第1169話 対決〈エデン〉VS〈ミーティア〉!




「〈ハンマーバトルロイヤル〉陥落だーー!!」


「「「「わー!」」」」


 速攻勝負。結果は最高の勝利!

〈ハンマーバトルロイヤル〉と〈ミーティア〉に組まれる前に片方、〈ハンマーバトルロイヤル〉を陥落させることに成功した。

 これで後は〈ミーティア〉に絞れる。


〈ハンマーバトルロイヤル〉はなかなかに奮闘したが、第一部隊が足止めしている隙に第二南東部隊による強襲で完璧に隙を突かれ、防衛モンスターも全部倒されて陥落した。

 サブマスターがやられてから完全に浮き足立っているところを上手く決められたな!


 上空スクリーンを見てみると第1位に〈エデン〉の名があった。

 ポイントは1185。うむ。なかなか多い。


 今回の〈拠点落とし〉は防衛モンスターのコストが300ということで、拠点を陥落させるとポイントは900Pが獲得出来る。

 モンスターを285P分倒したので拠点陥落ボーナスと合わせて1185Pが〈エデン〉に転がり込んできたな。優秀!


「よし、まずは拠点へ戻るぞ! 〈ミーティア〉に留守を突かれないとも限らないしな!」


「分かったわ。みんな、戻るわよ!」


 ここで勝利の余韻に浸っていたい気持ちもあるがそうも言っていられない。

 何かあればリーナから連絡が来るはずなので何も無いはずだが、心配は心配。

 さっさと引き上げ、〈エデン〉の拠点へと戻る。


「リーナ! 今戻ったぜ!」


「おかえりなさいませゼフィルスさん! シエラさん!」


「ただいまリーナ。早速だけど〈ミーティア〉の動きはどうかしら?」


「それなのですが、まずは〈竜の箱庭〉を見てください」


「これは……」


 拠点ですぐにリーナから〈竜の箱庭〉を見せてもらうと、ミーティアの位置情報が分からなくなっていた。


「これは、結界か。五段階目ツリーでリーナの目を邪魔しているな?」


「やはりそうなのですね。これが張られたのはつい先ほど、〈エデン〉が〈ハンマーバトルロイヤル〉を落とした、すぐ後でしたわ」


〈竜の箱庭〉に投影された地図では、先ほどまで確かにあった〈ミーティア〉メンバーの位置が分からなくなっていた。30人分、全員の位置が不明。

 これはハイド系を使われたか、もしくは結界で遮断しているかだな。おそらく後者だろう。

 合同攻略に来ていた〈ミーティア〉のタンクは【結界師】系の上級職、【異界隔離いかいかくり結界師】だった。


 職業ジョブ名の通り、その五段階目ツリーには結界で姿や気配を遮断するものがある。しかも【方舟姫】には及ばないものの低速で移動することも可能だ。

 純粋なタンクより防御力は劣るが、ギルドバトルでも活躍が出来るためゲーム時代も使い手の多い職業ジョブだった。


 リーナの『観測の目』や『人間観察』は下級職のスキルなため上級職のジャミングには弱い所があるんだ。

 とはいえ相手も結界を張り続けるだけで常時MPを消費するし、メンバーが範囲外に出れば見つかってしまう関係で一塊になっているしかない。

 つまり、何かを仕掛けてこようとしていると言っているようなものだ。


 仕掛けてくる? 〈ハンマーバトルロイヤル〉が陥落してすぐ結界が張られた?

 ――もうそこまで来ている?


「リーナ! すぐに『ギルドコネクト』で周囲の斥候に繋いでくれ!」


「はい! 『ギルドコネクト』! こちらリーナ――なんですって!」


 俺の言葉にすぐに『ギルドコネクト』を発動したリーナだが、その表情が一瞬で変わった。


「敵襲です! 〈ミーティア〉の全軍――場所、北側ですわ!」


「!!」


「マジか!! しかもやっぱり全軍かよ!!」


 リーナが叫ぶ。

 俺はそれを認識するとダッシュで拠点を出た。


「フラーミナ! モンスター展開! 場所、北側! 様子見も兼ねろよ」


「はい! いつでもイケます!」


 途中でフラーミナに指示を出すのも忘れない。するとそこで。


 ガシャーン! ドガーン!


「おお!」


 北側から何かが割れる音と衝撃音が鳴り響く。

〈エデン〉の拠点はすでにシャロンの手により隣接マスに城壁が召喚され、カタリナによって二重の結界が施されて〈エデン〉周囲のマスへ進入できなくなっていた。

 だが北の城壁がビリビリと揺れたのだ。相当な威力の攻撃を受けたのか、なんとカタリナのバリアは割られ、防壁のHPはなんと5割を切っていた。


 そして再び「ドゴーン!」という音が響くと城塞のHPがゼロになり破壊されて消えていった。


 ――あのシャロンとカタリナの防御壁が初めて破壊された瞬間だった。


「〈ミーティア〉の〈ジャストタイムアタック〉か!!」


「『みなさん、北に敵襲! 〈ミーティア〉全軍ですわ! すでに北の城壁は破壊されています! 迎撃してくださいませ!』」


 リーナの声が拠点から響く、これはスキル『大号令』を使っているな。声を遠くに響かせ、仲間を集めるスキルだ。

 リーナの言うとおり、あっという間の出来事で北の城壁が破壊された。マジかよである。〈ミーティア〉は30人全軍で攻めてきたのだ。

 いくらシャロンとカタリナの防御が固くても30人規模の一斉攻撃を何発も受け止め切るには2人では難しい。

 

 思い切ったことをしてくる。

 おそらく〈ミーティア〉は【異界隔離結界師】を1人しか持っておらず、少数でも拠点に残れば侵攻作戦がバレてしまうと考え、この奇襲に全力のリソースを注ぐことに決めたのだろう。


 そして破壊された北の城壁からどんどん〈ミーティア〉がやって来ていた。

 その数、30人全員!


「放て!」


「「「「「『プロミネンスバースト』!」」」」」


「「「「「『フレアバースト』!」」」」」


「『舞う流星』!」


 そしてお得意の疑似ジャストタイムアタック。

 それが北マスに集まりつつあった俺たちに向かって放たれた。


 しかし、こっちにも優秀なメンバーが揃っている。


「迎撃だ! 『フルライトニング・スプライト』!」


「『大精霊様二大降臨』! お願いします『グラキエース』! 『トニトルス』!」


「『アポカリプス』!」


「『轟天・雷神』!」


「『神本・フルバースト』!」


「『タイムラグ』!」


 迎撃を放ったのは俺、シェリア、メルト、レグラム、エミ、ルキアだ。

 シェリアは五段階目ツリー、なんと大精霊を2体出す大技を発動。氷の大精霊グラキエースと雷の大精霊トニトルスを召喚して迎撃。

 エミは神装を全消費して撃つ単身の強力な攻撃魔法をぶっ放した。『神気開砲撃』の単身版だ。なかなかに強いぞ。


 そしてキモはルキアの『タイムラグ』。これは相手の攻撃をのろくするスキルだ。これにより速度の弱まった攻撃にじゃんじゃん当てて迎撃していく。

 しかし、それでも30人からなる〈ミーティア〉全力攻撃を全部撃ち落とすのは難しかった。〈ミーティア〉どんだけバフ盛ってんだよ。しかし、問題は無い。


「後は任せたぜ、シエラたち」


「任せて――『アジャスト・フル・フォートレス』!」


「ポン! ユニークスキルは夢幻ゆめまぼろしの巨塔――『夢幻むげん四塔盾しとうたて』!」


「よくも私の防壁を壊したわねー! 許さないんだから――『防壁エリア集中強化』!」


「たはは~やらせないよ~――『ミラークロスバリア』!」


「私の拠点結界まで破壊して、やってくれますわ――『七重奏大結界』!」


「タンクとして成長した私の姿も見てもらいましょう――『グロリアスシールド』!」


「任せてください。教官は私が守ります――『ミカエル加護大結界』!」


 防御スキルを展開するのはシエラ、ラクリッテ、シャロン、ミサト、カタリナ、ロゼッタ、フィナだ。


 カタリナは元々〈五ツリ〉による巨大結界でこの拠点を覆い防御していたが、すでに破られているため防御魔法の発動が可能になっている。今度は一点集中して七重の結界を展開し、見事に防ぎきっていた。


 ロゼッタも同様で拠点を守る〈五ツリ〉の巨大な盾を召喚して防ぎきり、フィナは俺たち迎撃したアタッカー陣を守るように結界を展開してくれる。


 おかげで俺たちも傷1つ負うことはなかった。

 シエラたちも全ての攻撃を防ぎきってくれたようで、奇襲による人的被害は無し。

 こうして〈ミーティア〉との戦闘は始まった。




 ――――――――――――――

 後書き。


〈ミーティア〉は城を落とすのが非常に得意なギルド。

〈エデン〉の防壁と結界を真正面から短時間で打ち破れるのは、今の所〈ミーティア〉くらいですね。


 シャロンには城壁のHPを回復する魔法があり、カタリナも結界を修復する魔法を持っていたりしますが、使う前に破られました。

 これが〈ジャストタイムアタック〉を使えたらSランクと言われている所以なり。



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