第1318話 シエラと一緒!?テスト結果発表を見ようぜ! 




「テスト結果発表だーーーー!」


「なんであなたはテストでそんなにテンションが高いのよ」


「そりゃシエラ。張り出される学年順位表を見るのが楽しみだからに決まってるだろう! シエラも楽しみだろ?」


「普通に同意を求めてきたわね。それはあなただけだと思うわよゼフィルス。私は結構緊張しているわ」


「シエラの学力なら問題ないって!」


 月曜日、朝の通学路。

 いつも通りハンナと朝食を取った俺たちが寮を出ようとしたところで、偶然シエラと遭遇した。


 珍しいこともあるものだ。いつもならもっと早く出るシエラとこんなところで会うとは。

 ということで一緒に向かうことになったのだ。


「ハンナは、いつもゼフィルスと登校しているの?」


「はい。途中までですけど」


「〈戦闘4号館〉と〈生産1号館〉は離れているからな」


「へぇ。どういうことなのか気になるわ」


 おっと、なぜか冷や汗が背中に!?

 いったいなぜ!?

 シエラの目がジト目じゃない! まさか、通学路でピンチ!?

 そう思ったところで、なんとハンナが俺とシエラの間に割り込んだ!


「シエラさんは学園で会えるじゃないですか、私は朝くらいしか会えないんですよ?」


「うっ……」


 夜ご飯もしょっちゅう一緒に食べるけど俺はなにも言わなかった。

 確かに他のメンバーと比べるとハンナと会う時間は少ない。

 その言葉にシエラは多少言葉に詰まった様子だった。


「でも2人きりでほぼ毎日というのは贅沢じゃないハンナ?」


「シエラさんたちはダンジョンでゼフィルス君と攻略できるじゃないですか。それもほぼ毎日です」


「む、やるわねハンナ」


「ここを取られたら私はゼフィルス君と会う時間が無くなってしまいますから。これだけは譲れません」


「――分かったわ。朝は譲るわよ」


 何やら俺抜きで話が纏まった様子だ。

 途中から冷や汗が止まらなくなって少し距離を置いていたが、どうやらハンナがシエラに納得させた様子。ハンナすげぇな。去年御貴族様に怯えていた頃と比べると逞しくなってしまって……。


「えっと、話は終わったか?」


「ええ。やっぱり一番の強敵はハンナのようだわ」


「えへへ」


 シエラに強敵と言われて笑っている、だと?

 ハンナとシエラの間でいったい何があったのだろう? 聞いておけばよかっただろうか? いやそれは『直感』さんがやめておけとおっしゃっている。知らない方が幸せなこともあるのだ!


 まあ、ハンナは〈エデン〉全体の兵站ポーションを握っているからな。シエラにとっても逆らうべからず、ということ、なのかも?


 そんな感じでなぜかテストの順位発表の日なのに落ち着かない通学路を通り、いつもの分かれ道へ到着する。


「頑張って来いよハンナ。と言ってもテストを返却してもらうだけだが」


「うう~。私もそっち行きたいよ~」


「何言ってるの。ここまでは独占したいと主張したのはハンナでしょ、こっちの校舎に来るのであればさっきの話は無しよ?」


「がくん。が、頑張ってくる」


「おう。ハンナ、もうちょっと気楽にな?」


「うん。じゃあまた後でねゼフィルス君、シエラさん」


 そう言ってとても名残惜しそうなハンナと別れる。


「はぁ」


「どうしたんだシエラ、溜め息なんか吐いて」


「いえ。ハンナは予想以上に強くなってしまったと思っただけよ」


「だなぁ。俺も村に居たときこんなになるなんて思いもしなかった」


「それはハンナも同じ気持ちだと思うわよ」


 なぜかシエラが俺の方をジト目で見ながらそんなことを呟きます。

 少しテンションが上がったのを悟られないようにしないと!


 通学路を歩く、今日は珍しくシエラと2人っきりだ。

 そういえばシエラと一緒に登校するのは初めてかもしれない。


「……ねぇゼフィルス」


「おう。なんだ?」


「……ゼフィルスは特定の誰かと――やっぱりなんでもないわ」


「ええ? どうしたんだシエラ?」


「なんでもないのよ。今のは忘れて頂戴」


 ええ? シエラが言いかけて止めるなんて珍しい。

 なんだろう、俺すごく気になります。


「もう着くわね。…………ねぇゼフィルス。なんで他の学生たちはゼフィルスを見て道を空けていくのかしら?」


 あ、誤魔化した。

 しかし、それを不思議に思うのもわかる。


「いや、知らないが。テストの時はいつもこうだぞ?」


「…………」


 俺がテストの学年順位表へ向かうとまるでモーゼのように人波が分かれるんだ。

 もう風物詩と言っても過言ではないかもしれない。


 シエラはそんな様子を見てなぜか真顔だった。


「おいあれ」


「ああ、学年トップの2人組だ!」


「ええ!? いつも勇者君1人なのになんでぇ!?」


「まさか、あの2人は!?」


「そのまさかかもしれないわ。さすが、絵になるわね~」


「〈エデン〉のギルドマスターとサブマスターが!?」


「やっぱり勇者さんの隣に立つにはあれくらい気品がないとダメなのよ」


「誰か! 真偽を確かめて!」


「掲示板の住民にも探りを入れるんだ!」


 周りの学生たちが俺たちを見てざわざわしているな。


「こ、こほん。ゼフィルス、早く行きましょ」


「おう。学年順位表は確かあっちに張り出されているはずだ」


 人々から視線を浴びることが苦手なシエラが急がすので俺も気遣いながら急いだ。

 シエラの表情がいつも以上に堅い気がする。そして距離が近い、肩が時々触れあうほどだ。それに頬がちょっと赤いような?


 あれ? 視界の端にセレスタンを見かけたような? 振り向いても居ない。気のせいか?


 そんなことを思いながらざわめく分かれた人波を堂々と歩き、ついに学年順位表へとたどり着く。

 うむ、少し・・、テンション上がってきたーー!!(←爆上げ)

 果たして結果は!?


 第1位・ゼフィルス 点数900点

 第1位・シエラ 点数900点

 第3位・オリヒメ 点数898点

 第3位・レグラム 点数898点

 第3位・セレスタン 点数898点

 第6位・ヘカテリーナ 点数896点

 第7位・メルト 点数892点

 第7位・アイシャ 点数892点

 第9位・ラウ 点数885点

 第10位・ラムダ 点数882点



 第1位に輝くのは――ゼフィルスの文字。


 ふはははははは!

 またまたまたまた満点で1位だ!!

 そして、またシエラが1位タイになってるーーー!!

 さすが! シエラさすがだ!


「やったなシエラ! 1位タイだぞ!」


「ええ。やっと肩の荷が下りたわ」


 そう言うわりには真顔継続中のシエラなんだが、あと顔がさらに赤く見える気がする。気のせいかな?

 そう、覗き込む俺にシエラが咳払いして順位の話題を出す。


「こほん、みんな頑張ったわね。かなりの点数よ」


「ああ。さすがだな! 新学年からはオリヒメさんとラウが新たに台頭してきて、レグラムはオリヒメさんと仲良く3位タイか!」


 新学年が合流して初のテスト。

 聞けば、2年生や3年生は2度目のテストだというのだからきっと順位も高いに違いない。

 そう思っていたのだが、思ったより〈新学年〉組が少ないな。

 もしかしたら今年から難易度に調整が入った実技が厳しかったのかもしれない?


〈新学年〉組で10位以内ではオリヒメさんとラウしかいない。だがそれ以降だと知らない名前がそこそこインしてるが、思っていたよりも少なかった。


 しかし結構順位落ちしているメンバーはいる。

 11位はカタリナ、12位はラナ、13位はミサト、15位にはシェリアがいるな。


 続いて赤点一覧をチェック。

 本当はもっと順位表を見ていたかったが、学生たちがせっかく譲ってくれているのに欲張ることはできない。

 その場を離れて赤点一覧表の前に移動すると、順位表に人波が戻ってきていた。ちょっと面白い。


「赤点者は、よっし、無しだ!」


「……これで夏休みは平穏には――いかなそうね」


「……あれ!? 平穏無事に過ごせそうね、とかじゃない!?」


 おかしいな。俺の聞き間違えだろうか? いやきっと聞き間違えだろう。

 ここにはまだ人がざわざわしているからな。変なふうに聞こえてしまったようだ。


 チェックも終わったので俺はシエラと一緒に気分良く1組のクラスへと向かったのだった。



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