第874話〈ギルバドヨッシャー〉で技術交流!大騒ぎ確定!




「な、なるほど~。まさかこの戦術にそんな対処法があったとは!」


「なかなか良い線行っていると思うけどな。いつの時代も常にインフレしていくもんだ。これによってこの戦術は根底から覆されてしまうだろう?」


「むむむむ。いやはや素晴らしい! この戦術を思いついた時はギルドで祝杯を挙げたものだが、一度も実行タイミングが無くてな。まさかこんな弱点があったなんて、うかつに使わなくて正解だったというべきか」


「1回目だけならいいんじゃないか? 2回目は対策されるだろうから使えないが」


「うむ! 〈エデン〉以外に使うとしよう」


 現在俺は〈ギルバドヨッシャー〉のギルドでギルドメンバーたちとギルドバトルについて熱く語り合っているところだった。


 いや、やべえよ〈ギルバドヨッシャー〉。

 あまりに強すぎてギルドバトルを受けてくれるギルドがいないせいで実力は未知数だったが、普通に他のギルドの何歩も先に進んでる!


 足の速い2人が初動で道を敷く〈スタダロード戦法〉は当り前に組み込まれているし、その進化型の戦法すら独自に開発していやがった。そりゃ誰も挑まんわ! さすがはギルドバトルオタクたちの集まりだ。このギルドだけ先を取りすぎてやがる。


 今だって最近新戦術を考えたので意見が欲しいと聞かされた内容には驚いたものだ。

 というか戦術を別のギルドの人に言っていいんだっていう意味でも驚いたね。

 ということで俺もその戦術には弱点があるぜって言ってインサー先輩を唸らせたんだぜ。


「すまない! じゃあとぐろ型の障害物の有効な踏み位置についてゼフィルス氏の意見を聞かせてくれないか!?」


「おい待てよ!? 〈保護キーパー戦術〉の話の方が先だろ! 重要度はこっちの方が上のはずだ!」


「まあ、待て皆の衆。今は〈ジャストタイムアタック〉戦法の有効な時間タイムについてをだな――」


「それよりも〈2:01ニィゼロイチアタック〉の話をもっと聞かせてくれ! 有効な職業ジョブは!? 減退を防ぐ手段は!?」


 しかし、色々話しているうちに混沌としてきたな。

 どうやらここのメンバーは新しい刺激に飢えているようだ。

 俺の話が面白いらしく、次第に俺の取り合いが発生し、超盛りあがっていた。


「いやあ、素晴らしい、素晴らしいよゼフィルス氏! もう君を帰したくないくらいだ!」


「はっはっは、それは困るな~。でもここのギルドの話はすげぇ楽しいぜ」


 ジュースを片手に乾杯。インサーギルドマスターの手放しの称賛を受け取る。

 とても気分が良い。ジュースが進むな!

 俺も久しぶりにとても面白い意見交換が出来て大満足だった。

 前回ラウがひねり出したようなリアルだからこそあり得たという変わった戦法の話がいくつも聞けたしな!


 インサー先輩もうんうんと頷き、さらにとんでもない提案をする。


「どうだいゼフィルス氏? 〈ギルバドヨッシャー〉に加入しないかい!? 君にならサブマスターの地位を譲っても良い!」


「え!?」


 横にいたサブマスターのオサムス先輩が顎が外れそうな勢いで愕然としているが、本当にいいのかな?


 まあ、いくら居心地が良いと言っても加入はしない。


「はっはっは。悪いが俺は〈エデン〉をSランクギルドにするって決めているんだ。勧誘は嬉しいけど断らせてくれ」


「「「おおお~」」」


「Sランクギルドのナンバーツーの地位を譲ると言われたのに即答で断る勇者さん」


「いいよね~」


「しかも自力でSランクの地位を手に入れるとか、痺れるわ~」


 ギルドの勧誘をギルドメンバーたちの目の前で蹴ったのになぜか評価が上がる俺。

 マジでここ居心地がいいな~。

 ちなみに横にいたオサムス先輩はものすごくホッとした顔をしていたよ。


「だからオサムス先輩も安心してくれ。一緒にギルドバトル談議を楽しもう!」


 俺の言葉にサブマスターのオサムス先輩がなぜか涙を流す。


「くう~、ありがとう。僕は今とても楽しい! だが、なんで僕たちは大好きなギルドバトルが出来ないんだ」


「わわわ、分かります副ギルド長。ギルドバトル出来ないの悲しいですよね」


 泣き上戸かな? お酒は入っていないはずだが、キャラが変わったように嘆くサブマスターに案内してくれたオカッパ女子先輩もといメイコさんが頷く。


 確かに、リアルギルドバトルの弊害だな。ゲーム〈ダン活〉であればこっちがどれだけ戦力を持っていてもNPCは挑んでくれる。

 だが、リアルだと負けが決まったような戦いに挑む人たちはいない。

 当然ながらAランクギルドはランダムマッチング申請なんてしてこない。

〈決闘戦〉ですらどんなに条件がよくても受けてくれるギルドがいないというのは相当だな。


 おかげで先進的なギルドバトルの構想だけは発達するが、実戦が出来なくてこの通りである。


「ああ~、ランク落ちしたい」


「でも負けるのは嫌だ~」


 ランク落ちを願うギルドなんてここだけだろうな。

 でも負けたくは無いと。オタク心は難しいのだ。


「実はまたFランクからやり直すかという案も出たことがあったのだ」


「だがな、だがな。学園が許可を出してくれなかったんだ!」


「そりゃあ元SランクギルドがFランクに転向したって混乱するだけでいいことは無いだろうしな」


 元SランクギルドがFランクからやり直してランク戦を挑んできました。

 そんなことになったギルドには同情する。

 学園の責任者は何も悪く無いな。むしろ悲劇を未然に防いだまである。


「もう我々はギルドバトルは望めないのか(泣)」


「泣かないでください副ギルド長」


 腕を目元に当て泣くオサムス先輩に慰めるメイコさん。

 それを見てこっちを向くインサー先輩。


「そこで、相談があるんだゼフィルス氏」


「ん?」


「ゼフィルス氏、〈ギルバドヨッシャー〉と〈決闘戦〉をしないか? 何を賭けてもらっても構わない! 受けてくれるならこっちはサブマスターの地位をあげよう!」


「え!?」


 その言葉に一瞬で涙が引っ込んだオサムス先輩がまた愕然としていた。


「いやあ、〈決闘戦〉は残念ながら上下1ランクまでじゃないと成立できない校則があるから、少なくとも今は難しいなぁ。後サブマスターの地位はいらないって」


 学園の校則ではSランクギルドが〈決闘戦〉を挑めるのはAランクギルドまでである。力の差を考慮した結果だ。

 現在Cランクギルドの〈エデン〉にはどうやってもSランクは〈決闘戦〉は仕掛けられないんだ。

 まあ、〈エデン〉がAランクに上がったなら別だが。


「〈エデン〉がCランクとか絶対詐欺だろ」


「早くAランクに上がってこい! そして俺たちとバトろうぜ!」


「Aランクになったらな~」


 一緒に騒ぐ〈ギルバドヨッシャー〉に適当に答える。

 Aランクになれば絶対〈決闘戦〉を仕掛けてくるだろうなこれは。


 俺もその時が楽しみだ!


 このギルドは本当に居心地良いな!



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