第1170話 〈ミーティア〉の切り札と覇者ぐゼフィルス!

◇アンジェ視点。




「防がれたわ!」


「まだよ。連続で撃ち続けるのだわ!」


「「「「はい! 『アイシクルジャベリン』!」


「私たちは〈五ツリ〉よ! 合わせて!」


「「「「『バーンブラスト』!」」」」


「「「『聖本・ホーリーバースト』!」」」


「『ソウルメテオブラスト』!」


 今度は五段階目ツリーの合わせ技。

 私たち〈ミーティア〉の強力な連携攻撃。


 相手は〈エデン〉。一筋縄どころじゃない相手だけれど、もう〈エデン〉に攻めて来られるのも時間の問題。なら、勝利の可能性が僅かでもある攻めに賭け、全員でここまで来たわ。

 一見無謀とも思うかもしれないけど勝算はあるわ。その証拠に、今までどんなギルドも破れなかった〈エデン〉の城壁を破壊。拠点へと一斉攻撃を仕掛けましてよ。


 私たちの強みは同時着弾攻撃。

〈ミーティア〉は同系統の魔法使いをたくさん抱えることで、一斉攻撃からの同時着弾攻撃へと技を昇華している。

〈エデン〉も使っているところからも分かるけど、これは対城への攻撃方法としてとても有効なのよ。


 特に一斉攻撃というのは防ぎにくいわ。相手も一斉に対抗しなくちゃいけないのだから。対抗しきれないことが多いの。だからこそ〈ミーティア〉はこれの強さを活かし、いつでも一斉に攻撃できるよう連携を強めてきたわ。


 そしてこの戦法は、〈エデン〉にも通じる。

 城塞を破り、まずは一当て。

 拠点への侵攻というのは思った以上に焦る。攻撃に対し、あまりにオーバーな防御を展開してしまったりするの。

 大技は一度使ってしまうと再使用に時間が掛かる。だから最初の攻撃は〈四ツリ〉と〈三ツリ〉の合わせ技。


 案の定〈エデン〉は、おそらく〈五ツリ〉やユニークスキルを多用して防いだわ。

 こっちは30人全員揃っているのに対し、〈エデン〉は全員集まっていないのだからそうするしか無かったとはいえ、作戦通りに進んだことで心の中で手に汗握る。

 ここまでは作戦通り。

 でもここで喜んじゃダメよ。私は〈ミーティア〉のギルドマスター。私がしっかりしないとギルドが烏合の衆になってしまう。


 だから次の指示を出す。これが本命。〈五ツリ〉の一斉攻撃よ。

 私たちがこの2ヶ月で得た五段階目ツリーの開放者は、私も含めて10人。

 そのうちアタッカー8人による〈五ツリ〉の一点集中型一斉攻撃。

 さすがの〈エデン〉でも、今さっき大技を使ったばかりというタイミングでこの攻撃は防ぎきれない可能性が高い。

 そう、思っていたのに。


「ここは俺に任せろ! 『完全勇者アブソリュートブレイバー』!」


 なぜかゼフィルスさんが飛び出してきて全弾命中したのよ。

「え?」って一瞬硬直したわ。完全にオーバーキルの攻撃だったもの。みんなで一緒にぽかーんってなったのよ。

 ―――でもね。


「ははは! 効かーん!」


 HPがね、1も減っていなかったのよね。「え? どういうこと」って思ったわ。

 そして思い出した。あれは〈ギルバドヨッシャー〉戦の時に見せたスキル。

 まさか、ここまでの防御力を有していたなんて完全に予想外、でもさすがに次は防げない、はず! 私は気持ちをすぐに切り替えて次の発射を指示する。


「じ、次弾発射よ!」


「「「「『クレセントフォースバースト』!」」」」


「「「『聖本・クレセントバースト』!」」」


「『メテオレイン』!」


 今度は少し手を変えて、みんなの〈五ツリ〉の氷属性魔法一斉射のタイミングでメテオの雨を降らせた。

 そして、またもゼフィルスさんに命中。


「効かーん!」


「うそっ!?」


 えええええ!? なんで効かないの!? それそんなに強力なものだったの!?

 でも、それからすぐにゼフィルスさんの体から発光が消えたから効果切れというのが分かった。一定時間で切れるタイプのスキルだったのね!!

 ―――チャンス!

 でもそう思った時には〈エデン〉が次の手を打っていた。


「アンジェ前!」


「! あれは!? 〈クジャ〉!」


 攻撃する寸前、巨大な怪獣がズドンズドンと足音に大気を震わせて走ってきた。

 あれは間違いない。〈嵐ダン〉の最奥ボス。〈クジャ〉よ!

 防衛モンスターにこんなの用意しているのは〈エデン〉だけよ!


 そう思いながらもこれは想定内。〈クジャ〉の対抗策はあるわ。


「屠るわよ!」


「「「「「おおー!!」」」」」


 いくら最奥のボスとはいえ、元々は5人で倒さなくちゃいけないボス。それが30人で相手をできるのだから何とかなる。

 さらにボスの召喚盤は本物よりも弱体化して登場するから、数で叩けば勝てると〈ギルバドヨッシャー〉も言ってた。


「ギャアアアアアアアオ!」


 でもやっぱり最奥ボスを出すって反則だと思うのよ。

 そう思いつつも、こいつを倒さなければ拠点へアタックできない。〈エデン〉のフルメンバーが揃うまでに倒さなくちゃいけない。だから私は早々に切り札の大技を切った。


「ユニークスキル行くわ!」


「私も、やるわ!」


 ユニークスキルの一斉攻撃。これで速攻で〈クジャ〉を倒すしかない。

 少しでもHPが残ればあのときの筋肉の二の舞になるわ。


「倒れなさい――『流星神槍』!」


「そこからは絶対動かないでね――『絶対魔眼』!」


 私のユニークスキル発動に合わせてマナエラも他のメンバーもユニークスキルを使っていく。


 マナエラのユニークスキル『絶対魔眼』は相手の耐性が『無効』で無い限り絶対貫通するスペシャルスキル。

 マナエラが魔眼で見ている限り相手を〈石化〉と〈麻痺〉状態にし、防御力と魔防力をガクンと落とす。

 強力な弱体化と敵を的にしてしまうとんでもないユニークスキルよ。

 本物の〈クジャ〉には効かないけど弱体化した召喚盤ならばこれが通る。


 そして私のユニークスキルは槍の形をした流れ星。単純な大ダメージ魔法。

 これとマナエラのユニークスキルが重なればたとえゼフィルスさんでも、あの発光していないときなら倒せる程の威力となる。


 さらに追加で他のメンバーもユニークスキルで続く。下級職とはいえユニークスキルは上級職のスキルをも突破する力がある。それが動けなくなった〈クジャ〉に次々と突き刺さっていった。


「ギャアアアアアアアオ!?」


 登場してから数十秒で大量の強力な魔法を一身に浴びた〈クジャ〉は一気にHPを減らして――消滅した。


「やった。――あの〈クジャ〉を倒したわーーー!!」


「「「「わああああああ!!」」」」


 切り札を切ることになったけど、〈クジャ〉を倒したとなれば次は〈エデン〉のメンバーたちのみ。


 全員が帰ってきていないのならば、まだ勝機はある!


 そう思っていたのは――〈クジャ〉がやられて煙が晴れたあと、そこに見覚えのあるとんでもない光景を見るまでだった。


 まず見たのは枝。

 どんどん伸びて上空に張られていく、太い枝だった。


 あの木の枝、あれって〈山ダン〉で見た、あの枝?

 え? それって。


「まさか、〈エルダートレディアン〉!?」


「残念。そのレアボスだ! 見るが良い――これぞ上級〈山ダン〉のレアボス! 〈樹精霊・アリドレン〉だーーー!」


「ラララ~!」


「〈アリドレン〉!? 〈山ダン〉のれ、レアボスですって!?」


 いつの間にかゼフィルスさんの隣に居たのは2メートル半くらいありそうな大きな人型のモンスター。体から枝が縦横無尽に生えていて一目で樹木系に連なるモンスターだと分かる。


 え? ちょ、今〈クジャ〉を倒したばかり――。


「さらに、出でよ〈島ダン〉の最奥ボス――〈炎帝鳳凰〉よーーー!!」


「ギュアアアアアア!!」


 もう一体来ちゃった!?


 続いて出てきたのは全身が燃えているのではないかという、炎に包まれた鳥の姿。

 どう見てもボスクラスのモンスター。しかも聞き捨てならない言葉も聞こえた気がした。

 ゼフィルスさん、あなた今なんておっしゃいました?

〈島ダン〉の最奥ボスと言いましたか? 〈炎帝鳳凰〉ってあの絵本に出てくる?


「最後にこの方! とうとうユニークスキルも使えず屠られた無念を晴らす時が来たぞ! 存分に暴れろ! 〈岩ダン〉のレアボス――〈強打義装機兵ぎそうきへい・カママクラス〉!!」


「ジャジャヤァアアア!!」


 よ、4体目のボス登場!?

 最後に登場したのは機械のカマキリ? 異様な威圧感を放つゴーレムだった。

 え? これが、〈岩ダン〉のレアボス?


「え、え、ええええええええええええ!?」


〈クジャ〉を倒したばかりの私たちの前に、さらなる強敵が現れてしまった。




 ―――――――――――――

 後書き!


 防衛モンスターのコストはこうなっています。(1173話の公開データから引用)


 通常300コスト中。

【傲慢】スキル『上限を上げよLV10』(防衛コスト3割増し=390)

『コストを下げよLV10』(モンスターのコスト3割削減、端数切り捨て)

 ――〈暴風爬怪獣はかいじゅう・クジャ〉コスト124→86P。

 ――〈樹精霊・アリドレン〉コスト144→100P。

 ――〈炎帝鳳凰〉コスト130→91P。

 ――〈強打義装機兵ぎそうきへい・カママクラス〉コスト158→110P。

 合計387P。



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