第968話 シェリアとルルの迎撃。変身ヒーロー見参!




〈サクセスブレーン〉遠征隊長ギゼル。

 彼の職業ジョブは【螺旋の戦槍士せんそうし】。

 正面からガチの殴り合いができる【槍士】系の上級職、高の下である。

 彼が連れているのは7人のメンバーだったが、現在は半分に割り、半数は撤退に成功していた。

 ここにいるのは4人である。上級職はもう1人。


 友軍は〈集え・テイマーサモナー〉のメンバーが5人。

 4人が下級職で1人が上級職、上級職は【機械召喚マスター】。

 主にゴーレム召喚系に特化した上級職、高の下である。

 名前はメル。フードを深く被った小さいロリだ。


「メルよ、援護を頼む。あいつらに突っ込むぞ」


「ガッテン……」


 ギゼルは戦う覚悟を決めて接近戦を選択する。

〈ダンジョンライフル〉の攻撃を防いでいたところを見るに遠距離攻撃での戦いは分が悪い。懐に飛び込んでしまえばあの二門の砲門は怖くない。


 メルも言葉少なく了承し、やるべきことは決まった。


「みんな、仇を討つよ。やられた子の分を、倍返し」


「「仇討つーー!!」」


 メルの言葉にゴーレムとモンスターを初撃で倒された2人が大きく反応した。

 残りの2人もビースト系のモンスターを使役し、いつでも突っ込める体勢を整える。


「行けるよ」


「おっしゃお前ら、行くぞーー! 『螺旋大槍』!」


 放たれたのは巨大な投げ槍、〈サクセスブレーン〉と〈集え・テイマーサモナー〉の共闘が始まった。


「撃ち落とします――『インパルススラストキャノン』! 続いて『スラストゲイルサイクロン』!」


 回転の加わった3メートルほどの巨大槍が〈イブキ〉に迫るが、エステルは難なくそれに〈五ツリ〉のキャノンをぶつけ破壊。続けて先ほど煙幕を払った暴風の槍を彼らが集まる中心地に打ち込んだ。


「止める。『ギガントの腕』!」


 それに対しメルが簡易召喚を発動。呼ぶのはとある巨大ゴーレムの片腕。

 まるで塔のように聳え立った片腕が暴風の槍をその手のひらで受け止め、しかし止めきれず粉砕される。


「「きゃーー!?」」


「うっ、ギガントの腕でも止められない」


 暴風が吹き荒れテイマーとサモナーがいくらかダメージを受けるが、回避行動を取っているためさほど大きなダメージにはならずに済んだ。ギガントの腕でダメージを軽減できたのも大きいだろう。


「でも、機械人形はこんなもんじゃ終わらない。いでよクリトフ『ゴーレム上級召喚』!」


「ゴアアア!!」


 メルの召喚に応じて登場したのは鬼の形をした4メートルを超える石の巨人。

 メルが育てた召喚体の1体だ。鬼はそのままメルを抱きかかえると〈イブキ〉へと突っ込む。


 そのときにはすでに〈サクセスブレーン〉が〈イブキ〉に向かって突撃しており、メルたちはその後に続く形だ。

〈イブキ〉は相手が逃げるのをやめたと見て前進を止め、左へと船体を移動させながらスラスト砲で攻撃していた。


「素早い相手には中々当たりませんね。『ロングスラスト』!」


〈イブキ〉のスラスト砲は強い。かなりの脅威だ。

 しかし、来ると分かっていれば避けられないこともない。

 ここは〈ダン活〉の世界、砲撃も目に見える速度なため、最初から回避しようと思えばできるのだ。


 そしてとうとうギゼルが〈イブキ〉へと追いついた。


「はー!! 〈サクセスブレーン〉遠征隊長ギゼルが一番槍! 覚悟――『戦国の――」


「とう! 『魅惑のラブリーヒーローソード』!」


「な、うおおおお!?」


 ギゼルが〈イブキ〉に向けて攻撃スキルを放つ直前、〈イブキ〉から可愛らしい声とともに幼女が降ってきた。

 驚いて手が止まるギゼルに、幼女ルルは容赦なく攻撃力防御力デバフの付いた斬撃スキルをお見舞いした。

 咄嗟に両手槍でガードするが、ルルが使ったのは〈四ツリ〉スキル。普通に吹っ飛ばされデバフをプレゼントされてしまう。


「今です『トライ・スラストカノン』!」


「おおおおお!?」


 そこへ追撃の〈五ツリ〉スラスト砲。3連発。これをギリギリで回避、しきれなかった。

 防御力が下がっていたこともありギゼルは掠っただけで大きなダメージを負ってしまう。


「側面に回れば――!」


「『古式精霊術』! 『大精霊降臨』! お願いします『イグニス』様!」


 残りの〈サクセスブレーン〉メンバーは砲門の向いていない左側の側面に回り込もうとするが、またもや人が〈イブキ〉から飛び降りる。エルフのシェリアだ。

 接近戦に強い大精霊を召喚し〈イブキ〉の防衛をする。


「ぬ、召喚体! なら、倒してしまえばいいのだろう! 『バーストナックル』!」


 そう言って飛び掛るのは〈サクセスブレーン〉のもう1人の上級職。彼は【闘士】系の【グラップラー】でエネルギーを纏ったパンチでイグニスを倒そうとする。


「イグニス様、行きますね――『イグニス・バースト』!」


「――――!」


「んな!?」


 シェリアが魔法を使うと、召喚されていたイグニスが突如として燃え上がり、パワーアップして上級闘士男子の拳と自分の拳をぶつけ合ったのだ。

 結果――相殺。

 上級闘士男子が信じられないと目を見張る。何しろ今のはイグニスの通常パンチ。

 ということはスキル相殺後の硬直で一瞬固まった上級闘士男子とは違い、イグニスはすぐにもう一つの拳を繰り出すことができる。


「(動け動け動け動け)『マッハ――」


「――――!」


「ぶはああああ!?」


 スキル硬直が解けた瞬間スキルを使おうとするが、それはあまりに遅すぎた。

 イグニスの強力なパンチが顔面へと吸い込まれ吹き飛ぶ。


「――――!」


 ついでと言わんばかりにイグニスが炎を吹いて追撃した。


「やはり対人でも強いですねイグニス様」


 圧倒的なその力にシェリアが感嘆の声を上げた。

 下級職の時も強かったが、今はそれに輪を掛けて強くなっている。


 原因は大精霊の名が付いた魔法、イグニスの場合なら『イグニス・バースト』だ。

 これには二つの使い方があり、大精霊を召喚している場合としていない場合で効果が変わる。

 召喚していない場合はシェリアが大精霊の力の一端を借り受け使用することが出来、召喚している場合は大精霊の力が増すのだ。

 元々シェリアは〈エデン〉で一番のINTの持ち主。その火力は学園でも最強クラス。上級闘士男子が打ち負けたのも分かるだろう。


 シェリアはすぐにイグニスへ指示を出し、追撃を仕掛ける。それを受ける上級職【グラップラー】の男子。


「は、面白くなってきた! 『インファイトストライク』!」


「――――!」


 上級闘士男子とイグニスが仲良く遊んでいるころ、ルルは〈サクセスブレーン〉の残り2人と〈集え・テイマーサモナー〉のモンスターたちを相手にしていた。


「『ロリータソング』! 『ハートチャーム』!」


「くっ、デバフか!」


「攻撃力と魔法力デバフ!?」


「攻撃力が低くなったって手数で補えばいいんだよ!」


「「『モンスタースピードアップ』!」」


「いっけー!」


「とう! 『インフィニティソード』! 『ヒーロースペシャルインパクト』!」


「ってえええええ!? 全然効いてない!?」


「私たちのモンスターが!?」


 飛び掛る8体のモンスター。しかしルルはそこに敢えて突っ込み蹂躙無双を展開。

〈集え・テイマーサモナー〉のモンスターたちが次々光に還ってしまう。


「どいて、みんな。――クリトフ」


「ゴアアアア!!」


「大きい岩の鬼さんなのです!? でもルルは負けないのですよ! 奥の手使っちゃうのです!」


 外野がいやから見ればヒーローVS鬼というどこかのアニメに出てきそうなシチュ。

 それがルルを燃え上がらせたのか、まだまだ余裕があるのにもかかわらず奥の手を発動する。


「へーんしん、なのです! ――『変身・プリンセスメイクアップ』!」


「え?」


「ゴアアア?」


 ルルが可愛くもかっこいいポーズをシャキンと決めるとルルの体が輝きだした。


 ヒーローと魔法少女は変身してなんぼという言葉がある(ない)。

 その例に漏れず、【プリンセスヒーロー】には変身スキルが備え付けられていた。

 時間制限付きのパワーアップである。


 そしてエフェクトが散ったとき、そこにはフリルの付いた腰マントをはためかせ、ピンク色のコスチュームを着たルルがいた。動きやすいようノースリーブ系の服にカボチャパンツ。胸の中心に光るクリスタルがかっこよく、そして目を見張るのはルルの背中付近に現れた半透明の翼だ。

 これぞ【プリンセスヒーロー】の真骨頂、変身(可愛い)である。


「え、可愛い」


「ふふん、なのです。パワーアップなのです!」


 どうやらメルとルルの見解に齟齬が発生している模様。

 ルルの姿は、可愛かった。可愛いに全振りしていたのだ。見た目の可愛さがパワーアップしているには違いなかった。

 しかし、それが間違いだとメルが知るのはすぐのことだった。


「とう! 食らうのです! 『ディストラクションブレイカー』!」


 翼が広がってその出力を高めたかと思うと、ルルの体が浮かび上がって一気に接近。両手で持った片手剣でクリトフ君をぶった斬ったのだ。


「ゴアアアアアア!?!?」


「え……?」


 ルルの『ディストラクションブレイカー』は強力な防御破壊系。

 咄嗟にゴーレムのクリトフ君が片腕で防御したが、とんでもないダメージを受けてHPが一気にレッドゾーンにいった。

 しかも、ルルの攻撃は2回ある。


「『ジャスティスヒーローソード』!」


「ゴア―――」


 ズドンと衝撃。

 ルルの強烈な光の剣に斬られ、ゴーレムのクリトフ君は抵抗むなしく光に還って消えてしまう。


「あう……」


 ついでにクリトフ君から落ちたメルはダウンしてしまうのだった。




 ―――――――――――

 後書き失礼いたします!


 本日はここまで!


 昨日もたくさんのお様ありがとうございます!

 おかげさまで日間異世界ファンタジーランキングで2位!

 週間異世界ファンタジーランキングで8位になりました!


 とってもお礼を申し上げます! すっごいですよ!

 ゴールデンウィークキャンペーンはまだまだ続きます! 残り2日!

 そして本日から小説5巻がブックウォーカー、コミックシーモア、ピッコマで先行配信されています!

 是非こちらもよろしくお願いいたします!



 そしてゴールデンウィークの5日間で投稿する話数の目処が付きました。


 20話行きます!


 楽しんでくださると嬉しいです!




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