第1097話 初の最奥ボス戦、最初は楽だと思ったら――。
「眷属を召喚するのに攻撃をされる必要はないのかしら?」
「守護型ボスとは違うということでしょうか。仕掛けてみます――『ソニックエルソード』! 『エルライトブレイカー』!」
タバサ先輩の疑問の言葉にフィナが試しにボス本体へ攻撃を仕掛けてみた。
35層から登場し、これまでの守護型だった〈エルダートレディアン〉は全てノンアクティブボス。
要は攻撃されなければ眷属を生み出さないボスだった。
しかし、最奥ボスがそれではいけないのだろう。フィナがヘイトを取った瞬間から攻撃されてもいないのにたくさんの眷属を生み出してきた。
まあ、エリサに全部一掃されて光に還ってしまったが。
そこからまずフィナが攻撃を仕掛け、眷属と攻撃の繋がりを探らんとした。
結果は。
「攻撃されても眷属が増えることは、ありませんね!」
「クワァ!」
守護型とはパターンが違うことが判明。そのまま観察を続けていく。
「新しく生み出された眷属がフィナに攻撃を仕掛けているけれど、届いていないわね。アイギス、空から攻撃が有効よ」
「はい! ――ゼニス行きますよ。『ハイジャンプ』!」
「クワァ!」
タバサ先輩の分析でアイギスがすぐにゼニスに跳び乗り空へと上った。
何をするにしろ、眷属の攻撃が空にいるフィナに半分も届かなかったこともあり、空は安心安定の場所と判断されたのだ。
「ゼフィルスさん、アドバイスをお願い。このまま一気に攻撃すべきだと思う?」
「すべきだな。眷属がほぼいなくなったこのチャンス。活かさないと勿体ないぜ? それに眷属が大量に来たとしてもこっちにはエリサとフィナがいる」
すぐ隣のタバサ先輩が助言を求めてきたので答える。
初の上級最奥ボス。見極めるのも大事だが、チャンスを掴むのも大事だ。
「頼りになるわ。では――みんな攻撃開始よ!」
「「「「おおー!」」」」
「来てリュキくん――『口寄せの儀式・四』! 」
「――――!」
早速全員に攻撃の指示を出したタバサ先輩が、素早く〈
スキルが発動するとぬいぐるみが光り輝き巨大化し、まるでゼニスがもう1人いるかのような姿になって一気に動き出した。
さらに、タバサ先輩の召喚はまだ終わらない。
「そしてマンちゃんもお願い――『口寄せの術・参』!」
続いて取り出したのはマンモス型ぬいぐるみ。マンちゃんだ。
大きさ4メートル。〈タイにゃん〉や〈ヘロくん〉よりも大きく突進が得意。というか突進しかできない。
まるで〈ダンジョン馬車〉のごとく、モンスターを轢いて弾き飛ばすのが得意だ。
ボスをリュキくんに任せ、眷属をマンちゃんに任せる布陣だろう。
鬼は温存する様子だ。
「ゼニス仕掛けますよ!」
「クワァ!」
「『ドラゴンブレス』!」
続いて大きくなったゼニスからブレスが発射される。
幼竜の時より明らかに太くなったドラゴンブレスが〈エルダートレディアン〉の幹に直撃した。火力もかなり上がっている様子が分かる。なかなかのダメージが入ったな。
「――――!?」
「だいぶ眷属が出てきたわね。そろそろみんな眠っちゃいなさい! 『雪山吹雪』! 『睡魔の砂時計』! 吸魔よ、MPを吸い取りなさい『吸魔召喚』! そんでもって――『夢楽園』!」
「今の所、本体からの攻撃は無し。私も攻撃に参加します! 『天罰』! 『エルデュエルソード』!」
「よっと。俺も攻撃に参加するぜ――『
「――――!!」
観察タイムは終わりだ。ここからはガンガン攻める。
今の所眷属しか出さない本体に攻撃を加えると、再び眷属を生み出し幹から分裂するように飛び出してきた。しかしそれもフィナが上空に飛ぶことで届かず、エリサが再び一掃していた。
そのままガンガン攻撃していると、1本目のHPバーが消える。
「ええ? 第一形態? ってのがもう終わっちゃったわよ!?」
「こんな簡単に倒せるものなんですか!?」
エリサとフィナの驚愕の声が聞こえてきた。
緊張の初上級最奥ボス戦、いったいどれほど苦戦するのかと思いきや、ここまで楽勝だったからだ。
まあ、フィナとエリサがいるからここまで楽勝なんだけどな。
普通ならあの眷属を倒すのにそれなりに時間が掛かるし、それが一定時間毎に登場するのだ。
ボス本体が何もしないとはいえ、普通ならここまで削るのに相応の時間が掛かる。
「油断しないで。第二形態になるわ!」
「わ、分かってるわ!」
「油断はしない。どんな攻撃も受けてみせます」
俺が指示を出さなくてもタバサ先輩の指示が的確だ。
第一形態は眷属の召喚のみ。もし楽勝で突破してしまったら、そのまま油断に繋がりかねない。
タバサ先輩の言葉にエリサとフィナがしっかり気を引き締め直していた。
「? ゼニス、一旦距離を置きますよ。なんだか妙な気配がします」
「クワァ!」
ここで何かを感じたのかアイギスが距離を取る。
その判断は大正解だった。だってゼニスが距離を取った直後。
〈エルダートレディアン〉の極太幹は大きく変形し、
「避けてください!」
「クワァ!」
枝がアイギスたちを捉える瞬間、ゼニスが素早く回避行動を取って回避した。
おお! かっこいい!
初見でアレを避けるとはなかなかやる。あれはアイギスの直感系スキル『竜の権能』の効果だろう。あれで悪い予感を感じて距離を取ったのが功を奏したようだ。さらに。
「『スラストゲイル』! 『竜祝盾』! 『レギオンスラスト』!」
次々と襲い来る枝にアイギスは風を纏った突きで迎撃したり、巨大な枝の叩きつけを盾で防御したり、複数の枝の攻撃を範囲攻撃で迎撃したりと的確に対処。その都度ゼニスがアイギスに合わせるかのように空中を動き回っていく。
あれは騎獣と心を通わせ自在に操るスキル『騎獣モンスターリンク』と『竜の友』を上手く使っているな。
「フィナ、アイギスが狙われています! ヘイトを稼いでください!」
「『エルアサルト』! やっていますが、私も狙われていて! タゲを複数持っているみたい、です!」
「まさか、2人にターゲットを? 『回復の儀式』!」
ここでおかしなことが起こる。
フィナとアイギスがヘイト関係無く猛攻撃にさらされたのだ。
いや、よく見ると2人だけじゃない。
「冷静に見ろタバサ先輩。リュキくんも狙われて、あ、やられたな」
「ああ! リュキくんが!?」
三つの盾と三つの剣を操り枝を迎撃していた〈リュキくん〉だったが、対応が追いつかない程の物量にやられてHPバーがゼロになり、ぬいぐるみになって落っこちていた。後で回収しておかないと。
「これは――どうやら空中を飛んでいる相手に対してヘイトを関係無く攻撃するようだ」
そう、俺がこの現象の正体を告げる。
〈エルダートレディアン〉の第二形態では本体の根っこ近くから生えた
さらに上では枝が高速で生え、空中にいる敵に対し、非常に攻撃的なアルゴリズムが組まれている。ターゲット関係無く、空を飛んでいる者を攻撃し始めるんだ。
第一形態の弱点が飛行系だと分かっているからこその対策手段だな。
「くっ! 『エルアサルト』! 『エルロードシールド』! 『大天使バッシュ』!」
フィナもなんとかしようとヘイト攻撃で枝を叩っ切ったり、攻撃が来たら防御スキルを発動したり、そのまま盾のバッシュで幹へ突撃したりしている。
しかし、どれも効果は薄かった。
「おりゃあ! 『シャインライトニング』!」
「『暴風雪』! ちょっと、あの枝が邪魔で本体に攻撃が届かないわ!」
俺とエリサで〈エルダートレディアン〉を攻撃するも、根っこ部分から伸びた
攻撃を通すには、この柵を破壊しなくてはいけない。
そして空中にはこの柵が届いていない。空中からの攻撃ならば柵を無視して攻撃が可能なんだ。だからこそ〈エルダートレディアン〉は空中にいる敵を優先して攻撃する。
地上にいる俺たちはまず
「あ、ゼニス!」
「クワァ!?」
上空ではついに枝に捉えられてしまったゼニスがひっぱたかれて吹っ飛ばされていた。
そこへ迫る追撃の枝。しかしそこにフィナが盾を持って割り込む。
「『エルカバーガード』! 大丈夫ですか?」
「ありがとうございますフィナさん。助かりました」
「クワァ!」
「上級最奥ボス。これほど厄介とは。さっきとはえらい違いですね。MPを考えるとそろそろ補給したいのですが――また来ます。大きい! ――『天障壁』!」
「なぎ払います。ゼニス――『ドラゴンブレス』!」
「クワァ!!」
度重なる攻勢にフィナは一息つく暇もない。
フィナの『天空飛翔』は飛んでいる間MPを消費するため、適度に補給が求められるのだがそれが厳しいのだ。
そしてまた攻撃が来る。今度は巨大な幹による
それを巨大な天使の盾を実体化させて受けるフィナ。その間に迫り来る枝をゼニスが『ドラゴンブレス』で吹き飛ばした。
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