第900話 ピンチに颯爽と駆けつけるのは―救世主と勇者!
【竜騎姫】は竜をテイムしているのが前提の
アクセサリー枠に竜を装備することが可能で、装備した竜の
HPバリアにより、竜がやられるときは主がやられるときだ。つまり一心同体。
だからこそ、竜がいなければその実力はほとんど上がらない。
今出来るのは『竜の権能』。そして、
「なんとしても生き残ります。――『ハイジャンプ』!」
竜に騎乗するときに使用するスキル、『ハイジャンプ』だけだ。
しかし、ただのジャンプと侮るなかれ。
この『ハイジャンプ』は竜がいないときの緊急離脱スキルでもあるのだ。
「な!?」
「跳んだだと!?」
まだスキルLVこそ1なのでせいぜい10メートルしか跳べないが、それでも一時的に体勢を整えるのにいい働きをした。
「は! 跳んだだけなら着地点で待てばいいだけよ! 切り刻め執行者『ギロチン大回転』!」
「そうだったな! 慌てる必要は無い! 『マックス・サルベージ』!」
「オホホホホホ! 4対1で悪いわねぇ! 『悪の幹部特製ボム』!」
「破壊こそデストロイだ! 『メガ・デストロイショット』!」
【エクスキューショナー】男子が大剣を回転させながら投げ、アギドンが巨大化したフックを振りかぶって待ち構え、【悪の女幹部】に就く№2の女子がドクロマークの大きな爆弾を投げ、【サーチ・アンド・デストロイ】の壊し屋№4が銃で撃った。
仕留める気マンマン。〈四ツリ〉スキルの大バーゲン。
こんなのに直撃を許せばいくら上級職のアイギスとてやられてしまうだろう。
しかし、アイギスは諦めない。
「『姫騎士覚醒』!」
アイギスのユニークスキルが光る。いきなりの全力だった。
「『スラストゲイル』! 『レギオンスラスト』! 『ロングスラスト』! 『トリプルシュート』! 『スラストゲイル』! 『閃光一閃突き』! 『トリプルシュート』!」
空中から落ちてくるアイギスの目にも留まらないスキルの連打が炸裂。
「な、なにぃ!?」
『スラストゲイル』は【姫騎士】唯一の中距離攻撃。ランスの突きにあわせたサイクロンが飛び相手を蹴散らすスキル。加えてリーチの長い『ロングスラスト』や『トリプルシュート』を使い、〈四ツリ〉攻撃を相殺、牽制しながら無事アイギスは着地する。
「おらあ!」
そこへ迫る海賊船船長の左手に付いてそうな巨大なフック。アギドンの攻撃だ。
他のメンバーと攻撃をずらし、アイギスの着地を狙った完璧なタイミング。
だが、そこに割り込んで来た者がいた。
「―――――――!」
「え、おま――ぐはぁ!?」
「アギドン!?」
その割り込んできた者はアイギスに攻撃中で隙だらけなアギドンに接近すると、そのまま巨大な金棒でカッキーンと打ったのだ。
吹き飛ぶアギドン。叫ぶ【エクスキューショナー】男子。
「バカな!? 俺のサーチに引っかからなかったぞ!? こいつ、突然現れた!」
「これって、まさか―――鬼!? それと、タイにゃん!?」
「〈
そこに居たのは長さ2メートルを越す巨大金棒を持った1体の鬼。
タバサの『式神ノ参』で召喚され『式神の武器』で金棒を持たされた鬼だった。
そして鬼が跨がるのは『口寄せの儀式・四』が付与され動けるようになった、タバサの所持するホワイトタイガーのぬいぐるみ――〈タイにゃん〉だ。
◇
一方タバサは1人〈スマイリー〉フィールドの眉間部分にいた。
「アギドン、そう簡単にあなたの思うとおりにはいかないわよ? 私がいるもの」
タバサの
召喚能力を保持し、仲間がピンチになればマスを越えてでも救出に向かわせる事が出来る優秀な能力『転送式』を持っている。
『転送式』により、タバサの召喚体、式神の鬼や口寄せした〈依り代〉カテゴリーのアイテムを別のマスへ送ることが出来るのだ。
しかも仲間がピンチなほど召喚体の能力が上昇する【巫女】のユニークスキル、『
術者から離れているのに『神子の予知』のおかげで能力値が上がっている召喚体は、近くに居る仲間がピンチである限り暴れ回る。ピンチの定義は主にHPだが、多対一などでも発動する。
〈白の玉座〉を装備していた当時はこれに遠距離回復能力まで加わり、仲間がピンチになっても簡単に乗り越えてしまえていた。要は超リカバリー能力だ。まさに救世主の名にふさわしい能力である。
〈白の玉座〉が無くても召喚体を遠距離から送り込むことはタバサの能力だけで可能だ。故に、タバサは召喚し待機させていた鬼とタイにゃんを、リーナの指示でアイギスがいるマスへ『転送式』で送り込んだのだ。
「アイギスを狙うなんて。許さないわよアギドン――」
遠くから仲間を助ける救世主。〈遠主タバサ〉がこの位置に陣取っているかぎり、この近くで仲間がピンチになれば鬼と式神が暴れるのだ。
◇
「ありがとうございますタバサ先輩――『騎槍突撃』!」
かつて親と子のギルドではあったが同じギルドにいたアイギスだ。この光景は見覚えがありすぎた。タバサ先輩へのお礼を口にして『騎槍突撃』を移動に使い離脱を図る。
しかし、相手はBランクギルド。せっかく手に入れた各個撃破のチャンスを逃すはずが無い。
「! 逃がさん―――『ブレイカースナイプ』!」
【サーチ・アンド・デストロイ】男子が相手のスキルを相殺するブレイク系を使ってアイギスを狙撃してきたのだ。
「む!」
そしてアイギスの盾に直撃。『騎槍突撃』が相殺されてしまう。
しかし、まだ『姫騎士覚醒』の効力は切れていない。
「『スラストゲイル』!」
「わっきゃ!?」
「くっ!?」
「今です。『騎槍突撃』!」
『姫騎士覚醒』中に相殺とか無意味。
すぐにクールタイムが終了したため『スラストゲイル』で牽制し、再び『騎槍突撃』を発動するアイギス。
「逃がさん! どけ――『視察を刺殺』!」
「オホホホホホ!? やってくれたわね、食らっちゃいなさい、『ドクロボンバー』!」
【エクスキューショナー】が鬼とタイにゃんを大剣で牽制し、その間に【悪の女幹部】女子が一発のドクロマークの爆弾をアイギスへスローする。
しかし、アイギスのAGIはなかなかに高い。隣のマスへ移動することに成功し【悪の女幹部】の攻撃が不発に終わってしまう。ついでに【エクスキューショナー】男子が
これでアイギスは逃れることに成功、したかに思えた……。
しかし、ここにいたのは4人だけではなかったのだ。
「もう、君たち遅いのだ! せっかく分断したのに仕留められなくちゃ意味無いのだ。――『付いてこい』!」
――ロード弟。
彼の能力は案内人。
逃げ切れるかに思ったアイギスだったが、ロード弟が高速で幹部メンバーを連れて回りこみ、アイギスの進路を塞いだのだ。
「逃がさないのだ!」
「な! 『閃光一閃突き』!」
「ぐはぁ!?!?」
「アギドン!?」
急に進路を塞がれたアイギス、思わず攻撃してしまうとアギドンに直撃する。
彼も突然連れてこられ状況が分かっていなかったらしく、直撃、とんでもない大ダメージを受けてしまう。
「ダメージ
自分のHPバーを見たアギドンが驚愕に目を見開いて叫んだ。
それもそのはず。アイギスの武器は何を隠そう、
「負けるななのだ! すでに囲ったなのだ! 鬼たちは間に合わないのだ! やるのだーー!」
ロード弟の号令。そう、アギドンを攻撃している間に【悪の女幹部】女子と【サーチ・アンド・デストロイ】男子が回り込んでいたのだ。
囲まれてしまうアイギス。絶体絶命に見えるアイギス。
だが、アイギスの時間稼ぎは無駄ではない。
そこへ閃光の稲妻が走った。
「『ライトニングバースト』!」
「へ? うぎゃああああ!?」
まず【サーチ・アンド・デストロイ】男子が撃たれた。
「『グラビティ・ロア』!」
「『グラキエース・ストリーム』!」
「『三属性手裏剣乱舞』デース!」
「な、新手だと!? 『大海船』!」
「ちょ、勇者よ!? 勇者来ちゃったわ!? 『ビッグビッグビッグボム』! 『クレイモア弾幕爆弾』!」
「執行を邪魔するのは、どなたぁぁ!? 『ギロチンカッター』!」
続くように放たれた重力ブレスの一撃を巨大な船が立ちふさがるように防ぎ、氷の吹雪を【悪の女幹部】女子が爆弾で吹き飛ばしつつ、流れるように飛んでくる手裏剣を弾幕で撃ち落していく。
反撃に【エクスキューショナー】男子がギロチンを投げれば。
「『サンダーボルト』!」
「うほおおおお!?」
「わきゃあああ!?」
電撃の槍が大剣を弾きそのまま【エクスキューショナー】男子に直撃した。
さらに散らされたはずの『グラキエース・ストリーム』が再び【悪の女幹部】女子を巻き込み大きくダメージを与える。
その攻撃を放った人物たちに自然と視線が集まった。
アイギスはそれを見て、とても安堵した表情を浮かべていた。
「ゼフィルスさん!」
「おう! 待たせたなアイギス。ここは俺たちに任せとけ」
そこにいたのはゼフィルスたち御一行。
リーナからすぐに駆けつけるよう言われて登場した。勇者たちだった。
ゼフィルス、エステル、シェリア、パメラ、メルトのA班が参上。
アイギスを囲ったつもりが、逆に囲まれている〈カッターオブパイレーツ〉。
形勢が一気に逆転した瞬間だった。
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後書き失礼いたします!
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なお、ポストカードは数に上限がありますのでお買い求めはお早めに!
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ゼフィルス視点(10000字)
タイトル:ゼフィルス、選択授業で裁縫課におじゃまします。
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https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16817330653643065086
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