第956話 強襲準備2度目!次の狙いは〈中毒メシ満腹中〉
試合開始3分弱でギルドの一つを屠ってしまった〈エデン〉は一度自拠点に戻り、次に南西のお隣さんに狙いを定めていた。
「あっちは山が壁になって宝剣は飛ばせないからな。直接行くぜ!」
「承知いたしましたわゼフィルスさん。まずはみなさんのクールタイムが終わるまで待機ですわね」
「MPはどんどん回復してください。少ししか減っていないからと遠慮は無用です」
俺の方針決定にリーナが頷き作戦を練り、シズがみんなに〈エリクサー〉を配っていく。
いいね。良い流れだよ。
うん。ギルド〈弓聖手〉はドンマイだった。
〈エデン〉の拠点から宝剣の射程に入っているのは運が悪いとしか言えない。
おかげで全力で狩ってしまったからな。射程外から十宝剣が3連発来るとか悪夢。
やったのは〈エデン〉だけど。
おかげで完全に浮き足立っていたところに強襲が大成功。試合開始直後ということもあってあっという間に落ちてしまった。最後は防衛モンスターを全部屠る前に拠点が落ちそうになってラナに3発目の宝剣のタイミングを待ってもらったほどだ。
だが、仕方なかった。
だって拠点の距離が近いんだもん。やられる前にやれである。
〈弓聖手〉を落とした俺たちはそのまま進むと〈サクセスブレーン〉にぶつかるので一度帰還した。
さすがに噂に聞くBランク非公式ランキング第一位のギルドに、多くのスキルと魔法がクールタイムに突入したまま殴り込みにはいかないさ。
それに俺たちがしたみたいに西から〈エデン〉の拠点に強襲してくるギルドが来ないとも限らない。
ということで次に落とすのは西隣。
〈エデン〉から見て南西、〈弓聖手〉の反対側に位置するのはギルド〈中毒メシ満腹中〉だ。
Bランク非公式ランキング第十五位のギルドで、主に食材に通じ、【調理師】系ギルドから食材調達などを頼まれるような食材素材収集のスペシャリストたちが集まるギルドである。なおリーナ調べ。
当然ギルドの目的は名前の通り、食べること。
この〈ダン活〉の世界の食材、そしてそれで作られた料理アイテムは絶品の一言。
その絶品の料理たちを追い求める探求者であり探索者。食に命を賭けるギルドである。
噂では、このギルドしか持っていない究極の料理レシピが存在し、ギルドバトルではそれをメンバー全員が食し、パワーアップして立ちはだかるのだという。
それでも十五位に甘んじているのには訳があり、このギルドは〈採集課〉の学生が多く在籍するギルドでもあった。おかげで〈25人戦〉であるAランク戦では、実に5人の採集課学生が人数あわせで参加しており、他のギルドよりかなり弱小となっていたりするらしい。
なお、これはユミキ先輩調べ。
つまりはカモだ。
〈エデン〉から見ればお隣のギルドだし、いろんな意味で美味しいし、食べちゃおうという感じであった。
そんなスナック感覚で食べないでほしいとか言いそうな〈中毒メシ満腹中〉である。
あと、マス的には10マスしか離れていないとはいえカギ
というわけでリーナ指揮の下、今度は11人のメンバーが選出され、出発することになったのだった。
「内訳はゼフィルスさん、シエラさん、リカさん、メルトさん、ミサトさん、アイギスさん、サチさん、エミさん、ユウカさん、フラーミナさん、エリサさんですわ」
「私たちの番またキタ~」
「頑張っちゃうよ~」
「吉報を待っててね」
リーナの攻勢メンバー発表にサチ、エミ、ユウカの仲良し3人組のテンションが上がる。
3人は〈アークアルカディア〉から昇格したばかりで初の〈エデン〉でのギルドバトルのため、超
そしてそれはフラーミナとエリサも同じだ。
「ついに進化した
「ふっふっふ、私とフラウが組めば相手はイチコロよ! 上級職になってパワーアップした私たちの姿、見せ付けてやるわ! ――そしてご主人様は私にメロメロ、フィナちゃんごめんね!」
テンションが高い2人がハイタッチする。
フラーミナとエリサは〈アークアルカディア〉にいた頃のDランク戦で〈ファイトオブソードマン〉を相手に2人で先制攻撃を仕掛けたことがあるほど相性が良い。
今回も2人は組み、エリサはフラーミナのモンスターに騎乗して行動することにしているようだ。
本当は防衛に徹してもらいたいフラーミナだが、さすがに拠点にずっと缶詰めでは可哀想なので今回はアタッカーである。もちろんリーナから指示があったらすぐに戻ってもらうことになっていた。
エリサは先程思ったような活躍出来なかったので今回こそはと燃えている。
……エリサの脳内ではなんだか妄想が捗っている様子だが、それはみんながスルーした。フィナがここにいないので止める人が不足中。
「リカ、ミサト、私たちが守りの要よ。しっかり防ぎましょ」
「任せてくれシエラ。私が先頭で切り伏せよう」
「たはは~。じゃあリカさんがうち漏らしたのを私が反射だね~」
「私が一番後ろね。ミサトでも逃したものは私が防ぐわ」
守りの要はこの3人。
先頭はリカ、その後ろでミサトが反射して、それでも防ぎきれなかったものはシエラが防御。ゼフィルスたちを相手拠点へ接近させる要を担う重要なポジションだった。
そして〈竜〉のモンスター。ゼニスを連れたアイギスだ。
「ゼニス、準備はよろしいですか? これから相手の拠点へ攻め込みます。乱戦になるかもしれません」
「クワァ!」
アイギスの問いに、隣で飛んでいる竜のゼニスが元気に返事をする。まるで任せろと言わんばかりの勇ましいポーズをしていた。頼もしさまで感じるな。
ゼニスは未進化なので〈聖竜の幼竜〉のままだ。
大きさは40センチほど。
体は青っぽい光沢のある
まだ幼いため騎乗することは叶わないが、相棒としてフラーミナのテイムモンスターのように使役することは出来る。
ちょっと変わっているのはアイギスが『ドラゴンブレス』などのスキルを使うとゼニスから発射される所だろうか。大技はアイギスが使用しないとゼニスは撃てない。これは制約みたいなものだ。その代わり、アイギスのSTRと竜のステータスを参照するので強力となっている。
そのブレスは幼くても竜なのだという威厳を感じさせ、火炎のブレスから癒しの息吹まで様々な行動で主を助けてくれる。それが〈聖竜の幼竜〉だ。
「……なあゼフィルス。ゼニスは本当に見せてしまっても良かったのか?」
アイギスの竜を見つめたまま俺に問いかけたのはメルトだった。
常識人のメルトは〈竜〉というモンスターを発見、さらに使役しているという現実がどれだけの波紋を生むかを想像して少々遠い目をしているようだった。
俺はうんうんと頷くだけだ。
「大丈夫だ」
「そうか…………なるようになるか」
メルトがため息を吐いていたが、まあ問題無いと思うぞ?
そこでリーナから更なる発表があった。
「情報をお知らせいたしますわ。北の二つの拠点はお互いを牽制しあって膠着状態になっているようですわね。今がチャンスです。南西にあるギルド〈中毒メシ満腹中〉に仕掛けますわよ!」
「「「「おおー!」」」」
〈エデン〉の北にあるお隣ギルドは二つ、北西と北東に一つずつあるが、これは調べた限り今のところは害が無く、膠着状態だった。つまりはお互いがお互いを牽制しあい、逆に身動きできない状態になっている。
その間に〈エデン〉が別のギルドに仕掛けることにした。
クールタイムも終わり、MPも回復済み。いつでも行ける。
「出発だ!」
現場の指揮はリーナから俺に引き継ぐ。
さあて、ド派手に行くか!
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