第917話 テスト終了! さよならCランクギルドハウス!
この前〈イブキ〉のお披露目があったというのに、あれからあっという間に2週間が経った。
メンバーに赤点者を1人も出さないをモットーにテスト勉強に明け暮れていたら本当にすぐに過ぎ去った。ダンジョンに行かないと1日が短い気がする。
テスト期間中はダンジョンに潜れない。
しかしそんな我慢の生活も今日で終わりだ!
「テスト終わってみんなお疲れ様だーー! かんぱーい!」
「「「「かんぱーい!」」」」
というわけで、テストが終わったので打ち上げです。
場所は〈戦闘課1年1組〉の教室。
テスト明けで不満が溜まりまくっていたクラスメイトを誘ってプチ打ち上げ会をすることになった。今回は珍しくクラスメイトだけの打ち上げだな。
また、さすがに外のお店は他の学生と取り合いになる可能性が高いので慎ましく教室で打ち上げだ。クラスメイトたちとの交流もとても大事。3分の2以上がギルドメンバーなのは気にしない。
「ふふ、美味しいですね。先生も参加しちゃって良かったのかしら?」
「もちろんですよフィリス先生。フィリス先生もテスト期間は生徒に辛抱強く教えてくれてたじゃないですか。お疲れ様です」
「ありがとね。ゼフィルス君も、クラスリーダーのお仕事とても助かったわ。お疲れ様」
フィリス先生ともコンっとコップを軽くぶつけ合う。俺はテスト期間中、フィリス先生が頑張って生徒たちに親身になって勉強を教えていたことを知っている。俺も出来るだけ手伝ったからな。俺は分からない事が無いのでフィリス先生に教えてもらえず少し羨ましく思っていたのは内緒。ゲフンゲフン。
とにかくフィリス先生もお疲れ様だ。せめてこの料理たちで癒されていってほしい。
ここに並ぶ料理は以前、料理専門ギルド〈味とバフの深みを求めて〉に〈エデン〉が依頼して作ってもらったものだ。
〈エデン〉の奢りのようなものだな。
〈エデン〉はかなり目立つギルドなのでたまーにこうやってクラスメイトに奢るなどしてガス抜きした方がいらん嫉妬に悩まされずに済むのだ。これはリーナやセレスタンの受け売りだが。
まあ、このクラスになってから嫉妬なんてする連中はいなくなったかもしれないが、一応な。
「ゼフィルス、ちょっといいか?」
「ん? アランか、いったいどうしたんだ神妙な顔をして。やっぱり点が悪かったのか?」
「やっぱり?」
俺に話し掛けてきたのはこの教室で唯一の中位職、【筋肉戦士】のアランだった。
いつもはニッと男臭いスマイル(?)と余裕と筋肉を崩さないアランが今日に限って景気の良く無さそうな顔をしている。どうしたのだろうか? やはりテストが原因か?
「いや、テストの方は抜かりはない。それなりの点が期待出来るだろう」
そういえばアランも〈1組〉なんだよな。何気に頭がいいのだアランは。
筋肉派と思いきやまさかの知性派。
見た目はどうしてもそうは見えないが。
いや、やっぱり見た目通りかもしれない。
「実は先日、ついに俺も【鋼鉄筋戦士】に〈
「ぶほぁ!?」
おいアラン、そんな真面目くさった雰囲気でギャグを挟むんじゃない!? 思わず吹きかけちまったじゃないか!? というかマジで!?
「ん? どうした?」
「ごほ、ごほ。いや、なんでもない。続けてくれ」
「ああ。それでな。ギルドメンバー数名を引き連れ例の魔境、上級ダンジョンに突入する手続きを行なおうとしたのだ」
「お、おう。それで?」
「だが〈上下ダン〉の管理人というケルばあさんに止められてな。俺たち〈筋肉は最強だ〉ギルドでは入ダンを認められないと言われたんだ」
アランが心底悔しそうに言う。
「お、おう」
俺はそうだろうな、としか言えない。いや言わないが。
「どうすればいい?」
どうすれば……だと?
「いや、普通に【筋肉戦士】系以外もメンバーに入れろよ。斥候とか」
「いや斥候なんてなくても筋肉があればいいだろ?」
筋肉があればいいだろ? え? 俺は今そう言われたのか?
「いいわけあるか! いいか、筋肉に斥候は普通出来ないんだ、だから斥候入れて、ヒーラー入れて、タンクも入れろ。それで通るはずだ」
「むう、なんとか全て筋肉で解決出来ないだろうか?」
出来るか!
「いやいやいや、上級ダンジョンは状態異常対策しないとどうしようもないぞ」
全てを筋肉で解決したいアランを説得するのには骨が折れたが、なんとか説明して俺の言いたいことは伝えられたと思う。
本当は上級ダンジョンからは【筋肉戦士】系は入れるなと言いたい所だが、さすがに全員が【筋肉戦士】系のギルド〈筋肉は最強だ〉にそこまでは言えなかった。
「むむむ。そうか。ではそうギルマスに相談してみる」
「あ、ああ。ポーション類であればうちの〈エデン店〉で売ってるから頼ってくれ。金は掛かるが、耐性ポーションを飲めばギリ上級でも活動出来なくはない」
「おう、その時はよろしくな!」
結局5人全員【筋肉戦士】系で挑みたいというアランに妥協してポーション各種を勧めておいたが、どうなってしまうのだろうか? それは近い将来判明することになる。
他にもAランクギルドの一つ〈カオスアビス〉のメンバーであるキールにも、今度ある大規模な〈拠点落とし〉についてこっそり相談を受けた。
というか5日後から始まるので
「相手は〈千剣フラカル〉〈獣王ガルタイガ〉〈ミーティア〉だ。強敵が揃っているが、どこかと組んだ方が良いのか? ゼフィルス君の意見も聞かせてくれ」
「どうだろうな。三つともかなり強力なギルドだし、
Sランク〈拠点落とし〉は大激戦が予想されているため注目度が無茶苦茶高い。
どこが勝つのか、現在様々な予想や憶測が飛び交っている。
ちなみに順位予想では1位〈千剣フラカル〉2位〈獣王ガルタイガ〉3位〈ミーティア〉4位〈カオスアビス〉だそうだ。
〈カオスアビス〉が4位なのは新参のAランクギルドで一番上級職の数が少なく、LVも低いからである。
〈ミーティア〉はギルドバトルや対人にめっぽう強いはずなのだが、他の二つのギルドがさらに強すぎるので消去法でこの順位に納まっているらしい。世知辛い。
最下位予想となっている〈カオスアビス〉としては情報収集は欠かせないといったところだろう。
そんなこんな話していたらちょうど良い感じの時間になったのでこの場で解散する。
音頭はもちろんクラスリーダーの俺が取った。
「みんな、楽しんでるか? この打ち上げが良いリフレッシュになったなら嬉しい。みんなも疲れているだろうし今日はこの辺でお開きにしようと思う。明後日から冬休みに突入するから人によってはしばらく会えない人もいるだろう、みんな体調には気をつけてな! では改めてテストお疲れ様でした!」
「「「「「お疲れ様でした!!」」」」」
残りたい人はこのまま続けてもらって、一応解散の音頭を取った。
今日が木曜日なので、明日テストの返却と終業式が行なわれる。
それが終われば冬休みに突入だ。
結局、明日もあるとのことで今日は全員ここで解散することになった。
全員で片付けをする。
翌日、テストの返却日。
今回も廊下の掲示板にテストの順位が張り出されていた。
第1位・ゼフィルス 点数900点
ふはははは! ははははは!!
容易い! 容易いぞ! 笑いが止まらん!
ふははははははは!!
この前シエラが出してくれた早押し問題をノリで間違えたからな。しっかりと予習復習し、教科書に書かれた答えを記入して、全問正解をたたき出してやったぜ。この俺に抜かりはない。ふははははは!!
「さすがですねゼフィルス様」
「そういうセレスタンは――ってまた897点で2位!?」
第2位・セレスタン 点数897点
おいおい、前回の点と同じなんだけど。
まさかセレスタン、
セレスタンならありそうで怖いわ!
続いてこんな感じで進んでいく。
第3位・シエラ 点数895点
第4位・ヘカテリーナ 点数892点
第5位・レグラム 点数885点
第6位・メルト 点数884点
第7位・アイシャ 点数878点
第8位・キール 点数877点
第9位・ラムダ 点数871点
第10位・ミサト 点数869点
おお! 6位まで〈エデン〉メンバーが総なめだな!
というか上位10位は全員1組じゃないか!
やっぱり1組メンバーの学力はすげぇな。
一応これ1組から119組まで(3570人中)の順位なんだぜ?
その後教室で成績表とテストを返却されると、登校して2時間ほどで下校となった。
努力の甲斐あり、〈エデン〉〈アークアルカディア〉共に赤点者は居なかったようだ。やったぜ!
昨日打ち上げもしたので今日はせず、クラスのみんなにさよなら(?)してから真っ直ぐギルドへと向かう事にした。クラスメイト3分の2と一緒に。
実は今日は引っ越しの日なのだ。Bランクギルドハウスへの。
テスト期間ということもあり、やっぱり予定していた引っ越しも大幅に遅れて、結局Aランク〈拠点落とし〉の4日前になってしまった。
こりゃ、本当に荷ほどきする暇すらなさそうだ。
とはいえ校則は校則。
Bランクギルドと場所の交換もあるため俺たちも一度Bランクギルドハウスに引っ越さなければならない。
〈エデン〉が使っていたCランクギルドハウスは、もう撤収とリフォームが終わっており、見た目も〈エデン店〉ではなくスタンダードハウスに改装済みとなっていた。
ギルドハウスはちゃんとリフォームして相手に引き渡すのが校則で決まっているからな。ちなみに錬金工房などの設備は一度学園側に返してある。
後はもう移動するだけの状態だ。
「Cランクギルドハウス。ここにいた時間はそんな長くなかったはずだが。なんだか寂しいな」
「そうだね。ここで私たち、頑張ってお店を開いたんだもん。それは寂しいよ」
俺のとなりに並び、ギルドハウスの前に立つハンナが寂しそうに言った。
期間はそれほど長くは無かったが思い出深い場所だ。
特に錬金工房を持ち、毎日のようにここに通っていたハンナにとって寂しさは
俺だって寂しい。
ちょっとハンナの肩に手を添えたくなってしまった。
「あ」
「ま、Aランクになれば落ち着くとは思うから。そしたらAランクギルドハウスでまた思い出を増やしていこう」
「うん。そうだね、ゼフィルス君」
肩に置いた手に自分の手を置いたハンナが、少し寂しそうながらもこれからのことを考えて少しだけ笑顔が戻った。
荷物が入った〈
「行こうハンナ」
「うん。ゼフィルス君!」
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