカンストしていたよー!

 これは〈上級転職ランクアップ〉しなくてはなるまい!!


 今回の対象はヴァン、カグヤ、サーシャだ!


 俺は早速〈上級転職チケット〉を3枚取り出してピラリと見せつけ、もう片方の手でヴァンの手をガシッと掴まえた。


「?? ゼフィルス先輩。これはなんでありますか?」


 掴まれた手を不思議そうに見るヴァンにメルトが言う。


「ヴァンよ。そうなったらゼフィルスは止まらん。だが悪いようにはならないから行ってこい」


「メ、メルトさん? どういうことでありますか!?」


「よっしゃ! そういうことだから即行動だ! ヴァン、カグヤ、サーシャは俺に付いてこい! もう準備はだいぶ前から出来てるんだ。〈測定室〉に行くぞー!!」


「「今からなの(ですの)!?」」


「もちろんだ! 善は急げとも言う、そして〈上級転職ランクアップ〉は超善だ! 良いことだ! つまりとても急げということだ!」


「なるほど! それなら急がないとだね!」


「騙されてはダメですのカグヤ!?」


「おおおお!? なんでありますかこの力!? タンクの自分がまったく踏ん張れないであります!?」


「抵抗は無意味だヴァン」


「3人ともいってら~」


 メルトやミサトに見送られ、俺はヴァンを引きずるようにして〈測定室〉へと向かった。もちろん、後ろからカグヤとサーシャもついてきているのは確認済みだ。


 そのまま近くの〈測定室〉を借り、入室する。


「こ、ここは?」


「ここは〈測定室〉だ! あ、入ったら扉は閉めてくれよ」


「えっと、わかりましたの」


 ヴァンは突然来た密室に目を白黒させ、俺の言葉にサーシャが扉を閉める。

 カグヤも含め、3人はキョロキョロ見渡しているな。


「そういえばカグヤとサーシャ〈測定室〉は初めてか? ヴァンは一度あったよな?」


「はい。自分は二度目であります」


「私は入学式で【巫女狐】になったから初めてだよ~」


「私もですの。入学式で職業ジョブに就かなかった人はここで職業ジョブに就くんですのね」


「でも、思ったより殺風景だね。ここの〈測定室〉だけ?」


「いや、学園にある全ての〈測定室〉が同じ感じだな。どこの部屋も〈竜の像〉とテーブルのみだ」


 何しろゲーム仕様だからね。〈測定室〉がちゃんと〈測定室〉だと雰囲気で分かるよう統一されている仕様だった。

 物が無い理由は、実は聞いたことが無い……これ、各職業ジョブの発現に必要な装備やアイテムを部屋に置いといた方がいいんじゃない? レンタル屋さんとかオープンしてさ! と最近思い始めてる。

 今度学園長やミストン所長にも提案してみよう!


「じゃあ最初、誰からいく?」


「ひぇ~、本当に〈上級転職ランクアップ〉しちゃうの?」


「LVがカンストしたら〈上級転職ランクアップ〉は基本だな!」


「そんな基本、絶対〈エデン〉だけですの!」


「では自分から」


「ちょ、ヴァン!? このノリで自分が名乗り出るですの!?」


「乗り繋がりだ!」


 相変わらず仲いいなぁこの3人は。

 そしてサーシャのツッコミが心地良いです。ノリ良し!


「最初はヴァンか! よーし任せろ、ヴァンは確か【一国一城の主】でよかったよな?」


「は! 自分は【一国一城の主】を目指したいと思っていたであります!」


「その願い、俺が叶えてやるぜ!」


 ヴァンからは以前リクエストを聞いていた。

 それが 上級職、高の上【一国一城の主】。

 男子であれば、到達できる最高峰の職業ジョブの1つだ。

 その能力はとんでもなく、シャロンのように防壁を築いて城を守る、というものではなく、なんと新しい味方の城を造ってしまう能力なのだ!


 つまりはギルドバトルなどで本拠地や拠点とは違う第二の城、第二の拠点にして砦を好きな場所に建ててしまえるのである。これがどういうことかわかるだろうか?


 相手の陣地の近くに建てれば牽制になるのはもちろん、2箇所から出撃してくるとなると1箇所に掛かりきりになることはできなくなる。挟撃されてしまうからだ。

 つまり、この第二の拠点が建っているだけで本拠地が狙われにくくなるというやべぇ性能を持っているのである。


 これだけでもめちゃくちゃ強いのに、これを相手の本拠地の近くに建ててラナを配置すればどうなるか……。

 あの〈学園出世大戦〉で開始3分弱でやられた〈弓聖手の悲劇〉が再び起こる可能性すらある。

 恐ろしい、なんて恐ろしいんだヴァン。

 俺は君が恐ろしいよ。わくわく。


 ヴァンには是非ギルドバトルで猛威を振るってもらいたいな!


「【一国一城の主】に必要なのは、まず旗だ」


「旗? エンブレムのフラッグみたいな感じですの?」


 俺の言葉にサーシャが首を傾げる。本当にそんなものが必要なのかという顔だ。

 だが安心してほしい。あれほど大きいものは必要ないのだ。(←多分大小の意味ではない)


「あれを持ってくるのも有りだが、あれは大切なものなので今回はこの旗で代用してくれ」


「小っちゃ!」


 俺が渡したのは、バスガイドさんなんかが持っていそうな注目を集めるための小さい旗だった。取り出した瞬間カグヤが思わずといった様子でツッコミを入れていたよ。

 しかし、真にツッコミを入れるのはここからだった。


 うん、持たせてみて思ったが。ヴァンの体格でこの旗は似合わねぇ~。

 やべぇ。カグヤとサーシャがツッコミも出来ずにプルプル震えてるぞ。笑いをこらえている様子だ。


「こ、こほん、では次に〈天剣てんけんの宝玉〉を使ってくれ」


「ありがとうございます! この旗を掲げながら使った方がいいでありますか?」


「ぶふっ! やめ、ヴァン。そんなことをしたら吹いちゃう。乙女がしちゃいけない声が出ちゃう!」


「も、もう出ているですの!」


「…………」


 結局ヴァンは無言で〈宝玉〉を受け取って使用した。

 粒子の光が舞ってヴァンに吸い込まれていく幻想的な光景なのに、片手で旗を掲げだしたのでやべぇシュールな出来事になってしまう。

 見ろ、カグヤもサーシャも口を押さえてプルプルが抑えられなくなってる。


「ヴァンは、これで大丈夫だ。残りはステータス値だが、すでに満たしている。あとは〈上級転職チケット〉を使えば【一国一城の主】に就けるぞ」


「ありがとうございますゼフィルス先輩」


「お、おう! 礼は受け取るから旗は振らなくていいぞ」


 ヴァン、その旗気に入ったのか?

 なんか楽しそうにフリフリしてるんだが。


「もう、やめへ。ヴァン、その旗禁止!」


「お腹がよじれそうですの……」


 カグヤとサーシャの腹筋は限界が近そうだ。

 あ、カグヤが旗を取り上げた。ヴァンが悲しそうな顔をしながら〈竜の像〉に手を触れる。するとそこには。


「!! ゼ、ゼフィルス先輩! 【一国一城の主】が、な、無いであります!?」


「カグヤが旗持ってるからな~」


 カグヤから旗を取り返してヴァンに返した。

 再びカグヤたちの腹筋に危機が舞い込む。もう長くは持ちそうにないな。


「おお、おおおお! 【一国一城の主】が発現しているのであります! おお! この旗、小さいのにやるでありますな!(ふりふり)」


「「ぶふーーーーっ!」」


 あ、ここでついに2人に限界が。

 しかし計らずとも【一国一城の主】に就くには旗が必要だと証明されたな。

 サーシャとカグヤはそれを理解する余裕は無さそうだが。


「ヴァン、旗を振りすぎて間違えるなよ」


「は! 承知いたしました!」


 結局限界が来た2人を置いといて、ヴァンが【一国一城の主】にタップすると、他がフェードアウトしていき、【一国一城の主】だけが残った。


 これでヴァンは【一国一城の主】だ。




 ――――――――――――――

 後書き失礼いたします。


 本日は〈ダン活〉小説版9巻の発売日!

 Dランク戦ギルドバトル勃発でランク戦も本格化!

 ついにギルドバトルで障害物=観客席が登場し、より一層面白さが際立ってくるようになった最初のランク戦が始まります!


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