第969話 ルルVS〈集え・テイマーサモナー〉戦決着!

 前書き失礼します!

 ゴールデンウィークキャンペーン4日目!

 今日は4話投稿します!

 本日もどうぞお楽しみください!

 ―――――――――――




「ヒーローが変身していられる時間は3分なのです! 一気に行くのです! でも倒れている子にシタイゲリ? はヒーローがすることじゃないってゼフィルスお兄様に教わったのです! だからそっちの人たち覚悟なのです!」


「ひゃあ!?」


 目の前でダウンしているメルをそのままに、ルルはまた翼の出力を強め、空を渡るように残りのテイマーサモナーたちに躍りかかる。


「き、来ちゃった!?」


「い、行くのよカー! 頑張って止めるの!」


「バウ!」


 慌てて召喚体で迎撃しても、変身したルルは止められない。


「とう!」


「バウゥ!?」


 通常攻撃が2回の幼女が変身してこられたら、もう敗北は必至。

 ルルの剣が閃きまくる度にどんどんHPを減らしたモンスターたちが消えていく。


「くっ、ユニークスキル『四身召喚』!」


「ユニークスキル『モンスター進化』!」


【召喚術師】が一気に4体のモンスターを召喚し、【トレーナー】が一時的に1体のモンスターを1段階上のモンスターに進化させる。しかし、そんなものルルの前にはあまり役に立たなかった。

 何しろルルは『ヒーローだもの、へっちゃらなのです』でノックバックに強い耐性がある。乱戦は得意中の得意だ。


「『セイクリッドエクスプロード』! 『ジャスティスヒーローソード』! 『小回転斬り』! 『インフィニティソード』!」


 相手の懐に飛び込んでスキルの嵐を生み出すだけで簡単に相手を屠ることが可能なのだ。

 接近戦の多対一において、【ヒーロー】職は最強の一角なのである。


「トドメなのですよ!」


「「きゃああああ!?」」


 あっという間に2人が退場してしまう。そこへ。


「今、『ギガントクロー』!」


「にゅ!?」


 ダウンから復帰したメルが再びギガントの腕を召喚し、その巨大な腕でルルを捕まえたのだ。まさかの形勢逆転!? と思ったのも束の間だった。


「ルルに何をしていますか! 『グラキエース・ストリーム』!」


「わあああ!?」


 シェリアに見つかって速攻で術者メルが〈四ツリ〉の直撃を受けてしまう。

 おかげで拘束からルルが脱出した。


「ありがとうなのですシェリアお姉ちゃん!」


「どういたしまして、ルルが無事で良かったです。ルルは私が守ります」


「大丈夫なのです! 今度はルルが引導を渡すのです!」


「はう。ルルが勇ましくも可愛いです。これが、変身ヒーロー……」


 シェリアがルルの新たな魅力にときめいている間に展開は進む。


「お覚悟なのです! とう!」


「! 回復する暇も無い」


 最後の決着だよとでも言うようにルルが翼の出力を高めて飛びかかる。

 メルも最後の切り札を使った。


「私も、全力。『ギガントの上半身』!」


 それは五段階目ツリー。

 ギガント系のスキルを育てていたら条件開放で発現した、上位ツリーのスキル。メルの最後の切り札だった。


 出てくるのは今まで腕だけだった巨人ゴーレムの上半身。

 それは歪な機械仕掛け。

 巨大な魔法陣により腰から上だけが召喚されたギガントは、腕だけの時とは印象がガラリと変わり、様々な歯車がむき出しになっている体をしていた。

 さらには腕だけでも5メートルあったその体はまさに巨体。あの〈ヘカトンケイル〉にも勝るとも劣らない大きさの上半身が召喚されたのだ。


「ゴオオオオオ!」


 どう考えても〈ヘカトンケイル〉並のモンスターに1人で突っ込むのは無謀だ。

 しかし、ルルは迷い無く飛び込む。


「る、ルルー!?」


「なんのこれしきなのですー!」


 シェリアの叫びにもルルは勇ましい言葉でギガントへ突っ込む。


「! ギガント、あなたの力を見せて」


「ゴオオオオオ!」


 そして振られるのは、巨大パンチ。

 ルルは翼の出力を上げるとそのまま巨大なパンチを正面から迎撃する。


「『魅惑のラブリーヒーローソード』!」


 まずはデバフで攻撃。

 ルルの〈四ツリ〉攻撃と巨人のパンチがぶつかり、ドカンという音を響かせる。


「強いのです! どんどん弱らせちゃうのです! シェリアお姉ちゃんは手を出さないでなのです!」


「そんな!? ルル!?」


「これはルルが倒すのですー! 『キュートアイ』!」


「ゴオオオオ!?」


 ルルが珍しく燃えていた。翼の出力を上げて接近。デバフでどんどん弱らせていく。

 ルルの特性はデバフアタッカーだ。

 召喚体はモンスターなのでデバフは有効。

 ルルのデバフスキルによってどんどんギガントが弱体化していく。


 ギガントの反撃は鈍り、ルルの機動力に掠りもしなくなる。

 そして、変身時間が残り数秒というところでルルが仕掛けた。


「これくらい弱らせれば完璧なのです! トドメなのですよ! 『ディストラクションブレイカー』! 『インフィニティソード』!」


「ゴオオオオオ――!?」


「! ギガントが」


 ギガントはルルの防御破壊スキルによってまるで鎧のような歯車が粉砕され、トドメの『インフィニティソード』が突き刺さってHPがゼロとなり、崩れ落ちて光に還ってしまう。


 残ったのは術者のメルだけだ。


 そこへ変身が解けたルルが着地し、最後の敵に剣を向けるポーズを取る。


「もうあなただけなのです!」


 完璧に決まった。


「逃げる『ゴーレムドッグ』!」


「逃がさないのです。とう! 『セイクリッドエクスプロード』!」


「わ―――」


 ズドンッと衝撃。

 騎乗型の犬ゴーレムを呼び出して逃げようとしたメルだったが、ルルは召喚体が出る前に範囲攻撃の斬撃で吹き飛ばしてしまった。

 上級職メルはこれで退場。ここにいた〈集え・テイマーサモナー〉は全滅してしまう。


「さ、さすがルルです! かっこ良かったです! すごく良かったです!」


「えっへん、なのです!」


「でもまずは、回復しましょう――『ルクス・シャインヒール』!」


「ありがとうなのですシェリアお姉ちゃん!」


 シェリアは上級職になって覚えた回復系の精霊魔法で光の大精霊であるルクスの力を借り、ルルのHPを回復させる。

 ルルも巨人のパンチを受け止めたり、召喚体の群に突っ込んだりしてHPの半分以上を失っていたが、それも全回復した。


「あれ? でもシェリアお姉ちゃんここにいて良いのです? 他の敵さんの相手をしていたのではないのです?」


「そちらはイグニス様とエステルに任せてきました。そろそろ終わ――」


「『シェリアさん、聞こえますか?』」


「――! リーナ殿ですか。何かありましたか?」


 言葉の途中で掛かってきたのはリーナの『ギルドコネクト』だった。

 一瞬驚いたシェリアだったが、すぐに応える。


「『そろそろCチームは交代の時間ですわ。そちらの戦闘も終わったようですし、一度戻ってきてくださいまし』」


「もうそんな時間ですか。時間が経つのは早いですね。了解しました」


 そう会話してリーナの通信が切れる。

 ルルが首を傾げていたのでシェリアが今の話をしつつ、急いで〈イブキ〉へと向かった。


「では、帰りましょうか」


「あい!」


「楽しかったですね」


「またやり合いたいものだな」


「もう、メルト様今日は積極的だね!」


 すぐに撤退を選択する。

〈イブキ〉の速度を上げ、メルトとミサトとも合流し、そのままデカマス山の北へと進む。


「メルト殿、そちらはどうだったのですか? 〈ダンジョンライフル〉は途中から〈イブキ〉を攻撃しなくなりましたが」


「〈ダンジョンライフル〉はなかなかのギルドだったが、結局ミサトと協力して全員退場させておいたぞ」


「遠距離攻撃合戦だと反射って強すぎるよね~」


 メルトとミサトVS〈ダンジョンライフル〉はメルトたち側の圧勝に終わっていた。

 接近戦でもしてきたらメルトたちもそれなりに苦戦しただろうが、相手は銃使い系の多い〈ダンジョンライフル〉。近接戦力に乏しく、メルトたちからすれば相性の良い相手だったこともあって楽勝。

 ミサトもメルトも防御しながら攻撃出来るのでほぼ一方的だった。


「エステルは? とはいえかなりの戦果だろう」


「そうでもないですよ。私の槍砲は一番警戒されていましたから。倒せたのは2人くらいですね。〈サクセスブレーン〉さすがの能力です。残りは逃げられてしまいました」


「見事な撤退でしたね。あの巨人に目を奪われたところで一気に身を翻して撤退していましたから」


 ギゼルが率いていた〈サクセスブレーン〉の部隊は上級職と下級職が1人ずつ退場し、ギゼルともう1人の下級職がギリギリで逃げ延びていた。

 メルがギガントの上半身を出したタイミングで、エステルは砲身をギガントに向け、いつでも援護が出来る態勢にしていて、そのどさくさに紛れ、一気に撤退を成功させたのだという。


「そしてルルはほぼ1人で〈集え・テイマーサモナー〉を全員撃破ですね」


「あい! ルル、頑張ったのです!」


「あの巨人を1人で倒してしまったんだからな」


「私も驚いちゃったよ~」


「ルル、今度はあまり危険なことはよしてくださいね」


 エステルがルルを褒め、ルルが立ち上がって片手を挙げるポーズを決め、メルトとミサトが感心し、シェリアが心配する。


 そんな和気藹々とした雰囲気でCチームは〈エデン〉の拠点へと帰還していったのだった。


 その話の報告を受けた〈サクセスブレーン〉のカイエンはまたお腹に添えた手が離せなくなった。



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